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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2024年1月「秋学期に勉強したこと」金本小夜(19期生)[2024年02月07日(Wed)]
こんにちは。
先日新年明けたばかりだという感覚でしたが、1月は何だかやることが多くて、あっという間に2月に入ってしまったような気持ちでいます…!皆様はどのような1月を過ごされたでしょうか?

イギリスの博士課程では1年目から2年目へと進級する試験のようなものがあり、私は目安としてはとりあえず3月末までにこれをこなさないといけないので、1月はほぼ毎週指導教官とその計画について話し合いをしていました。クリスマスは遊びましたからね… 勉強しないと…!

さて春学期はとにかく主要な障害学理論の読み込み、そして秋学期は日本における障害事情についての本を集めていたのですが、とりわけ日本に関する文献は日本を文化的に紹介する内容も含まれており、障害の問題だけでなく、日本がどのように見られ、紹介されているか、という点についても興味深いものでした。
まず近代以前の日本の障害事情について、複数の本で紹介される内容として目についたものが障害と神/妖怪の結びつきでした。例えば仙台四郎や福助人形のモデルとなった佐太郎とされる人物、また恵比寿さんが耳が遠いことなどがあげられ、欧米に比べ、日本人にとって障害はもっと身近で信仰の対象ともなるものであり、必ずしも差別の対象ではなかったのではないか、と述べられているのです。私は、どちらかといえば排他的で内向きな性質の文化を持つ日本において、障害者は常に肩身の狭い思いをしてきたのではないかと思っていたのでこれは面白い着眼点でした。(でもヨーロッパでも小人は実は障害者を描いていたんじゃないかとか、障害のある子が生まれたらそれは妖精の取り替え子だと言われたりしていましたから、日本だけではない気がするんですけどね。現代社会にこれらの考えがどれほど反映されているのかはさておき、比較のテーマとして掘り下げたら面白い問題だと思います)
しかし現代に目を移すと、いかに日本における共同社会を重視する考え方が、欧米の個人を主眼とした考え方と相容れず、障害者の自立を促すシステムや法の改正が困難となっているか、といった方へ話が進んでいきます。また社会学における障害学でよく言われる社会モデル(障害というのは個人の心身機能ではなく社会が作り出しているものであるという考え方)の考え方がなかなか日本に定着せず、障害者を助けて「あげる」、障害者は「感謝するべき」といった圧力が変わらず存在していることも問題だ、といった考えが複数の本で述べられていました。
日本における文学/メディアを見ると、障害者の描かれ方はいまだに個人モデル(障害はあくまで障害者個人の問題であり社会に責任はないという考え方)をベースとしているのではないか、と考えさせられます。とりわけ、健常者の間でも人気を博した作品である『1リットルの涙』(1986)や『聲の形』(2013−2014)、『Silent』(2022)などでは、障害を持つ主人公が周囲の健常者に対して申し訳なさを感じたり、健常者の間に入れない主人公が読者/視聴者の涙を誘ったり、といった障害者を可哀想に見せる演出が多く見られます。もちろん『癒しのセクシー・トリップ』(1993)のように社会モデルの影響を強く受けた作品や、『淋しいのはアンタだけじゃない』(2016)といったドキュメンタリー風の新しい手法の作品もありますが、発行部数や視聴者数を見ても、とても先にあげた作品群には届いていません。社会の実情を反映した作品と、社会の理想を反映した作品を読者がそれぞれどのように受け止めているか、この点を探るのも面白そうではないかと今考えているところです。
さて、こういったことを英語圏の文学/メディアにおいても同じように情報を収集して比較に繋げたいと思っていますが、なかなかまとめる作業が困難です…。ある程度勉強の話題がまとまったら、また色々書いていきたいな、と思います。

ところで個人的な話ですが、最近ロンドンへとお引越ししました。(指導教官との面談や授業は全部オンラインなのです。世の中便利です!)
ヨークシャーとはまた違った都会ならではの話題が提供できるよう、毎日の生活も頑張りますね。


あ、そういえば前からあげようと思っていた写真を。
これはリーズ駅なんですが、駅の案内看板にいつもBSL訳がついてるんです!ヨーク、ロンドン各駅ではまだお目にかかっていないので、イギリス全土であるわけではないようですが… 日本でもエキマトペみたいに流行ってくれたらいいなと思います。
IMG_6075.jpeg
Posted by 金本 at 00:22 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
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