2016年 11月生活記録 【牧谷陽平】[2016年12月08日(Thu)]
今回は,ほぼ毎回している「今回のひとこと」の “拡張バージョン” を話します。もちろん,私のお気に入りの言語学のクラスが関係しています。
今回のひとこと (拡張ver. )
結論から言うと,ろう児(もちろん難聴の子どもも含まれています) に発音・口話を使って育てたいのであれば,手話が必要になります。つまりバイリンガル教育 (ここでは手話と読み書き言語の2か国語) が必要です。
アメリカに来て(日本にいるときもそうだが),聞こえる人と会話するとき,たとえば買い物のときは声を出さないでやりとりをします。もちろん発音の練習をしていないので,発音がうまくなるわけがありません。ところが,つい先日,あるクラスメイトの一人(聴者)と話をしたとき,彼の口から驚く一言がでました。「前と比べて発音がうまくなったね。」
ん!? なぜこういわれたのか考えた結果,毎週火曜日の言語学のクラスの先生が,口をペチャクチャ開けながら手話で説明しているので,そのおかげで発音が少しうまくなったのだろうと結論付けました。
ここで注意してほしいのは,単語だけの発音だけができたのであって,先生の話していること,文はほとんど理解できていないので,何を話しているかは理解できていません。ろう教育に口話が必要と思い込んでいる人は,勘違いをしないでください。
発音・口話教育を促しているわけでもありません。
もういちど言いますが,私はバイリンガル教育を支持します。日本において,日本手話と日本語のどちらが先か,ではありません。同時に身に付けさせる必要があります。
話がそれましたが,私のケースでは,
[1] 手話を見て,それにあった英単語が頭に思い浮かぶ
[2] その英単語を発音するときの口を見て,発音の仕方を学ぶ
もちろんその英単語の概念はすでに分かっている前提でのことです。単語を知らないままでは,発音もできません。
<手話 → 英単語 → 口の形 → 発音の仕方>
といった流れです。
口話教育は <口の形 → 発音 → 英単語> となっているので,単語を知らないろうの子どもが,単語の発音ができるわけがないのです。言語を獲得するのが難しいのです。10月にそのクラスのMidterm Examination (中間テスト) をしたのですが,これはクラスを受講している学生一人ひとりに,15~20ページ程度の記事をひとつずつ割り当てて,各自でその内容をまとめて,プレゼンするといったものでした。私の読んだ記事は, 聞こえない子どもにどう読み書き言葉を学習させるか,というものです。ひらがな一文字一文字を知っているが,単語を知らないろうの子どもに,単語をどう覚えさせるか,の取組みについての記事でした。
11月頭にNYCへ行ったのですが,Rochesterは写真中央の濃いピンクの上のところ,
NYCは写真右下のシッポの付け根のオレンジ色のところです。同じ州なのですが,
高速道路を使って,時速120キロでとばしても
(友人が “ひとりで” 運転しました。すごい!! ) 6時間かかりました。
CAT (日本語で “ネコ”) という単語をどう覚えさせるか。ろうの子どもは “C,” “A,” “T” を知っているが, “CAT” という言葉は知りません。ですから,“C,” “A,” “T” がこの順に並んでいないといけません。 “CTA,” “ACT,” “ATC,” “TCA,” “TAC” ではいけません。聴者の子どもは,[ĸ æ t] という発音を聞いて, “CAT” という3文字の順序付けられた単語の並びを見て,
という概念が頭の中にできあがるのです。それがろうの子どもは難しいのです。[ĸ æ t] の代わりになる方法を探さなければなりません。聴覚による情報が困難な場合は,視覚による情報が必要になります。アメリカのLaurent Clerc School では
[1] Signed Illustrations
[2] ASL graphemes
[3] Glossing
この3つを用いてろう児に英語を教えたのです。
http://courses.education.illinois.edu/epsy252/Lectures/ASL_EngBilingualism.html
[1] については,上にのせたURLのウェブサイトにある絵のことです。
[2] は,同じウェブサイトの [1] の下にある,4つの記号のことです。
[3] は,ASLを “文” で表記するルールです。ASLの単語はすべて大文字で表記する。これは基本中の基本です。ここからさらにルールは複雑化していきます。しかし視覚言語を書面に表すことができるのは,とてもすごいことです。この3つを用いて,ろう児に単語を覚えさせていく試みでした。この学校では,幼稚園から小学校1年生まではこのやり方で英単語を身に付けさせ,小学2年生からは,逆のやり方で, つまり英語からASLを学習させるやり方でした。日本でも試みるべき内容ですね。やはり,英単語を覚えさせるにも手話は必要です。英語だけではだめ。英語を手話で学ぶ。逆に,手話で英語を学ぶ,これも大切になります。三度言いますが,バイリンガル教育は必要です。
では今月はこのへんで,失礼します。ではまた来月お会いしましょう。12月はRochester Institute of Technology での初めての学期を終わらせる瞬間を迎える月になります。
10月の生活記録でも載せましたが,今年は紅葉の季節がかなり長かったです
10月最初から11月中頃まででした
10月最初から11月中頃まででした
今回のひとこと (拡張ver. )
結論から言うと,ろう児(もちろん難聴の子どもも含まれています) に発音・口話を使って育てたいのであれば,手話が必要になります。つまりバイリンガル教育 (ここでは手話と読み書き言語の2か国語) が必要です。
アメリカに来て(日本にいるときもそうだが),聞こえる人と会話するとき,たとえば買い物のときは声を出さないでやりとりをします。もちろん発音の練習をしていないので,発音がうまくなるわけがありません。ところが,つい先日,あるクラスメイトの一人(聴者)と話をしたとき,彼の口から驚く一言がでました。「前と比べて発音がうまくなったね。」
ん!? なぜこういわれたのか考えた結果,毎週火曜日の言語学のクラスの先生が,口をペチャクチャ開けながら手話で説明しているので,そのおかげで発音が少しうまくなったのだろうと結論付けました。
ここで注意してほしいのは,単語だけの発音だけができたのであって,先生の話していること,文はほとんど理解できていないので,何を話しているかは理解できていません。ろう教育に口話が必要と思い込んでいる人は,勘違いをしないでください。
発音・口話教育を促しているわけでもありません。
もういちど言いますが,私はバイリンガル教育を支持します。日本において,日本手話と日本語のどちらが先か,ではありません。同時に身に付けさせる必要があります。
この日にこの事業責任者がきました。その2日後にはこうなりました
話がそれましたが,私のケースでは,
[1] 手話を見て,それにあった英単語が頭に思い浮かぶ
[2] その英単語を発音するときの口を見て,発音の仕方を学ぶ
もちろんその英単語の概念はすでに分かっている前提でのことです。単語を知らないままでは,発音もできません。
<手話 → 英単語 → 口の形 → 発音の仕方>
といった流れです。
口話教育は <口の形 → 発音 → 英単語> となっているので,単語を知らないろうの子どもが,単語の発音ができるわけがないのです。言語を獲得するのが難しいのです。10月にそのクラスのMidterm Examination (中間テスト) をしたのですが,これはクラスを受講している学生一人ひとりに,15~20ページ程度の記事をひとつずつ割り当てて,各自でその内容をまとめて,プレゼンするといったものでした。私の読んだ記事は, 聞こえない子どもにどう読み書き言葉を学習させるか,というものです。ひらがな一文字一文字を知っているが,単語を知らないろうの子どもに,単語をどう覚えさせるか,の取組みについての記事でした。
11月頭にNYCへ行ったのですが,Rochesterは写真中央の濃いピンクの上のところ,
NYCは写真右下のシッポの付け根のオレンジ色のところです。同じ州なのですが,
高速道路を使って,時速120キロでとばしても
(友人が “ひとりで” 運転しました。すごい!! ) 6時間かかりました。
CAT (日本語で “ネコ”) という単語をどう覚えさせるか。ろうの子どもは “C,” “A,” “T” を知っているが, “CAT” という言葉は知りません。ですから,“C,” “A,” “T” がこの順に並んでいないといけません。 “CTA,” “ACT,” “ATC,” “TCA,” “TAC” ではいけません。聴者の子どもは,[ĸ æ t] という発音を聞いて, “CAT” という3文字の順序付けられた単語の並びを見て,
[1] Signed Illustrations
[2] ASL graphemes
[3] Glossing
この3つを用いてろう児に英語を教えたのです。
http://courses.education.illinois.edu/epsy252/Lectures/ASL_EngBilingualism.html
[1] については,上にのせたURLのウェブサイトにある絵のことです。
[2] は,同じウェブサイトの [1] の下にある,4つの記号のことです。
[3] は,ASLを “文” で表記するルールです。ASLの単語はすべて大文字で表記する。これは基本中の基本です。ここからさらにルールは複雑化していきます。しかし視覚言語を書面に表すことができるのは,とてもすごいことです。この3つを用いて,ろう児に単語を覚えさせていく試みでした。この学校では,幼稚園から小学校1年生まではこのやり方で英単語を身に付けさせ,小学2年生からは,逆のやり方で, つまり英語からASLを学習させるやり方でした。日本でも試みるべき内容ですね。やはり,英単語を覚えさせるにも手話は必要です。英語だけではだめ。英語を手話で学ぶ。逆に,手話で英語を学ぶ,これも大切になります。三度言いますが,バイリンガル教育は必要です。
Thanksgiving Day にはルームメイトと友人とで買い物に行き
Turkey とHam を買って,オーブンで調理しました
Turkey とHam を買って,オーブンで調理しました
では今月はこのへんで,失礼します。ではまた来月お会いしましょう。12月はRochester Institute of Technology での初めての学期を終わらせる瞬間を迎える月になります。




