今回も、塾生ききまさんのまとめメモを紹介します。
---------------------------------------------------
2011.05.28の大名塾では大きく2つのテーマが扱われました。
テーマ1.「伝える能力」を向上させるには?福岡大学の魅力を伝える、という課題を学生にさせてみる。
→日常的な体験談に基づくものが多く、「それって福岡大学の魅力なの?」とツ
ッコミたくなる回答が続々とでてきたというお話。
なぜ、そのようになってしまうのか?皆で考えてみた。
以下、出てきた意見(仮説)。
・「自分の経験・体験からしか考えない」
→視野が狭いことに気づいていない。塾生と比べれば、当然、学生たちには
圧倒的にデータ・経験がたりないという意味ではやや厳しい指摘か。
・他大学との比較という発想に欠けている
→これも視野の狭さ?
・問われたことの意味が上手くとらえられていない
→問題の分解が下手なのではないか。解決までの段取りを考えさせるプログ
ラムは効果があるかもしれない。
・より深いレベル、問題の抽象度を上げて考えきれない
→前回(2011.5.14)の大名塾での議論につながる
なんとなく、高校までの教育、大学での教育の問題点が見えてくる感じがある。
テーマ2.黒川温泉と旭山動物園のケース・ディスカッション黒川温泉のビデオをみたのち、旭山動物園のケースのビデオもみる。
2つのケースから学べることはなにか?
※実際には、まずビデオで紹介された事実関係を整理し、田村先生が用意してく
れていた書籍や参考データもみながら、ケースの中で印象的な部分を掘っていく
ことで議論が進んでいった。
あらかたポイントになりそうなところの材料が出そろったところで、田村先生が
ホワイトボードに議論を一気に整理するためのフレームを描いた。
それをききまなりにアレンジして表現してみたのが図1(添付ファイル)である。
図で表現されているのは以下のようなことである。
(1)ビジョンが存在し、活動に結びついていなければならない
(2)制約を上手く利用して活動に活かすことができなければならない
(3)ビジョンを実現する何らかの仕組み(組織・制度など)がなければ活動へ
と転化されない
(4)どの業界にも何らかの「成功の方程式」はあるが、その安易な導入は実質
的な思考停止を導き、結果として活動を失敗に導く。これは制約を強く意識する
ことで避けることができる。
この図1の枠組みで黒川温泉と旭山動物園の場合で検証すると...
<黒川温泉>
(1)後藤哲也が自らの足で歩いて顧客の行動を観察して創り出した。そのビジ
ョンは後藤個人の旅館経営(洞窟風呂)には比較的早く反映されたが黒川全体に
反映されるには、「仕組み」が熟するのを待たねばならなかった。
(2)黒川が人里離れており、自然が多く残っていることを逆に利用した。
(3)温泉組合のなかの若手の旅館経営者たちが徐々に後藤のやり方を学び始め、
若手グループが形成される。彼らのアイディアで出た「入湯手形」の導入を契機
に黒川温泉の改革は加速した。
(4)温泉組合の多くの人が、熱海のような企業の宴会需要を受け入れる成功の
方程式の活用を夢見ている時期があり、当然、そのイメージに依存している間は
良い結果がでなかった。
<旭山動物園>
(1)小菅正夫を中心に動物園のメンバーがお客の声をききながら、話し合いを
重ね、「一匹一匹の動物の魅力を引き出す ⇒ 命の輝きを伝える動物園」へと
イメージをまとめていった。
(2)地方都市にある日本最北の動物園であり、職員の人数も少ない分、意思統
一もしやすかった。また、コアラやパンダなどの集客が見込める動物を持てない
分、既存の動物一匹一匹の魅力を引き出そうという発想に転化することができた。
(3)「理想の動物園のスケッチ」を作成していたこと、エキノコックス病騒動
⇒一時閉園ののち、再開に向けて旭川市から比較的大きな予算がついたことが大
きかった。
(4)パンダやコアラなどのスター動物を持つか、遊園地と併設して遊具やショ
ーなどで集客するという手法が、業界の「成功の方程式」としてあった。前者は
予算の規模的に無理であったし、後者に頼っている間もあったが、その間は維持
費・新たな設備の導入費用のために逆に動物園の予算を圧迫しつづけた。
かなりうまくあてはまっているようである。
また、図1の説明枠組みに付随するいくつかの論点について、当日の議論を活か
しながらまとめてみた。
◎ビジョンを発見するにはどうしたらよいか? ⇒
成功の方程式に頼らないことがまず第一である。直接、お客さんの声や考え
を聞く努力を怠らないこと。自分の足で歩き回り、目で見る、話を聞くといった
取材段階の大切さは冒頭の「大学の魅力を表現をする課題」のところとも密接に
かかわっていそうだ。このことを言い換えれば、『成功の方程式に頼らずに「制
約」を掘り出すこと』と表現することもできそうである。つまり
ビジョンと制約
とは相互に影響を与え合う関係にあると考えられる。
◎変化を起こそうとしたら、まずビジョンを作ることから始め、すぐに発表する
ほうがよい? ⇒
よいビジョンに出会うには時間がかかる。一定の時間があればできるもので
はない。期限を切って無理に、言葉にしようとすると陳腐な表現に収まってしま
う(新聞の一面にビジョンだけ載せるのは費用の無駄、自らを無駄に縛るという
意味で愚の骨頂?)。それは誤解を生みやすいし、逆に中途半端に表現されたビ
ジョンが足かせになる可能性もある。ビジョンはできれば外部には「隠れている」
ほうがよいことが多いのではないだろうか。
⇒ただ、旭山動物園のようにスケッチを書いたり、試作品や企画書をつくった
りとかするのは、足かせになりにくそうな感じがする(なぜビジョンの文章的な
表現がダメで、スケッチや試作品を作ることが良い感じがするのかはもう少し考
えてみたい)。
◎仕組み(組織や制度)が変化の足かせになることがあるのでは? ⇒仕組みを直接、変えようとしても大きな抵抗にあうので相手にしないぐらい
のほうがよい。
現状を変えようとする人たちだけで、小さくはじめていくのがよ
い。新しいビジネスモデルを探るため、出会い系サイトのページを見続けていた
ら職務停止になったが、それでも続けてのちに新規ビジネスの立ち上げ(大幅改
良?)へと導いたケースもあるようである。つまり、
仕組みとビジョンとは相互
に影響を与え合っていると考えられる。◎仕組みといってもいろいろな形がありそう。どのような仕組みがベストか? ⇒関わる人々がお互いに協調しようとすることがよいとはいえない。高松のう
どん屋通りの例のように、協調ではなく競争が活気を生むパターンもあるからだ。
⇒ビジョンの作成段階でも試行錯誤はかならず必要なので、「失敗の経験を許
容・共有できること」はとても重要そうである。失敗から学ぶのはなかなか難し
い。実際に失敗の経験を共有させようとしても、「ヒヤりハッと」の段階での失
敗談を書きたがらない・話したがらない人が増えている(特に最近の若い人?)
という話が出た。事故になって言い逃れできなくなってからでしか書かない・話
さないのでは、人々の間で知恵を共有できない。
「失敗から学ぶ」ことを通じて、
仕組みと制約は相互に関係しあっていると考えられる。 ⇒ビジョンが浸透し活動が人々に広がっていく過程を考えると、
「相互に学ぶ
体制」も仕組みを考えるうえで大きなポイントになりそうである。問題が大きす
ぎて検討しきれなかったが、西川純先生の「学びあい」の発想と研究は、参考に
なると思われる。
※黒川温泉と旭山動物園のケースについては、重要な事実の誤解・抜け落ちがあ
るかもしれませんので、そのような点があればご指摘ください。