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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2009年3月 生活記録(第2期生 高山 亨太)[2009年04月01日(Wed)]
中間評価
Gallaudet Universityの春休み前に、特に試験などはないが、インターンシップに関する中間評価を指導者と共同作成し、大学に提出する必要があった。インターンシップ先の指導教官とインターンシップについて振り返り、反省点などを議論しながら中間評価票をまとめた。中間評価をまとめるなかで、ソーシャルワーカーとしての自分の成長や課題を改めて振り返ることができた。日本での社会福祉実習教育でも実施されているが、大学の実習担当教授による施設訪問による指導者も交えた面談がアメリカでも実施されているが、実習生は全米各地にて実習しているため、教授が現地まで飛び回ることは経済的にも、時間的にも不可能であり、ビデオ電話を利用して面談が実施され、今後の課題やこれまでの取り組みについて確認しながら、自分の成長を確認するという共同作業を経験することができた。渡米前と比較して、ろう・難聴者を支援するに当たって必要な専門知識や実践技術など様々な面で多くの収穫があり、留学生活を通じて成長しているのだと感じることができた。さらに「スーパービジョン」が今後の日本における私の活動の鍵であるのだと信じている。

春休み
春休み中は、車で1時間半ぐらいのところにあるLubbock市などに出かけるだけであったが、多くの時間を自宅でのんびり過ごしながら、残るインターンシップに備えてリフレッシュすることができた。春休み中は、友人とビーフジャーキー作ってみたり、お寿司を握ってみたりするなど楽しい1週間を過ごした。さらに最後の大仕事であるアメリカにおけるアンケート調査を実施するための準備などを進めることができた。

日本文化のプレゼンテーション
インターンシップ先の指導教官に依頼されて、学内の学生向けに日本文化や日本のろう社会について、SWCIDのスタッフであり、昨年11月に1ヶ月ほど日本を訪れた経験のあるVernon McNeceさんと一緒にプレゼンテーションをした。時間が限られているので、多くのことを説明することはできなかったが、「An Hour Trip to Japan」というタイトルの通り基本的な日本の様子を紹介することができたのではないかと思っている。特に自分の出身地(横浜や鎌倉あたり)について写真などを使いながら紹介した。最後に自分がアメリカ生活を通じて驚いたことや印象に残っていることについてまとめた。 Vernonさんにとっては、日本人の礼儀正しさなどといった日本人の価値観や行動、料理が印象に残っていると説明していた。特にろう者に関することについては、「ビデオリレーサービス」や、「障害を持つアメリカ人法」、「ろう・難聴者のための高等教育」であると説明した。これらは同時に今後の日本のろう社会における課題でもある。参加者からも多くの質問があり、楽しいプレゼンテーションだった。プレゼンテーションの後は、手作りのお餅とお茶を振る舞ったところ、大変好評であった。しかし、プレゼンテーションを通じて、アメリカ人から見た日本についてまだまだ誤解されているところが多いのだなと感じた。たとえば、「日本人は中国人と同じ」、「日本人は猫や犬を食べる文化がある(しかし、馬に非常に愛着を持っているテキサス人が多いテキサス州なので、馬を食べる(馬刺し)文化があるとは恐ろしくて言えなかった)」、「日本人が礼をするときには手を合わせて礼をする」、「数学がすき」、「漫画オタク」、「ブルース・リーは日本人だ」、などと様々な誤解があり、その辺については最近日本財団がイギリスの大学での日本文化・日本語講座設置に関する支援をしているように、アメリカにおいても日本政府や日本財団による広報活動に期待したいところである。たとえば、日本財団などによる寄付講座によって、Gallaudet Universityに日本手話・日本文化講座を設置することはできないものだろうか。もしくは、筑波技術大学に日本財団支援による寄付講座を設置できない者だろうか。今後、提案してみたいと思ったきっかけになった。非常におもしろい経験をしたプレゼンテーションであった。

講義
聴覚障害について講義することが可能な講師がいなかったため、ピンチヒッターとして、ろう・難聴学生を対象に「聴覚障害(英題: Hearing Loss)」と題して講義をした。パワーポイントなどは、これまでに日本で講師をしてきた資料を英訳、加筆したものを活用した。講義の目的としては、ろう・難聴学生自身が「ろう者」、「難聴者」、「コミュニケーションモード」、「ろう学校経験の有無」などといった文化的アイデンティティだけではなく、「聴覚障害の種類」、「聴覚障害の程度」、「病因」、「受障時期」、「使用している補聴機器」などといった医学的アイデンティティについて理解することが目的である。講義中は、日本式の講師がしゃべり続ける静かな講義形式と違い、学生から積極的な質問や意見が出され、活発で元気な講義だった。ろう・難聴者のためのコミュニティカレッジなので、必ず耳の様子を模った立体的生理・解剖モデルがあるはずだと、講義前の空き時間に各教室や倉庫を探し回るなど、わかりやすい講義のために学内を奔走したので、自分に対するご褒美としてとっておいた夜のビールとつまみは格別だった。
さらに、「精神保健(英題:Mental Health)」という題で、大学生活の成功や充実のために必要な知識などを学ぶ「カレッジサクセス」というクラスで、精神(Psyche, Mind, Mental)の基本について、さらにストレスマネジメント、精神疾患・障害について、治療やサービスを受けるための方法などについて講義した。この講義については、以前から丹念に準備を進めていたので、余裕を持って講義を進めることができた。以前に、精神保健福祉士の資格を取得する前に、日本の大学で学んだ専門知識とアメリカで精神保健の専門職を目指す学生が学ぶべき専門知識に差異はなく、精神保健の問題は世界各国の共通課題であり、国家的に大きな損失をもたらすものなのだと改めて認識できた講師経験だった。
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