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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2016年12月生活記録 第11期生 山本芙由美[2016年12月26日(Mon)]
メリークリスマス!!
第11期生の山本芙由美です。
秋学期もようやく終わり、ワシントンD.C.で初めて過ごす冬休みが始まりました。
フリーモントとは違って鼻が凍るような寒さです。

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Gender and CommunicationクラスのKyle Amber Clark先生と。彼女は自分自身をレズビアンだと公言しています。彼女は妻、子ども3人とハイキングするのが趣味だそうです。

さて、Final exam(最終テスト)ではどのクラスでもプレゼンテーションが必須で、調べものをしたり、PowerPointを編集をしたりと、パソコンと向き合う時間が多かったように思います。

Gay and Lesbian History(ゲイとレズビアンの歴史)のクラスでは先生がLGBTQに関連した読書リストとなるものを提供してくれ、私たちはその中から本を選びます。そして、その本を読み、レポートを書き、プレゼンテーションをすることが最終テストとしての評価対象となりました。

私はLeslie Fienberg著「Trans Liberation」(トランスの解放)を熟読することになりました。

スクリーンショット 2016-12-26 3.06.13.png

この本は社会が作る男女の境界線に挑戦した物語です。
長い間、女性はピンク(女らしさ)、男性はブルー(男らしさ)が自然と考えられてきました。多くのトランスの人たちは、そのような境界線につまずき、生きにくさを感じます。Leslieさんもその一人です。Leslieさんはユダヤ系アメリカ人で、Butch Lesbian(ブッチレズビアン)、Transgender activist(トランス活動家)、Communist(コミュニスト)です。また、Leslieさんは自分のことを「She/He」ではなく、「Ze」と呼んでいます。

※ブッチレズビアン…ボーイッシュなレズビアン。「タチ」ともいう。
 Communist/コミュニスト…共産主義者。
 Ze…She/He以外のジェンダーニュートラルな人称代名詞。

この本は1998年に書かれたもので、当時、性別は男/女のみで、トランスジェンダーという言葉がありませんでした。トランスの歴史なども注目されない中、Leslieさんは初めてトランス運動の起源について書いたのです。彼の書き出しはこうです。

「性は本能ではなく、社会によって変化、決定されるものであり、否応なしにそれを拒もうとするなら処罰、という暗黙の構造になっています。まず、私たちはそれに気づく必要があります」

真の性は体ではなく、「心」ということも書かれていますが、Leslieさんは男(ゲイ)/女(レズビアン)の境界線を超えて、トランスとしての誇りを訴えることが重要だと言っています。トランスの言葉を広めることでLGBTQコミュニティーのみならず、様々なカテゴリーへの認識を広めることが可能になるそうです。

実際、アメリカのLGBTQコミュニティーでは"LGB"と"T"は全く違うものなのでは、という議論が続いているそうです。セクシャルマイノリティー(性的少数者)はLGBTQA・・・というように様々なカテゴリーにわかれるのですが、LGBTとまとめられるコミュニティの中でも実は「シスジェンダー」と「トランスジェンダー」という大きな違いがあります。
シスジェンダー(Cisgender)は身体的性別と性自認が一致している「シス」のことです。その違いから差別を受けるリスクが高いトランスの存在や問題を可視化させていかないと、真のLGBTQコミュニティーとはかけ離れてしまう恐れがあるのです。

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(LGBとTの亀裂を風刺した絵)

そして、Leslieさんは「TはLGの一部ではなく、2つの円が重なるところにあって関係しています。私たちはコミュニティとして連帯し、共に闘っていく必要があります」と述べています。
私はLeslieさんのそのような哲学を日本にも少しずつ広められたら、と思いました。

LGBTだより

私自身、ギャロデット大学外でのLGBTQの集まりにも積極的に参加していますが、ワシントンD.C.にある「The DC Center For The LGBT Community」というコミュニティセンターがとてもアクティブで様々なプログラムを実施してくれています。
このセンターはASL通訳者を事前に準備してくれるなど、ろうLGBTQに対してもフレンドリーです。

また、月1回開催されている「ASL for LGBT」というLGBTのためのアメリカ手話というワークショップにも参加しています。この日はLGBTに関する手話表現を習いました。

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(講師はろう者でLGBTQ当事者です)

また別の日に、Trans support group(トランス支援グループ)の集まりにも参加してきました。トランスの参加者と交流していると、そこに Jessica Hawkinsさんが登場しました。彼女はトランス当事者で、ワシントンD.C.を中心にTrans Violence(トランスへの暴力)を防ぐために奮闘、活躍されている警察官です。
http://www.washingtonblade.com/2015/03/10/trans-woman-named-head-d-c-gay-police-unit/

S__19832903.jpg

彼女の優しい眼差しには、彼女のこれまでの人生を物語っているようにみえました。当事者にしか分からない、当事者だからできることがたくさんある、といろいろ考えさせてくれた日でした。

それではまた。

The DC Center For The LGBT Communityのホームページ
http://www.thedccenter.org/index.html
この記事のURL
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/archive/1019
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