• もっと見る
聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
« 2009年10月生活報告 富田 望 | Main | 第3回留学奨学生帰国報告会 »
2006/4/28ブログ開設時からのアクセス数
UL5キャッシング
最新記事
カテゴリアーカイブ
リンク集
最新コメント
月別アーカイブ
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/index2_0.xml
2009年10月生活記録 (岡田)[2009年11月21日(Sat)]
フリーモントはだいぶ寒くなってきた。日によっては、朝自宅を出る時に車に薄く霜がついているほどである。一日の中で気温差がかなりあるので、体調を崩さないように気をつけている。それにしてもアメリカ人はこんな時期でも半袖、ビーチサンダルという人がいる。明らかに温度の感じる機能に人種差があるに違いない。

先日に引き続き、2クラスを毎週こなしている。法律のクラスは、毎週ジャーナルという読んだ内容をまとめ、それに自分で関連のある文献をあたったり、批判的に分析してコメントを追加したりする課題がある。ただ読んでまとめるのではなく、自分の過去の経験に落とし込んで、また今Administratorとしてこのような事例に当たったらどうするか、と考え分析していくのは、1週間というサイクルの中では時間的に厳しいものがあるが、大学で起こりうる問題を、事実関係を冷静に見極め、法律やポリシーに基づいて判断をくだしていく良いトレーニングになっている。

クラスでも毎週2例ほどのケーススタディを行っていて、活発な議論が行われている。興味深いのは法律に照らし合わせて、良い悪いと判断するだけではなく、自分が大学の弁護士だったらどうアドバイスするか、Administratorだったらどう対応していくか、と具体的に対応策を考えることである。基本的に正解はないのだが、同じ事例でもかなり多くの解釈、対応策が出てくる。時には多少法律から逸脱することもありうる。その場合は、きちんと倫理的な行動が取れるか、という点が重要になってくる。冬学期にAcademic Ethicsというクラスで倫理観を、Student Affairsで大学内のdiversityなどを学んだが、このクラスに密接に結びついている。

個人的には、大学でも大学院でも、このようにしっかりと構成されたプログラムで学んだ経験がないので、このように、ある時に突然過去の学習内容が結びつく感覚には、知的好奇心をかきたてられている。

論文のクラスでは、文献レビューを行ったり、リサーチクエスチョンを具体化したりしているところである。障害学生支援室運営者の専門性というトピックであるが、アメリカでは80-90年代あたりから活発に議論され、いくつかの全国的な調査もなされている。日本ではなかなか当たれなかったこの分野に直接アプローチしていけるのは貴重な経験である。時間の関係ですべてを論文に盛り込むことは難しいが、今後のことも考え、資料の収集は十分に行っておきたいと考えている。

論文作成の過程で、アメリカの大学教育の強みをまた1つ知ることができた。それは図書館ネットワークの充実である。数年前に日本で修士論文を書いたが、自分の大学の図書館にない場合、レファレンスデスクに行って、所蔵している大学などを所定の用紙に希望する文献を書いて提出し、取り寄せてもらい、到着後コピー代と郵送料を払い、といったプロセスを踏んでいた。1ヶ月かかることもあったと思う。

しかし私の通う大学院の場合、すべてオンラインで瞬時にできる。たとえばある雑誌論文がほしい場合、まず図書館のサイトで検索し、大学で所蔵していれば、パソコン画面上でのクリック1つで、5分後にはレファレンスデスクに届く。日本ではこの作業も自分でフロアに行って探してと、かなり大変だった。あるいはデータベースに収録されている場合は、PDFでのダウンロードも可能である。

もし所蔵していない場合は、別の画面で著者や収録論文名などを記入して申し込めば、図書館が所蔵している大学を探して送ってくれる。しかも雑誌記事ならほぼ100パーセント、PDF方式で自分のアドレスに添付で送られるので、早くて労力もかからず、しかも無料である。早くて3日で手に入る。現物で届くので自分でコピーする必要があるが、過去のカンファレンスでの発表資料などでもかなりの確率で手に入るし、博士論文も無料で取り寄せ可能であり、場合によってはこれもPDFで送られてくる。自宅にいながらほとんどの論文は手に入るのである。もちろん普通の書籍も同様に取り寄せ可能である。

これは本当にすごいシステムだと感嘆している。可能であれば卒業後も使えるように、自費でオンラインのクラスを履修し続けるとか何らかの方法を考えたいと今から考えている。今の日本ではどうなのか正確にはわからないが、ここまではできないだろう。せっかくデータベースやPDFなど有益なテクノロジーがあるのだから、日本もここまでできればと思う。大げさな言い方をすれば、高等教育は国力と同義だと思う。誇張かもしれないが、ナショナルカンファレンスに参加すればそれが実感できると思う。あの活気に満ちた雰囲気は言葉で説明するのは難しい。それはStudent Affair関係でもDisability 関係でも変わらない。その意味で、研究者も職員も、障害分野であれ、どの領域であれ、その特定の分野に身をおいているというという意識だけではなく、「高等教育の」「高等教育における」という部分にどれだけ価値を置き、意識し貢献していくことができるかが、教育の拡充につながると考えている。
この記事のURL
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/archive/347
トラックバック
※トラックバックの受付は終了しました
 
コメントする
コメント