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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2020年4月生活記録【第13期生 山田茉侑】[2020年05月08日(Fri)]
2020年4月生活記録【第13期生 山田茉侑】

みなさまこんにちは。
新型コロナウイルス で依然として厳しい状況が続いておりますね。みなさまにも心身ともにかなり影響が及んでいることと心配しております。
さて、実習が終わってこの1ヶ月は、2019年9月生活記録で紹介した卒業制作の手話絵本の日本手話バージョンを作っておりました。その絵本ができあがりましたので、ぜひ在宅中のろうの子どもたちへ贈りたいと思います。


ボストン大学院のろう教育課程では、卒業論文を書く代わりに手話絵本を作ることになっています。手話ベースの教材を作り、少しでもろうの子どもたちの発達に貢献するためです。



mi0.5.png
(手話絵本「ムロと🤟」)



この手話絵本では、4歳児以降で就学年齢のお子さんを対象に作りました。手話を獲得中の子どもから手話で育った子どもまで、誰もが楽しく遊べることを目標にしました。 家で子ども一人でも遊ぶことができます。また、他人数クラスでも使えるようにしました。
遊ぶには、最新版にアップロードしたKeynoteが必要です。



日本手話バージョン
ダウンロードはこちらから
https://www.icloud.com/keynote/0lt6nz5tTr0eFY5v6BkNRcsDA#Muro_%26_ILY_(JSL)__3



アメリカ手話バージョン
ダウンロードはこちらから
https://www.icloud.com/keynote/0CwAjMs-9uq2knFy_qL26cI2Q?fbclid=IwAR17VvuX2lazl7tW5mrfoTAJGC2zJON2ng10soLyLAK-Q-3R6B3uRgXN_rc#Muro_%26_ILY



上のリンクをダウンロードすると、iCloud上でkeynoteが開きます。
(データ容量が大きいため、WiFiに繋げることを推奨します。)


mi1.png
(左上の緑丸で囲んだ右向き三角1︎を押すと、手話絵本がスタートします)



使用しているデバイス(iPhone, iPad, MacbookなどのApple製品)で遊びたい場合は、右上にある「Keynoteで開く (open in Keynote)」をクリックしてください。

mi2.png
(「Open in Keynote」右上の緑丸で囲みました)





以下、概説です。ただ、基本的に概説を読まなくても遊べるようにはなっております。



タイトル「ムロと🤟」

◆内容
主人公ムロは、地球のエネルギー源である🤟を管理していました。しかし、他の惑星からきたクェスが🤟を奪い去ってしまい、地球からあるあらゆる明かりが消えてしまうのです。ムロは、🤟を取り戻そうとクェスを必死に追いかけることにしましたが…。



◆劇とナレーター
子どもたちがわかりやすいように、絵本は主に劇で進められます。劇中は誰もが内容にアクセスできるよう、簡単な手話単語を選びました。

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(劇中の様子)



劇のすぐ後に、ナレーターが改めて手話で反復します。手話を獲得または習得中の方でも、ナレーターの手話にアクセスできるように、ナレーターのお話しに合わせて劇中の写真が画面下方に浮かびあがるようにしました。

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(ナレーターの様子)



◆参加型手話絵本
主人公ムロは、数々のトラブルに巻き込まれてしまいます。この手話絵本は、子どもたちの協力が不可欠です。全部で3回、子どもたちに選択を求めてきます。



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(1、2回目の選択肢:正誤問題)



2〜3つの選択肢の中からより良い答えを選ぶことで、先に進めるようになっています。最初の2回の選択肢は正誤問題なので、はっきりとした答えがあります。

最後の3回目の選択肢の場合は、答えがありません。それぞれおもしろい結末を用意しました。ぜひ、全ての選択肢を経験して遊んでみてください。



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(最後の選択肢:答えがありません)



また、最後の選択肢(スライド25)で「一緒に使う(3番目の選択肢)」を選んだ場合は、子どものアイデアを要します。保護者のみなさん方、先生方、ぜひ子どもたちと話し合ってみてください。



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(一緒に使う: 最後の3番目の選択肢)



◆日本手話バージョン、アメリカ手話バージョン
せっかくなので、両方の言語の絵本を作りました。内容は全く同じです。ぜひ、日本手話バージョンで遊んだ後に、アメリカ手話バージョンで遊んでみてください。子どもたちが、幼い頃から他の国の言語の一つであるアメリカ手話に触れることは、何物にも替えがたい経験になるでしょう。
一部分、アメリカ手話の知識が必要な場面が出てきます。ぜひ、異なる文化の一つとして子どもたちに紹介してみてください。

mi8.png
(異なる手話)



左側の手話🤟は、世界共通で「I L O V E  Y O U」という意味を持ちます。ムロがずっと追いかけていたエネルギー源の手話ですね。そして、右側の手話は、「I REALLY LOVE YOU」という意味を持ちます。人差し指と中指の形が、「REALLY」の頭文字R(アメリカ手話の指文字)になっていることに気づきましたでしょうか。家族や本当に大切な人にしか表さない手話だそうです。



◆使い方
ブログのトップで紹介したリンクをクリックして、iCloud上で遊んでみてください。Keynoteの最新バージョンがあることと、MacのiCloudにサインインして、iCloud DriveがKeynote用にオンになっている必要があります。クリック後、画面に反映するまで少し時間がかかるかもしれません。Mac、iPad、iPhoneで遊びたい場合は、iCloud上の手話絵本の右上にある「open in Keynote」をクリックしてください。
また、操作方法の詳しい説明は、ブログの最後に載せました。





最後に…
この手話絵本、S N S上でもアップロードします。みなさま、ぜひシェアして日本中のろうの子どもたちに届くよう協力してくださると嬉しいです。また、子どもだけではなく、手話を学習中の方みなさんも楽しめること、大保証します。
学校で教材の一つとして使用してくださるのも大歓迎です。
保護者方や先生方へ、もしも子どもたちと一緒に遊ぶ際は、主人公ムロがトラブルにあったときに、それぞれの選択肢を選んだらどうなるか予想しながら話し合ってみてください。

意見、感想などありましたら、ぜひご連絡ください。

最後になりますが、みなさま、どうかご無事で、健康的な生活を送られていることを祈っております。それでは翌月にまたお会いしましょう。



◆操作方法
手話絵本は、以下の構成になっております。
1)キャラクターの紹介(スライド3)
2)練習(スライド4-11)
3)劇(スライド12-33)
4)ナレーター(スライド12-33)
5)地図(スライド34)
6)手話単語帳(スライド35-36)
7)作者(スライド38)
8)おれい(スライド38)



物語を進めるためには、画面の右下にある、「→」を押して進めてください。

mi10.png
(進む: 右下、緑丸で囲みました)



誤った選択肢を選んだ場合は、右下にある戻るボタンを押すことで選択肢に戻ることができます。

mi11.png
(戻る:  右下、緑丸で囲みました)



2)練習(スライド4-11)
絵本が始まる前に2回、練習できるようにしました。一つ目は答えのある問題です。2つ目は答えのない問題です。



5)地図(スライド34)
もしも他のスライドに飛びたい場合は、地図を使うことで簡単に飛ぶことができるようにしました。すべてのスライドの左下に、世界地図の絵がありますので、それをクリックしてみてください。

mi12.png
(地図: 左下、黒丸で囲みました)
Posted by 山田 at 12:11 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2020年4月生活記録【第16期生 皆川愛】[2020年05月08日(Fri)]
まだ新型コロナウイルスが猛威を振るっていますね。
今月は、「健康格差ととろう者」についてです。

カチンコ動画はこちらより


@パンデミック下での健康格差(0:26)
A日本における健康格差(3:04)
Bろうコミュニティにおける健康格差(4:19)
C手話による調査の開発(6:17)
Dアンケート調査ご協力の依頼(10:49)

@パンデミック下での米国における健康格差
現在、米国では、新型コロナウイルスによる全米での黒人の死亡率が、
アジア人の2.4倍、白人の2.6倍というデータを打ち出しています(APM Research Lab, 2020)。

コロナウイルス自体は誰のことも差別せず、公平で、あらゆる階層にとっての脅威であるにも関わらずです。
実際、王族や宰相から、国民的英雄も襲いました。
しかしながら、医療制度へのアクセスの不公平さ、
職種によってハイリスクな環境に身を置き続けなければならない人がたくさんいるのです。

黒人だからという理由で健康格差が起こるのではなく、
従来の喘息の有病率が高いこと(CDC, 2020)、
黒人を取り巻く労働状況、例えばブルーカラー職種が多いためテレワークが困難(U.S. Bureau of Labor Statistics, 2018)
保険の適用範囲によって、治療における保険が適用不可、
などによる、社会的経済的地位が結びついていると考えられます。
1.jpg


さらに、喘息の有病率が高いことは、黒人の居住地の環境や遺伝が大きく影響していると言います(U.S. Department of Health and Human Services Office of Minority Health, 2015)。

それが人種ごとの不平等、健康格差です。

ただ注意しなければならないのは、その人種の者全てそうだというわけではなく、そういう傾向がある、というものです。

健康格差はなぜ起きるのでしょうか?
それには様々な要因があり、健康の社会的決定要因 (Social Determination of Health)と呼ばれます。

A日本における老後の健康格差
日本でも、所得や学歴、運動量、社会参加、地域の結びつきなどの社会階層間において、
老後の健康に格差が生じることがわかっています(日本老年学的評価研究, 2014)。
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Bろうコミュニティにおける健康格差
日本のろう者の中でも健康格差が起きているのでしょうか?
それは未だわかっていません。なぜなら、研究が未だなされていないからです。

米国では、ギャロデット大学にある、
ろう健康研究センター(以下、研究室 正式には”Center for Deaf Health Equiety”)を中心に、
ろうコミュニティにおける健康格差の研究、介入に取り組んでいます。 
今学期より、パートタイムで働かせていただいています。
スクリーンショット 2020-05-06 13.32.50.png

センター長はプールナ・クシャルナガル先生 (Dr. Poorna Kushalnagar)で、
2017年に設立して以来、国立衛生研究所(NIH)などの政府機関から千万単位の助成金を受けて、
手話を主に言語とするろう者にアメリカ大規模研究をされています。
一年に5〜10本の論文も書かれているほどで、
手話を含め全てのペースがとても早く、ついていくのに必死ですが、
聡明で、厳しさもありながら温かい先生です。
私にとってろう女性のロールモデルとなっています。
D37EB502-B878-47C9-B785-8450B1E88AFB.jpg

(夏に開催された世界ろう者会議の時にて、
 左がクシャルナガル先生)
後ろのポスターは(Kushalnagar et al, 2019)の参考文献参照

Cろう・難聴者を対象にした新型コロナウイルスにまつわる意識調査と手話による調査の開発
今回、クシャルナガル先生のご指導の元、
ギャロデット大学の助教授である高山亨太先生とともに、
新型コロナウイルスにまつわるろうコミュニティを対象にした調査を実施させていただく機会に恵まれました。

全ての質問・回答に、日本語とともに日本手話動画が記載されています。
スクリーンショット 2020-05-07 13.24.49.png

(写真はデモグラフィックの一例)


アメリカ手話から日本手話の翻訳に始まり、逆翻訳、参照を経て妥当性の検証をするなど、
多大な方々にご協力いただきました。
世界ろう者会議でのポスターの内容をもとに、日本手話動画作成のプロセスを記します。

@翻訳(Forward translation):アメリカ手話⑴→日本手話への翻訳
バイリンガルのろう者がアメリカ手話ビデオを元に日本手話へ翻訳します。

A逆翻訳(Back translation):日本手話→アメリカ手話⑵への逆翻訳
他のバイリンガルのろう者が日本手話ビデオを見て、アメリカ手話に翻訳します。
この際、逆翻訳の担当者は⑴のビデオを見ることはできません。

B参照(Reconciliation):アメリカ手話⑴⇄アメリカ手話⑵との参照
アメリカ手話のろう通訳士、@とAとは他のバイリンガルのろう者との二人が
同言語である⑴と⑵のビデオを見て、内容に相違がないか検証します。
必要時、バイリンガルのろう者は、日本手話のビデオの確認も行います。

スライド3.jpeg


Bの段階で、⑴と⑵の内容に相違があった場合、フィードバックを受けて、@からやり直します。
2度繰り返すこともありました。
内容に相違がない場合は、承認となり、Cの認知面接へ移ります。
3.jpg


C認知面接(Cognitive interview):
Bの段階で承認を得たビデオ(下書きの段階)を数名のろう者に見せ、
本人が回答したことについて、面接者がそれにまつわる質問をし、内容妥当性について確認を行います。
また、調査についてののフィードバックも同時に頂きます。
4.jpg


C本撮影:日本手話ビデオの作成
下書きのビデオを忠実に、また必要時これらのフィードバックを参考にし、本撮影にかかります。

昨日リリースしたところ、動画が重くて再生できないないといった物理的な面や、
ネット環境がない人への調査参加へのアクセスなど、次の課題があることは承知の上ですが、
同意書から全質問・回答、終わりのお礼まで全てにおいて手話でアクセスできる調査は国内で初めてに等しいと思います。

ろう者は多くの場面で、言語バリアの観点から調査の対象から外されてきたことがあります。
取りこぼしがないように調査の対象に含め、
ろう者における健康格差について様々な要因とともに追究していくことが求められると考えます。

最後にろう・難聴者のみなさまにこちらの調査の協力をお願いできますと幸いです。
所要時間:10〜15分
締め切り:5月24日
目的:新型コロナウイルスにまつわる気持ちや知識についてお伺いし、
   公的機関からの手話でアクセスできる情報の提供や、自宅待機における孤独への支援など、
   今後の活動、研究の指針にしたいと考えています。
こちら、もしくはQRコードより
QR_830079.png


スクリーンショット 2020-05-06 18.43.43.png


絶対皆さまに還元できるように活動してまいりますので、
ご協力・応援のほど、よろしくお願いいたします。

<参考文献>
APM Research Lab. (2020). COVID19 Deaths by race and ethinicity in the U.S. Retrieved from
https://www.apmresearchlab.org/covid/deaths-by-race#reporting

Center for Disease Control and Prevention. (2020). Asthma Surveillance Data. Retrieved from https://www.cdc.gov/asthma/asthmadata.htm

Kushalnagar, P., Paludneviciene, R., Rivera, D. Bruce, S, Mirus, K., Ryan, C., & Minakawa, A., & Kallen, M. (2019). Moving from research to practice: Making patient reported outcomes measure accessible in signed languages for Deaf people. 2019 World Congress of the World Federation of the Deaf, Paris, France.

日本老年学的研究評価. (2014). http://www.mcw-forum.or.jp/image_report/DL/20180314-1.pdf

U.S. department of Health and Human Services Office of Minority Health. (2015). https://www.minorityhealth.hhs.gov/omh/browse.aspx?lvl=4&lvlid=15
Posted by 皆川 at 11:33 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2020年4月生活記録【第13期生 橋本重人】[2020年05月08日(Fri)]
「障害プライドパレードって知ってる?」

ギャロデット大学のOSWD (Office for Students With Disabilities/障害学生のためのオフィス)で働いている時に、あるボスにそう聞かれました。初めて接する名称に驚きながら詳しく聞いてみると、最近アメリカのあちこちでこういったパレードが開催されるようになっているそうです。

今回はこの「障害プライドパレード」について少し話したいと思います。
この名称の通り、障害者を祝うためのパレードです。 The disability Pride Associationのホームページでは「障害についての考え方や定義を変える、障害に対するスティグマ(偏見)をなくし、障害とは自然なことであり、障害のある人たちの多様性の信念を促すことを目的にしているパレードである」と述べています。
https://www.disabilityprideparade.org/parade-mission.html

初めて開催されたのはイリノイ州のシカゴでした。アメリカで一番開催数の多い州はシカゴであり、毎年行われています。なぜシカゴなのか理由はわかりませんが、首都のワシントンD.C.では開催されていないことに少し驚きました。そのため、ボスは是非ともワシントンD.C.でもこのようなプライドパレードを行うことができたらという気持ちがあるとのことです。ワシントンD.C.では、その知名度がまだまだ低いため、ギャロデット大学のOSWD特定の掲示板にそれに関する情報を集めて掲示して欲しいと頼まれ、私ともう一人の学生と二人で協力しながら情報を集めたり、掲示用レイアウトを考えたりしました。入念にチェックの必要のある作業だったため、完成するまでほぼ一ヶ月かかりました。その力作はこちらです。
そのボスに許可は得ております。

IMG-2978.jpg
学生がその掲示板の前に立ち止まって読んでいる場面を見かけると、よっしゃ!という気持ちになります。

今年(2020年)のシカゴではADA(アメリカ障害者法)制定30周年記念として大規模なパレードを行う予定だったのですが、コロナ影響でどうなるかは分からないそうです。


それから、ボスに勧められた映画が印象に残ったので、そのことを書きたいと思います。タイトルは「Crip Camp: A disability Revolution」という映画です。ADAが定められていなかった頃、障害のある人々の中には学校や職場で対等に接してもらえなかったり、いじめや差別の経験をしたり、また自信がなく自分から行動を起こそうとしない人がたくさんいました。普段の生活では、周りがサポートしてくれているから『してもらって当然』、または、周りを頼りにしてしまっているからこの理不尽な状況でも我慢する、そんな環境で社会参加する機会を与えてもらえずにいたのでした。そこで、Larry Allison(ラリー・アリソン)という人がニューヨーク州でサマーキャンプJened(イェンド)を立ち上げ、様々な障害のある人々が集まって、ともに生活しました。障害のある人々自らが役割分担して、責任を持って行動する。例えば、インタビューを行う、ゲームを考える、司会進行をするなど、キャンプ外では障害があるからといって経験させてもらえなかったことばかりでした。また、ワークショップでは、苦しい、寂しい気持ちや理不尽な経験したことを共有することで、「僕だけではないんだ」とキャンパー同士の絆が強まっていきました。ある女性、Judith Heumann(ジュディ・ウーマン)さんは、キャンプ後、社会に自分たちのことを訴えたい気持ちが強くなり、代表としてカリフォルニアのバークレーで仲間と団結し、ホワイトハウスへ署名運動したり、泊り込みをしながらデモ運動をしたりして、ついにADAが認められるようになりました。それが認められるようになるまでの過程が記録されているドキュメンタリーがこの映画です。




このように、仲間と語り合ったり、ともに過ごしたりすることで自分に自信がついたり、安心したりしますよね。また、おかしいと思ったことをみんなで話し合ったり確認したりすることでどんな方法がベストなのかを考えることもできます。そんな集まりがあるからこそ、力を一つにして活動を起こすきっかけにもなります。みんなで力を合わせて行動を起こすというのはとても勇気のいることだと思います。仲間がいるからこそ、周りからどう言われようともその信念は揺るぎません。そんなみんなの行動がADAと結び付けられたなんてすごいことだと思います。日本も昔の人々が戦ってきたからこそ、いまの恩恵があるということを忘れずにいたいです。個人的に自主課題研究で様々な州のろう学校の先生にインタビューを行いましたが、やはりろう発達障害学生のインクルージョン教育を促すには、教員一人の力だけでは太刀打ちできません。同僚の先生、主任や校長、専門家、医療関係の人たちとのチームを組んで取り組むことが大切であるとこの映画を観てさらに確信するようになりました。

そんな情報を教えてくださったボスに感謝しています。ちなみに、そのボスはOSWDのカウンセリング担当、ノートテイクのコーディネーターでもあり、政治関係の講義まで担当をしている多忙な女性の方です。聴者でとても気さくな方なので、OSWDの利用者はよく彼女の元へ会いに行きます。私も分からないことや疑問に思ったことなどがあったら、すぐに彼女に尋ねますが、彼女は嫌な顔一つもせず丁寧に対応をしてくださいました。1年間半、共に働くことができたことは貴重な経験です。
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Posted by 橋本 at 11:13 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2020年3月生活記録【第13期生 橋本重人】[2020年04月08日(Wed)]
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みなさん、こんにちは。新型コロナウイルス が世界180カ国、地域に広がっています。米国の感染者は37万人を超え、世界最多となっています(4月7日時点)。ギャロデット大学では3月11日に学長からの発表で、春休み以降(3月23日)はオンライン形式での開講となりました。その発表から春休みに入るまでの間、私はOSWD(障害学生支援室)でずっと働いていました。案の定、学生や保護者からの問い合わせや連絡が殺到しました。新型コロナウイルスの今後の対応方法やオンラインクラスや課題をどのようにすればいいかの不安事や相談ばかりで、担当教授もOSWDのスタッフも私たち学生もてんやわんやでその対応に追われていました。また、寮生たちは18日(水)までに寮を出なければいけないため、朝から夕方まであちこちの寮の前に車が停まっていました。保護者や親戚が学生を迎えに来ていました(留学生や特別事情のある学生は寮にとどまることができました)。私も春休み中は同学部の友人たちの荷造りを手伝いました。最後に、再会できることを約束して、強く手を握り合って別れました。

春休みが終わった後は、Zoomというビデオ通話ツールでリアルタイムに授業を受けています。やはり教室で授業を受ける雰囲気とは違うため、なかなか慣れません。特に肩が凝ってしまいます。じっと教授や学生の手話を見逃すまいとパソコンの画面とにらめっこするため、ついつい顔を前に傾いてしまいがちです。春休み後の最初の週は「どのタイミングで発言者を見たらいいか」等、みんなでルールを話し合いました。普段は教授を見る、手をあげて指名されるまでは発言しない、教授が学生の名前を言ったら、その学生の画面を注目する等のルールを決めました。自分の写っている画面の背景や服装にも気を使う必要があります。
実際のクラスと違うルールのため、私だけでなく他の学生もみんなクラスが終わった後はくたびれていたようです(個人的にメールのやりとりをして感じました)。精神的に苦しい時もありますが、春学期が終わるまで、残りの1ヶ月のため、クラスメートや友人と励まし合いながらなんとか読み物課題やプロジェクトに取り組んでおります。
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今回は受講しているDifferentiated Instruction(多彩な学習方法)のクラスについて学んだことを書きたいと思います。どの学校でも学習における個人差や特性が多様な児童生徒一人ひとりに、どのように指導をしていくかが課題となっています。その解決策の一つとして、Carol Tomlinson(キャロル・トムリンソン)先生が提唱する多彩な学習方法を取り入れた指導法があります。これは、児童生徒それぞれの多様性に目を向けた、教室での指導法であるとトムリンソン先生は述べています。児童生徒の学習最終目標は同じですが、教員がそれぞれの児童生徒の状況に合わせていくつかの手立てを提供していくという方法です。一斉指導(みんなで同じ学習方法で同じことを学ぶ)とは違います。教室で教員ひとりで同時に違う指導方法で行うのは難しいですよね。その方法を行うには、チームティーチングとして補助の教員を取り入れたり、課題をいくつか用意して児童に選ばせたりするということです。

例を出します。教室に数名の児童がいると想定します。児童みんなは読解力もコミュニケーションモードもそれぞれ違います。そんな児童たちに対して多彩な学習方法を取り入れます。

社会(歴史)の授業です。
ある戦争について生徒グループいくつかに分かれてインターネットで調べもの学習をします。前もって教員は各グループに調べたことをどのように発表するかを伝えます。あるグループは劇で表現する、他のグループはパワーポイントで発表する、もう一つのグループは手話動画を作ります。生徒はやりやすいようなパフォーマンスを選んでグループを作り、仲間と協力しながら作業を取り組みます。

算数の授業です。
児童全員で今日の授業の流れを確認してから、教員が児童を3つのグループに分かれます。実際はグループをそれぞれの算数スキルのレベルで分かれていますが、児童たちに気づかれないようにグループ名を色の名前(青、緑、黄色)にします。青(基本)グループの児童は選択肢のある課題を、緑(中程度)のグループの児童は基本グループの課題に応用問題をいくつかを取り入れて取り組みます。黄色(応用)グループには自分で問題を考える、少し抽象的な課題を出します。


このように、トムリンソン先生は、児童生徒の個人差や特性に応じた教えるべき基礎・基本を本質的な理解や問いなどを用いて明確化し、実際の授業では「contents (学習内容)」、「 process (学習プロセス)」を多様化して、理解を得ているかどうかを「products (成果物)」で評価すると提案しています。多彩な学習方法を行うには、教員は前もって児童生徒の特性を把握する必要があります。そして、どのような内容で、どういった過程で児童生徒が学習していくか、常にチェックします。最後に、最終目標を達成できているかどうか児童生徒の発表、作品やワークシート、ノートなどで評価するという事です。

その多彩な学習方法はすべての授業に当てはまるとは限りません。しかし、私たち教員は様々な指導方法を知り、児童生徒の実態や目的に合わせて柔軟に指導・対応することが求められます。


参考文献はこちらです。
Tomlinson, C. (2017). How to Differentiate Instruction in Academically Diverse Classrooms (3rd ed.). Alexandria, VA: ASCD.
Posted by 橋本 at 11:51 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2020年3月生活記録【第16期生 皆川愛】[2020年04月08日(Wed)]
今月は新型コロナウイルスとろうに関する話題です。

カチンコ動画はこちらより 

 @いまの米国での生活 (0:44)
 A米国ろうコミュニティへの影響と動き (3:07)
 B仮の身体可能性 (7:56)
 Cいま私たちにできること (9:08)


@いまの米国での生活
先月の生活記録を書いた3月初旬、
新型コロナウイルス感染症はアジアを中心に流行していることを目にしてはいたものの、
米国での感染者数は微々たるものであり、遠い世界の出来事と捉えていた人が多かったように思います。
かくいう私も研究室の仕事でロサンゼルスに行っていました
(これについては落ち着いたら記述します。)

ところが3月中盤から米国での情勢は大きく変わりました。
死亡者の報告が各地で出始め、私の通うギャロデット大学も閉鎖になり、
授業や会議は全てオンラインに移行しました。
そんな中でも、は咲くという自然の強さを教えてくれます。
IMG_1206.JPG
(スーパーへ買い物の帰りに見た桜)


私の住むワシントンDCと隣接する州では、ロックダウン(首都封鎖)の政策が取られ、
映画館や劇場、居酒屋などは休業、レストランは配達や持ち帰りのみ、
さらにクリニックも休業しています(大きな病院は通常通り運行しています)。

ただし、クリニックは、医療ポータルというネット上で、過去の病歴や治療が閲覧でき、
さらに薬の再処方の依頼をしたり、医師やスタッフにメッセージを送ったりできる制度があり、
継続した医療サービスを提供しているところも多いようです。
スクリーンショット 2020-04-07 01.25.00.png
(FollowMyHealthより、薬の再処方のリクエスト画面)


さらに、ソーシャルディスタンス(社会的距離戦略)といって、
6フィート(約1.8メートル)距離を置くように言われています。飛沫感染を防ぐためです。
先日訪ねたスーパーでは、施設内で人が密集しないように、入れる人数を50人に制限し
かつ人々に距離を置くように勧告していました。
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(スーパーの前で6フィート置きながら並ぶ人々)


A新型コロナウイルスを取り巻くろうコミュニティへの影響と動き
ギャロデット大学が閉鎖したことによる影響をまとめた記事の要点をあげます。
スクリーンショット 2020-04-07 02.02.41.png
(BuzzFeed Newsより)

ギャロデット大学の学生にとって、ろう者同士が交流し、手話で完全にコミュニケーションアクセスできる場所は貴重です。
地元に帰れば、地域にろうの仲間がいなく、家庭において口話のみの生活を強いられ、孤立する学生もたくさんいます
こうした学生のストレス、またメンタルヘルスへの影響は考慮すべきことです。
さらに、ろう者の雇用の場の一つであるギャロデット大学の封鎖によって、
飲食や清掃サービスが不要になるため、雇用を失うろう者も出てきました

当時は、米国連邦や米国疾病予防管理センター "通称CDC”からの情報発信に手話がついておらず、
ろうコミュニティから情報アクセス困難が問題に上がっていました。
そうした声を受けて、3月22日にCDCからろう通訳者による動画発信がなされました。
4月6日現時点で、11本の動画がアップされています。
こちらより(ASLと英語字幕のみ)
スクリーンショット 2020-04-07 02.05.08.png



全米ろう連盟は、新型コロナにまつわるろう・難聴・盲ろう者の受診におけるコミュニケーションアクセスに関して医療従事者向けに以下の推奨事項を公表しています。
こちらより(英語のみ)
スクリーンショット 2020-04-07 01.57.28.png

日本でも参考になると思うので、要点を記します。
新型コロナに関連した受診においては、従来の医療サービスとは違う状況にあり、
障害を持つアメリカ人法(ADA)に基づくコミュニケーションの義務付けは猶予される場合があること。
対面の手話通訳は手話通訳者に感染のリスクをもたらすため、ビデオ電話による遠隔通訳サービスの活用が望ましいこと。
通訳不在の場合は、音声スピーチを文字化する翻訳機器やアプリを活用し、コミュニケーションを最大限にすること。
について、勧告しています。

逆に、ろう・難聴・盲ろう者向けの心構えも公表されています。アメリカ手話による解説ビデオもあります。
こちらより(英語・ASLのみ)
スクリーンショット 2020-04-07 01.54.08.png

まず、ほとんどの医療従事者はマスクやゴーグル、手袋で感染予防措置を取っており
さらに窓やカーテンの後ろなどの見えない位置から話しかけてくる可能性があること。
入院期間、感染防止の観点から面会が許可されず、ろう者が孤立する可能性があること
それでもなお、自分の医療について自分で決める権利があることを強調し、コミュニケーションを最大限にするためのいくつか役立つであろうアプリやサービスを提示しています。

B の身体可能性 “temporarily able-bodied” (ろう者学の観点から)
ウイルスは身分や地位に関係なく襲ってくきます。
例えば、暗黒の中世として、大疫病と言われたペスト。
これは身分に関係なく、人々のリンパ節を腫らし、皮膚に黒斑を作り、場合によっては死に懲らしめました。
当時は細菌学がまだ発展しておらず、治療法もないため、緩和の当てもなく人類を苦しめたらしました。
医学、医術が発展している現代でさえも、今日世界中で累計130万人を苦しめている/てきた新型コロナウイルス感染症。

世の中、ヒエラルキーで上部階層にいる人は感染しないだろうなんていう言説をたまに聞きます。
医療制度のアクセスで見ればそうかもしれません。
在宅勤務ができる地位にある人間はウイルスの暴露の機会を確かに減らします。
現在、米国に学生として在住する私は、学生としての業務を在宅で全うでき、
買い物もインターネットで注文すれば、完全に外出せずに済んでいます。
しかし、その裏に働いている人がたくさんいることを忘れてはいけないとも思い知らされます。
私たちの市民生活維持のために、物流関係者、工場勤務者、介護者、警察官、医療従事者などは
現地に出向かなければなりません。

今学んでいるろう者学では、仮の身体可能性 “temporarily able body” という言葉がよく使われます。
障害や病気は、どこか「他人のこと」と思っていないだろうか。
それが「自分たちのこと」に誰しもなりうる可能性があるのにというものです。


日本国内における新型コロナウイルスに関連した死亡者数で見れば73名(4月6日現在、厚生労働省発表より)。
今の日本にも、自分は関係ないだろう、そう思ってる人がたくさんいると思います。
今の状況、ヒエラルキーとか年齢とか関係ありません。
ウイルスはどこからとなく、誰に関係なく襲います。

C いま、私たちにできること

私にできることはなんだろうかと、ろうの看護師の立場で、主に厚生労働省の情報を元に新型コロナウイルの手話動画を二つ作成しました。

・新型コロナウイルス(コロナウイルスとは、感染経路、感染〜発症まで、症状と対処方法、予防方法)


・新型コロナウイルスにまつわるカタカナ用語の解説(クラスター、オーバーシュート、ロックダウン)


また、ろうコミュニティを対象にした新型コロナウイルスに関する調査も倫理審査委員会に提出し、準備を進めています。
これについては後日、こちらにも公表させてください。

先月に紹介させていただいた「新型コロナウイルス、情報が届きにくい方(子ども・外国語話者・視覚/聴覚障害等)のサポート・不安のケア」のページの聴覚障害者の欄で、
当初は口話と筆談でのコミュニケーションに限局されていましたが、
手話でのアクセスについて考慮してもらえるように、文章を追加・修正していただきました。
こちらより

現在このようになっています。
スクリーンショット 2020-04-07 09.49.53.png


くれぐれも身体をお大事に、そして、可能な限り外出を控え、自分と、周りの大切な人の健康を守ってくださいね。

<参考文献>

Breckenridge, C. A., & Vogler, C. (2001). The critical limits of embodiement: Disability’s criticism. PUblic Culture 13(3), 349-357.

Cohen, S. K. (2017). Cholera revolts: a class struggle we many not like. Social History 42(2), 162-180.
Posted by 皆川 at 09:18 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2020年3月生活記録【第13期生 山田茉侑】[2020年04月08日(Wed)]
くら寿司1.jpg

くら寿司2.jpg

写真は、Austinにあるアジアタウンの一角にあった くら寿司です。
くら寿司は、アメリカでも展開しています。現地の人に好まれるからなのか、メニューには握り寿司よりも巻物が多かったです。中には、タコスに使われるトルティーヤを使った巻物もありました。価格は一皿280円ほどでかなり高いのですが多くの人で賑わっていました。教育実習で疲れている時に来てはエネルギーをもらっていました。


近況ですが、こちらではコロナウィルスで全面的に自粛ムードになっています。スーパーでは、ティッシュペーパーや石鹸の買い占めが続いており、入手困難で困っています。12週間あった教育実習も、10週目で中止になりました。最後の2週間はテキサスろう学校の乳幼児教育相談に配属される予定でしたが、残念ながらその機会はなくなってしまいました。幸い指定された時間以上に幼稚部クラスで指導したため、教育実習の単位は取れ無事卒業できそうです。しかしボストン大学の同期のうちの何人かは、教育実習が遅くに始まり数週間で休校になったため、単位が取れなく今年卒業できないのではないかと危惧しております。




今月は、テキサスろう学校での見学やインタビューで得た情報を共有したいと思います。




◆ACCESS (Adult Curriculum for Community, Employment, and Social Skills)
高等部卒業後の生徒(18から22歳まで)を対象にしたプログラム。他の学校を卒業したろう生徒もACCESSに入れます。

ACCESSのゴール:職業、生活において自立を目指す

日本のろう学校には、理容、木工、コンピュータなど特定の仕事に特化した専攻科がありますが、ACCESSの場合は職業や生活一般の自立を学ぶという点で異なります。具体的には、調理、パソコンの扱い方、銀行口座、契約、性教育など幅広く自立を促す教育をしているそうです。

ACCESSに入るための入試はありません。
1)高等部を卒業した生徒
2)ろう発達障害の生徒
3)ろう重複障害の生徒
以上の生徒がACCESSに入っております。2)3)の生徒に関しては自身のニーズを認知し説明できるようにするためのサポートをしているそうです。

また、生徒のうち希望者は午前中に仕事に行き、午後に学校で授業を受けられます。その仕事先には、テキサスろう学校のスタッフがジョブコーチとして派遣されております。

数年前までは、ACCESSの修了後の支援が十分ではなかったため、家で一日中テレビを見る生徒もいたそうです。そのため、2018年度から卒業生の住む町と連携を始めるようになり、修了後も働けるよう支援を行うようになったそうです。




◆PIP (Parents Infants Program: 乳幼児教育相談(0-3歳児)
乳幼児教育相談のクラスは毎日あります。4人の先生(ろう2人聴者2人)と、2人のアシスタント(共にろう者)がおります。お子さんは全部で35人ほどおり、半数以上がデフファミリーです。聴者家族でも、ほとんどが3歳になったあとも続けて幼稚部に入学します。その理由として、ろう学校にろうの校長先生や学部長がおり、その上たくさんのろうの先生や生徒といったロールモデルがいるからではないか、とお話ししました。
テキサスろう学校の乳幼児教育相談では、カリフォルニアろう学校と同じように、基本的に保護者がクラスに滞在することはありません。そのためクラス中に通訳者が来ることもないようです。
(TLC, HMS などといった他のろう学校では、保護者同伴でした。)
ろう学校が親支援の一環として家庭訪問できるのは、(つまりテキサスろう学校が支援できる範囲は)学校から45マイル以内です。それ以上は、他の市のEI(Early Intervention:早期教育)が親支援をすることになります。どうしてもテキサスろう学校に通いたい場合は、保護者が自力で通うことになります。
テキサスろう学校では、遠方の早期教育のスタッフへトレーニングやワークショップを提供したり、テレビ電話で向こうの早期教育のクラスに絵本の読み聞かせをしたりして、テキサス州の早期ろう教育を支えているそうです。




◆手話通訳オフィス
テキサスろう学校には、正規雇用の12人の手話通訳士がいます。
子どもたちの中には、午前中は地域の学校に通い、午後にろう学校で授業を受ける子もいます。そのため、午前中ほとんどの手話通訳士は地域の学校へ行き、ろうの子どものいる一般学級で通訳をしているそうです。手話通訳士は正規雇用なので、興味深いのですが、地域の学校への通訳派遣費用は全てろう学校が負担することになります。子どもの「話す・聞く練習をサポートする」と個別の教育支援計画に記載されているためです。




◆保健室
保健室にはろうの看護師がいました。以前、幼稚部の子どもを連れて視力検査をしましたが、看護師のあざやかな子どもの扱い方に感動しました。
アメリカの視力検査では、以下のように文字を使った表を使います。

視力検査表3.png

何人かの子どもは、文字の形が似ているので「D」と見えているのに「b」と答えたりしていたのです。まだ子どもの中で文字と指文字が対応してないためです。子どもたちの後ろで終始ハラハラしていたのですが、ろうの看護師さんはニッコリと微笑みながら対応していました。後で聞くところによると、わたしが心配していたことは全て杞憂だったようです。バイリンガル教育で育つ子どもの傾向、IQそして年齢を考慮して対応しているそうです。


長くなりましたが、今は大変な時かと思いますので、手洗いうがい、コロナ対策をしっかりして、体調にお気をつけてください。では、来月にまたお会いしましょう。


Posted by 山田 at 05:04 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2020年度留学奨学生の募集開始〈延期〉のお知らせ[2020年04月01日(Wed)]
2020年度留学奨学生の募集開始〈延期〉のお知らせ

新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の世界各地への急速な拡大を踏まえ、
当協会といたしまして、「2020年度日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」において、
以下のような取り扱いで進めることといたしましたので、お知らせいたします。

<2020年度 第17期留学奨学生募集>
 2020年4月1日に予定していました募集の開始を見送ります。
 3ヶ月間様子を見て、2020年7月1日前後に改めて周知いたします。

                  NPO法人日本ASL協会(留学奨学金事業係)
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Posted by 事業担当者 根本和江 at 09:00 | 事業担当者よりお知らせ | この記事のURL
2020年2月生活記録【第16期生 皆川愛】[2020年03月08日(Sun)]
新型コロナウイルスの流行によって、大きな不安を感じていることと思います。
特に様々な情報が溢れかえっている中で、
何が正しいのか、正しくないのか、結果的に混乱を呼んでいると思います。

以下,情報が行き届きにくい方(子ども・外国語話者・視覚/聴覚障害など)を念頭に書かれており、
新型コロナウイルスの特徴、対処方法、予防法などの情報が網羅されていて、
信頼できる情報を掲載しておきます。(2020年3月7日時点)
スクリーンショット 2020-03-07 21.59.03.png

こちらより
監修が母校である大学の堀成美先生で、ろう・難聴者へのサポート情報の欄もあります。

一部抜粋「今回の新型コロナウイルスの予防対応のように、多くの方がマスクをして過ごしている状況では、口元の動きを読んで話の内容を理解・予測することが難しくなります。こうした困りごとへのサポートとしては、筆談やスマートフォンにテキストを打つといった代替手段でのコミュニケーションを行うことが有効です。」
と書かれていますが、コミュニケーション方法が限定的ですね。
手話でのアクセスについても言及してもらえるように、メールしておきました。

*3月21日現在、意見が反映され、
「今回の新型コロナウイルスの予防対応のように、多くの方がマスクをして過ごしている状況では、口元の動きを読んで話の内容を理解・予測することや、手話における非手指動作を見ることが難しくなります。
こうした困りごとへのサポートとしては、筆談やスマートフォンにテキストを打つといった代替手段でのコミュニケーションを行うことが有効です。ただし、手話を第一言語とする方の場合、テキストコミュニケーションの内容理解や表出が難しい場合があります。その場合は、その方の無理のないペースに合わせる、イラストや写真をあわせて見せる、身振り手振りを交えるといった工夫をしてみてください。
と追加・修正していただきました。

カチンコ動画はこちらより
(遅れて3/12にアップしました)

@はじめに(0:04
A障害の定義(1:59
Bろうに関する説明とモデル(5:55
Cまとめ(11:52

前置きが長くなりましたが、
今月のお題は、「ろう・難聴者は障害を有しているか」です。
この議論はよくあるようで、しかしながら明確な答えはなく、無意味なのかもしれませんが、
ろう者とは?障害とは?を考える契機になったので、書かせてください。

20代前半の私だったら、その問いに即座に「違う(=ろうは障害者ではない)」と答えていました。ろう文化の概念を学び、ろう者が困難を抱えているのは、社会が手話を言語として承認せず、
それによる生活が保障されていないからだと批判し、角を立てていたように思います。
身体障害者手帳を持ち、行政からの障害というラベルを受け入れた上で、
手話通訳サービスを自己負担なしで依頼していたにも関わらずです。

今、当時の私の答えが間違っているとも、正しいとも言いません。
ただ、どの観点 “standpoint”に立つかで、上記の問いの答えは変化することを学びました。
そして、私の答えも多様に広がっていきました。
12月の生活記録でも書いたように、ろうの意味を何とするかがポイントとなってくると思います。

@障害の定義

まず、障害とは何か、二つの定義を見てみたいと思います。

1. 国際障害分類(ICIDH)
まず、国連下にある世界保健機関の国際障害分類では、障害のレベルを三つに分類しています。
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この定義は、疾病⇒機能障害(能力低下)⇒社会的不利というように直線的に障害を捉える、
また障害を個人の問題に癒着しているというその考えに疑問が上がり、
人と環境との関係にも目を向け、かつ生活機能に着目しようという流れから、
WHOから新たに国際生活機能分類(ICF)が提唱されました。

2. 国際生活機能分類(ICF)の定義
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活動・参加をゴールに、それを妨げているのは健康状態とそれに関連する心身機能だけでなく、
社会的に求められている活動や、環境、個人因子が複雑に絡み合っていると言います。

2001年にアップデートされた分類のコードを見ると、活動と参加のうちコミュニケーションの箇所に「公式手話によるメッセージの理解 “Communicating with receiving formal sign language messege”」と「公式手話によるメッセージの表出 ”Producing message in formal sign language”」が含まれていました。

しかし、心身機能のうち、音声と発話の機能では、音声言語の産生に焦点が当てられ、
手話による表出は含まれていません。まだまだ発展途上と言えるでしょう。
ですが、人々の生活の中にある活動として、手話が含まれているのは、大きな一歩だと思います。

この枠組みでは、参加が初歩的なゴールです。
例えば、アフリカのある地域で水汲みが日常的な活動として期待される場合、
歩行障害は、大きな制約となり命に関わる事象となりうります。
一方、アメリカにおいて、生活の中で多少の制約はありますが、
労働・雇用においてデスクワークなどの仕事の機会もあり、歩行障害はさほど問題にならないかもしれません(Wendell, 1997)。

ろう者に関してはどうでしょうか。
私は以前、ろう難聴者が利用者である老人ホームで働いていました。
そこでは手話によるコミュニケーションが中心で、建物も視覚的に優位なように設計されていました。
ろう職員の交渉によって、施設内の職員間の連絡方法にタブレットによるビデオ電話が取り入れられました。
そこでは当然、自身の聴覚障害を認識することはありませんでした。
しかし、大学病院への応募では、雇用の可能性はない、あるとしてもコミュニケーションがほぼルーティンでかつ少ない採血室でしか働かせられないと言われました。
前者と後者では、自分が感じる障壁はかなり違うものでした。

また、年代によって、障害というラベルによって経験されることも異なってきます。
1900年代後半のろう教育に見られた厳正な口話教育、手話の禁止は、現在ではかなり変化しています。
また、1950年をピークに実施されてきた強制不妊術は今日では禁止されています。

当事者といえども私が経験している現象は全てのろう者に当てはまるとは言えませんし、
ろう者は障害かと言われるとなんとも言えません。

ただし、
障害は社会的に構築されている=活動や参加の期待は社会的に構築されているといえます。

A障害にまつわる様々なモデル


次に、ろうに関する様々なモデルについても見ていきます。
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1. 少数者モデル
アメリカでは、1960年代からマイノリティグループによる権利運動が、
女性→有色人種→性的少数者(LGBTQA)→障害者の順で行われてきました。
これらのグループは、身体のある特質を理由に正当化し、コントロールされてきました(Baynton, 2006)。
例えば、女性は「感情的」「非理性的」という特質を理由に選挙権を与えられませんでした。
有色人種は平均的に白人より「頭蓋骨が小さい」ことを理由に脳が発達していないものとして、
人種的に劣っているとして、奴隷として扱うといったことが行われました。
ある身体的特質をエビデンスとし、合理化し、マイノリティグループにある人たちを排除してきたことがあります。
特に、米国では、ろう者は民族/人種的少数者と主張することもできます。
民族モデル “Ethinicity model” は、身体的特質の差異からそれぞれ特有のコミュニティを形成し、
そこで言語や歴史が代々的に継承されてきたという点で、ろうコミュニティに共通するとは言えます(Baynton, 2007)

2. 文化モデル
その後、1980年代から、Padden&Humphries (1985)やLane (1996) によって、
ろう者特有のろう文化やアイデンティティが提唱され始めました。
障害と引き換えに、文化・言語的マイノリティであるという主張が出てきました。
身体的特質による差別化、障害というラベルは優生思想をはらみ、強制不妊術や口話教育を生み出しました。
こうした従来の障害の枠組みから離脱するための抵抗としては必要な過程だったとBaynton(2007)は言います。
アイデンティティを基盤に、自分たちの権利を主張する手段としてです。
ただし、文化モデル “Cultural model”は、手話や行動様式を前提としているため、
身体については触れていません。
かといってろう者は、身体的特質を抜きにして感覚体験などの違いについて説明するのは困難であると指摘しています。
また、誰かがろう者ではないと言ったように排除するのにも問題があります。

3. 障害モデルと少数者モデル
そして、Baynton(2007)は、ろう者を少数者として主張するのと、障害者と主張するのでは、
どちらの方が合理的か、という疑問を投げかけています。
米国の法的根拠に鑑みれば、後者の方が合理的配慮が受けられ、ベネフィットも多いだろうと指摘しています。
もし、ろう者が障害者のラベルを廃棄するのであれば、合理的配慮と言われるサービスが受けられなくなり、
ろう者の生活はさらに後退するであろうと主張しています。

4. ポストモダンとしての未開発モデル

Davis(2007)は、こうした枠組みとなる様々なモデルを踏まえ、新しい視点の必要性を唱えています。
男女の二項対立に固執していた従来の女性学はジェンダー学となって発展し、対象を広げています。ろう者学も伝統的な枠組みからの脱構築としてポストモダンの視点での発展が必要だと主張しています。

そうした流れを受けて、生物学的、文化的多様性の枠組みでろうを捉えるデフゲイン(Bauman & Murray, 2015)が提唱されたのだと私は理解しています。
障害は社会にとって何をもたらすのか、生物学的多様性のレンズでみると、
人間は凸凹、差異があるからこそ、社会が発展し、健全な社会に貢献できると言えるからです。
そこにヒエラルキーもありません。

Bまとめ
障害の定義、ろうに関する様々なモデルを概観すると、「ろう者は障害者か」という問いへの答えは簡単ではないと思います。
ろう者としての自分の立場をどう主張するか、どの観点に立つか、次第だとも言えると思います。
この機にみなさんも考えてみてください。


<参考文献>
Baynton, D. C. (2006). Disability and the justification of inequality in American history. In L. J. Davis (Ed.), The disability studies reader (p.17-34). Routledge.

Baynton, D. C. (2007). Beyond culture: Deaf Studies and Deaf body. In H-D. Bauman (Ed.), Open your eyes: Deaf studies talking (p.293-313).  Mississippi, MI. University of Minnesota Press.

Davis, L. J. (2007). Postdefness. In H-D. Bauman (Ed.), Open your eyes: Deaf studies talking (p.314-325).  Mississippi, MI. University of Minnesota Press.

Lane, H. (2002). Do Deaf people have a disability. Sign Language Studies, 2 (4). 356-379.

Wendell, S. (1997). The rejected body. New York: Routledge.

世界保健機構 (WHO). (2001). 国際生活機能分類. Retrieved March 7th, 2020 from https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/42407/9241545429-jpn.pdf?sequence=313&isAllowed=y
Posted by 皆川 at 14:55 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2020年2月生活記録【第13期生 山田茉侑】[2020年03月08日(Sun)]
みなさまこんにちは。
アメリカでも、コロナウィルスの流行でボストン大学やあちこちの聾学校が休校になっています。前月から実習でお世話になっているテキサス州立聾学校はまだ休校の話が出ていません。ただ春休みが明けた後はどうなるかわかりません。わたしのクラス(幼稚部)では毎日誰かが風邪で休んでいます。出来る限り手洗い消毒の時間をとり、口周りや鼻を触らないよう指導しています。

今月は、わたしのクラスで発見した、役立ちそうな“テクノロジーを活用した教育”をいくつか紹介したいと思います。

1)インスタグラム
先生が、日々子どもたちの写真やビデオを撮っているのです。毎日そんなに写真を撮ってどうするのかなと思っていたら、「クラス限定のInstagramがあるのよ。」なるほど!これはいいアイデアだと思いました。
子どもたちの創作活動中の写真や、「何をしているのか、何を習ったのか」を子どもたち自身が説明したA S Lビデオを、毎日放課後に幼稚部クラスのアカウントからインスタグラムにアップロードしています。インスタグラムを通して、保護者は子どもが学校で何をしているのかを知ることができます。

2)iPad、keynote
教室には4つiPadがあり、英語や算数、そのほかのクラスで大活躍してくれます。例えば、絵本の読み聞かせのあとに、物語の「起・承・転・結」をiPadのkeynoteを使ってビデオに撮るアクティビティなどに使えます。ただ普通にカメラを開いて動画を撮るような方法だと、5歳児の子どもたちはiPadで遊びはじめます。なのであらかじめ3つしか動画を撮れない、というような「限定」をkeynote上で作るといいと思います。

以下の写真の左端にある3つの動画をクリックすると、その場で動画を撮れてそのまま簡単に埋め込めるようにしています。

keynote.png

手続き:
Keynoteに写真を貼り付け、その写真をクリックしたあとに上部にあるフォーマット欄の一番した「詳細」の中にある「メディアプレースホルダーとして定義」をクリックすると、写真の中にこのような写真の枠が出てきます(赤い丸で囲んだところ)。

Screen Shot 2020-03-07 at 4.54.03 PM.png

iPad上でそれをクリックすると、簡単にビデオ撮影ができ、勝手に指定した写真の中にアップロードできるようにしています。この方法だと、子どもたちもあといくつ何の
動画を撮ればいいのか見てわかりやすいので、モチベーションアップにもつながります。



この方法を応用してある授業の総締めでは、恐竜図鑑を作るアクティビティ(3日間 計30分)をしました。

1日目:好きな恐竜を選んで色を塗り、恐竜の名前を描く。説明したい部位にシールを貼る。
放課後、macを使って子どもたちが描いた恐竜のイラストをkeynoteにアップロードし、その写真を「インスタントアルファ」で背景を透明にしました。(インスタントアルファの詳しい使い方: http://www.keynote-study.com/apple-lesson_3-5.html
そして、先ほど説明したビデオ埋め込みの方法を使って、子どもたちが自らkeynote上でA S Lのビデオを撮り、それを直にキーノートに埋め込めるようにしました。

Screen Shot 2020-03-07 at 5.38.04 PM.png

2日目:今まで習った恐竜の体の各部位をA S Lで説明し、ビデオを撮る。
子どもたちが自らkeynote上でA S Lのビデオ撮り、それを直にキーノートに埋め込みます。

Screen Shot 2020-03-07 at 9.43.02 PM.png

3日目:撮影したA S Lビデオを参考にしながら英文を書き、それを各ビデオの下に埋め込む。
まずは授業中に子どもたちが英文をパーッと書きます。放課後にその紙を撮影してmacを使ってkeynoteにアップロードし、「インスタントアルファ」の上にある「マスクを編集」を使って文ごとにトリミングし、各ビデオの下に各文を置きました。

子どもたちも、自分の絵がkeynoteにある、嬉しい!図鑑みたいにいっぱい説明したい、いっぱい書きたい!と楽しく取り組んでいました。ビデオを使った授業作りの参考になれば幸いです。


3)朝の会の歌
先生オリジナルの朝の会の手話歌をビデオに撮ったものを毎朝流しており、みんなで真似して歌っていました。前週ボストン大学の先生が見学に来て、アドバイスでちょっと手を加え、ワーキングメモリーを強化させるような歌に変えました。
例えば、日本手話でいうと二拍子で手の形手(パー)(パー)を共通して使った手話を「頭周り/口周り/胴体/腕/空間」の順番で流していきます。「オープンマインド/本当?/わかる/プロ/CL: スムーズに進む」 それをスピードアップさせたり、スピードダウンさせたり、順番を逆にした手話歌のビデオを何回も何回も流し、リズムに合わせて太鼓を鳴らすことで、聴者が電話番号を瞬間的に覚えられるように、5つの手話を通して子どもたちのワーキングメモリーを鍛えられるのです。



詳しくは2018年12月のわたしの生活記録をご覧ください。


長かった実習も終わりに近づいています。毎日無我夢中で夢にまで実習が出てきてうなされる日々が終わるのかと思うと嬉しいような、大好きな子どもたちや先生たちとお別れするのかと思うと悲しいような、複雑な気持ちです。逃げたいと思ったことは数えきれません。でも、アメリカで教育現場に立ち、いろんな感情と戦いながら子どもたちと向き合えたことは一生の宝物になるのだろうな、と今からしみじみと感じています。

みなさまも体調に気をつけてください。
それでは来月にまたお会いしましょう。
Posted by 山田 at 12:44 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2020年2月生活記録【第13期生 橋本重人】[2020年03月07日(Sat)]
みなさん、こんにちは。日本にいる友人からコロナウイルスのニュースがメールで送られてきて、見てみると日本での感染者は360人になったようです(3月6日時点)。公立の小中高への臨時休校要請やトイレットペーパーやティシュの買い占め騒動など、あちこちで影響が出ていて心配ですが、早く収まって欲しいものです。一方、アメリカではインフルエンザが爆発的に流行しているので、手洗いとうがいを念入りにしています。

今回の生活記録は、印象に残ったある友人たちの会話をシェアしたいと思います。

二人はアメリカ人のろう者です。

IMG_3001.png


A:「また気温が下がったなぁ。こないだまでは暖かかったのに。」
B:「ほんとだね。」
A:「気温が上がったり下がったり(手のひらを下に向けてジグザグと後ろから前へと動かす)していて、嫌になるね。」
B:「そうそう、それを英語でFLUCTUATE(変動する)っていうの、知ってるよね?」
A:「ううん、知らない。」
B:「え!知らないの?!」
Aはあまりいい気分ではなくなってしまいました。

そういえば以前にも、ギャロデット大学の図書館で、あるろう学生が書くことを苦手とするろう学生に対して、そういった「え、知らないの?!」という態度を示していた場面を何回か見たことがあります。そう言われたろう学生は言い返すことができずにその場を去っていきました。私自身も英語学習者なので、立ち去った側の気持ちが分からなくもありませんが、私は明らかに国際学生のため周りからそういうことを言われたことがありません。

例えば日本手話で、左手の甲の上に右手を垂直に乗せてから右手をあげまて「ありがとう」と表現した時に「それをイタリア語では『Grazie』って書くんだよ、知ってた?」と言われても、へぇと抵抗もなく聞き入れますよね。なぜなら、日本手話とイタリア語は全く違う言語であると受け入れているからです。
では、「それを日本語では『ありがとう』と書くんだよ、知ってた?」って言われたらどう思いますか?前者と同じ気持ちにはならないのでしょうか。
なぜでしょう、それは日本手話と日本語がセットになっているからです。日本手話と日本語は違う言語のはずなのに、あれ?って思いますよね。

もし「知らないの?」と言われても、自分の書記言語の語彙数に嘆く必要はありません。手話で意味を理解できているから、自分を恥じる必要はありません。「へぇ、そうなんだ、一つ新しい単語を知ることができた!」という気持ちでいくといいです。

日本手話を日本語に置き換えることが苦手な人に対して「え!知らないの!?」という態度を示すことは失礼なことになります。私自身、日本のろう学校教員時代を思い出してみると、児童たちに無意識にそんな態度を示してしまったような気がします。今まで担当した児童・生徒たちに申し訳ない気持ちになりました。ろう学校の先生は、日本手話と日本語は別の言語であることを理解した上で、子どもたちの手話表現を読み取り、日本語ではこのように表現するよと常に伝える必要があります。先生たちのそういった些細な言動で、児童・生徒の言語学習意欲が左右されることを肝に命じておく必要があります。

そんな失敗をしないようにと、前述の友人たちの会話を自分の戒めとすることができました。

それでは、また来月にお会いしましょう。

IMG_3002.JPG
1月から週に1〜2回程度、ギャロデット大学のフィールドでジョギングをしています。
Posted by 橋本 at 12:39 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
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