CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
« 2020年5月生活記録【第13期生 山田茉侑】 | Main | 2020年5月生活記録【第16期生 皆川愛】 »
2006/4/28ブログ開設時からのアクセス数
UL5キャッシング
最新記事
カテゴリアーカイブ
リンク集
最新コメント
月別アーカイブ
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/index2_0.xml
2020年5月生活記録【第13期生 橋本重人】[2020年06月08日(Mon)]
こんにちは、13期生の橋本です。新型コロナウィルスの新規感染者数が以前と比べて減ってきているようですが、まだまだ安心できないですね。こちらも買い出しとジョギング以外は自粛しています。

さて、3年間書き続けてきた生活記録も今回で最後です。まずご報告があります。2020年5月に無事ギャロデット大学を卒業しました。本当に緑豊かなところで2年間学ぶことができたなぁとしみじみ思っています。
IMG-3264.JPG

昨年度の春学期から続けてきた学生自主研究の研究発表と論文作成を、期限日までに終了することができました。「ろう発達障害学生のインクルージョン教育に対する教員の態度と技能」という研究テーマを取り上げ、アメリカのろう学校に勤務する教員を対象に、インタビューを行いました。文献レビューを行う際、テーマに関する資料がアメリカにも日本にも全くなかったため、論文作成には非常に苦労しました。インタビューでは、アメリカの各州(インディアナ州、ウィスコンシン州、コロラド州など7つの州)のろう学校の教員たちの、ろう発達・重複障害学生に対する使命感を強く感じ、また、前向きな姿勢に感銘を受けました。一人ひとりの児童の可能性を信じて取り組んでいる様子でした。教員として基本的な知識や指導方法を学ぶ意欲を持つことは大切である一方、素晴らしい指導方法を習得するよりも、その児童を受け入れ、実態に合わせながら指導する態度や信念を持つことが大切であると、この研究を通して知ることができました。

カウンセリングクラスでは、マイクロアグレッション(微細な攻撃)について印象に残っており、それは卒業した後の私自身の課題でもあります。マイクロアグレッションとは、話し手にその意図がなくても、言われた人にとっては不快・差別に感じる発言や行為のことです(Sue et al, 2007)。2月の生活記録に書いてあるように、「え?知らないの?」とか「あなたはろうだから、人一倍頑張る必要があるよ!」「私は黒人の友達がたくさんいるよ。だから、大丈夫」といった些細なことでも言われた人にとっては違和感と感じることがあります。普段の生活の中でどういう場面にそういったマイクロアグレッションに出会ったか、その時どんな気持ちだったかを数名のろう者(特に、人種、移民、LGBTQ、そして、他の障害を併せ持つろう者たち)にインタビューしたり、インターネットで調査しました。どれだけ傷ついたか、さらには一生忘れられない場面だったと辛そうに話す姿に、ひしひしと彼らの思いが伝わり、私はその時どのように言葉をかけたらいいか分からないほどでした。多様性のあるアメリカ社会ではそういったマイクロアグレッションは慎重に扱う問題であります。それは私自身の言動にも当てはまることがあり、人権意識や差別に繋がることについての十分な理解がなかったことによるものだと気づくことができました。

渡米前に「こんな私でもやっていけるのだろうか…」という不安でいっぱいだった私が、カリフォルニア州のオーロニ大学で出会ったナンシー教授とトム教授、メンターであるステファニーさんが丁寧に指導・助言をしてくださったおかげで、ギャロデット大学に無事進学することができました。
ワシントンD.C.のギャロデット大学は、教育学部の学長であるマリベル教授、ろう重複障害を専門とするクリス教授、OSWD(障害のある学生支援室)のスタッフたちの手厚いサポートに恵まれ、素晴らしい経験を積むことができました。

それから、皆さんにぜひお勧めしたいことあります。それは、メモ書きです。第9期生の瀧澤さんの生活記録(2016年10月生活記録)にも書いてありますが、本当にノートやメモ帳に書き記すことはとても役に立ちます。印象に残ったことや気になったことをすぐにメモに取ります。私は常にズボンのポケットに収まるサイズのメモ帳を持ち歩いていました。読み返してみると、知らなかった情報や英単語も書いていました。振り返ったり、何かを思い出したりする時にそのメモ帳が役に立ちました。備忘録にもなります。

卒業後の課題として強く感じているのは「アメリカでの研究を日本のろう社会に貢献できるものは何か」です。アメリカと日本は文化も状況も全く異なるため、全てがそのまま適用できるとは考えにくいです。日本の実態に合わせて、私が積んできた知識と経験をどのように生かすか、特にろう発達障害の児童生徒と関わっている教員や保護者のサポートを中心に考えたいと思います。大学院を卒業したからと言っても、まだまだ学ばなければいけないことがたくさんあります。どういった支援・配慮がベストなのかを当該の児童生徒はもちろん、その保護者と教員たちと対話しながら進めていきたいと思っています。

読者のみなさま、そして日本財団、日本ASL協会のみなさま、3年間のご支援をありがとうございました。
IMG-3265.jpg

参考文献:
Sue, D. W., Capodilupo, C. M., Torino, G. C., Bucceri, J. M., Holder, A. M. B., Nadal, K. L., & Esquilin, M. (2007). Racial microaggressions in everyday life: Implications for clinical practice. American Psychologist, 62(4), 271–286.

Posted by 橋本 at 09:51 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
この記事のURL
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/archive/1280