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第92話 クヌギの苗木の活着率[2008年06月23日(Mon)]


 平成19年度大阪みどりのトラスト協会から補助金で購入したクヌギの苗200本は、昨年12月16日にクワガタ探検隊や一般市民80名の協力を得て100本を植えました。残り100本は12月22日が雨天のため順延して、今年の1月5日に植えました。
 植林したクヌギのその後は順調に育っているのか気になるところです。
「第89話タニウツギの花が散ってジャケツイバラが満開」の中で、植林したクヌギの育ち具合のことに少し触れましたが、6月7日、8日の活動日にクヌギの活着率を調べてみました。


クヌギの苗木の半年後は?

 写真1上段は昨年12月16日の植林する直前のクヌギの苗木です。
 その苗木は写真1下段に見られるように、白いプラスチックのケースに薄っすらと緑色の影が写っています。




  写真1上段:植林前のクヌギの苗木
      下段:筒の中で育っているクヌギ(08年6月8日撮影)


 そのプラスチックの筒をそっと外してクヌギの育ち具合を見てみました。写真2のように柔らかい葉っぱが一杯について順調に育っていました。



      写真2:筒をそっと外してみた6ヵ月後のクヌギ


クヌギの苗木の活着率


 活着とは、国語辞典の大辞泉によると、「移植や挿し木・接ぎ木をした植物が、根づいて生長すること」です。

 クヌギの苗木の植樹は200本でしたが、ヘキサチューブという6角形をしたプラスチックケースの筒は約150セットを購入しました。その筒で保護したクヌギの苗木の活着率は表1の結果になりました。



        表1クヌギの苗木の活着率

 茶畑A、竹林Bは昨年12月16日に植樹した場所で、現場は落葉が多く自然にできた腐葉土が豊富にあったためか活着率は90%以上でした。

 花見山は今年1月5日に私たちのメンバーで植樹しましたが、岩石がごろごろしている急斜面が多い場所のためか、活着率は81.5%の結果でした。

 全体ではヘキサチューブで保護したクヌギの苗木152本のうち、130本(活着率85.5%)は順調に育っていました。

 少し話がそれますが、5月31日箕面環境市民グループ15%クラブ・10周年記念イベント「ストップ温暖化」の中で、日本熊森協会の紙芝居を見た私たちの会員・Tさんは、この活動に感動してその場で日本熊守協会の会員になるとともに、6月8日には兵庫県豊岡市の山中での活動に参加してきたそうです。
 現地では4年ほど前に植えたクヌギは順調に育っていてヘキサチューブからぐんと大きく頭を出して成長していたと、話してくれました。


竹で囲ったクヌギの苗木


 今回のように、クヌギの苗木200本を植樹する以前は少しずつですが、ドングリを発芽させて苗床で育ててから移植していました。そして、鹿の食害対策として割った竹で囲んでいました。



写真3上段:苗床から移植したクヌギ(07年12月1日撮影)
    下段:苗木200本のうち、竹で囲ったクヌギの成長(6月7日撮影)


  ヘキサチューブで保護しないクヌギの苗木は、写真3下段のような成長でした。写真2のような緑色の葉っぱが少ないのが気になります。
 写真3の上段は以前からわずかながら植林している方法で、ドングリを発芽させて苗床から移植したクヌギで、成長が遅いようです。

 6月14日の活動日には竹で囲った成長の遅いクヌギのために、枯死して回収してきたヘキサチューブに取り替えました。


ヘキサチューブの働きと効果

 北摂山地の山々では鹿の食害被害が報告されています。私たちが活動している「箕面市体験学習の森」でも、リョウブやヤマザクラの樹皮を始め、数年前まで春先に食べられる野草として人気のあったモミジガサは鹿に食い荒らされてしまいました。

 今回クヌギの苗木200本を植林するに当たり、鹿の食害防止対策として初めてヘキサチューブを採用しました。半年後の苗木の成長を見て、食害対策だけでなく、苗木を囲むプラスチックの筒がミニ温室の役割をしてクヌギの成長が著しいことがわかりました。
 そこで、ヘキサチューブのホームページからその働きと効果を検索してみました。

@苗木へのストレス(環境圧)とチューブの働き

・風による強制蒸散を防ぐ
 植物は気孔を介して水分やガスのやり取りを行っています。乾燥しているときなどは気孔を閉じて水分が奪われないようにしています。しかし、気孔は完全に閉じることができません。風が葉に当たることによってわずかに開いている気孔から水分が奪われていきます。植栽されたばかりの樹木は、十分な水分を根から吸収することができず、どんどん葉から水分が奪われると乾燥して枯れてしまいます。チューブはこの風をシャットアウトすることによって植栽直後の乾燥死から植物を守っています。
・紫外線をカットする
 紫外線は人間にとって皮膚がんを引き起こす原因となるなど、害となるものです。植物にとっても紫外線は有害な光線です。植物は紫外線から身を守るために対応する必要があります。しかし、そのためにはエネルギーを必要とします。チューブは紫外線をカットしているので、植栽直後の樹木は紫外線対策をする必要がなく、根の成長などにエネルギーをつぎ込むことができます。
・野生動物による食害を防ぐ シカなどの野生動物は植栽された樹木を食べてしまいます。チューブは植栽木を包み込んでいるので食べられることはありません。
・下草による被圧を防ぐ チューブは樹木の成長の妨げとなる様々なストレスを排除しているので、成長が早くなります。チューブの外の植物は様々なストレスが排除されていないので成長が阻害されています。したがって、植栽された樹木が雑草木の陰にかくれて日光不足で枯れてしまう、ということにならないのです。

A幼齢木を200%以上成長させる働き 風のストレス、紫外線のストレス、食害のストレスなどが排除されており、成長が促進されます。また、チューブ内は温度が高くなるので光合成速度が速くなり、成長促進につながります。

B周辺環境との共生(多様な樹林の形成)
 通常、植栽された樹木を成長させるためには下刈りといわれる作業が行われます。これは、植栽された樹木が雑草木(植栽された樹木以外の草木)の陰にかくれて日光不足で枯れてしまうことを防ぐために、これら雑草木を刈り払う作業です。しかし、@Aで述べたように、チューブを被せた樹木は成長が早く、雑草木の成長に負けることはありません。したがって、下刈りを行う必要がなくなるのです。下刈り作業は植栽木の成長を助ける反面、植栽木以外の草木を切ってしまうので、植生が単純化されるというデメリットがあります。しかし、下刈り作業を必要としないチューブ法では植栽木の成長を確保しつつ、多様な植生も守れるというメリットがあります。

 また、従来、植栽木を野生動物の食害から守るため、植栽地をネットや柵で囲い込む防除策が取られてきましたが、これでは野生動物の生息地を奪ってしまうことにつながります。チューブ法は、植栽木のみ包み込むので、野生動物を生息地から追い出すことなく植栽木を育てることができます。その他、植栽木を食害から守るために薬剤を使用することも行われていますが、森林は我々人間を始めとし、様々な動物を養っている河川の源となることも往々にしてあることを考えると、水質保全の観点から薬剤は、特に水源涵養林では、使用しにくくなります。

 ヘキサチューブの中のクヌギは、風が入らないために真夏に蒸し暑くなって成長の妨げにならないかという懸念があり、試験的に数本だけ孔を空けたヘキサチューブを作りましたが、筒の強度が落ちてかんばしくありませんでした。

 この件に関して、6月23日上記「苗木へのストレス(環境圧)とチューブの働き」の使用承諾と真夏のヘキサチューブの高温、高湿度について、開発発売元のハイトカルチャ株式会社へメールで問い合わせた結果、「心配には当たらない」という回答を得ました。詳細は別の機会に書くことにしたいと思います。

 また、竹で囲ったクヌギの周りには下草が密集してきましたので、下草を刈ってクヌギの成長を促進させる工夫をすることにしています。



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コメント
紙芝居で見た日本熊森協会の活動に感動され早速に入会され、豊岡の急斜面の山中へ植林地のフォローに2回も出かけられたとのこと、敬服します。
Posted by:高橋 正克  at 2008年07月01日(Tue) 00:23

ヘサキチューブの研究ありがとうございます。大変勉強になりました。29日にもう一度「熊森協会」の山に確認と少しの手入れの手伝いに行って来ます。
Posted by:竹内  at 2008年06月26日(Thu) 22:00

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