2021年2月生活記録【第16期生 大西啓人】[2021年03月07日(Sun)]
皆さんこんにちは!
1月ブログでお会いしたのに、もう次の報告です。1ヶ月があっという間に過ぎましたね!
コロナ感染について、アメリカでは予防接種を受けられるようになったと前回お話しました。全州が予防接種を受けるための電子登録フォームを開設したので、早速メリーランド州のフォームで登録してみました!予約できるようになると「予約可能」とメールで連絡が来るそうです。医療関係者、政治関係者、高齢者など優先順位が色々あるのでいつ受けられるかはわからないですが、待ってみようと思います。
さて今回のテーマは「多文化教育」で、特にLGBTQについて、述べようと思います。私は1月から始まった春学期で「様々な学習者のための家庭と学校、コミュニティの共同」という授業を学んでいます。ここで質問です。“様々な学習者”といわれて、あなたはどんな人を思い浮かべますか?
重複障害?
学習障害(LD)?
注意欠陥多動性障害(ADHD)?
などなど様々ありますね。その中に「LGBTQ」も含まれています。アメリカではこれ以外にも、反人種差別者、移民で第一言語が英語ではない英語学習者、宗教の違いによる反宗教差別者などもいます。日本にずっといた私は人種差別、英語学習者などに馴染みがないため、授業中の議論で他の院生の経験や視点から新たな知見を得ることができました。
教室や学校において、LGBTQやジェンダーに悩みを持つ児童生徒がどんな環境に置かれているのでしょうか?一例を紹介します。
@イリノイ州では2013年に同性結婚が認められたにも関わらず、あるジェンダー高校生がスカートを履いていることに嫌悪感をもった他の生徒は、そのジェンダー生徒が公共バスに乗っているとき、スカートに火をつけて大火傷を負わせた。
A帽子やフードを外す原則がある学校内で、小1のジェンダー児童が昨夜髪型をポニーテールにしたけれど、朝に元に戻す時間がなくて、フードで隠したため、からかわれることが嫌で外すことを拒否した。
B高校生のジェンダー生徒は校長に「学校にスカートを履いて登校したらどう思うか?」と相談し、たくさんの友達を失う、親など大人が怒るなどの二次影響があるかもしれないと言われたが、それでもドレスアップして登校した。しかしその生徒はクラスメイトからグループワークや宿題などを一緒にしたくないといじめられ、最終的には理解のない教師から教室を出ていくように言われた。
このような問題はどの教室でもどの学校でも起こる可能性があります。もしあなたのクラスにLGBTQ当事者がいた場合、どのように対応しますか?アメリカで実際に活動しているケースを以下に載せます。
・幼稚部や小学低学年など早い段階で、子どものおもちゃを用い、「男子のおもちゃ、女子のおもちゃとなぜ分けるのか」「男子が女子のおもちゃを使って遊ぶのはおかしいことか」と児童たちに考える機会を与える。幼稚部など早い段階でジェンダーについて理解できたら、ジェンダーに対する偏見を持たずに成長できるからである。
・LGBTQで悩んでいる児童生徒やLGBTQで生きると決めた児童生徒と一緒に授業を計画する。日本でいう「総合的な学習の時間」のような授業で当事者から様々なことを説明する機会を与え、自分に自信を持つことができるように促す。
・教師やサポートスタッフ(学生教師、学校補佐官、事務員など)を集め、緊急会議を開き、学生の権利について話し合う。権利の不可侵における重要性を理解するために機会を設け、理解するだけではなく今後の影響や対応について協議する。また教育者が共通認識を持つことで、指導に一貫性が生まれ、他の児童生徒にも同じ認識へと導くことができるようにする。
こうして様々なケースについて書かれた本や記事を読んで、私は改めてLGBTQ当事者に負担を感じさせないために教室環境や学校環境を整える必要があると感じました。そして人の興味や愛、アイデンティティには決まった形はなく、男として生まれてきたから心や行動は男らしくいなければならないといった固定概念をなくすためにも幼少期かや小学校など早い段階でジェンダーについて考える機会を作る考え方に賛成です。人と違うことを恥ずべきではなく、「個々の”違い”とはそれぞれの個性である」「性別関係なく人として尊重するべき」といったことを全ての児童生徒は早い段階から知るべきです。ただ注意点として、もしLGBTQ当事者がいたらさらけ出すべき!暴露するべき!というわけではないことです。LGBTQ当事者がこれからどうしたいかを決めるのは本人なので、教師から強制するべきではないということです。私たち教師ができることは性別関係なく人として尊重するべきだと児童生徒に認識させることであり、そのために最善かつ効果的な環境作りに向けて、LGBTQ当事者から話を聞いたり、今後の対応について教育者同士で協議することだと考えます。
日本ではLGBTQへの理解が世界と比べて遅く、公表している人はまだ少ないです。 日本社会の特に高い年代の方にはまだ男性は社会で働き、女性は男性を支え家庭を守るといった昔からの考え方が残っています。男性のあるべき姿、女性のあるべき姿に固定概念があり、その慣習がLGBTQを公表しにくい弊害となっているのかもしれません。男女が結婚したら夫側の名字を名乗る、日本の家庭における主婦や家事に対する認識、同性愛への理解が少ないなどといった沢山の慣習が、よりマイノリティであると強調される要因となっているのではないでしょうか。 こうした昔から根強く残っている固定概念を変える事は簡単ではないですが、時代の変化に応えて少しずつ人々の意識を改めていくことが必要だと考えます。
そして私たち教師は教室に“様々な学習者”がいることを忘れずに一人一人の背景やニーズを正確に把握する必要があります。これから世界はグローバル化され、日本にもLD、ADHDやLGBTQだけではなく、国際化による人種差別で困っている児童生徒や日本語が困難で学習に困っている児童生徒に対し、より細やかな対応が必要になってきます。私たち教育者は様々な学習者のために教室内指導と児童生徒対応を的確で柔軟的に変更できる体制を整えていかなければならないでしょう。
今回はLGBTQに重点をおきましたが、他の様々なニーズをもった児童生徒がいることを忘れずに勉学を励み、将来活かせるようにしたいと思います。 最後まで読んでいただきありがとうございます。
【参考文献】
・wayne au, Rethinking multicutural education:teaching for racial and cultural justice, https://rethinkingschools.org/books/rethinking-multicultural-education-2nd-edition/
・Annika Butler-Wall, Rethinking sexism, gender, and sexuality, https://rethinkingschools.org/books/rethinking-sexism-gender-and-sexuality/
大西 啓人
M.A. Deaf Education Studies Gallaudet University