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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2021年1月生活記録【第16期生 皆川愛】[2021年02月07日(Sun)]
2年にわたる修士課程の学業生活も最終学期を迎えました。
ろう者学の大学院はどんなことを勉強するの?とよく聞かれるので、
ギャロデット大学の修士課程に限局してしまいますが、授業内容を紹介したいと思います。

カチンコ動画はこちらより


@ろう者学の学位プログラム
ろう者学の正規学位プログラムが設置されたのは1981年のボストン大学に始まり、
カリフォルニア州立大学ノールリッジ校(CSUN)、英国のブリストル大学などにわたります。
ギャロデット大学がろう者学の学術プログラムを開始したのは1994年で、2001年には修士号が設置されました。
スライド1.jpeg

現在、ボストン大学とCSUNは学士号の提供のみ、ブリストル大学は2013年にカリキュラム廃止されています。

Aギャロデット大学ろう者学修士課程の専攻

2021年現時点で、ギャロデット大学の修士課程ろう者学部は以下の3つの専攻があります。
※以下の情報は今後変更があることを承知の上、読んでください。

文化学研究(Cultural studies)
文化学研究(カルチュラルスタディーズ)は単なる学問領域ではなく、
政治、歴史、哲学、文学、アドボカシー、様々な学問、スキルを網羅する多学際的な学術領域です。
世界を批判的に捉え、「ろう」の意味とは何かの探究を通じて、新しい知識を創生し、ろう者学、そして、社会に貢献します。

言語と人権(Language and human rights)
グローバルの視点で人権とそれにまつわる政策や制度を吟味し、
それらがろう者にどう適用できるのか、特に言語権、アクセシビリティについて追究します。
どのように政策に働きかけるべきか学び、力をつけ、未来のろう者の言語権を擁護します。

早期言語獲得アドボカシー(Early intervention)
ろう児とその家族が辿っていく旅路をサポートします。
ろう児に資格言語へのアクセスが与えられるように、
医学モデルに基づく早期発見・早期介入のシステムへ対抗できる変革を目指します。

スライド2.jpeg


Bギャロデット大学ろう者学修士課程文化学専攻の授業科目
私は文化学研究を専攻しており、2年間の授業科目は以下です。
※授業名と概要は皆川による拙訳です。

研究法
・DST700(ろう者学研究法T):研究疑問の設立から研究デザインの設計方法、またろうコミュニティを対象にした研究での倫理について学びます。
・DST701(ろう者学研究法U):Tで学んだことをもとに自身で研究疑問を立て、倫理審査や助成金確保に向けて、計画書作成を行います。

ろう者学と障害学の諸理論
・DST703(ろう文化学研究):カルチュラルスタディーズの視座に基づいて、ろう者学の諸理論に触れ、ろうのアイデンティティ、権力、文化について多学際的視点から学びます。
・DST705(言語、文化、権力):言語の消滅危機とその活性化の方略について、言語的マイノリティが直面する問題を追究します。文化や権力について学び、手話のイデオロギーについて古典時代に遡り19世紀までに手話やろうについて影響を与えた哲学的、言語的ディスコースを探リマス。
・DST712(正常化への挑戦:ろう者学と障害学):正常化(ノーマルシー)や障害、聴覚障害という分類がなぜ生まれたのか、主に19から20世紀のろう教育の情勢に鑑みてフーコーやブルデューらの権力の探究を行い、ろうコミュニティの行く末と今後について考察します。
・DST733(ろう者学におけるアイデンティティと理論):ろうアイデンティティ構築に関わる諸理論を学ぶ。マルクス理論、ブルデューの権力論、ポストコロニアリズム、構造主義などを学び、ろうを取り巻く社会構造を批判的に吟味する力を養います。
・DST 735(感覚学研究):人間の感覚経験は、単に感覚器官の機能に依拠するよりは、文化的経験に大きく左右されています。人々の多元的かつ、区分不可能な感覚経験を明文化し、その文脈で文化の意味を考察します。

ろうの歴史
・HIS731(アメリカろうコミュニティの歴史):主に米国ろうコミュニティの歴史を当時の社会、政治的文脈に沿って学び、「ろう」がどのように言説化されてきたのかを探ります。

ろうコミュニティの実践アプローチ
・DST710(ろうコミュニティでの文学):伝統的に文字や音声で継承されてきた文学の世界において、手話の文学のあり方を実際の媒体に触れて分析します。  
・DST737(ろうコミュニティを取り巻く法律と公共政策)
・DST743(ろうコミュニティにおける言語アドボカシー):手話の言語権擁護に向けて、現状を整理し、どのような政策立案や機関レベルでの支援ができるのかを学びます。

修士プロジェクト
DST780(修士プロジェクトT)・DST781(修士プロジェクトU):2年間の集大成として、研究プロジェクトに実際に取り掛かります。伝統的な修士論文のみならず、個々による創造的プロジェクト、アドボカシー実践など形式は自由ですが、文化学研究は修士論文となります。

インターンシップ
DST790(ろう者学実習):自分の専門分野やキャリアに応じて、インターンシップを行います。
具体的には、授業での第二教員やティーチングアシスタント、研究室の院生助手、
NPOや教育機関やろう者団体で一職員として働くなど、様々な選択肢があります。

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自主学習
学生が自分の希望する研究や学習テーマを担当希望教授と相談し、
単位履修科目として承認されれば、授業として実施することができます。
私は自主学習で、クシャルナガル先生による学部でのろう健康格差の授業でのティーチングアシスタントと個別課題、
モリアーティ先生によるアジアろうコミュニティでの言語人類学の授業の二つを履修しました。

以下のような人にはおすすめです。
・ろうを取り巻く問題や現象について言語化できるようにしたい
・学びを自分で消化し、アドボカシースキルに役立てることができる
 (専門職養成課程ではないので、即実践の知識を習得するとは限らない)
・理論や研究法に強くなりたい
・過去の専攻は基本問わない
世の中に疑問を持っている人、ぜひ!社会をいろんな理論メガネで吟味し、批判する学問です。
Posted by 皆川 at 22:44 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
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