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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2020年4月生活記録【第16期生 皆川愛】[2020年05月08日(Fri)]
まだ新型コロナウイルスが猛威を振るっていますね。
今月は、「健康格差ととろう者」についてです。

カチンコ動画はこちらより


@パンデミック下での健康格差(0:26)
A日本における健康格差(3:04)
Bろうコミュニティにおける健康格差(4:19)
C手話による調査の開発(6:17)
Dアンケート調査ご協力の依頼(10:49)

@パンデミック下での米国における健康格差
現在、米国では、新型コロナウイルスによる全米での黒人の死亡率が、
アジア人の2.4倍、白人の2.6倍というデータを打ち出しています(APM Research Lab, 2020)。

コロナウイルス自体は誰のことも差別せず、公平で、あらゆる階層にとっての脅威であるにも関わらずです。
実際、王族や宰相から、国民的英雄も襲いました。
しかしながら、医療制度へのアクセスの不公平さ、
職種によってハイリスクな環境に身を置き続けなければならない人がたくさんいるのです。

黒人だからという理由で健康格差が起こるのではなく、
従来の喘息の有病率が高いこと(CDC, 2020)、
黒人を取り巻く労働状況、例えばブルーカラー職種が多いためテレワークが困難(U.S. Bureau of Labor Statistics, 2018)
保険の適用範囲によって、治療における保険が適用不可、
などによる、社会的経済的地位が結びついていると考えられます。
1.jpg


さらに、喘息の有病率が高いことは、黒人の居住地の環境や遺伝が大きく影響していると言います(U.S. Department of Health and Human Services Office of Minority Health, 2015)。

それが人種ごとの不平等、健康格差です。

ただ注意しなければならないのは、その人種の者全てそうだというわけではなく、そういう傾向がある、というものです。

健康格差はなぜ起きるのでしょうか?
それには様々な要因があり、健康の社会的決定要因 (Social Determination of Health)と呼ばれます。

A日本における老後の健康格差
日本でも、所得や学歴、運動量、社会参加、地域の結びつきなどの社会階層間において、
老後の健康に格差が生じることがわかっています(日本老年学的評価研究, 2014)。
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Bろうコミュニティにおける健康格差
日本のろう者の中でも健康格差が起きているのでしょうか?
それは未だわかっていません。なぜなら、研究が未だなされていないからです。

米国では、ギャロデット大学にある、
ろう健康研究センター(以下、研究室 正式には”Center for Deaf Health Equiety”)を中心に、
ろうコミュニティにおける健康格差の研究、介入に取り組んでいます。 
今学期より、パートタイムで働かせていただいています。
スクリーンショット 2020-05-06 13.32.50.png

センター長はプールナ・クシャルナガル先生 (Dr. Poorna Kushalnagar)で、
2017年に設立して以来、国立衛生研究所(NIH)などの政府機関から千万単位の助成金を受けて、
手話を主に言語とするろう者にアメリカ大規模研究をされています。
一年に5〜10本の論文も書かれているほどで、
手話を含め全てのペースがとても早く、ついていくのに必死ですが、
聡明で、厳しさもありながら温かい先生です。
私にとってろう女性のロールモデルとなっています。
D37EB502-B878-47C9-B785-8450B1E88AFB.jpg

(夏に開催された世界ろう者会議の時にて、
 左がクシャルナガル先生)
後ろのポスターは(Kushalnagar et al, 2019)の参考文献参照

Cろう・難聴者を対象にした新型コロナウイルスにまつわる意識調査と手話による調査の開発
今回、クシャルナガル先生のご指導の元、
ギャロデット大学の助教授である高山亨太先生とともに、
新型コロナウイルスにまつわるろうコミュニティを対象にした調査を実施させていただく機会に恵まれました。

全ての質問・回答に、日本語とともに日本手話動画が記載されています。
スクリーンショット 2020-05-07 13.24.49.png

(写真はデモグラフィックの一例)

アメリカ手話から日本手話の翻訳に始まり、逆翻訳、参照を経て妥当性の検証をするなど、
多大な方々にご協力いただきました。
世界ろう者会議でのポスターの内容をもとに、日本手話動画作成のプロセスを記します。

@順翻訳(Forward translation):アメリカ手話⑴→日本手話への翻訳
バイリンガルのろう者がアメリカ手話ビデオを元に日本手話へ翻訳します。

A逆翻訳(Back translation):日本手話→アメリカ手話⑵への逆翻訳
他のバイリンガルのろう者が日本手話ビデオを見て、アメリカ手話に翻訳します。
この際、逆翻訳の担当者は⑴のビデオを見ることはできません。

B調和(Reconciliation):アメリカ手話⑴⇄アメリカ手話⑵との参照
アメリカ手話のろう通訳士、@とAとは他のバイリンガルのろう者との二人が
同言語である⑴と⑵のビデオを見て、内容に相違がないか検証します。
必要時、バイリンガルのろう者は、日本手話のビデオの確認も行います。

スライド3.jpeg


Bの段階で、⑴と⑵の内容に相違があった場合、フィードバックを受けて、@からやり直します。
2度繰り返すこともありました。
内容に相違がない場合は、承認となり、Cの認知面接へ移ります。
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C認知面接(Cognitive interview):
Bの段階で承認を得たビデオ(下書きの段階)を数名のろう者に見せ、
本人が回答したことについて、面接者がそれにまつわる質問をし、内容妥当性について確認を行います。
また、調査についてののフィードバックも同時に頂きます。
4.jpg


D校正と本撮影:日本手話ビデオの作成
下書きのビデオを忠実に、また必要時これらのフィードバックを参考にし、本撮影にかかります。

昨日リリースしたところ、動画が重くて再生できないないといった物理的な面や、
ネット環境がない人への調査参加へのアクセスなど、次の課題があることは承知の上ですが、
同意書から全質問・回答、終わりのお礼まで全てにおいて手話でアクセスできる調査は国内で初めてに等しいと思います。

ろう者は多くの場面で、言語バリアの観点から調査の対象から外されてきたことがあります。
取りこぼしがないように調査の対象に含め、
ろう者における健康格差について様々な要因とともに追究していくことが求められると考えます。

最後にろう・難聴者のみなさまにこちらの調査の協力をお願いできますと幸いです。
所要時間:10〜15分
締め切り:5月24日
目的:新型コロナウイルスにまつわる気持ちや知識についてお伺いし、
   公的機関からの手話でアクセスできる情報の提供や、自宅待機における孤独への支援など、
   今後の活動、研究の指針にしたいと考えています。
こちら、もしくはQRコードより
QR_830079.png


スクリーンショット 2020-05-06 18.43.43.png


絶対皆さまに還元できるように活動してまいりますので、
ご協力・応援のほど、よろしくお願いいたします。

<参考文献>
APM Research Lab. (2020). COVID19 Deaths by race and ethinicity in the U.S. Retrieved from
https://www.apmresearchlab.org/covid/deaths-by-race#reporting

Center for Disease Control and Prevention. (2020). Asthma Surveillance Data. Retrieved from https://www.cdc.gov/asthma/asthmadata.htm

Kushalnagar, P., Paludneviciene, R., Rivera, D. Bruce, S, Mirus, K., Ryan, C., & Minakawa, A., & Kallen, M. (2019). Moving from research to practice: Making patient reported outcomes measure accessible in signed languages for Deaf people. 2019 World Congress of the World Federation of the Deaf, Paris, France.

日本老年学的研究評価. (2014). http://www.mcw-forum.or.jp/image_report/DL/20180314-1.pdf

U.S. department of Health and Human Services Office of Minority Health. (2015). https://www.minorityhealth.hhs.gov/omh/browse.aspx?lvl=4&lvlid=15
Posted by 皆川 at 11:33 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
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