• もっと見る
聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
« 1月6日(土)留学奨学生帰国報告会、会場と開始時刻変更のお知らせ | Main | 2017年12月 生活記録 【第12期生 西 雄也】 »
2006/4/28ブログ開設時からのアクセス数
UL5キャッシング
最新記事
カテゴリアーカイブ
リンク集
最新コメント
月別アーカイブ
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/index2_0.xml
2017年12月生活記録 第11期生 <牧谷陽平>[2018年01月04日(Thu)]
IMG_8981.JPG
IMG_8987.JPG
<大学内で誰かが雪だるまを作っていました。小さくてかわいかったです>


MSSEでの1年半もの授業期間を終えました。残すは春学期の教育実習を残すのみです。このMSSEで学んだことを振り返っていきますね。

まず,ろう教育に必要なものは何なのか? 多くの人が手話言語か,口話かで幾度と争ってきています。今でもどちらがいいか,争っています。とある調査によると,”どちらか” ではなくて “両方とも” 必要なわけです。以前にろうの子どもを持つろうの親と話したのですが,
「どちらか選ばなければならないと決めてしまうと,日本語か手話言語どちらを先にスタートしたらいいのか分からなくなってしまう。もし日本語を獲得して手話言語を後に教えてしまうと,日本語で教えているときに日本語の意味が分からなくて手話で教えられないからそこで躓いてしまう。逆に手話言語だけでやっていくと,日本語で説明できないからそこで躓いてしまう。だから,両方同時に獲得していったらいい。そしたら言語の選択に迷わないし,2言語とも獲得できるメリットは大きいんだしそれが大切じゃないか」と話しました。ここでいう “両方同時に” とは,日本語を口で話しながら,手は手話で表現してやればいいと多くの人が言いますが,これは明らかな “日本語” です。

日本語!!!!!!


です。手話言語はどこにもありません。世間でいう日本語対応手話,木村晴美さんはこの言い方は “手話” と勘違いしてしまうので 「手指日本語」といった方がいい,と的を射た発言をしています。的のど真ん中,優勝するぐらいの的の真ん中を射ています。

IMG_8680.JPG
英語のことはやはりネイティブの人に聞くのがいちばん


ろうの子どもに必要なのは言語力です。日本語でも手話言語でもいい。身につけていないと,親との会話もできませんし,自分の感情を表現することもうまくできず,自分の考えがまとまりません。1920-25年ごろ,日本で手話教育が禁止されていた時代,ろうの子どもたちはこっそりと手話言語をクラスメイトと創りあげ,会話をしていました。その頃はろう学校にも200−400人の生徒がいて,手話言語を成長させるのに “充 分な” 環境がそろっていました。しかし,今は地方の聾学校には30−50人とかなり少なく,1学年に1−2人しかいない状況があり,学年によっては生徒が全くいないのもあります。これで手話言語が成長できるはずもなく,手話はろうによって作られるというよりもむしろ,聞こえる先生の日本語と手話単語を “同時に用いる” 方法が,手話言語であると長年謳われながら,ろう教育の現場で,何も知らないろうの子どもたちに “10%未満の理解度の手指日本語” が “手話言語” であると教えられ続けています。とある調査でもこの同時に用いる方法でろうの子どもが理解できるかどうか確認したところ,10% も理解できていなかったとのことでした。
 さらには,いくつかのろう学校で使われている手話には,日本語でも考えられないやり方で日本語が教えられています。大学の図書館で手指英語の辞典を見つけたので,それを例に挙げて説明します。

IMG_8769.JPG


Summer (夏) が sum (数の和) er (人) と表現されています。ほかにも,butterfly (バタフライ=ちょうちょ)が butter + fly (バター + 飛ぶ) と手話を使って教えられていました。
あなたはこれを使って英語を教えますか? 

ろうの子どもたちは耳から入ってくる音声が聞こえる子どもたちと比べて少ないので,視覚による手段が必要になります。しかし,その視覚の手段が,日本語とはまた異なった体系を持つ言語であるため,多くの人が今でもろう児たちに言語を獲得させることに苦戦しています。ろう教育はかなり複雑で,特別教育の中でもさらに特別な教育であるため,専門性がかなり高い教育です。

◆久しぶりの【今回のひとこと】◆

IMG_8689.JPG

K-12 手話通訳のクラスにて。先生はアメリカ人なのだが,大文字と小文字が日本のルールを無視して使われています。これぞネイティブの書き方!
この記事のURL
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/archive/1124
トラックバック
※トラックバックの受付は終了しました
 
コメントする
コメント