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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2022年5月生活記録 【第16期生 大西 啓人】[2022年06月07日(Tue)]


※手話内容はブログ記事と同様です。
※日本語字幕はついていません。

皆さん、こんにちは。この場を借りて皆さんに報告したいことがあります。

先日、2022年5月13日(金)をもって、ギャロデット大学大学院ろう教育修士課程を修了することができました。「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の下、日本財団や日本ASL協会をはじめ、様々な方々の応援があったおかげです。文化や言語の違いにかなり苦労しましたが、ギャロデット大学院で学んだ知識や経験はこれから日本に還元していく予定です。引き続きご応援いただけたら嬉しいです。

Photo May 15, 12 06 33.jpg

二年前、留学を決意した大きな理由の一つは自分に自信がないことでした。大学四年間、英語教育や特別支援教育を学んできましたが、「このまま先生として、教壇に立ってもいいのか」「自分の中身が空っぽで子どもたちに何を伝えられるのか」と大学卒業に近づくにつれ、悩みが大きくなり、更なる学びと研究を求めて留学を決意しました。

二年間の留学生活を経て、帰国した今では、自分に対し、自信が持てるようになりました。理論に基づいた説明ができる知識を得て、ろう教育やバイリンガル教育における専門性が更に深められたと自負しています。
実際にこの二年間、私は以下のテーマを学んできました。

・ろう教育(手話、多様性、ろう文化など)
・リテラシー教育(読むこと、書くこと)
・バイリンガル教育(手話言語と書記言語)
・言語獲得理論や第二言語習得理論 など

基本的には議論や研究を重ねて、ろう教育を中心に学びました。研究では、「ろう生徒のための英語教育と英語教材」をテーマにリテラシー教育やバイリンガル教育、第二言語習得理論などに焦点を当てて探究してきました。

ここで、たくさんの経験を通して多くの知識を得たので、これからどんなことを頑張っていきたいのか簡単に述べていこうと思います。日本に帰国してから頑張りたいことは大きく分けて2つあります。

・ろう生徒のための英語教育を確立し、日本における英語教育の質を高めたい。
・日本にろう教育やバイリンガル教育に関する知識や理解を広めたい。

《ろう生徒のための英語教育》
アメリカで学んだことを踏まえて、日本のろう生徒に適した英語教育を考え、できるだけ多くのろう生徒に提供できるように活動するつもりです。これだけではなく、教室内指導の他にろう学校勤務の英語教師とお互い切磋琢磨できる関係を築き、一緒に英語教育の質を高めていけるように目指したいです。多くの英語教師と一緒にろう生徒のための英語教育について議論する機会が今から楽しみです。

大学院では「第二言語習得における困難や問題がどのように学習を妨げているのか」「どのように言語獲得や言語習得がなされるのか」「何を基に認知能力が向上されるのか」「第一言語の存在がどのように第二言語の習得に影響を与えるのか」などといった様々な視点から研究、考察を重ねて勉強してきました。この経験を英語教育や教材に活かせられるように少しずつ発展していけたらと思っています。

《ろう教育やバイリンガル教育の普及》
現状から述べると、日本におけるろう学校のほとんどは、日本手話ではなく日本語対応手話が中心になっており、日本語対応手話と声を同時に使うトータルコミュニケーション法を主流としているろう学校もあると聞きます。これも一つの教育法ですが、ろう児童生徒に適したバイリンガル教育として成り立つことはないのです。

また、トータルコミュニケーション法や日本語対応手話によって、ろう児が高度な日本語力や社会人基礎力などが身につけられると考える人もいます。これはろう教育として正しいとはいえないです。この教育法で大学進学や大手企業への就職など達成できたろう児童生徒はいるかもしれません。しかし全てのろう児童生徒に有効ではないのです。日本手話はろう児にとって自然な言語であり、全てのろう児のためにろう教育に日本手話が必要なのです。また、ろう教育学では手話言語から書記言語を学ぶことができ、正確なバイリンガル教育をもって高度な言語レベルまで発達できると証明されています。(この理論から日本手話から日本語を学ぶことも可能と考えられるということです。)

ここで私が思う、現状における一番懸念する点は上記のように日本手話の重要性やろう教育、バイリンガル教育に関する知識が乏しい例が多いことです。私は教員や教職員、教育委員会などの教育者なら、なぜろう児童生徒に日本手話が必要なのかバイリンガル教育がなぜろう児童生徒に適した教育なのか、理論上から理解するべきだと思っています。ろう児童生徒に適した教育を議論したり考察したりするには、理論に基づくろう教育やバイリンガル教育を理解してから行うことが必要であるということです。

そのように理論上から正しく理解するために、教員だけではなくろう教育に関わる多くの教育者(ろうコミュニティを形成する成人ろう者、医療関係者、言語聴覚士などの専門家など)が一丸となって議論したり実践したりできる機会をもっと設ける必要があるでしょう。ここ数年でバイリンガル教育を取り入れる活動を続けて、頑張っているろう学校を何校か見かけるので、その動きに貢献、促進できるように教職員などの教育者、ろう児童生徒をもつ保護者、これから教員を目指す学生、多くの人々に宛てたろう教育やバイリンガル教育の普及を目指していきたいです。

最後に、アメリカ生活を経て、大学院を修了できましたが、私はまだまだ「日本財団聴覚障害者海外奨学生」として責任があることを肝に銘じ、先輩方に恥じないように日本への還元を目指して活動を続けていきます。今までご応援してくださった方ありがとうございました。またこれからも引き続きご応援してもらえたら嬉しいです。

《ろう教育に関わる皆様へ》
教育現場、日本のろう教育において、私は新参者ですが、アメリカで学んだことをできるだけ多く還元できるように活動していきます。今後ともご指導ご教鞭のほどよろしくお願いします。

第16期生
大西
Posted by 大西 at 19:22 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
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