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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2018年11月生活記録【第13期生 橋本重人】[2018年12月08日(Sat)]
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 課題の難易度が徐々に上がって苦しんでいた時に、素敵なものと出会うことができました。ギャロデット大学の建物の壁にはあちこちに付箋が貼られていて、なんだろうとそれらを読んでみると「You will have a great day!(きっといいことが起きるよ!)」「Believe in yourself!(自分を信じて!)」など、いろいろなコメントが書いてありました。誰の所為かは分かりませんが、そんな一言が私を元気づけてくれました。やる気や自信を失くした時に、そんな短い文章で気持ちを前向きに変えることができるなんて、すごいことですよね。とても励みになりました。言葉を選ぶって本当に大切ですね。おまけに、寮内のエレベーターには「You are loved(あなたは愛されているよ)」という付箋が貼ってあり、言葉に言い表せない気持ちになりました。
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○Trends in Special Education(特別支援教育の動向)
 特別支援教育の基本的なことであり、日本ではあまり知られていない「UDL(学びのユニバーサルデザイン)」の概念を学ぶことができました。「ユニバーサルデザイン」という言葉はよく知られています。例えば、段差のある場所ではスロープがあると、車椅子ユーザーだけでなく、お年寄りや松葉杖を使用している人たちなどにも身体的な負担が軽くなります。文化・言語・国籍や年齢・性別などの違い、障害の有無や能力差などを問わずに利用できることをめざした建築(設備)・製品・情報などのデザインと定義されています。使用者を限定することなく、誰もが使えるようにするものですね。では、「UDL」とは何かというと、学校で子どもたちが自分に適した学び方を選んで学習できる柔軟なアプローチを指します。ここアメリカでは20年以上も前から科学的研究によりデザインされており、どんな子も教室で活躍し、学ぶことができるための授業づくりの枠組みだそうです。
では、例を挙げてみます。学校の授業で、子どもたちが話し合いをします。先生は子どもたちの意見を聞いて黒板に書いてまとめます。子どもたちは黒板に書いてあるものをプリントやノートに書き写します。最後に、先生が助詞を間違えていないか、今回の授業の内容を理解できているかどうかチェックして丸をつけます。そんなよくありがちの授業でも、特別支援を必要とする子どもたちはつまずいてしまうことがたくさんあります。例えば、

1. 体が固定できず、椅子から離れてしまう。
2. 話に集中できなくて足に刺激を与えたくなり、貧乏ゆすりや上靴を脱いだりする。
3. 黒板に書いてあるものが見えない。
4. プリントやノートに書き写すことが難しい、そんな自分が嫌になり感情的になってしまう。

など、学習を阻害するいろいろな障壁を目の当たりにします。そんな時、UDLの概念を取り入れるとしたら、

1. 体を固定するようDycem(滑り止めのシート)を椅子の上に敷いて座る。
2. 上靴を脱いで、椅子に座りながら足裏ボードに足を置く。
3. iPadを使って黒板に書いてあるものを写真で撮る。そして、自分の指で程よい大きさに調整したり、先生にいつ消されるか心配などせず自分なりのペースで黒板の内容を読んだりすることができる。
4. 手話中心の子はビデオをとって、まとめをする。パソコンが得意な子はパソコンに入力して印刷する。音声中心の子はボイスレコーダーを使って記録する。

といったような方法があります。そんな柔軟な対応をすることで、子どもたちは意欲が高まり、集中して学習に取り組むことができるのです。
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↑一人ひとりの児童生徒に合わせたアプローチの一例です。


○Teaching functional Curriculum to Deaf Students with Disabilities(ろう重複障害の生徒への機能的カリキュラムの指導)
 学生同士で話し合いを進めたり、グループに分かれてテキストをそれぞれの章を要約して(パワーポイントでまとめていました)、共通理解を図ったりするという学生中心のクラスです。Academic Reading and Writing(読み書きの指導)、Math-time and Money(時間とお金の指導)、Motor skills(運動)、Recreation and Community skills(レクリエーションとコミュニティースキル)など様々なスキルをどの場面でどのように指導・評価したらよいか、その指導計画を作成する練習をしています。オンラインクラスですが、アメリカ手話が全くなく、英語のみで進めています。クラスメートたちは面白いことに、私を除いて全員が現役教員でした。このクラスはろう発達障害・重複障害に関するクラスですが、やはりどの学校現場でもその専門性は求められているそうです。そのため、みんなギャロデット大学から離れて暮らしており、オンラインクラスという形で授業を進めているわけです。ジョージア州、マサチューセッツ州、フロリダ州、ワシントンDC(ギャロデット大学内のケンダル聾学校で教えている受講生もいました)、カナダなどです。彼らの意見や経験談は興味深いものばかりです(英語なので、イメージしにくいこともありましたが)。学校の授業時数が異なる、長期休暇の開始日や終了日はそれぞれの環境(北は雪、南はハリケーン、西は山火事などの影響があるため)に合わせているなど州によって異なっているそうです。さすがアメリカは広いな、と実感しました。
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