2022年10月生活記録【第18期生 田村誠志】[2022年11月04日(Fri)]
皆様、おはようございます、こんにちわ、こんばんわ
日本の秋はどのようにお過ごしでしょうか?
こちらはギャロデット大学院の中間試験を終えて、一息ついております。しかしまだまだ学ぶことはたくさんありますので休憩できる時間はあまりなさそうだなぁと思いました。また大学では秋のイベントがたくさんあり、ハロウィーンのイベントが特に盛り上がりましたね。私が住んでいる家の周りも子供たちがたくさんお菓子を集めるために駆け回っております。
さて、今回のブログの記事は、私が現在受講している「Cognitive Linguistics」について説明したいと思います。和訳すると...認知言語学です。認知とは一体なんなのかというと説明がかなり難しいですね...(笑)
全ての人々は物事を認識する能力が備わっており、その能力は主に自分がこれまで経験したこと、実際に見た世界によって培われていきます。しかしその認識能力を使い、相手にどのように表現するか?手話で表現するのと、話し言葉で表現するのと違いは何か?そして言語学者はその認識能力から生まれた言語をどのように分析するのか?これらが本クラスの基本的な学習内容です。
ここで例を見せましょう。
とある「シチュエーション」… つまり私たちが目の前にある「状況」を目で見て認識します。
ワイングラスに半分入った水の「状況」を見てあなたはどう思いますか?
ある人から見たらまぁまぁ水が入っていると思いますし、別の人から見たら不十分だと思うかもしれません。この「認識の違い」がとても重要なのです。この「状況」を「conceptual content」と呼び、人々がそれを見ることでイメージして「construal」(概念という意味です)を形成することができます。
しかしここから人々に伝えるための言語はどうすればのでしょうか?もし話し言葉や書き言葉で伝えるとき、「ワイングラスにまぁまぁ水が入っています」「ワイングラスには水が不十分だけど入っている」というかもしれないでしょう。文章ではより正確な描写が出てきません。
そこで手話表現だとより正確に水が入っている描写を表現できます。この描写をconceptualization(概念化)と言います。手話による概念化(簡単に言えば表現方法)は大きく分けて三種類(semiotic mode)ありPlain form,Indicating form, Depictive form,となります(手話表現による描写の例はここの動画リンクをクリックしてください)
このsemiotic modeについて基本的な分析のコンセプトを学んでいきます。例えばASLでは実際の木からイメージして手話を作り出しますね。木というシンボルから手話を概念化するのをiconicと言います。これは描写がなく特徴も何もない概念化された「TREE」の手話です。この時ASLによる「TREE」の表現は掌を振っていますが、実際に「TREE」はそこまで激しく揺れていますか?実際にはそこまで揺れていない木もあるならば手を振らないでそのまま停止することもできますがほとんどの人はそれを「TREE」と認識しないでしょう。このように手話表現はそのシンボルの通りですが理由や影響を受けて手話が形成されます。このことをiconic motivateと呼びます。
このiconic motivateにはより描写を表現するかそうでないか(foreground or background)の2種類があり私たち認知言語学者はその分析に気をつけなければなりません。
話は少し戻りこの描写表現(depiction form)はよりカテコライズ化され、「VP-internal」と「VP-external」と大きく二つ分けられていきます。「VP-internal」は主に手話表現者が登場人物になりきって、登場人物の視線や経験、顔の表情を演じながらdepictive formの手話を表現をします。その時のsigning space(手話の範囲)は自分を取り込み、自分の視界全体に適用されます。例として魚が泳いでいる姿を自分に例えると、自分が魚の目線になり「泳ぐ」という手話を繰り出す。この概念化がdepictive formでありVP-internalなのです。
一方、「VP-external」はsigning space(手話の範囲)は自分の手の範囲だけであり、自分の視点ではなく第三者の目線として手話表現をすることです。例として魚が泳ぐのを、手で魚の手話を表現をする。この時、手の範囲だけdepictive formになります。ここまでが手話による認知言語学の基礎理論と分析方法です。
この手話言語による認知言語学のアプローチは人々が話している手話言語はより描写的であること、そして言語学者から見れば様々な手話言語は全ての人が持つ認知能力に基づいてどのように表現できるのか、その定説や根拠を証明できるのです。実際に手話による認知言語はかなり昔からアプローチをしており、現在も本大学の教授や博士たちが研究しており新しい理論を唱えております。
このような初歩的なdepictive dformの理論と分析を繰り返しながら日々勉学に勤しんでいます。
写真は中間試験を終え、ギャロデット大学の日本人聾者たちと集まってお食事に行ったワンシーンです。
第2期生:高山亨太様 第16期生:皆川愛様
第18期生:鈴木美彩様
写真掲載のご協力をありがとうございました。
日本の秋はどのようにお過ごしでしょうか?
こちらはギャロデット大学院の中間試験を終えて、一息ついております。しかしまだまだ学ぶことはたくさんありますので休憩できる時間はあまりなさそうだなぁと思いました。また大学では秋のイベントがたくさんあり、ハロウィーンのイベントが特に盛り上がりましたね。私が住んでいる家の周りも子供たちがたくさんお菓子を集めるために駆け回っております。
さて、今回のブログの記事は、私が現在受講している「Cognitive Linguistics」について説明したいと思います。和訳すると...認知言語学です。認知とは一体なんなのかというと説明がかなり難しいですね...(笑)
全ての人々は物事を認識する能力が備わっており、その能力は主に自分がこれまで経験したこと、実際に見た世界によって培われていきます。しかしその認識能力を使い、相手にどのように表現するか?手話で表現するのと、話し言葉で表現するのと違いは何か?そして言語学者はその認識能力から生まれた言語をどのように分析するのか?これらが本クラスの基本的な学習内容です。
ここで例を見せましょう。
とある「シチュエーション」… つまり私たちが目の前にある「状況」を目で見て認識します。
ワイングラスに半分入った水の「状況」を見てあなたはどう思いますか?
ある人から見たらまぁまぁ水が入っていると思いますし、別の人から見たら不十分だと思うかもしれません。この「認識の違い」がとても重要なのです。この「状況」を「conceptual content」と呼び、人々がそれを見ることでイメージして「construal」(概念という意味です)を形成することができます。
しかしここから人々に伝えるための言語はどうすればのでしょうか?もし話し言葉や書き言葉で伝えるとき、「ワイングラスにまぁまぁ水が入っています」「ワイングラスには水が不十分だけど入っている」というかもしれないでしょう。文章ではより正確な描写が出てきません。
そこで手話表現だとより正確に水が入っている描写を表現できます。この描写をconceptualization(概念化)と言います。手話による概念化(簡単に言えば表現方法)は大きく分けて三種類(semiotic mode)ありPlain form,Indicating form, Depictive form,となります(手話表現による描写の例はここの動画リンクをクリックしてください)
このsemiotic modeについて基本的な分析のコンセプトを学んでいきます。例えばASLでは実際の木からイメージして手話を作り出しますね。木というシンボルから手話を概念化するのをiconicと言います。これは描写がなく特徴も何もない概念化された「TREE」の手話です。この時ASLによる「TREE」の表現は掌を振っていますが、実際に「TREE」はそこまで激しく揺れていますか?実際にはそこまで揺れていない木もあるならば手を振らないでそのまま停止することもできますがほとんどの人はそれを「TREE」と認識しないでしょう。このように手話表現はそのシンボルの通りですが理由や影響を受けて手話が形成されます。このことをiconic motivateと呼びます。
このiconic motivateにはより描写を表現するかそうでないか(foreground or background)の2種類があり私たち認知言語学者はその分析に気をつけなければなりません。
話は少し戻りこの描写表現(depiction form)はよりカテコライズ化され、「VP-internal」と「VP-external」と大きく二つ分けられていきます。「VP-internal」は主に手話表現者が登場人物になりきって、登場人物の視線や経験、顔の表情を演じながらdepictive formの手話を表現をします。その時のsigning space(手話の範囲)は自分を取り込み、自分の視界全体に適用されます。例として魚が泳いでいる姿を自分に例えると、自分が魚の目線になり「泳ぐ」という手話を繰り出す。この概念化がdepictive formでありVP-internalなのです。
一方、「VP-external」はsigning space(手話の範囲)は自分の手の範囲だけであり、自分の視点ではなく第三者の目線として手話表現をすることです。例として魚が泳ぐのを、手で魚の手話を表現をする。この時、手の範囲だけdepictive formになります。ここまでが手話による認知言語学の基礎理論と分析方法です。
この手話言語による認知言語学のアプローチは人々が話している手話言語はより描写的であること、そして言語学者から見れば様々な手話言語は全ての人が持つ認知能力に基づいてどのように表現できるのか、その定説や根拠を証明できるのです。実際に手話による認知言語はかなり昔からアプローチをしており、現在も本大学の教授や博士たちが研究しており新しい理論を唱えております。
このような初歩的なdepictive dformの理論と分析を繰り返しながら日々勉学に勤しんでいます。
写真は中間試験を終え、ギャロデット大学の日本人聾者たちと集まってお食事に行ったワンシーンです。
第2期生:高山亨太様 第16期生:皆川愛様
第18期生:鈴木美彩様
写真掲載のご協力をありがとうございました。