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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
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2022年9月 第18期生 鈴木美彩 生活記録[2022年10月08日(Sat)]
2022年9月 第18期生 鈴木美彩 生活記録
言語学とは?-音韻論-

↓動画はコチラから↓
https://www.instagram.com/reel/CkCkiCDg5G7/?utm_source=ig_web_copy_link
https://youtu.be/GBTPrAEZ8GU


こんにちは、鈴木です。
初学期が始まって早1ヶ月です。

私生活も学業もてんやわんやの状態が続きましたが、ありがたいことに今日も健康体で過ごしております。

さて、今回は ”言語学とは何か” という話をしたいと思います。

現在、私は3つの授業を取っています。

Dr. Deanna Gagne による Phonology (音韻論)
Dr. Deborah Pichler による Generative Linguistics (生成言語学)
Dr. Paul Dudis による Cognitive Linguistics (認知言語学)

どの先生方も素晴らしく優しくて友好的です。

すべての授業において、言語学とは何かという導入から始まりました。

Dr. Deanna Gagne による Phonology、音韻論 では言語の最小のレベルである音について学びます。

言語を分解していくと文法レベルから語彙レベル、そして音のレベルと小さく分けていくことができます。これが言語で最小の単位です。手話にも音があり、手形・場所・動きの3要素は有名です。

人間が日常的に使っている日本手話や日本語、アメリカ手話、英語などが言語であると言えるのは、最小の単位に分解できることが大きな意味を持っているからです。

世の中には様々なコミュニケーションが存在し、情報を送ったり受け取ったりするのは人間だけではありません。遠く離れたエサの位置を教えるミツバチの8の字ダンスや擬態や威嚇に役立つイカの模様七変化などは明確な意味を持ち、それを他者に伝えています。

しかし、コミュニケーションがあるだけでは言語とは言えません。言語だけが持っている要素を見つけ、それを研究することで言語の本質を追求するのです。だから、世界中の言語が持つ重要な要素の一つである音素を音韻論では研究します。

まず、私たち言語学修士課程の1年生は、この授業で音声言語すなわち英語の音から学び始めます。英語を話している様子を観察すると、表面的には唇が動いているだけですが、MRIを通して見てみると唇のみならず口腔内の舌や声帯などありとあらゆる筋肉が総動員していることがわかります。初めてその様子を動画で見たときは、まるでびっくり人間のスゴ技を見たような気分でした。

Dr. Deanna GagneがMRIの動画を見せる前、私たち学生に対して以下のように念を押していたのが印象強く残っています。

「これから見せるものはろうコミュニティで育った人間にトラウマを思い出させるリスクがあります。ですが、私たちは発音方法を学ぶのではなく、驚くほど模様が目まぐるしく変わるイカの皮膚模様を研究するように、英語話者がその驚くべき身体能力をもっていかに発音しているかに着目し、あくまでも言語としての音を見るのです。決して口話教育の過ちを繰り返したいわけではありません。」

言語学に対する面白さを存分に語りながらも、ろうコミュニティへの敬意を忘れないその姿勢に感銘を受けました。

1ヶ月が経った現在は、手話の音について音声言語の音素から発想を得たストーキーの記述法を学んでいるところです。
Posted by 鈴木 at 01:19 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
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