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「国際理解を深めよう!」 [2017年12月31日(Sun)]

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子ども大学かわごえ2017年第6回授業
12月23日(土)東京国際大学第1キャンパス314教室
講義「国際理解を深めよう!」
講師 岩崎暁男・東京国際大学言語コミュニケーション学部教授

他国の生活や考え方を知る
初めに「国際化する中で、世界の国々の人々の生活や考え方を理解することが大事です。そのためには、こちらが発信していることが相手に伝わるか、相手の発信がこちらに理解できるかです」と、岩崎先生は国際理解のポイントを話しました。

そして、「まずローマ字を書いてみよう」と「大野」(人名)「天ぷら」「三菱」「八丁堀」など7つの日本語を出しました。「外国人に日本語に近い形で発音してもらうために、ローマ字の書き方も工夫が必要です」。日本で教えるアメリカ人教師や大リーグのアナウンサーは、人名などを日本語に近い発音をする努力をしているそうです。

ただし、日本の文化を英語に翻訳するとき、伝え方に限界があります。「七夕」は英語の訳すと「星まつり」(スター・フェスティバル)、「ひな祭り」は「人形のお祭り」(ドールス・フェスティバル)、おもちは「ライスケーキ」。日本の伝統文化を正確に一言で伝えるのは不可能なのです。

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イメージで他国を理解しない
つぎに、異文化間交流の妨げになっていると考えられる点があります。たとえばアメリカには黒人が多いというイメージがありますが、黒人はアメリカの人口の11.6%にすぎません。黒人が多いと思うのは、テレビや映画でアメリカの大都会が映されるとき、黒人の姿が目立つこと、スポーツ選手に黒人が多いことなどが影響しているのです。オバマ前大統領は初の黒人大統領と言われましたが、実は母親がフランス人、父親はケニア人。純粋の黒人ではないのです。「人種差別をしていないことを意図的に示すためでもあります」

相手国の歴史も知る
2時間目は、歴史を相手の立場で見ていないことが指摘されました。たとえばコロンブスが1492年、新大陸アメリカを発見したと教科書に載っていますが、これはヨーロッパ人から見た言い方で、アメリカには原住民が住んでいました。
1945年8月15日は日本では終戦記念日ですが、韓国では日本の植民地から解放された日なので「光復節」。光が戻ってきた日。喜びの日です。米欧では戦艦ミズリー号で日本が降伏文書に調印した9月2日が戦勝日です。「歴史は自国中心に書かれがちですが、国際理解を深めるためには、相手の国にとってはどうだったのかも知る必要があります」
講義内容DSC_0093 (640x430).jpg
味付けされた情報
つぎに「『味付けされた』情報が入っていること」について。人類の肌の色は白黒黄茶赤の5色に色分けされ、日本人は「黄色人種」とされますが、私たちの肌は黄色ではありませんね。黄色人種と決めたのはドイツ人です。白人以外は劣っているという認識でした。アメリカの原住民ネイティブ・アメリマン(インディアン)は「赤い肌」と言われますが、本当は褐色です。

一方、日本では虹は七色と決めていますが、本当に七色あるのか。沖縄では三色の時期がありました。また青汁、青菜、青りんご、青虫などと言いますが、実際は緑色ですね。なぜ「青」と表現するのか。青は元気、新鮮なイメージだからでしょう。色は文化が決めると言えます。

動物の鳴き声も国によって異なります。牛は日本では「モー」ですが、アメリカでは「ムー」、犬は「ワン」ですが「バウワウ」、「カアカア」鳴くカラスは「カウ」。鳴き声の聞き方が違うからでしょう。数字の読み方も違います。100万はミリオン、10億はビリオンです。姓名もアメリカでは名を先に書きますね。

「味付けられた情報」のひとつに自国文化中心主義があります。どの国も自分の国を中心に考えます。「こういうことをするのは日本人だけ」とよく言いますが、同じ人間ですから、やっていることは、どこの国の人間も同じです。世界地図を見ますと、日本の地図は日本が真ん中にありますが、ヨーロッパの地図は東の果てに日本があります。「極東」(ファーイースト)と言われます。英国を中心に世界を見ているからです。オリンピックの報道も自国の選手の活躍を中心に伝えますね。

また、情報の伝え方に送り手の気持ちが込められています。「親切」と言えばいいように受け止めますが、「おせっかいやき」という受け止め方もあります。「積極的」を「図々しい」、「勉強家」を「がり勉」と見る人もいます。国際理解も伝え方で印象が違ってくるということです。

アメリカで有名な日本人はヒロヒト
アメリカで有名な日本人はだれか。私はアメリカの高校生と大学生1000人にアンケートを取っていますが、5位はポケモン、4位はパット・モリタ(日系アメリカ人)、3位オノヨーコ、2位ジャッキー・チェン(香港の映画俳優)、そして1位はヒロヒト、昭和天皇です。第2次大戦のことをアメリカ人は教科書で習ったからでしょう。

 日本人はアメリカ人には「アジア人」と映っています。アメリカ人からすると、中国人も韓国人も区別だがつかないからです。逆に私たちはイタリア人、ドイツ人、イギリス人の区別がつかず、「ヨーロッパ人」というのと同じでしょう。

身近な異文化を理解する
 まとめますが、国際理解には相手の視点を知ることが不可欠です。また、伝えられた情報を読み解く力が求められます。さらに、異文化は外国ばかりではないということです。隣の子もその家庭の文化を持っています。お父さんとお母さんは別の家庭で生まれ育って別の文化を持ってきました。こういう身近な人の持つ異文化を理解することによって、人間関係が楽しくなると思います。
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