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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
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2009年3月 生活記録(1期生 池上 真)[2009年04月12日(Sun)]
□ Northwest Deaf Addiction Center

 今現場実習を行っているワシントンろう学校から車で約5分ほどのところに、Northwest Deaf Addiction Centerがあり、そこを見学させてもらった。そこでは、コミュニケーション手段として主にアメリカ手話を使用するろう者・難聴者を対象とした、アルコール・薬物の治療プログラムが提供されている。具体的には、アルコール・薬物のアセスメント、個々の患者のニーズに合った治療プログラムの作成、個人もしくはグループによるカウンセリングの提供(回復の原則、再発の予防、アフターケア)、ケースマネジメント、家族や友人を交えたカウンセリングと教育、育児教室、アンガーマネジメント(怒りを他人にぶつけないように処理すること)などといった多様なサービスが提供されている。そのセンターについて特筆すべき点は、プログラムを提供するセラピスト自身もアメリカ手話を使用するろう者であるということである。センターのディレクターの話によれば、センターのある建物の中に、聴者向けのアルコール・薬物の治療プログラムが提供されている別のセンターがあり、ろう者・難聴者でもアメリカ手話を使用しない人であったり、もしくは、アメリカ手話を使用していてもアメリカ手話による治療プログラムよりも手話通訳をつけて一般のプログラムに参加したい人はその聴者向けのプログラムに参加することが出来るようになっている。つまり、アメリカ手話を使用するろう者はどちらのプログラムにも参加できるが、逆に、アメリカ手話を知らないろう者・難聴者は、ろう者・難聴者のためのプログラムに参加することは出来ないということになる。なるほど、このプログラムは、「アメリカ手話」によって行われるというところに大きな特徴があり、アメリカ手話によるプログラムを希望するろう者・難聴者のためにこのセンターが設立されたいうことを学んだ。また、このセンターの第2の特長として、通院患者だけでなく、入院患者をも受け付けている点である。入院患者のためのベッドが16もあるが、僕が見学したときはほぼ満室であった。それぞれの部屋にお知らせランプがついており、また、患者がいつでも家族や友人と連絡とれるようにVP(VideoPhone)のブースも設置されている。その他にキッチンや談話室もあり、まるでホテルにいるかのような気分にさえなった。ディレクターによれば、このような施設はアメリカ国内においても珍しく、数も僅かしかないようだ。とにかく、いろいろと勉強になった。

□ Deaf-Blind service center

 ワシントンろう学校のあるバンクーバーから車で3時間くらいのところにあるシアトルに、ろう盲者のためのセンター(Deaf-Blind services center)があり、そこでろう盲者の介助者(Support Service Provider)のトレーニングを受けて来た。本来なら、4月23日に介助者になるためのワークショップが行われる予定なのだが、ろう学校での現場実習と重なり参加できないため、個人的にトレーニングを受けることは出来ないものかと担当者に連絡してみたところ、「トレーニングをやりましょう」とすんなりと快諾してくださり、春休みを利用してそのトレーニングを受けて来た。トレーニングは僅か2時間だけだったが、本当に密度の濃い内容であり、受講して良かったと思っている。周りにろう盲者の友人が何人かいて、大学院でもソーシャルワークのクラスにおいてろう盲者の支援方法について一通り学んだので、知ってることが多いかなと思っていたが、そんなところではなかった。実は、知ってるようで知らないことがとてもたくさんあり、逆にカルチャーショックを受けた。やはり、ろう盲者のための団体であるだけあって、その専門性は奥が深く、トレーニングの内容もとても洗練されていた。特に、ろう盲者の介助者として身に付けておかなければならない知識や技術がきっちりと説明されたガイドブックを手にしたときは本当に感動した。アメリカのソーシャルワークはここまで来ているのか(進んでいるのか)とショックを受けた。介助者としての、具体的な経験はこれから少しずつ積んでいこうと思っているが、このガイドブックは将来ろう盲者の介助に興味のある自分にとって重宝するものになるだろう。また、トレーニングは、そのセンターのディレクターと介助者のコーディネーターによって進められた。やはり自身もろう盲者であるディレクターが、ろう盲者の普段の思い、介助者としての必要な心構えについて、分かりやすく説明してくださった。続いて、同じくシアトルにあるライトハウス(Lighthouse)で実習中の、もう一人の受講者と交代で目隠しを使いながら、一人が「盲ろう者」になり、もう一人が「介助者」になり、センターの近くにあるスーパーマーケットで疑似体験を行った。「盲ろう者」も「介助者」もどちらも難しい。具体的な感想については、ここでは省かせていただくが、本当にこの体験は僕の非常識な「常識」を覆したと言ってもいいくらい、トレーニング終了後は、言葉が見つからなかった。もう一人の受講者は、ケンタッキー州にある大学で手話通訳(Interpreter Training Program)を専攻していて、現場実習のために、シアトルにあるライトハウスに来ているとのことであった。一般に、手話通訳の養成のプログラムと聞くと、聴者を対象としたものと思われがちだが、アメリカではろう者も参加できるようになっている。Gallaudet大学にある手話通訳養成プログラムにもろうの学生が何人か学んでいる。彼らは、プログラム修了後、アメリカ手話を母語とするろう者やろう盲者など、一人ひとりのろう者のニーズに合った手話通訳を提供する役割を担う人「ろうの通訳者(Certified Deaf Interpreter)」になることが期待されている。また、そのもう一人の受講生が実習しているというライトハウスには、盲者、盲ろう者、ろう盲者など様々なバックグラウンドを持った人たちが集まって一緒に仕事をしているようだ。以前、あるろう者の集まりで、ライトハウスで働いているろう盲者に会ったことがあり、その人からどんな仕事をしているのか話を少しだけ聞いたことがあるが、まさに「百聞は一見にしかず」で、来月ワシントンDCに戻る前に、実際にライトハウスをも訪れてみたいと考えている。
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