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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2019年9月生活記録【第13期生 山田茉侑】[2019年10月08日(Tue)]
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みなさまこんにちは。写真は、Prudential CenterからMIT(上)とイタリア街(下)方面を見た景色です。地上からは気づかなかったのですが、思っている以上にあたり一面赤煉瓦の建物が群集していました。
いままで通ってきた小道を、記憶をなぞるように上から見ていたら、いろんな感情がこみ上げてきました。ボストンは、わたしにとってすっかり第三の故郷です。



今月は、今学期受講するクラスの一部を紹介したいと思います。
・ASL 5
・Major Research:メインリサーチクラス
・Introduce to Research:リサーチ導入
(他に「日本語初級クラス」と「クラスルーム管理クラス」を受講しています。今月の記事ではそれらのクラスの詳細については割愛します。)


・ASL5クラス
ASLストーリーを作るスキルを磨くためのクラスです。イベントの企画もこのクラスの評価に入ります。つまり、このクラスで学んだことを取り入れたイベントを、ろう学校とBU PUB(驚くなかれ、ボストン大学にはなんと大学のバーがあるのです!)で開催するのです。
例えば、最近学んだVV(Visual Vernacular)で即興でストーリーを作り上げ競争する、などのイベント内容を考えてます。

VVは (1)CL (classifier) (2)ジェスチャー (3)マイム で構成されたもので、できる限り手話単語や音声単語をなくし、観客が“見るだけ“でわかるようにストーリー構成されたものです。
例をあげたいと思います。
こちら、Rob Royの「オリンピック」、すごいです。



CLを減らすと、手話の知らない聴者でも読み取れるようになります。
一方、CLが強いと手話のわからない人には難しくなります。ただ、CLを突き詰めていくと今年度7月の記事で紹介している「Cinematography(映像的技術)」のような表現になります。



・Major Research:リサーチクラス
卒業論文!!!ろう教育専攻内で卒業論文を書くためのクラス、といったら分かりやすいでしょうか。といっても、実は2年前から「手話の絵本」を作ることで、卒業論文の代わりとする、と決められたようです。

皆川さんの今月のブログの文化的資源でも説明されているように、ろうの子どもが使える教材は本当に限られています。デフファミリーのなかには、家族間で手話遊びや子ども向けの手話ストーリーが受け継がれているかもしれません。しかし、ろうの子どもの親のほとんどが聴者です。子どもを通して初めてろうの世界に入ってきた方ばかりです。外国語当然である日本手話の手話遊びや手話語りなどを、そんな保護者たちができますでしょうか。

育児のお助けツール、ディズニー映画などはNetflixで気軽に見れます。一方、手話の子ども向けの映像はあるのでしょうか。あっても、購入しようと思ったら、DVD1本に5000円もします。そんなDVDを何本も買えますでしょうか。

そんな家族が必要とするものはなんだろう、子どもの言語発達や育ちを支援する教材はなんだろう。そんなことを考え、だったら、われわれが教材を作って発信していこう、という流れで、「手話絵本作成」を卒業論文代わりにしたようです。

今後の予定
1) 手話絵本の対象児は二人(8歳と6歳)。どちらも空想のキャラクターですが、詳細は学生で決めました。ポイントは、どちらも言語剥奪の危機にある子どもです。
2) チームに分かれて対象児に合った「手話絵本」を作ります。
ただし、その動画はクラス全体の中で使えるものを目指しています。
(言語剥奪の子どもだけではなく、他の子どもも楽しく学べる動画。)
3) HMS(Horaceman school for the Deaf)、TLC(The Learning center for the Deaf)で実際に子どもたちに手話絵本を披露します。子どもの反応を見ながら変更修正します。
4) 11月終わりに実習でお世話になるTennessee school for the Deaf(テネシーろう学校)で、実際に手話絵本を披露します。

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こちら、対象児の詳細です。もし興味があれば読んでみてください。
絵本を作るときは、自己満足にならないよう、いつもこのプロフィールとにらめっこしています。


われわれのチームでは、アメリカ手話バージョンと日本手話バージョンの両方を作ることにしました。チームから許可をもらったので、今回作ったものを日本でも公開したい思います

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写真は、「どの手話単語を使うか」話し合った形跡です。「I/NEED/YOUR/HELP」と4語使うよりも、「HELP/(?)」と1語に絞るなど手話をシンプル化させ、そしてジェスチャーで終始しないように工夫しています。



・Introduce to Research:リサーチ導入クラス
Major Researchクラスで手話絵本を扱うのに対し、こちらでは紙媒体の論文を書きます。日本の論文と同じような感じでしょうか。ただ、論文の概要 (abstract) から方法 (method) までをデザインしますが、実際に実験やデータを集めることはしません。
せっかくなので興味のあること、乳幼児の手話子守唄について調べております。手話ベースの研究は英語論文でもなかなかないため、まずは音声ベースの論文を読み込み、手話に応用することを考えております。



こちらもうすっかり寒くなり、ものすごい勢いで木々が色を変えていっております。日本には、「食欲の秋、読書の秋」などいろんな秋が存在しますが、こちらではどんな秋が存在するんだろうと、ちょっと考えております。
まわりにいる友人たちは、毎日ホラー映画を見たりハロウインパーティのテーマやコスプレを考えたりと、気持ちはもうハロウインに向かっているようです。
みなさまも素敵な秋をお過ごしください。それではまた翌月にお会いしましょう。


Posted by 山田 at 04:27 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
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