子ども大学かわごえ 2018/10/13 13:50〜16:00 東京国際大学第2キャンパス2311教室 テーマ:「〇〇の形は、××だ、それは……」で始まる数学の世界 講師:国士舘大学文学部 教育学科教授 正田良先生 数学嫌いの子に数学を好きになってほしいという正田先生は、学生たち全員に授業中にエッセイを書いてもらい、グループごとに発表するという授業をしてくださいました。 そのエッセイとは、「〇〇の形は、××だ、それは……」で始まる文章です。 いきなり書くのは難しいので、授業の前半ではエッセイのサンプルを紹介してくださいました。 エッセイの実例: ・マンホールのふたは、円である。それは…… ・人間の足は、円ではない。それは…… ・ミツバチの巣房は、六角形である。それは…… ・ヤドカリって知っていますよね? マンホールのふたが丸いのは、三角形や四角のふたは穴に落ちてしまうからです。 そのことを、正田先生は図解してくださいました。 また、人間の足は円ではないですが、車輪は円です。 車輪はエネルギー効率が大変によく、段差があっても、車輪の直径の4分の1まで高さならば昇ることができるのです。 この車輪が段差を昇るところも、正田先生は図で表して解説してくださいました。 次に、ミツバチの巣房はなぜ六角形なのかについて教えてくださいました。 平面を敷き詰めることができる正多角形は、三角形、四角形、六角形の3種類しかないのだそうです。 その中で正六角形が一番円に近く幼虫が入りやすいために、ミツバチは六角形の巣を作るのです。 「皆さん、ヤドカリって知っていますよね?」と正田先生。 蝉やカブトムシのように外側が固い動物は脱皮しますが、ヤドカリは新しい殻に移動します。 ではサザエは? 脱皮もしないし殻も変えません。 では、体が大きくなったとき、どうするのでしょうか。 実はサザエは、貝殻の渦巻きの外側を増築していくのです。 人間の身体も同じように、骨の外側を増築していきます。 みんなで、レジュメにある「対数らせん」の中心にペンをたててまわしてみました。 紙を右に回すと図が大きく、左に回すと小さくなったように見えます。 サザエの殻は、拡大コピーや縮小コピーしても角度を変えれば元の形とぴったり重なるという性質(自己相似形)を持っているのです。 意識していないと目で見ても見えないものがあります。 ここまでで前半の授業が終わりました。 休憩の間にエッセイを考えるという宿題が出ました。 休み時間が終わると、作成したエッセイをグループで見せ合い、グループの代表を決めて発表していきました。 ・コップの形は細い円筒型 ・本は四角い ・定規の形は電車のようだ ・便器の形はおしりにフィットする。 ・人間の形はさまざまだ。 ・スマートフォンの形は長方形だ。 ・マットの形は正方形ではない。 ・家の形は直方体のような形。 ・消しゴムは四角い。 ・ペットボトルのキャップの形は四角や三角ではない。 ・音符の形はおたまじゃくしのようだ。 ・カーテンの形は四角である。 ・レコード(CD)の形は丸である。 正田先生は、学生たちの発表したエッセイについて、なぜそのような形になったのか、ひとつひとつ丁寧に答えてくださいました。 ただし、ものの形はひとつではありません。 「四角くて円のものなーんだ?」 たとえばチョークは上から見ると円ですが、横から見ると四角です。 円のいいところと四角のいいところをドッキングした形なのです。 ものの形には自然にそうなっているものと、使いやすくするためにデザインされているものとあります。 数学者の仕事は計算するばかりではありません。 短歌を詠む方が感動を人に伝えたくて短歌を作るのと同じように、数学者もある性質を「おもしろいな」と思って人に伝えるために仕事をしている、と正田先生はおっしゃいました。 ものを見て、それはどんな形なのか、なぜなんだろうということを考えてみる授業でした。 最後になりましたが、授業運営のためにお手伝いいただきました、ジュニアスタッフならびに学生の保護者の皆様、ご協力ありがとうございました。 |