• もっと見る
聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
« 奨学生近況報告/Gallaudet大学関係 | Main | 2008年 8月 生活報告 富田 望 »
2006/4/28ブログ開設時からのアクセス数
UL5キャッシング
最新記事
カテゴリアーカイブ
リンク集
最新コメント
月別アーカイブ
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/index2_0.xml
2008年9月 生活記録(第2期生 高山 亨太)[2008年09月30日(Tue)]
秋学期のクラス
1.ろう・難聴者個別援助技術(Practice with Deaf and Hard of Hearing Populations: Micro Intervention)
 このクラスでは、主にろう・難聴者のクライエントに対する援助方法や各種理論の適用方法を具体的に学んでいる。このクラスでは、心理社会的アセスメント、ナラティブアプローチ、認知療法、さらに以前から自分自身でも実践しているソリューション・フォーカス・アプローチ(Solution Focused Approach)などといった心理学分野でも応用されている各種援助技術と理論を応用して、どのようにろう・難聴のクライエントの支援に適用させるのかをロールプレイなどを通じて学ぶ予定となっている。

2.ろう・難聴者福祉政策援助技術(Practice with Deaf and Hard of Hearing Populations: Macro Intervention)
ろう運動や地域福祉などの国家、コミュニティレベルでの援助方法・政策理論を習得することがこのクラスの主な目的となっている。実際に、講義形式だけではなく地域のろう・難聴者の教育や福祉の向上に寄与するプロジェクトに参加して、様々な専門家や団体と協働する中で、理論と実践を学んでいく予定となっている。教授が用意したプロジェクトは、
(1)カメルーンのろう学校(ギャローデット大学卒業生によって数年前から運営されている新しい学校)への経済的支援
(2)全米赤十字社の緊急援助サービスにおけるろう・難聴者支援プログラムの向上
(3)メリーランド州におけるろう・難聴者を対象としたメンタルヘルスプログラムの再編並びに再開発に伴う各種事業の推進
の3つである。以前からアメリカのろう・難聴者のメンタルヘルスサービスに興味を持っていたので、(3)のメリーランド州のプロジェクトを選んだ。現在の予定では、メリーランド州の知事の下に設置されているろう・難聴者局(Office of the Deaf and Hard of Hearing: ODHH)の主導の元に、ワークショップの企画立案、ろう・難聴者専門の医療ユニットがある精神科病院に出向いて、ろう・難聴者の調査(もちろん、メリーランド州がすでに倫理審査を申請している)が予定として挙げられている。

3.ろう・難聴者における人間発達と社会環境の問題(Issues in Human Behavior and the Social Environment: Deaf and Hard of Hearing Populations)
 このクラスでは、主にろう・難聴者を取り巻く状況について理解するために発達心理学や社会学などの様々な領域におけるろう・難聴者の生涯発達と社会的な問題について学んでいる。またろう・難聴当事者だけではなく、両親などの家族を取り巻く状況についても学ぶ。

4.ろう・難聴者に関する調査実習(Research Practicum- Deaf and Hard of Hearing populations)
自分が興味のあるテーマについて調査を実施することが求められている。博士論文に必要な調査を実施できたらと考えている。留学目的の1つは、アメリカのろう・難聴者に関わる専門職の養成方法と就労状況を知ることである。そのため予定としては、全米のろう・難聴者に関わっているソーシャルワーカーの実態調査を実施できたらと思っている。

5.学校ソーシャルワーク援助技術(School Social Work Practice)
このクラスでは、クラス名の通りに、学校における学生や家族を対象にしたスクールソーシャルワーカーのあり方や援助技術について学ぶことが求められている。毎回、ろう学校やろう・難聴児、その家族を対象にしたケースを想定しながら、ロールプレイなどを通じて各種分析・援助方法について学んでいる。

6.自由研究(Independent Study)
 このクラスは、必修ではないが、同級生と二人で、薬物・アルコール問題が専門の教授の指導の下で、自由研究として「薬物乱用に関する教育:文化的・言語的介入(Substance Abuse Education: A Cultural and Linguistic Intervention)」として、日本のろう・難聴者に関わる専門家への薬物・アルコール乱用についての知識や支援方法に関するトレーニングプログラムを開発することがこのクラスでの最終目標となっている。

Council on Social Work Education (CSWE)
全米ソーシャルワーカー協会(National Association of Social Workers: NASW)やアメリカスクールソーシャルワーク協会(School Social Work Association of America: SSWAA)がソーシャルワーカーの専門職当事者団体であるのに対し、全米ソーシャルワーク教育協議会(Council on Social Work Education: CSWE)は、学士・修士レベルでソーシャルワーク教育プログラムを提供している大学に対する評価機構として機能している。CSWEは、1969年より前述のソーシャルワーク団体や政府の支援を受けて、全米中の大学におけるすべてのソーシャルワーク教育プログラムを定期的に評価している。アメリカにおいて、一般的にソーシャルワーカーを志望する場合には、CSWEが認定している大学に進学し、社会福祉学修士号を取得し、さらに各州が実施するソーシャルワーカー資格試験に合格する必要がある。
ギャローデット大学ソーシャルワーク学部・研究科は、約2年間の準備期間を経て、最終的に2009年2月に発表される認可審査のプロセスの真っ最中である。もしも認可されれば、今後8年間に渡って当該プログラムが有効であると認可され、ギャローデット大学にとっても大きな価値のある実績となる。多くのソーシャルワーク学部の専任教員が夏休みを返上して、認可継続のための書類、報告書作成に追われていたようだ。9月24,25日の2日間にわたって、2名の高名なCSWEの理事(また他大学のソーシャルワークの教授でもある)が、審査の1つとして課せられている面接調査のためにギャローデット大学を訪問され、教員だけではなく現学生である私たちを対象にした集団面接が1時間にわたって実施された。面接では、学生に対して、ろう・難聴者のためのギャローデット大学におけるソーシャルワーク教育プログラムの意義や現状、改善点などを聞かれた。緊張したが、「自分は留学生であるが、世界中どこを見てもろう・難聴のクライエントの支援のためのソーシャルワークプログラムを学べるのは、ギャローデット大学だけであり、大きな存在意義があると考えている。」と自分なりの素直な考えを述べた。
面接終了後の審査員による報告では、ろう・難聴者のためのソーシャルワーカー養成プログラムがあること、ろう文化を理解し、また手話の出来るソーシャルワーカー養成の重要性について評価していることが発表された。最終発表は、2009年2月の予定のようだが、報告を聞いてひとまず安心した。

27歳の誕生日
 9月21日に、晴れて27歳になった。留学生活、すなわちギャローデット大学で迎える最後の誕生日だった。多くの人にサプライズの誕生日パーティをしてもらった過去2年の比べて、今年は静かな誕生日を過ごした。ただ、連週連日で夕食やランチに誘われたので、少々過食ぎみではあるが、メッセージカードをいただくなど、充実した誕生日を過ごすことが出来た。ただただ自分を産んでくれた母親に感謝感謝!!
この記事のURL
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/archive/226
トラックバック
※トラックバックの受付は終了しました
 
コメントする
コメント