「介護はダンスだ」見学レポート
高田ひとし
内容(一部省略しています)
@ ストレッチ
まずは、ストレッチ。手、足、など外に大きくふりなげるように、全身をリラックスさせます。
A 呼吸
片方の鼻の穴をつまんで、もう一方の鼻の穴からゆったりと呼吸。両方の鼻の穴から呼吸をするより、敏感に吸う―吐くという空気の出入りを感じられます。
B 正座
呼吸に合わせて背中を丸めたり伸ばしたり。と、砂連尾さん、
「意識の中で背骨を長く捉えると、人との間でも間合いが取りやすくなるんですね。」
さっきの「ゆったりした呼吸」といい「人との長い間合い」といい、何かどんどん身体を楽にさせる方法を学んでいるみたいです。
C 2人1組になって相手をねじる
ひとりが両手を頭の後ろで組み正座で座り、もう一人が相手の身体をねじっていくワーク。ねじるのを怖がったり相手のことを気づかい体が硬くなる人が見られました。でも、ここで重要なのは「相手中心」から「自己中心」へと意識をシフトさせることだそう。砂連尾さんはこういっていました。
「相手のことを想って相手によりそいすぎちゃうと、逆に相手がしんどくなります。たとえば、やらなきゃ! って感じで身体に力が入っちゃうと、相手の微妙な信号を読み取れなくなったり。だから、まずは自分が一番気持のいいところを探すんです。自分が楽なポイントが相手にとっても楽なポイントなんです。」
D 腰を鍛えるレッスン
向かい合わせになり、一人が立ち、もう一人が正座で座ります。座っている方は腕を突き出し、立っている方はその腕をつかみ正座している相手をコテンと倒す感じで前に押します。
ここで、男の人は力で相手の力に対抗しようとする傾向が強かった。砂連尾さんは「アメリカみたいですね(笑)」と言ってました。そうではなくて、相手のエネルギーをしっかりと受け止めて地面に受けながす感じで、とアドバイスが。
E 寝転がり、起き上がる
二人一組になって、ひとりは仰向きに寝る。寝ているほうは全身の力を抜き、もう一方が相手の手首を持って、起き上がらせます。このとき下の人は首や肩、おなかなどに力が入ってしまわないように。首などリラックスしきれない人も多々見られました。「力を抜く」「相手に身を任せる」ということがなかなか難しいよう。
F ティッシュを使ったカウンターバランス
二人一組で、互いにティッシュの両端を持ち、ティッシュが破れないように動いていくレッスンです。砂連尾さんいわく「これは、相手を感じるためのワークです。手というよりは、体の中心(腰・腹)でつながっているイメージで。手で相手とのつながりを分断させないように。」ということ。
しばらくこのワークが続き、ワークをみていた砂連尾さんが、参加者を一度呼び寄せます。そこで、「ティッシュを使う意味」を話してくれました。
「ティッシュというのは一方が動かず、一方が動けば破れます。だから、それを恐れて相手に合わせて、ティッシュがゆるんだ状態で動いてしまいます。それは、真剣に相手と向き合っていないことではないでしょうか。
まずは、自分が気持ち良くなれるポイントを探しましょう。たとえば、どれくらいのスピード・動き・距離がその相手といちばん気持ちいいのか。そうやって『我がまま』になれば、自分を相手に伝えることができます。そして、相手は自分の気持ちいいところを発見できるようになります。」
そこで、もう一度ティッシュのワークにチャレンジ。参加者からは「相手は結構わがままだと感じた」「あまり、手ごたえを感じなかった」などなど「自分の感覚」をみつめた言葉が聞けました。
G 即興
最後は二人一組で手を握って、即興で動きます。「相手を感じながら動きましょう。自分が気持ちよくなったら結果動いていたという感じで。」と砂連尾さん。
レポート者感想
砂連尾さんのWSは「一対一で相手とどうやって出会うか?」について考えさせられました。介護の場面でも理解するのが難しいお互いの感覚をいかに敏感に、そして楽に察知するのかが求められるのではないでしょうか。そこで、力任せに相手に接していては、お互い疲れちゃいませんか? という問いかけがあったように思います。
WSでは「お互いが楽に接する距離を探す方法」を学べたのではないでしょうか。大事なのは「力任せにしない」こと。そして、「相手も自分も楽しく、気持ち良くなる」こと。
岡田慎一郎さんが『古武術介護入門』という本を著されていますが、砂連尾さんのWSは「筋力になるべく頼らない」という古武術介護に通底するものを感じました。(あとで、及び聞いたところによれば、砂連尾さんは合気道をやっているそうです。)
介護の中にもダンスがあり、ダンスの技術は介護につながるんだなと納得しました。
高田ひとし
立命館大学4回生。哲学専攻。学生劇団で演出をつとめる。現在は演劇のフリーパーパーなどをつくりつつ、D&Pのお手伝いをしている。