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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2019年2月生活記録【第13期生 橋本重人】[2019年03月08日(Fri)]
3月になってもワシントンD.C.では雪が降る兆しです。今週末もおそらく雪が降るとのことで、早く春がきて欲しいです。春よ、来い来い。

1月末に春学期が始まるのと同時に、ギャロデット大学にあるOffice for Students with Disabilities (障害学生のためのオフィス。略してOSWD)という学生支援室で、インターンとして毎日午前中働かせてもらっています。OSWDとは、簡単に言えば、講義やテストを受けるときに特別な配慮を必要とする学生をサポートするところです。例えば、テストを受けるにあたり、個室で一人になったり、他の情報が入ってこないように仕切りのあるところで受けたりすることで学生が集中して受けられるよう提供するところです。
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また、大学でどのように勉強したら良いか、自分に自信を持つようになるにはどうしたらいいのかなどの面談も提供しています。他にも、手話が十分に読み取れない学生のためのノートテイク、点字本や拡大読書器(ビデオカメラを直接モニターにつなぎ、その写した映像をモニター画面上に大きく映し出す装置)のサポートもあります。
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ギャロデット大学のろう学生だけでなく、難聴学生や聴学生も利用することができますが、OSWDに申請するには医療診断書など、いくつかの書類が必要となります。そこを利用する学生のほとんどがろう発達障害学生です。特に、学習障害(LD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)を併せ持つろう学生が多いです。

興味深いことに、OSWDを利用する学生の数は徐々に増えていっているようです。2001年の利用学生は147名だったが、2017年では283名と16年間でほぼ2倍になっています。
学生の数.png


どのような障害を併せ持つろう学生がいるかというと、2007〜2016年までで一番多いのはADHD(20.9%)で、その次がMultiple disabilities「複数の障害」(20.8%)です。例えば、軽度知的障害と弱視、学習障害と肢体不自由などといった感じです。3番目は、学習障害(14.9%)です。
障害種別.png


私の主な仕事は、受付です。利用学生が来室してきたら、どんな要件かを確認して対応します。また、受付にあるパソコンでメールの確認もします。毎日様々な教授からのメールが頻繁に来るので、その対応もしています(なかなか慣れません)。雑用(掃除やコピーなど)もします。利用学生と面談担当のスタッフとのミーティングに参加することもできますが、今のところその機会はまだありません。受付に利用学生が5人以上やってくる日があれば、たった一人のときもあり、日によって来室する学生の数はまちまちです。様々な利用学生とかかわることができるため、毎日が新鮮であり勉強になります。
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スタッフは私を含めて6人です。面談担当、面談&ノートテイク担当、研究・技術担当、そして、盲・弱視の学生の支援担当です。どの担当者も10年以上も働いている、かなりのベテランの方ばかりです。そして、大学院生は私ともう一人です。その学生と色々情報交換でき、心強く感じます。休憩する時は、それぞれのスタッフのオフィスへ遊びに行き、何か面白い情報はないかと質問したり、談話したりしています。

まだ働き始めて一ヶ月しか経っていないのですが、気づいたことは、テストの時間のことです。担当教授がテストの時間を2時間と設定したのに、ADHDのろう学生の何人かは40〜50分程度で終わることが多いようです。念押しに「見直しとかしたの?大丈夫?」と尋ねたら、「うん、大丈夫だよ」と答えました。結果はどうなったかはわかりませんでした(OSWDは学生たちの支援をするだけであって、そのサービスが終わった後の支援はしないというルールになっています)。気になって、ろう教育専攻の教授に聞いてみたら、ADHDの学生はどの問題にどれくらい時間をかけて取り組んだらいいかを時間の配分の計画を立てることが苦手であり、すぐに終わってしまうそうだ。そのため、ケアレスミスが多いとのことでした。そのため、時間配分をどのようにしたらいいかを丁寧に周りの人からのサポートが必要となります。なるほど、私も高校や大学受験の論文を書き上げるのに、起・承・転・結の時間の配分を考えてから取り組むことを国語担当の教員から教わったことを思い出しました。しかしながら、ここはアメリカの大学で自己責任ということでOSWDが学生たちに手を出すことはできませんが、小学校から高校までの生徒たちに時間配分の方法をしっかり伝えることが大切なのだと考えさせられました。

これからも新しい発見を楽しみに、続けてインターンを頑張りたいと思います。何かあったらまた報告します。それでは、また来月。
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