2019年3月生活記録【第13期生 山田茉侑】[2019年04月07日(Sun)]

ボストンには、ネックレスのように各公園が繋がっています。これらの公園を、エメラルド・ネックレスと呼びます。

写真は、そのうちの公園の1つです。
春の兆しが訪れた頃、その公園でランニングをする人も増えてきました。次第に暖かくなり、バカに高い冬のガス代からやっと解放されると浮き足立ったルームメイトたちと毎朝8時にランニングをすると決起したものの…1日目でチーム破綻してしまいました(笑)。新年度の抱負ですが、やる気とその時の気分の乖離を少しずつ減らし、いろいろなことにチャレンジしたいと思います。
今回は、ASL 言語学クラスで面白いと思ったことを共有したいと思います。
手話単語には、Iconic(図像的/ 類像的)、Arbitrary (恣意的)の2種類あります。詳しくは、2018年2月の橋本さんの生活記録を参照していただければと思います。
簡単にいうと、見た形のまま表現している単語をIconic(図像的/ 類像的)、パッと見ただけでは意味が分からない単語をArbitrary(恣意的)といいます。

こちら、TREE(木) のASL単語で、iconic(図像的/ 類像的)手話単語の一例です。 木の形から手話単語化しています。
さて、手話はIconic(図像的/ 類像的)の単語があるから、言語というよりジェスチャーに近い、いつでも誰でも獲得できる、と思われがちです。
本当にそうでしょうか。日本語や英語のような音声言語は、Iconic(図像的/ 類像的)ではないから言語であると言えるのでしょうか。
クラスでいくつかクイズが出されましたので共有したいと思います。
下の画像を見て、どちらが「Kiki(キキ)」で、どちらが「bouba(ボウバ)」か推測してみてください。

どうでしょうか。
答えは、左が「bouba」、右が「kiki」です。
「kiki」は高い音なので、「尖っている」ものとイメージできます。

また、上図のように発音した際の唇の形から、どちらが「Kiki」で、どちらが「bouba」か想像することもできます。
もう一つ、クイズです。
どちらが「mil(ミル)」で、どちらが「mal(マル)」か推測してみてください。

答えは、左が「mil(ミル)」、右が「mal(マル)」です。
なぜかというと、

発音した際「m ”i” l」のiは舌がより口蓋の近くにあり、一方で「m ”a” l(マル)」は舌がより口蓋から離れます。そのため、発音から、どちらが「mil(ミル)」でどちらが「mal(マル)」か判断することができます。
上記のクイズ、思ったよりも簡単に推測することができたかと思います。
そのほかにも「にゃんにゃん」「ガリガリ」など、オノマトペが音声言語のIconic(図像的/ 類像的)として知られています。
このように、音声言語にも手話のようにIconic(図像的/ 類像的)単語はあります。
なので、Iconic(図像的/ 類像的)があるから、すなわちジェスチャーに近いから、手話は言語ではない、というのは間違いなのです。
また、2月の橋本さんの生活記録でも触れられている通り、Iconic(図像的/ 類像的)だと思っていた手話単語が実はArbitrary (恣意的)だった、ということもよくあります。さらに、異なる国の手話で育った者が、初めて上図のASL「TREE」の手話を見たとき、「木」だと認識できないケースもあります。それは、その方の言語の「木」に関する単語(木、森、林、枝、葉っぱなど)で使われている音韻(手の形・位置・動き)がASLとかなり異なるからかもしれません。
ちなみに音韻に関しては、日本手話にはある手の形(Hand Shape)がASLにない、ASLにはある手の形(Hand Shape)が日本手話にはない、ということもあります。どうしてそうなったのか、日本手話では大事と思われていることでも、ASLでは大事だと思わないこともある、逆もまた然り、ということです。
このように、ASL言語学のクラス、ときには音声言語と比較しながら、ときには世界各国の手話も参考にしながら学べるので面白いです。
ちなみに、最近新元号が発表され、それに伴い新元号の手話をスピード決定するという話がありましたね。そのときに、どういう手話になるか友達と推測しあい、一つ面白いなと思うことがありました。友達の案の一つに、「令和」の「令」の漢字から手話化するのではないか、というものがありました。「丼」「小」など、このような文字(ここでは漢字)の形を手話化するのは日本手話の特徴の一つではないかと思っております。
他の国の手話も、こういった「文字から手話化する」ことはあるのか非常に興味あります。
それでは、翌月にまたお会いしましょう。
*音韻とは
言語がどういう構成でできているのかを分析するために、言語を分解し続けた結果、最も小さい群でできているもののことを音韻といいます。
例えば「甲板に出る」の「甲板」はローマ字で綴るとKanpanで同じnが2つあります。しかし、音声学的にはそれらのnは異なる音でできています。
[Kampan]
口の中の動きまでは詳しくはわかりませんが、か「ん」では唇が閉じ、ぱ「ん」では唇が閉じません。このように、音韻レベルまで言語を分析したら、同じ綴りでも異なる要素でできていることがわかります。
音韻は単語よりも小さい群なので、「n」だけを見ても意味がわからないように、音韻だけを見ただけでは意味がわからないです。その意味のわからない最小単位がいくつか組み合わさり、かたまりになったときにようやく単語として意味のわかる形になるのです。
手話も言語なので、手話言語を分析していくと最後には3種類の音韻「手の形」「位置」「動き」によって構成されていることがわかります。




