2018年10月生活記録【第13期生 橋本重人】[2018年11月07日(Wed)]

寮を出て授業に向かう途中、木の葉がすっかり綺麗な黄金色に変わってしまっていることに最近気づきました。雲ひとつない秋の空に映える紅葉はとても美しく、しばらく眺めていました。毎日その木の前を歩いて通っていたのですが、その時までは全く目に入ることはありませんでした。季節の変化に気付かないくらい、講義や周囲についていくのに必死だったのだと感じました。もう少し、心にゆとりを持たないといけないな、と思いました。
ギャロデット大学に来て、早2ヶ月が経ちました。秋学期もほぼ3分の2が終わり、いよいよ追い込みにかかるところです。アメリカ手話の読み取りは最初の時と比べてだいぶ慣れてきました。先生やクラスメートの冗談も理解できるようになり、周囲と同時に笑える機会も少しずつですが増えてきています。それだけでも読み取りの上達の証ということで、ちょっと嬉しくなり書かせてもらいました。今月はギャロデット大学でのビッグイベントのことを、ぜひ皆さんに知ってもらいたいと思い、報告します。
10月はギャロデット大学にとって大きな行事がありました。それは、Homecoming(ホームカミング)です。Homecomingとは卒業生たちを年に一回母校に迎えて、ダンスや同窓会など各種イベントを楽しむという伝統的なイベントです。アメリカの高校や大学でよく行われるそうです。ギャロデット大学はろう者のための大学なので、ろう卒業生たちがたくさん集まってきました。学内で様々な行事が行われました(スケジュールはこちらhttps://www.gallaudet.edu/alumni/stay-connected/homecoming)が、その中で一番盛り上がったのが他大学とのフットボールの試合でした。そのスポーツイベントを通して、学校関係者一体になって、みんなで勝とうという雰囲気を盛り上げます。Pep Rally(激励会)があり、そこでは大学生、教授、コーチなど大勢が体育館に集まり愛校心を高めたり、学年ごとに団結してパフォーマンスを披露して盛り上がりました。チアリーダーがリードして応援パフォーマンスをし、フットボールのチームが最大の力を発揮して試合に勝てるよう、みんなで応援します。以前、日本にいた時に知ったBison song(バイソンソング)を、実際に目で見ることができました。太鼓のリズムに合わせてパフォーマーが手話歌を披露するのですが、そのリズムがとてもシンプルで彼らの動きがとてもキビキビしていたので、私でも内容を読み取ることができました。ちなみに、私のASL教師だったLani(ラニ)先生も大学時代にパフォーマーとして歌ったそうです。


もうひとつ印象に残ったことはホームカミングキングとクィーンです。大学への貢献度や、ボランティアや勉強を一生懸命に取り組んだりしてきたかによって学校関係者や学生たちの手で選ばれ、フットボール試合当日のハーフタイムで、今年のキングとクィーンが発表されます。例年ではキングとクィーン一人ずつ選ばれるのですが、今年はなんと、キングはなしでクィーンが二人選ばれました(クィーンたちの後ろで選ばれなかった男子学生一人の様子はなんとなく悲しそうでした)。ホームカミングクィーンの戴冠式が一番のハイライトでした。おめでとう!

Homecomingに参加して気づいたことは、ろう卒業生たちにとって、非常に楽しみにしている行事なのだということです。ここ、ギャロデット大学はろう者にとっては過ごしやすい環境です。バリアを感じることがなく、至極居心地の良い場所だと感じています。ギャロデット大学を出たろう卒業生と何人かお話を聞く機会がありましたが、彼らにとってここは第二のホームだと口を揃えて言っていました。いったん卒業してしまったら、コミュニケーションに支障が出てきてしまう、手話通訳がついていてもズレがないかどうか確認する必要があるので気を緩めることができない、という話でした。そして聞こえない者同士、共感できる場所がここ、ギャロデット大学だから何回も戻ってきたくなるとのことでした。確かに、激励会では学年ごとにとても盛り上がっていて、本当の兄弟のような雰囲気でした。お互いオープン精神でいて、支え合っていくといった印象です。そんな彼らの様子を見て、日本のろう者たちも簡単に集まれるような場、自分をさらけ出せるような場を大切にする必要があるのではないかと痛感しました。




