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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2019年11月生活記録 【第13期生 山田茉侑】[2019年12月08日(Sun)]
みなさまこんにちは。
気がついたら嵐のような今学期が過ぎ去っており、眼前には大量の課題とテストが待ち構えていました。とてもびっくりしています。今日もなんとか生きております。

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テネシーろう学校の小学部入り口付近で撮った写真

今月は、同じボストン大学院の2年生全員でテネシーろう学校の小学部に1週間ほど教育実習に行きました。今回は、テネシーろう学校での実習をテーマにしたいと思います。もしボストン大学のろう教育学部に留学を考えている方がいれば、ぜひ参考にしていただければと思います。また、今回「英語の書き」クラスを担当したので、この記事の最後の方に実際に使った教材をいくつか紹介します。ろうの子どもの英語指導の役に立つと思います。


ボストン大学ろう教育学科は、毎学期教育実習をする機会があります。1年生の秋学期ではバイリンガル教育を実施しているThe Learning school for the Deafへ毎週月曜日に、春学期は同じくバイリンガル教育へと方向転換したばかりのHorace Mann School for the Deafへ1ヶ月間106時間を下限として実習に行きます。そして、2年生の秋学期は、他の州にあるろう学校へクラスメイト全員で行き、1週間教育実習をします。春学期は自分の希望先のろう学校へ、3−4ヶ月間教育実習ができます。
さて、今回の実習は、学生が現場を経験させてもらう代わりに、ボストン大学のバイリンガル教育の方法を学生がモデルとして示す、という目的があります。また、この実習はボストン大学のろう教育学科の看板の一つでもあるのです。
去年はギャローデット大学にあるケンダルろう学校、そしてその前はアメリカ最古のろう学校、アメリカろう学校で1週間実習をさせてもらったそうです。どちらも以前からバイリンガル教育を支持していたろう学校です。しかし、今年からボストン大学は、バイリンガル教育へと舵を変えたばかりのろう学校にこそ実習に行く意義がある、と実習先をテネシーろう学校に決めたようです。
テネシーろう学校は、5年前にトータルコミュニケーションからバイリンガル教育へと方向を転換し、2年前にパワフルなろうの校長先生が就任してからさらにその勢いを加速させているそうです。

今回は、日曜日にテネシーに降り立ち、月曜日から金曜日まで毎日5クラス教え、そして日曜日の早朝にボストンに飛び立つというハードスケジュールをこなしました。

小学部は、言語習得レベルによって5つのグループにわけられております。
グループ
1. 幼稚部〜小3 一般クラス
2.小1〜小3 高言語クラス
3.小4〜6 一般クラス
4.小4〜6 高言語クラス
5.ろう重複障害クラス

そして、実習中は5つのクラスを設置し、それぞれのクラスを実習生2人がペアになって担当して教えることになりました。
クラス
1. ASL 読み取り
2. ASL 表現
3.英語 読み
4.英語 書き
5.算数

以下の図のように、それぞれのクラスに1つ教室があてがわれ、グループ単位でクラスが終わるたびに子どもたちは次の教室に移動していました。

Screen Shot 2019-12-07 at 2.33.15 PM-2.png

わたしは、「英語 書き」を毎日教えることになりました。

実はこの実習、始まる前から友達とワァワァ嘆いていました。
守秘義務で子どもの詳細は直前まで得られない、スケジュールの都合で月曜日に初めて出会った子どもたちのクラスを担当する、指導内容がギリギリにわかる、など初日から不安の中で教えることになったからです。同じ学科を卒業した先輩たちの間でも、この実習は本当に素晴らしかった!!と語り継がれると同時に、寝られないことで悪名高くもあったのです。でもそれは、いろいろなやむなき事情が重なった結果のしょうがないことによるもの、と補足させてもらいます。(学校や、大学、指導教官はむしろ裏で甚大な仕事をして、この実習が実現できるようにここまで運んできてくれました。)

ただ、やはり用意してきた教材が、ろう盲/ろう重複の子どもたちのニーズに合ってなかったり、クラスのレベルと乖離していたり、と反省の山の中で初日を終えることになりました。教室の後ろにいる20人もの先生方の視線が痛かった…。クラスを終えた後は、子どもたちに「何かを残してやれた」という実感を感じる時と、そうでない時があります。新たな指導案と教材をもって次の日を迎えるも、低学年のクラスではなかなかその実感を得られずにいました。ようやく全てのクラスで軌道に乗ったのは3日目になったころです。その分、子どもたちはいろいろなことを教えてくれました。教材が合わなくて困っているのは子どものほう、そして子どもの能力のせいではないと何度も教えてくれました。
例えば、英文を書くときの「最初に大文字、最後にコンマ」というルールを教える際、あるクラスはすぐに理解したものの、同じ条件で教えた別のクラスではなかなかこちらの意図が伝わらなかったです。おそらく、一方のクラスでは今までたくさん書く練習をしてきて、「大文字に直すように」「コンマを忘れないように」と言われた経験が少なからずあるのかもしれません。でも、他のクラスではそもそも英文自体を書く経験が少なく、「大文字とコンマ」のルールを教えるよりも先にまず書きの経験が必要だったのかもしれません。あとでこの活動について詳しく紹介したいと思います。


毎日放課後は、小学部を担当している全ての人(先生や言語聴覚士など)と全体会議(反省会)をしました。毎日嵐のような時間でした。「子どもが机に突っ伏しているのに、放っておいていいのですか?」「突っ伏している間もずっとアイコンタクトが取れていたので、行動自体は指導しませんでした。」というクラス運営に関わる質問から、「指導要領にある目標は、どの学年レベルを使用しているのでしょうか?今教えていることは学年レベルではないですよね?」というろう教育の問題に及ぶ質問までありました。確かに、子どもが学年レベルに達していなくても教科書の順通りに教えることが多いですよね。でも、それは決して子どものためになっているのだろうか、「100を教えて全部台無しにするより、50を確実に教える」そのためにまずは教科書にない基礎の部分を含めて大事に教えていった方がいいのでは、という話し合いになりました。とあるろう学校では、月曜から木曜日までは子どものレベルにあった学力の目標をつけ、金曜日までに子どもの年齢にあった目標にたどり着けるようにしているそうです。また、日が経つにつれてバイリンガル教育に納得してない先生方からの発言があり、戦争状態になったことは印象深かったです。

この実習では、1週間学生たちがクラスを担当していたので、残念ながら先生方の授業を見学する機会はありませんでした。また、子どもたちとようやく距離が縮まった頃には去らなくてはなりませんでした。でも、毎日それぞれのグループのクラスを計画し、それについて大学の指導教官からその場でフィードバックをもらえ、そして実際にそれを使って教えたという経験は、これから春学期に長期間教育実習をするときの大きな自信となりました。



以下、「英語の書き」クラスで使った教材のうち、明日の現場にでもすぐに使えそうなものをいくつか紹介したいと思います。

・英作文

Screen Shot 2019-12-07 at 4.45.04 PM-2.png
写真を見て、英作文をする活動です。「猫がケーキを見ている」写真をみて、子どもたちは右の欄に英作文します。その際、英単語がわからなかったらASL単語の手の形を、わからない英単語の代わりに記述するのです。例えば「look at」という英単語がわからなくてもASL単語がわかれば、その手の形「V(手(チョキ)️見る)」を記入します。子どもが英作文をし終えたら、一緒に内容を確認していきます。もしASL単語があれば、その英単語を教え左側の欄に「ASL単語:英単語」というふうに書きます。この活動は、毎回クラス開始後5分間行いました。子どものモチベーションを失わせず、思いつつまま英語で書かせる経験を積ませるのが目的です。

・英単語
「horse」


「house」


この教材は、ASLの指文字を使って英語を教えていることが前提になります。
似たような英単語「horse」「house」どっちが馬で、どっちが家だっけ、なかなか区別して覚えにくいですよね…。このような、微妙に似ているけど一箇所だけスペルが違う単語、子どもたちも混乱しやすいです。実は、秘密があるのですよ、知りたいですか?
Ho「r」se、ho「u」seのrとuの部分を、視覚化するのです。例えば、rの指文字を使って馬の耳△を、uの指文字を使って家の形家を表します。こういう英単語のペアをいくつか作り、競争を活動に入れるのもいいかもしれません。

・頭文字とコンマ
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これは、ボストン大学の指導教員の一人であるクリスティン先生が考案した方法です。英文を書くときに、最初は大文字で書き、その後は小文字、そして最後にコンマをおく、というルールを教えるための活動です。まず、テープを横軸方向に床に貼り、そして紙のお皿を右側の端におきます。
・スターチ位置は必ず左。
・左端に立ったら必ずジャンプをする
・左端から右端へ移動するときは必ずボールをドリブルする。
・右端にたどり着いたら、必ずボールを紙の上におく。
これをルール化して、実際にボールを触りながら活動すると楽しいと思います。子どもたちはこの活動が好きです。繰り返し繰り返しやると、子どもたちが英作文をするときに、頭文字とコンマのルールを意識し始めるようになります。
この活動をするときに、ほかの先生が間違った例(線から逸れてドリブルする、ジャンプを忘れてドリブルし始める、ボールを皿に置かずにパスをする、など)をした際、これはルール違反かどうか子どもたちに尋ねるといいかもしれません。


日を追うごとにますます寒くなってきましたが、身体にはお気をつけください。それでは翌月にまたお会いしましょう。
Posted by 山田 at 12:11 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
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