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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2020年12月生活記録【第16期生 大西啓人】[2021年01月08日(Fri)]
2020年12月生活記録


※手話内容はブログ記事と同様です。
※日本語字幕はついていません。

山場だった秋学期の最終試験を無事終えて、今は1ヶ月の冬期休暇を満喫しています。コロナのこともあり、満足に旅行など外出はできないので、映画鑑賞をしたり友達とZoomで話し合ったりなどをして、過ごしています。クリスマスには他学部の教授や友人、学生の友達などが家に集まりホームパーティー。他にも年末では同居している2人と一緒に2020年を振り返る良い時間となりました。年末年始を家族以外、また日本以外で過ごすのはこれが初めてなので不思議な感覚でした。

さて今月は「英語教育」について少し考えたいと思います。この冬季休暇にろう児童生徒はどのように英語を学ぶのか英語に対して苦手意識を持たないようにするにはどうするべきか、など考える機会がありました。
まずに自分が学生時代にどのように学習したのかについて、述べておきます。

・発音をカタカナで書き、スペルや意味を覚える
・単語は繰り返し書くことで増やす
・文法やニュアンスは日本語や日本語対応手話で理解する。

私はこうして英語を学習しましたが、日本語が苦手な児童生徒は英語を理解するのに時間がかかるでしょう。ろう児童生徒にとって自然言語である“日本手話”が必要だと、様々な論文を通して改めて強く感じました。今の日本には日本手話で英語を学習できる環境が必要なのです。私の意見は以下のようになります。

英語語彙はASL指文字(Fingerspelling)から学ぶ

Photo Jan 06, 18 24 08.jpg
聴者は英語を声で話し、自分から発した声を自分で聞くことで脳への定着を図ることができます。ろう児童生徒は声を聞くことができず脳への定着ができません。多く見られるのは英単語を繰り返し書くことです。そこで私はろう児童生徒に必要なのはASL指文字だと考えます。自分の表した指文字を目で見ることによって、英単語を視覚的に脳に定着することができます。最初に指文字の形や動きを覚え、指文字から書記英語にします。こうした過程はアメリカのろう教育で一般的です。


文法やニュアンスは日本手話で理解する

Photo Jan 07, 16 27 10.jpg
文法やニュアンスなど複雑な内容を日本語で理解するにはろう児童生徒にとって難しく、日本手話で理解することに大きな意義があると考えます。例えば現在進行形なら「~中」と表現したり、ニュアンスの違いを非手指標識(Non-Manual Signal)で使い分けたりなどで視覚的に分かりやすく説明します。また日本語力の違いによって英語の理解が左右されることに違和感を覚えます。すべてのろう児童生徒が理解できる日本手話で英語を学習することで、日本語による理解困難を防ぐことができます。

簡単なASLを学ぶ時間を設ける

Photo Jan 06, 18 30 39.jpg
ASLを学び、用いることは話すこと、聞くことを通して異文化理解や言語活動に関心を持ち、学習への動機付けができることに意味をもちます。自己紹介や簡単な会話文をASLを用いてコミュニケーションすることで外国語に慣れ親しみ、学習意欲の向上に効果的だと思います。またALT(外国後指導助手)をろう者またはASLを用いることができる人を招いて、担当教師が介することなく直接会話できる経験もろう児童生徒の学習に必要です。私の経験では、ALTが英語を話し、担当教師による通訳(英語→日本語)でコミュニケーションをしました。しかしこれは本当に異文化理解や言語活動を学べるのでしょうか?



ろう児童生徒も英語を楽しく学習し、正しく理解して欲しいのです。日本での一般的な英語教育はろう児童生徒に適するものではなく、ろう者に適した学びが必要だと学びました。ろう児童生徒は視覚的に理解する能力が優れているのでそれを活用するべきだとも感じました。ただ適した教育を提供するには教師が正しくろう文化や手話を理解し高度な手話表現やASLを使いこなす技術が必要なため、簡単ではありません。私はろう児童生徒のための英語学習ができる環境作りを日本で実現できるように多くのことを学びたいです。


16期生 大西
Posted by 大西 at 00:32 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2020年12月生活記録【第16期生 皆川愛】[2021年01月07日(Thu)]
年が明けましたねぴかぴか(新しい)
昨年は予期せぬ新型コロナウイルス感染拡大により、
学びのあり方を含め生活が変化した激動の一年でしたが、
リモートによる活動が普及したことにより、アメリカにいても日本と繋がる機会が増えたように思います。
修士課程の学業生活も残り半年となりました。本年もどうぞよろしくお願いいたいます。

カチンコ動画はこちらより


@はじめに
今月は、社会の中でろう者に対する差別がなぜ生じるのか、
そのパワー(以下、権力)がどう働くのかについて考えてみたいと思います。

言わずもがな、ろう者は長年マイノリティとして色々な抑圧に苦しんできました。
ろう者が権力に作用されて差別に苦しむのは、単に少数民族だからというわけではありません。
大学院入学当初、先生からろう者学に重要な視座は、
権力の概念の理解フーコーの生権力デリダの音声中心主義だと言われ、
これについてずっと考えてました。
12月生活記録_文字.jpg

そこで今月はそれらの概念に触れながら、
ろう者を取り巻く権力とろう文化の関係について考えてみたいと思います。

今月のポイントです。
・ろうの問題を紐解くと、単純な言説とそれによって構造化された伝統や秩序から来ていることがわかる
・伝統や秩序にある見えにくいものが権力として作用しており、それを解き明かし、解体を行うことを脱構築という
・ろうにまつわる言説の脱構築がろう者学の目指すところである
・権力の存在がなければ、聴社会との分断のきっかけとなるろうコミュニティは生まれなかったかもしれないという見方もある

Aデリダの音声中心主義
まず、デリダが提唱した音声中心主義(Phonocentrism:フォノセントリズム)とその解体についてみていきます。
これは文字通り音声が優位にあり、音声中心に社会が構成されているという考え方です。
手話が言語としてなかなかみなされない一つの鍵となる考えとなります。
デリダがまず着目したのは音声言語(Parole:パロール)文字言語(Ecriture:エクリチュール)二項対立とそこにおける力関係でした。
スライド6.jpeg

ギリシャ哲学者の一人であるプラトンのいた紀元前の時代、つまり約2400年前から、
ろう者が自然言語として使用している手話の存在に気づいていながらも、それはろう者たちのものであって、
言語としてみなされていなかったことがわかっています(Plato, 1998)。
そのプラトン以来、西洋ではパロールである音声が優位にあり、
エクリチュールの文字は従属したものとして下位にあるとしてきた状況
を音声中心主義といい、その体制を批判しました。
さらに、手話は文字より下位のものと位置付けられていると思われます(Bauman, 2009)。

Bフーコーの生権力
フランスの哲学者のフーコーは、抑圧に根付く権力はどこから来るのかという問に対して、言説に着目しました(Faucault, 1997)。
彼によると、言説真理を正当化したものであると言っています。
透明化され、真実であると思われていることであっても、実際は他の知識を排除・禁止したもので、隠されている何かがあるというのです。
私たちが当たり前に使っている言葉の定義も何かを枠に当てはめ、そして、何かを排除しています。
例えば、何が言語で、何が言語でないのか、これは言語学のルールで定めています。
言語は恣意的であるという規則を正当化し、手話は類像的であり、恣意的ではないということから、
言語という箱=定義の枠から除外されていました。(詳細は2019年10月の生活記録をご参照ください)
スライド7.jpeg

学問という正当な真理というものも結局は中立でないのです

また、フーコーは、この権力と紙一重である言説は、上記の学問をはじめとし、
その知識を生成する学校や刑務所など主に施設や制度などの組織(Institution)によって形成されることに着眼しました。

組織には絶対的な権限を持つ人がいます。聴力検査などの分類を通して、特定の集団、すなわちろう者を規格化しようとします。
こうした権限を持つ人は神格化され、周囲はその人の言うことに従順します。
5.jpg

神格化された人によって行われる検査監視身体を規格化し訓練を通して人々を同一化します

4.jpg

このように規格化されるプロセスが可視化されることで、あたかも公平であるように映り、
さらに身体を通して規格化されることで、人々は従順し、抗えなくなります
こうして身体の規格化を通して権力が使用されることを、生権力と言います。

C権力の産物としてのろう文化
権力の行使に気づき、それに対抗できるためには何が必要でしょうか。
権力への対抗が具体的な実践として体現化されてできた産物がろう文化というふうに私は解釈しています。
聴者との確固たる分離があったからこそ、ろう者独特の生活様式や価値観が生まれたということです。
だから、ろう文化は単に聴者とのの違いを語るだけでよいのかと思うことがしばしばあります。
こうした言説に基づく社会構造を紐解く作業を行うところの延長線に
ろう文化があることを忘れてはいけないと個人的には思っています。
7.jpg


Dまとめ
以上より、哲学者や言語学者といった権威ある者たちが築き上げ、正当化された知識によって、
手話は音声言語より劣っているという言説が主流となったという歴史を見ることができます。
口話主義は1880年のミラノ会議を契機に始まったとよく言い伝えられていますが、
それはあくまでも国際的かつ政策的な決定であって、その思想はその当時に始まったものではないということがわかります。
さらに、その口話主義は、生権力を行使する学校や病院といった施設や制度を通して訓練によって強化し、手話を排除しようとしました。
権力は見えない形で抑圧を生んでいるということになります。

一方で、この見えざる権力がなければ、ろう学校が設立されることはなく、
そこでろうコミュニティやろう文化が生まれることもなかったかもしれません。
つまり、皮肉にもろう文化は権力の産物ともいえます。

<参考文献ペン
Bauman, H-D. (2008). Listening to phonocentrism with Deaf eyes: Derrida’s mute philosophy of (sign) language. A Biannual Journal, 9(1), January.
Foucault, M. (1977). Discipline and Punish. New York: Pantheon. In Rabinow, P (Ed). (1984). The Foucault Reader. New York: Pantheon.
Plato. (1998). Cratylus (C. D. C. Reeve、Trans). Indianapolis, IN. Hackett Publishing Company.
Posted by 皆川 at 23:11 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
第14回留学奨学生帰国報告会、開催[2020年12月25日(Fri)]
第14回留学奨学生帰国報告会、開催

去る11月3日(火・祝)、初の試みZoom を使ったオンラインで、8月に帰国した第12期西雄也奨学生による帰国報告会を実施しました。参加者は、首都圏以外の方が半数近く、北海道から九州・沖縄まで全国各地からご参加頂きました。

Fukushima.jpg
司会は、西奨学生と同期の福島12期生

帰国報告 西雄也(第12期生)
「アメリカのろう教育におけるデフアートーDe'VIA(デビア)カリキュラムを通してー」
Nishi.png
「De’VIA にはろう者の文化や歴史、ポジティブなことやネガティブなこと等が表現された作品があり、作品を観たろう者は共感を得たり、ろうアイデンティティを知るきっかけとなる。De’VIA をろう教育関係の現場に取り入れ、実践し、ろうの子ども達へのろうアイデンティティの発見の手助けやろう者の問題に対する意識づけなどに繋げていきたい。」

同窓会企画
米国、大学、ろう文化などから、みんなが楽しめる三択クイズを出題。Zoomの投票機能を使って、みんなで楽しみながら、クイズに挑戦しました。
Photo1.JPG
進行担当は盛り上げ上手な牧谷11期生(右写真)〈Zoom画面から〉

参加してくださったみなさま、ありがとうございました
今後とも、ご支援のほど、よろしくお願いします。


*2021年度 第18期生 4月募集開始(予定)です*
2021年4月に日本財団からの助成が正式に決定後、事業実施が確定します。

<お詫び>投稿が遅くなり、申し訳ありませんでした。

事業担当:根本
Posted by 事業担当者 根本和江 at 11:01 | 事業担当者よりお知らせ | この記事のURL
2020年11月生活記録【第16期生 大西啓人】[2020年12月07日(Mon)]


※手話内容はブログ記事と同様です。
※日本語字幕はついていません。

今月は「良い教育者」について考えたいと思います。授業の一環でとても感銘を受けた内容があるのでそれを投稿します。

もしもあなたが以下のような学校の校長ならどうしますか?
生徒が同級生や先生からいじめにあったり、暴力などで非行が酷かったり、特別な支援が必要な生徒が支援を受けられなかったり、授業の質が低いことで成績が伸びなかったり、教育をうけるために必要な備品がなかったりなど、とても“学校”と呼べない状態の学校があります。あなたはどのようにアプローチやプログラムを提示しますか?

以下の動画は実際にこのような学校に校長として赴任した女性の体験を話されています。


動画の内容で重要なポイントを私なりにまとめてみました。教育者を目指す者として参考になれば幸いです。

@  "If you are going to lead, Lead."
「リーダーが先頭に立つことで、みんなを導く」


校長が自ら先頭に立ち、学校に沿った教育指針や方向性を提示することによって、教職員はどのように行動するべきか理解できるようになります。もちろん教育者は一人だけでは成立しません。<チームとして一丸となり問題に対処することが求められます。

A“So what, Now what?”
「結果や事実より、今後どうするか大事よね?」


重要なのはこれまであった事実について考えるより、今後どうするべきかを考えることです。教育者全員が学校の抱えている問題を今後どうするか各々が考え、今後の方針を決定し、解決に導くことは学校を発展させることにつながります。

B“If nobody told you they loved you today, Remember I do”
「もしあなたを愛してるという人がいないならば、私が言いましょう」


教師が本当に生徒に対してしなければならないことは無条件に生徒の可能性を信じること<生徒を愛することです。生徒が夢を語り、目標に向かって努力することができる環境を整えるには教育者の正しい導きが必要不可欠です。また教育者は「なぜ校則があるのか」「何のために勉強するのか」といったあらゆる疑問を持っている生徒に対し、その価値を伝えることで生徒に対して期待をしていると伝えることが求められています。

C何のために学校があるのか?
それは【生徒たちが世界に向けて舵をとるための知識と精神の成長を促す場所】です。

ここまで長くなってしまったので、
私の考えを短くまとめて載せます。より議論したい方はぜひ声かけてくれると嬉しいですひらめき

もし私が校長なら、
チームで取り組むことを忘れずに物事や問題に対処したり、生徒の言動を観察し、次にどうするべきか常に考えたり、生徒の可能性を信じることはもちろんですが、教師に「学校がもつ目的は何?」「生徒は何のために学校にくるのか?」を常に意識させ、それを維持します。常に意識できるように維持するために教師同士で議論する場を設けたり、生徒を常に見守る環境を整えることに尽力します。教師は授業の質や成績を向上させる義務がありますが、生徒を大切に思う気持ちを持つことこそが教師に必要なことだと思います。

あなたはどのように考えますか?
Posted by 大西 at 09:39 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2020年11月生活記録【第16期生 皆川愛】[2020年12月07日(Mon)]
コロナ禍で再浮上した社会の格差や不公正さについて、ろうの問題と関連づけて考えてみたいと思います。

新型コロナウイルスの感染拡大は止まらず、全世界で感染者数を伸ばしています。患者数の爆発的増加により医療ひっ迫が問題となり、助かるはずの命が助からない事態が起きています。誰を最優先に治療するのか、いわば誰を犠牲にするのか、また中には医療費の懸念から受診せず、治療を受けられないような人も現に出ています。こうして不平等と言われるようなことが起こりうります。

ワクチンに関しては異例のスピードで開発と臨床試験が行われ、今月にはいくつかの国でワクチン承認や摂取が始まることがわかっています。
病原体が確認できてから1年以内でのワクチン開発は歴史的にも初めてです。それだけ科学が進歩しているということ、またこのパンデミックがどれだけの脅威を持っているのかを実感させられます。
そしてこのワクチン接種にあたり、私は公衆衛生上のいくつかの懸念を持っています。一つの大きな問題はワクチンの分配です。まず誰に届けられるのか。市場原理に従えば、多くの投資をした者や国に先ず配給されます。欧米諸国は既にこのワクチンの開発に巨額の資金を投じています。そして、現にロシア、アメリカ、イギリスが主導権を握っています。日本も後に追う形で確保を見込んでいます。
このように先進国と発展途上国で格差が見られています。

「コンテイジョン」というハリウッド映画では、架空の新型ウイルス感染症のパンデミックにおける一つのシナリオを見ることができますが、まさにこれが現在起こっています。ワクチン接種の順番をくじ引きで誕生日順に決めるシーンがあります(これはまさか現実世界では起こらないと思いますが)。興味ある人はぜひ。
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この映画では、アジアでウイルスが動物から人へ伝播し、最初に感染した存在としてアジア人が疑いをかけ、責められ、そして白人がパンデミックから救うヒーローストーリーに仕立てられています。このシナリオ自体が差別構造を生んでいるように個人的には思っています。

米国では白人警官による首を膝で押さえつけられて死亡した黒人のジョージフロイトの残忍な死をきっかけにブラック・ライブズ・スマター”Black Livrs Matter “の運動が更に盛んになりました。このムーブメントは今年始まったものではなく、黒人に対する警察の残忍行為をきっかけに2013年に始まった人種差別抗議運動です。
そして、「人種差別を公衆衛生の問題として扱うべき」という主張をよく見るようになりました。

日本でも新型コロナウイルス関連のニュースから、公衆衛生という言葉を見かけるようになったと思います。公衆衛生は文字通り、「公衆=社会の人々」の「衛生=清潔や健康」を保つことです。
感染症対策は多くの人々に影響を及ぼす疾患ですから、公衆衛生において一つの大きなイシューです。人種差別もそうなのか、ということなのですが、社会の格差や不公正に取り組む点で、公衆衛生が取り組むべき課題と言われています。これが3月の生活記録でも触れた健康格差です。

なぜ社会には格差が起きるのか、「人種」という身体的特性に起因するものではなく、「経験や環境」によって身体に取り込まれるといいます。
1800年代から人種間に健康格差があるとデータが打ち出されていますが、その理由は医師の都合のように解釈されていました。結核に感染した黒人のうち28%もの人が死亡しているのに対し、 白人は14%しか死亡していないことについて「黒人は寒い気候に向いていないから」などと、人種間の病気の差は黒人が白人に比べて劣っていることによると説明しました。生物学的特性に帰結したのです。実際は、黒人奴隷が強いられている密集した居住環境や、その他の劣悪な生活環境、すなわち衛生状態が影響していました。

こうして、人種というのは、単なる肌の違いという生物学的な分類ではなく、白人による黒人の弾圧の中で生まれた社会的な分類と考えることができます。公衆衛生は、健康格差という明白な結果について、社会の格差や不平等で説明しようとしています。差別があるところに健康格差が生じるわけです。
悲しいことに今日でも黒人の死亡率が極めて高いという1800年代の結核と同様のデータは、新型コロナウイルス感染症に起因した死亡率にも見出すことができます。

そして、この考え方はろう社会の格差にも適用できると思っています。
歴史的に語られてきた聴覚障害者が劣っているという考え方は、身体的特性に帰結したものであり、それを取り巻く教育環境や社会的システムについては無視されてきたのです。
ろう児を取り巻く音声中心の言語環境はなぜ今日も続くのか?保険が適用できる人工内耳のマーケティングと行政からの補助が一切ない手話のマーケティングとの力関係を見れば明らかです。

冒頭のワクチンの話に戻りますが、金銭的動機の市場原理に従うと、格差は間違いなく続きます。ろうの子どもたちにも補聴器や人工内耳のマーケティングが影響しており、今後はさらに格差を繰り広げる可能性があります。
世紀に稀なるパンデミックは社会における格差を改めて浮き彫りにし、私たちに投げかけているように思います。

寒さも増してきましたので、お大事にしてください。
Posted by 皆川 at 09:11 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
留学奨学生同窓会活動のご紹介[2020年11月24日(Tue)]
留学奨学生同窓会活動のご紹介

毎年の帰国報告会で活躍してくれる留学奨学生同窓会。11月3日に開催した西奨学生が報告した帰国報告会でも、司会に、ビデオ撮影・編集に、当日スタッフにと大活躍でした。

同窓会は2010年4月に発足。今年で10周年を迎え、メンバーは総勢22名となりました。
今年6月には、各メンバーの活動内容などを皆さんにお伝えするため、新プロジェクトが始動。
インタビューや個々の活動などFacebookで紹介しています。

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手話で、字幕で、映像・画像で、フレッシュな話題をお伝えしています。
ぜひ一度、チェックしてみてください。
ひらめき奨学生同窓会Facebookひらめき
https://www.facebook.com/deafryugakualumni/
 
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事業担当:根本
Posted by 事業担当者 根本和江 at 14:30 | 事業担当者よりお知らせ | この記事のURL
第17期留学奨学生 応募受付終了[2020年11月16日(Mon)]
第17期留学奨学生 応募受付終了!

11月15日(日)もって、第17期留学奨学生の全コースの応募を締め切りました。
ご応募、誠にありがとうございました。

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事業担当:根本
Posted by 事業担当者 根本和江 at 10:45 | 事業担当者よりお知らせ | この記事のURL
2020年10月生活記録【第16期生 皆川愛】[2020年11月08日(Sun)]
月は医療機関における手話通訳についてです。

カチンコ動画はこちらより


日本でもコロナ禍でビデオ電話による遠隔手話通訳の導入が一部地域で始まりましたね。
先月は付き添いやお見舞いのために私自身が米国の病院に訪問することがあり、
その時に医療機関での手話通訳の様子を垣間見ることができました。
訪問した病院の手話通訳体制が米国の全ての病院に適用するとは言えないのですが、
一例として紹介させてください。

1. 医療機関での手話通訳設置の義務付け
米国では障害を持つアメリカ人法(ADA法)と1973年のリハビリテーション法によって
週20時間以上働く15人以上の従業員を雇用している機関や団体は、
医療を含めたサービス提供において合理的配慮の提供が義務付けられています。
合理的配慮の提供を怠った場合は、ADA違反として裁判で争われる可能性があります。
つまり、日本のようにろう者が自身で手話通訳を依頼するのではなく、
ろう者にニーズがある限り、医療機関側が手話通訳を提供する必要があるのです。
米国はその裁判がかなりの数で行われており、特にろうに関する問題は、
全米ろう連盟(Natinal America of the Deaf: NAD)の法アドボカシーセンターに
所属する弁護士団がコンサルを担い、訴訟を手伝ってくれます。
センターのホームページは以下より https://www.nad.org/about-us/law-advocacy-center/

2. 対面手話通訳か遠隔手話通訳か
そのような中で、米国は医療機関において対面通訳(On-site/ In person interpreting)か
遠隔通訳(Video Remote Interpreting: 以下VRI)かという議論が従来よりなされていました。
1.jpg

日本では遠隔手話通訳がまだ普及していないのでイメージしにくいかもしれませんが、
皆さんが利用者の場合、実際に現場に来る手話通訳と、画面上の通訳どちらが望ましいでしょうか。
この好みは個人差があると思います。

病院にとっては対面よりも、通訳者の地理的要因に作用されずにすぐに手配できる遠隔通訳の方が、
費用対効果面でも迅速性の面でも都合が良いことはこれまでもよく言われています。
対面通訳の場合は、その医療機関に常に通訳者を設置しなければならず、
ろうの患者がいないときでもコストを支払わなければなりません。
それに対して、遠隔通訳はタブレットとネット環境さえあり、契約している通訳者が空いていれば、すぐに接続が可能です。

これに関して、全米ろう連盟(National Association of the Deaf: NAD)は、
医療機関における遠隔通訳の仕様について次の声明を表示しています。
Screen Shot 2020-11-07 at 12.30.43 PM.png
(英語による文章とアメリカ手話による動画で掲載されています)
↑画像をクリックすると、リンク先に飛びます。

3. どのような場面で遠隔通訳が許容され、許容されないのか
司法省(The Department of Justice: DOJ)によると、
遠隔通訳はあくまでも対面通訳が使えない場合の「代替方法」として提案されていますが、
現状として医療機関は遠隔通訳の使用に甘んじています(NAD, 2016)。
規約では以下の場合において遠隔通訳での提供を許容しています。
・予約なしの受診の場合、対面通訳の到着を待つまで(2時間以内)
・患者の滞在時間が2時間未満である場合
・患者自身が対面通訳を特に希望しなかった場合

さらに以下の患者の状態の場合は、対面通訳を強く推奨しています(NAD, 2016)。
ろう盲者など、触手話(Protactile American Sign Language: PTASLという)が必要な場合
・患者に色弱や弱視があり、画面上ではアクセシビリティ保障のための調整が不可能な場合 
・患者の容態が不安定で、深刻な場合(開眼できないなど)
・患者の身体可動性が制限されている場合(手腕が動かせないため伝達が困難、顔や目を動かせず画面に注視できないなど)
・患者の痛みや薬物の影響、感情や精神状態のために、認知や理解に影響がある場合
・遠隔通訳のタブレットの可動性に制限があり、スペース的に不可能である場合
・大多数による情報のやり取りが素早く、複雑である場合
・生命に予後を及ぼす、リスクが非常に高い診断や治療に関する話し合いを行う場合

Kushalnagar(2019)らの調査によると、テレビ電話による遠隔通訳を利用したろう者は、
対面通訳のみの利用者に比べて、遠隔通訳は自分の健康状態を話す妨げになり、
それが遠隔通訳の満足度の低下につながったという報告があります。
10月生活記録_文字盤.jpg

この調査でも報告されているように、
遠隔通訳は精度の高いビデオ品質(そのためのネット環境と高い画素数を持つタブレット)と、
医療に親しく、かつ遠隔通訳独特の専門性を備えた手話通訳者の確保が必要です。

4. 遠隔通訳を利用した実際のろう者と私自身の経験
実際、私は付き添いの立場で、救急処置室(ER)、術前室、待合室、病室など様々な場面にてこのVRIを使用しました。
コロナ禍で、対面通訳は感染リスクが高いために、全ての場面においてVRIという形での提供でした。
294447.LINE.jpg

どの場所にもこのようなカートが設置され、タブレットには通訳用のアプリがインストールされてあり、
アメリカ手話による通訳を利用することができます。
真ん中の青いのは音を拾うマイクだそうです。
ちなみに、アプリは、アメリカ手話のみならず、日本語、スペイン語、中国語など多言語に対応しておりました。
この操作は基本的に医療者がします。

それぞれの病室の入り口のボードには本日の担当の看護師、通訳の必要の有無、希望言語が表示されていました。
S__51642438.jpg

(↑電子ボードにその日の担当看護師と看護助手の名前に加えて、通訳の必要性:有、希望言語:アメリカ手話と書かれています)

病室に訪問する医療スタッフは、毎回これを確認して、必要時病室内にある通訳カートを利用していました。
配膳を持ってきて「どこに置く?」、看護師が「点滴を入れます」といった身振りで済むような
短いコミュニケーションでは、使用しないという場面もありました。

私は米国の医療機関で対面通訳を利用したことがないので、比較としてはなんとも言えないのですが、
実際に私が利用した遠隔手話通訳の質はかなり高いと評価できるものでした。
画面越しに存在し、点滴につながれ、片腕しか動かせない患者の手話も的確に読み取ることができていました。
片腕だけで表現できる手話表現もありますが、両手の動きや形が不可欠な表現も多くあり、
文脈や表情で補えるというのは、これはかなり高い技術が必要だと思います。
そして、これは私の個人的な印象ですが、医療用語の英語では、略語が多く、多くは指文字で表示されます。
「IV」と言った略語が表示された時に、患者が何?と聞くと、通訳は医療者に「IVとは?」と聞きます。
こうして医療者から「静脈を介した注射、すなわち点滴のこと」といったように詳細の説明を聞く機会がありました。
医療者も話すときは通訳画面ではなく、患者や家族の方を見てくれるので、疑問に思う箇所や質問のチャンスを見逃さないでくれました。

米国では手話通訳の手配を医療者側が行う、具体的にはそのタブレット通訳アプリを医療者自身で開き、
通訳費用を医療者が自己申告し、その医療機関の予算から捻出するという点で、
医療者側における手話通訳者と協働する姿勢を感じられました。
通訳者がいなければ、医療者にとって患者と効果的なコミュニケーションを取る術を失うことになるのです。
ろう者が通訳に依存するのではなく、医療者が通訳に依存するのです。
こうした意識は、医療者側にコミュニケーションの必要性と責任を喚起する点で、必要だと思います。

5. まとめ
医療現場における専門性を備えた手話通訳者の育成、設置体制は取り組むべき一つの課題です。
遠隔手話通訳についてまとめると、
・遠隔手話通訳は、医療者とろう者とのコミュニケーションを結ぶ一つの手段となりうる
・ただし、患者の好みや、患者の状況に応じて対面手話通訳が望ましいケースも多い
・医療場面における遠隔手話通訳においては、高い通訳技能はもちろん、医療用語の知識や表現に加え、2D画面での通訳に耐えうること、また患者の状況に応じて必要時アドボカシーできることが必要になる
・対面か遠隔か否かにかかわらず手話通訳を適切に利用し、協働できる医療者の姿勢と技術の育成が必要である

<参考文献>
Kushalnagar, P., Paludnevicine, R., Kushalnagar, R. (2019). Video remote interpreting technology in health care: Cross-sectional study of deaf patients’ experience. JMIR Rehabilitation and Assistive Technologies, 6(1), e13233, https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6431824/

National Association of the Deaf. (2016). Position statement: VIR services in hospitals. Retrived from https://www.nad.org/about-us/position-statements/minimum-standards-for-video-remote-interpreting-services-in-medical-settings/
Posted by 皆川 at 01:23 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2020年10月生活記録【第16期生 大西啓人】[2020年11月07日(Sat)]
2020年10月生活記録【第16期生 大西啓人】


※手話内容はブログ記事と同様です。
※日本語字幕はついていません。

今回は、私が秋学期でとっている授業の一つである「K-12 curriculum and Instructional Technology」の一部を紹介します。この授業は幼稚園から高校までのカリキュラムと教育技術について学ぶ内容になってます。

K-12とは、幼稚園(kindergarten)から始まり高校を卒業するまでの13年間の教育期間を指し、アメリカやカナダなどの英語圏で使われている総称です。
Photo Nov 05, 22 18 19.jpg

アメリカの教育行政は国ではなく、各州ごとに委ねられており、学校は州の学習基準を元に学校教育や教育方針を決めます。
例えばオハイオ州にある学校で英語の授業を持つ場合、オハイオ州の学習基準に従う必要があるということです。
Photo Nov 05, 22 37 22.jpg
(この写真はESL(English as Second Language)の学生を持つ場合に該当する学習基準になります。)

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この授業では、受講生がそれぞれ架空のクラスを持ち、1週間の学習指導を計画するという課題を与えられています。各州の学習基準を参考にし、各曜日ごとの目標を考えたり、授業コンセプトを可視化したり、授業計画書を作成したりしています。

1. 各曜日の目標設定

ここでは細かく目標を書く必要があり、Cognitive Objectives(認知目標)、Affective Objectives(感情的目標)、Phychomotor Objectives(精神的目標)をそれぞれ、Audience(観衆), Behavior(行動), Condition(状態), Degree of mastery(習熟度)を意識して設定する必要があります。

例えば以下のように設定します。
(C) Given a paragraph in a newspaper article,
(A) the student
(B) will accurately identify the grammatical subject of each sentence and explain his or her decision
(D) for all sentences given.
このように明確化することによって、生徒がどれくらい学んだのかを評価することができます。各曜日に設定することで目的や目標を的確にし、授業計画を組む流れになります。


2. 授業コンセプトの可視化

児童生徒やその親がクラスでどのような授業をするのか即座に理解できるように可視化させます。

Photo Nov 05, 22 40 49.jpg
(実際に課題で参考にした例です)

3. 授業計画書の作成

日本でいう学習指導案と同様です。Prepare(事前準備), Warm-up(導入), Instruction(指導), Activity(活動), Wrap-up(まとめ), Post assessment(事後評価), Authentic materials and/or equipment(準備物)を文書化し、達成可能な授業に向けて準備します。

以上が課題を通して、アメリカにおけるカリキュラム制度を学んできたことです。

また、授業内で他の学生と共に議論するテーマについて教授の問いかけに対し、各学生が意見を述べていく時間もあります。
今まで議論したテーマは様々ありますが、「間接的/直接的指導」「多文化教育」「教育哲学」「効果的な指導の提供」「法外な教育内容について」「新任教師の指導」など話し合ってきました。毎回授業で、このような興味深いテーマで各学生の経験を元に自由な発言によって議論を繰り広げられています。

まだ留学が始まったばかりですが、すでに多くのことを学びました。アメリカ教育やろう教育について、日本と異なる点はありますが、これからも比較対象として多くのことを学んでいきます手(グー)

【References】
・Ohio/Department of education(2017), ohio's learning standards English Language Arts. Retrieved http://education.ohio.gov/getattachment/Topics/Learning-in-Ohio/English-Language-Art/English-Language-Arts-Standards/ELA-Learning-Standards-2017.pdf.aspx?lang=en-US

・Serhat Kurt(2019), Using Bloom’s Taxonomy to Write Effective Learning Objectives: The ABCD Approach. Retrieved https://educationaltechnology.net/using-blooms-taxonomy-to-write-effective-learning-objectives-the-abcd-approach/

・Serhat Kurt(2020), Concept maps and How to use them. Retrieved https://educationaltechnology.net/concept-maps-and-how-to-use-them/
Posted by 大西 at 09:02 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
第17期留学奨学生、募集中!〆切まであと10日![2020年11月06日(Fri)]
第17期留学奨学生、募集中!〆切まであと10日!

海外の大学等へ留学して学び、日本やアジア諸国の聴覚障害児・者、ろう者コミュニティで必要と思われる分野で、留学経験を生かし、活動することを志す方々を支援します!
現在、第17期海外留学奨学生(給付型)を募集中!

11月3日に開催した留学奨学生帰国報告会では、留学奨学生同窓会の協力で制作された動画”留学事業の紹介&募集案内”をお届けしました。
応募〆切まで、あと10日。
留学に関心のある方など、ぜひ一度アクセスしてご確認ください。

<募集内容>   ↓クリックすると募集内容のページが開きます
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手話で”留学事業の紹介&募集案内”、5年ぶりの制作!

協力:日本財団聴覚障害者海外留学奨学金事業留学奨学生同窓会

<応募〆切>
11月15日(日)


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事業担当 根本
Posted by 事業担当者 根本和江 at 19:25 | 事業担当者よりお知らせ | この記事のURL
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