留学生活記録 (2017年8月) 第11期生 <牧谷陽平>[2017年08月31日(Thu)]
8月はプチ旅行に行きました。その旅行中,ろう学校の見学もいくつかしました。楽しい出来事だったのですが,その裏には悲劇もありました。
まずニューヨーク市の近くに住んでいる友人の家に行きました。ロチェスターから車で8時間もかかりました。日本と違ってアメリカは縦横に大地が広がっているので,車で8時間もかけて場所を移動すると,気候も変わります。 そういえば8月頭,朝寒かったので,気温を見ると13度しかなくて,部屋が寒かったので暖房を入れました(笑)8月に暖房を入れるのって,ありえない・・・?南半球でもないのに。。。Rochester は8月にこうなります
話を戻して,友人の家での生活はかなり過ごしやすく,他の友人や家族とのふれあいもあって,アメリカの文化を楽しめました。みんなで集まってボードゲームをしたのですが,これがまた面白くてハマりました。
Secret Hitler (シークレット・ヒトラー) といい,ドイツの独裁者ヒトラー(Hitler)の政治を想定した国会での駆け引きのゲームです。ゲーム参加者は自由主義か独裁主義のどちらかに属し,独裁主義の中に,ひとりヒトラーがいます。参加者はウソをついたり,他の人に疑いをかけたり,信頼する人を支持したりして,それぞれの政治を作っていくというゲームです。会話の技術をかなり必要とするゲームなのですが,面と向かって会話するので,参加者同士で誰が誰なのかを推測しながら,進めていくゲームです。
下の写真が Secret Hitler で遊んでいる様子です
その結果,このボードゲームを買いました。価格は少し高いのですが,スマートフォンが普及し,面と向かって話をすることが少なくなった今の日本人にとっては,重要な要素をたくさん含んでいますね。それを考慮すると,この価格は納得する価格です。
冒頭で話した通り,悲劇が起こったのです。私がこのボードゲームを気に入り買ったあと,ろうの友人で集まってこのゲームをしました。みんなかなりハマってしまい,別の日に,またこのゲームをしようと友人の家に行き,初対面のルームメイトを誘いました。すると,その人は「この箱の “Hitler” という文字を,修正液とかで消したら一緒に遊んでもいいよ」といきなり言ってきたので,失礼な人だと思いました。すると,そばにいたその人の恋人が,アパートから出ていきました。何が起こったのか聞くと,「恋人の祖先が Hitler に殺されたから,Hitler という文字すら見たくないといって,出ていったんだよ」と。
一見楽しそうに見えるゲームでも,その人にとっては思い出したくもない悲劇が潜んでいるということに気が付きました。日本は海に囲まれた島国のため,他の文化や肌の色を持つ人と関わる機会がほとんどありません。同じ人どうしで生活を共にするため,こういう多様性に気が付きにくいという現状に直面しています。教育の現場でもこういうことが起こっていて,手話言語やろう文化がなかなか受け入れられないということが日本じゅうのあちこちで起こっています。ろう学校が "ろうのため" の,"ろうによる" 学校になることを目指します。
さてアメリカで3か月も過ごした夏休みも終え,秋学期が始まりました。しかしまだ1週間目なので,今回は取るクラスの紹介だけします。
MSSE722 Educational Audiology and Spoken Language Development
聴覚活用と話し言語をとおした言語獲得・習得のクラスです
言語関係のクラスはこれで4クラス目になります。日本の大学院のカリキュラムを見たのですが,言語学のクラスはあまりないようですね。言語学のクラスが設置されることを祈るばかりです
MSSE714 Curriculum Content and Method of Instruction
学生それぞれの教科に特化した指導法をさらに研究していくクラスです
MSSE728 Literacy and the Deaf Adolescent
ろう児・成人の読み書き能力に関する課題を研究していくクラスです
MSSE713 Assessment Principles and Practices
生徒の評価を研究していくクラスです
INTP360 Introduction to K-12 Interpreting
幼稚園から高校生までの手話通訳者とはどんなものか学習するクラスです
INTP315 Practical and Ethical Applications
手話通訳者としての倫理のクラスです