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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
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2025年5月「留学中の思わぬ再会 –坡州で出会った製本の記憶– 」森本恵実(20期生)生活記録[2025年06月06日(Fri)]
みなさん、こんにちは。5月の生活記録を書きます。
気づけば半袖でも過ごせる日が少しずつ増えてきました。韓国の5月は日差しが強いんですが、湿気が少ないので日本の夏よりも清々しい感じがしました。

ある友達が最近引越ししたため、引越し祝いをしに坡州(パジュ)市へ行ってまいりました。坡州市は、北朝鮮と接する最前線の地域で、ソウルから北西部へ車で約1時間の距離にあります。私は2024年12月末に開設されたGTXという急行鉄道に乗って向かいました。時速はなんと180Kmでソウルから坡州まで約20分で行けるようになりました!

GTX.png
※2024年12月に開設された急行鉄道「GTX」

チプトゥリ(집들이)という朝鮮時代から続いていると言われている風習があります。チプトゥリとは『引越し祝い』という意味で、引越しした際に、新居のお披露目を兼ねて行うホームパーティーのことです。チプトゥリに招待された客は、引越し祝いの品を持っていかなければなりません。一般的には、洗剤や石鹸、トイレットペーパーなどを持っていきます。この手土産にはそれぞれ意味があり、洗剤や石鹸はその家の運が泡のようにブクブクと現れてくることを願い、トイレットペーパーは紙がスルスルっと出てくるように全てのことがスルスルと解決されることを願う意味があるのだそうです。

また坡州市では、もうひとつ思いがけない出会いがありました。帰り道に立ち寄ったのが、坡州出版都市という場所でした。韓国の出版・印刷関連の産業が集まる場所で、古い製本技術や機械なども一部見学できる施設もありました。印刷された紙が一冊の本として仕上がっていく工程を見ていると、なぜか懐かしい気持ちになりました。

出版都市1.png

というのも私は韓国に来る前、日本の大学では視覚伝達デザイン(ビジュアルデザイン)を専攻し、昔の製本技術を実習で体験したことがありました。紙を折って、糸で綴じて、表紙を貼って仕上げるあの作業など、手間がすごくかかるのですが、自分の手で“本を作る”という行為はすごく特別で、今でも記憶に残っていました。今回、韓国でもまったく同じような綴じ方や道具が使われていたことを知って、思わず「日韓でつながってる!」と感じました。

出版都市2.png

そして改めて感じたのは、本というメディアが「視覚」に訴える力を強く持っているということです。私たちろう者は、音ではなく視覚を通して情報を受け取る人にとっては、本のレイアウトや紙質、文字の見やすさなどがとても重要になります。今回見た昔の製本技術には、そうした細かな部分にまで“伝えるための工夫”が込められていて、その丁寧さに思わず心を打たれました。

今回の坡州訪問は、観光というよりも、過去の自分の学びと“今の私”を静かに結びつけてくれるような時間でした。韓国に来てからは、新しい言語や文化に触れる日々が続いていたのですが、こうして思いがけず「懐かしさ」と出会う瞬間があることが、留学生活の面白さでもあると感じました。

【TMI】
ちなみに、5月の韓国といえば「薔薇(장미)」の季節。街を歩けば、あちこちに真っ赤なバラが咲いていて、本当にうっとりするほど綺麗でした。学内でも、公園でも、ふとした道端でも、季節の彩りを感じることができました。
バラ.png
※1枚目:崇実大学構内のバラ道。
※左:ソウルの森のカフェで。
※右:家の近くで見つけた1本のバラ。


以上です。
Posted by 森本 at 15:44 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
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