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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2022年3月生活記録【第16期生 大西啓人】[2022年04月07日(Thu)]
皆さん、こんにちは。私は相変わらず元気ですが、修論の締め切りが迫っており、焦っているこの頃です。先日、アメリカではギャロデット大学をはじめ、色んなところで桜が満開となりました。投稿日の時点ではもう満開期は終わってしまいましたが、とてもきれいでした。そろそろ日本も桜が満開になる頃でしょうか?

今回はろう児を持つ聴親に向けて、発信したい情報を持ってきました。「家庭における言語発達」「学校における言語発達」および「家庭と学校間のつながりの重要性」について話したいと思います。

まず家庭における言語発達ですが、これは全ての子どもにとって、言語の基礎を固めるための重要な役割を果たしています。家庭で見られる言語発達は主に「読書(Reading book)」「遊び(Playing)」「食事時間(Meal time)」で大きく貢献されます。


読書(Reading book)

ここでよく見られるのは、親による読み聞かせだと思います。実は読み聞かせの際に見られるアプローチが2種類あるのです。それは、“Immediate talk※”と“Non-immediate talk※”というものです。※専門用語(日本語)が分からず英語表示になります。

読書は子どもの言語発達において重要な役割を果たしており、ここ数十年において研究者によって、読書は子どもの早い段階でのリテラシー能力、学校での学術的な成功、心情的成長に大きく関係していると証明されています。

“Immediate Talk”とは、読み聞かせの際に使用している絵本や本、もしくは小説などに出てくる登場人物やストーリー、言葉を用いてコミュニケーションをとることを指します。つまりこの対話は本に書いてあるイラストや言葉を使って会話し、言語発達の向上を図るものです。さらに目の前に情報があるため、すぐ認識でき、即時に概念と言葉を結びつくことができる面から、子どもの言語発達の初歩的な段階になります

例:桃太郎
親「川から流れてきたこれはなーんだ?」
子「もも!おいしそう!」

例:算数に関連する絵本
親「ここにあるりんごは何個あるかな?」
子「ひぃ、ふぅ、みぃ…3個!」

続いて、“Non-immediate Talk”とは、上記に述べた即時的な対話ではなく、さらに応用した対話になります。ある研究によると、一般的に3~5歳対象の読み聞かせにあたって、11%~18%の確率でこの対話が見られるとされています。これは、本に書かれているイラストや言葉を基に、子どもの個人経験、一般知識、推論や予測に関する質問や言及など、現実の世界とつなげる対話と定義されています。つまり本に書かれているイラストや言葉を使って、子どもの意識を本の外へ広がっていく対話方法になります。経験や知識といった概念について対話することが多いため、認知力が求められ、即時的なものより高度なものとなっています。

例:浦島太郎
親「浦島太郎はなぜカメを助けたんだろう?」
子「カメがいじめられてかわいそうだ。」
親「そうだね。いじめるのはいけないことだよ。もし〇〇がいじめを見たら、浦島太郎みたいに止めるんだよ。」

つまり、多くの家庭は読書において、このような2つのアプローチがなされて、子どもの言語発達を大きく貢献しているのです。最初に本に書かれている情報や概念を学んだ後に、本の外へ広がりながら親とのコミュニケーションを経て、子どもは認知力などの高次な能力を身につけていくのです。

遊び(Playing)

これも上に述べた読書と類似しています。子どもの遊びにも言語発達に大きく貢献できている要素があります。家庭でよく見られるのはおもちゃを使った遊びだと思います。車のおもちゃを使ってコロコロ動かす遊びなどがありますね。子どもがおもちゃを使って想像しながら遊ぶことを“Pretend play※”と言いますが、一般的にこの遊びは言語発達だけではなく、社交性や想像力の向上にも発揮します。
ここで注目したい点は親も一緒に遊ぶことです。親は一緒に遊びながら子どもと対話しながら言語発達を貢献することができます。アプローチが3種類紹介します。

まず“Pretend Talk”というものですが、これは親と子どもがいる環境にあるおもちゃを即時に使用しながら想像力を働かせて対話することです。
例:家を組み立てる
子「煙突はどこに置いたらいいの?」
親「煙突?家に付けたいの?なんで?」
子「もしサンタが来たら入れるようにするんだ!ドアはここかな?」
親「なるほど!じゃあ煙突は屋根の上かな?ドアは家の前がいいね。」

続いて、即時に使用できるおもちゃを使って、文字を学ぶリテラシー的な対話を“Non-Pretend Talk”というものがあります。ここは文字だけではなく数字や概念でも該当されます。リテラシー能力につながるもの全部、該当されるでしょう。
例:
子「今から車使って遊ぼう!」
親「車を使って遊ぶの?どんな車が好き?」
子「えっとね。これかな!あお?」
親「そう。青。他にも車が2つあるね!この色は?」
子「あか…きいろ?…僕はあおが好き!」
親「3つの車は、青い、赤いと黄色いだね。青がいいの?」

最後に、「遊び」で見られるアプローチで一番高度なものが”Non-toy play talk“というものです。これは親や子どもがいる環境にあるおもちゃを使わず、子供の個人経験などにつなげながら、親と会話することです。ここでは、経験や知識を共有するときに見られますね。
例:
親「ビー玉って何から作ってるの知ってる?」
子「知らない!ダイヤモンド?」
親「残念!ガラスから作られてるんだよ。ダイヤモンドってどういうものがあるかな?」
子「そういえば先生が指につけてたよ!リング?」
親「うん!それは指輪だね!他は?」
子「母さん前に首にかけてた。」
親「よく見てるね!そう。ネックレス。ダイヤモンドを使ってるね。」

「親との遊び」にも言語発達だけではなく、知識や経験の増加、想像力の向上など社会的作用もあります。想像力を働かせて遊ぶことから始まり、様々な視点を持てるようになります。様々な視点を持つことは言語発達にもつながりますね。

食事時間(Meal Time)

読み聞かせや遊びだけではなく、食事中にも言語発達に貢献できます。食事時での会話にも言語発達に貢献するためのアプローチが隠されています。重要とされている要素は“Narrative talk※”と“Explanatory talk※”が見られる場面です。

“Narrative talk”は簡単というと、子どもが学校や遊びで経験してきたことを、“物語”として親に何回も話す様子を指します。ここは子どもにとって、頭の中にある理解した内容を上手く言語化させる、内容を話して何が言いたいのか明瞭化することを練習する場でもあります。

次に“Explanatory talk”ですが、Beals(1993)によると、「対象物、出来事、概念、結果などの間に論理的つながりを求める、もしくは作る対話」と定義されています。例えば、以下のものがあります。
例:
親「ゆっくり食べなさい。のど詰まるよ!」
子「わかったよ〜…ゆっくり食べる。」

例:
子「母さん、どんなアレルギーを持ってるの?」
親「ピーナッツだよ。もしピーナッツを食べると危ないことになるんだよ。」
子「ひえぇ。僕にもアレルギーがあるの?」
親「いいえ。あなたは持っていないわ。でも私はピーナッツがダメだから一緒に気をつけようね。」
子「わかった!ピーナッツ味のパンを渡さないようにする…!」

このように、食事時間は2つのアプローチがあり、“Navarrative talk”には、言語発達の向上が見られ、“Explanatory talk”には、予想や理由をもって、理解力を育むとされています。

まとめ

以上になりますが、「家庭における言語発達」について理解できましたでしょうか?家庭でも学校でも言語発達を貢献することができますが、それぞれ役割は異なります。家庭では、読み聞かせや遊び、食事時間を通して、基本的な語彙力、リテラシー能力に注目することが多いです。それだけではなく、認識力、想像力や理解力などを基本的な能力として幅広く身につけることができます。こうした言語発達を、教育学研究では"Home language"という英語表示を用いて表しています。日本語でいうと「家庭言語」といったところでしょうか。
まとめると、親は家庭言語において、語彙力、リテラシー能力を特に注目し、認識力、想像力、理解力も意識しながら子どもとコミュニケーションをとるといいでしょう。もちろん使う言語は音声言語でも手話言語でも書記言語でも全て同様に作用されます。ろう児の場合は手話言語が一番効果的です。読み聞かせでは手話を用いて、視覚的に分かりやすい絵本を使う、遊びでは親とのコミュニケーションは手話で行い、目を合わせて会話する、食事時間も手話でコミュニケーションをとって、様々なテーマで話し合うと効果が見られるでしょう。

また、ろう児をもつ聴親の皆さんは自分の手話力に自信がない人が多いと思います。私の親もそうでした。それでも手話で話しかけてくれたことで、私はここまで成長できました。一緒に本を読む、一緒に遊ぶ、一緒に食べるといった日常生活の中で過ごしながら、簡単な手話でもいいのでろう児とコミュニケーションをとってみてください。ろう児とのコミュニケーションを通して自然と手話力は上がりますし、最初は“Immediate talk”や“pretend talk” “Narrative talk”のように初歩的なレベルから始めるべきなので高度な手話力は求められません。皆さんのろう児が年を重ねていく度に手話力を向上すると共に少しずつ教えられる内容をより高度なもの、幅広いものにしていくといいと思います。

最後に、この「家庭言語」は家庭で見られる言語発達を指しており、家庭でしか見られないわけではありません。読み聞かせも遊びも食事時間における言語発達は家庭のみならず、学校や地域、様々な場面でも効果があります。つまり、もし両親が家庭でできる言語発達におけるアプローチは何かと聞かれたら、上記のように「家庭言語」として答えます。

さて、「家庭における言語発達」について熱くなってしまいましたね。ここまで長くなってなりましたので、「学校における言語発達」や「家庭と学校のつながりの重要性」についてはまた来月、言及していきたいと思います。
ここまで読んでくださりありがとうございます。

第16期生
大西

【参考文献】
Dickinson, D. K., & Tabors, P. O. (2001). Beginning literacy with language: Young children learning at home and school. Paul H Brookes Publishing. https://psycnet.apa.org/record/2001-06306-000
Posted by 大西 at 07:47 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
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