2018/09/08 14:00〜16:00
東京国際大学 第2キャンパス 2311教室
テーマ:書の芸術─習字から書道へ─
講師:二松学舎大学教授 福島一浩先生
福島先生は、まず、学校で習う「習字」と「書道」とはちょっと違うというお話をされました。
「書道」は絵を描いたり、音楽を奏でたりするのと同じ「芸術」です。
「皆さんの好きな漢字は何ですか?」
「ひらがなで好きな文字は?」
福島先生が質問すると、たくさん学生の手が挙がりました。
自分の名前の字だから、なんとなく好きだから、など理由は様々です。
1時間目:「あ」という文字について【@について】「プリント@の中で、平安時代に書かれた『あ』はどれでしょう?」
生徒に正解と思うもので挙手させると、5が多数。
→正解は1。
1000年前の文字は、なぜか鎌倉時代の文字よりも、現代の文字に近いのです。
「4の書写と一番似ているのは何番でしょう?」
圧倒的に1に挙手がありました。
→正解は1。
実は、1が今の書写のお手本になっています、と福島先生。
ひらがなは1000年前に書かれた文字の姿であり、長い歴史を持っているのです。
【Aについて】「A〜Eのひらがなは、@と同じ作者です。それぞれ誰が作者か答えましょう」
縦書きの文を書くとき、横の線を短く、縦の線を長くする傾向にあります。しかし、藤原定家の文字は横に広がって書いているのが特徴です。
同じ人が書いているとどこかに特徴が出てくるものなのです。
【Bについて】「一番好きな『あ』を選び、どうして好きなのか考えましょう」
福島先生は、それぞれどの「あ」が好きか、学生全員に挙手させました。
どうして好きなのか聞いてみると、見やすいから、かっこいいから、バランスがいいから、などといった声があがりました。中には、ダイナミックだから、スピード感があるから、といった鋭い意見も。
生徒たちもだんだん、書道が芸術であるということを感じ取ってきた様子です。
【1時間目のまとめ】・ひらがなは1000年前の文字がモデルになっている。
・書道は見たことある字をそのまま書くだけではなく、色んな時代の色んな人の見たこともない字を鑑賞したりする芸術である。
2時間目:俳句について古池や蛙飛びこむ水の音(松尾芭蕉)
「他の芭蕉の句を知っていますか?」という福島先生の声に、生徒の手が挙がりました。
荒海や佐渡に横たふ天の川
静かさや岩に染み入る蝉の声
「この俳句で蛙は何匹いると思う?」と福島先生が尋ねました。
研究者によると、「古池がひっそりと静まりかえっている。ふと一匹の蛙が古池に飛びこんで、その音が広がったが、再び静寂に戻った」という意味なのだそうです。
福島先生は、この芭蕉の句を様々な表現方法で制作した書道作品を黒板に貼ってくださいました。
漢字多めと、ひらがな多め。
淡い色と濃い色。
散らし書きと行書き。
同じ俳句なのに、書き方によって印象が異なることを、確かめていきました。
特に墨の色は、学校の習字では黒いものしか使いませんが、実際は青・紫・茶など様々な色の墨を作ることができ、表現の幅があります、というお話をしてくださいました。
「画家がオリジナルの色を求めているように、書家も墨の色を求めている。求める色がある」
字の大きさ、書くスピード、掠れるかどうか、は書家にとって大切です。
大きいと小さい、掠れるところと墨が濃いところ──音楽で大きな音と小さな音の部分があるのと同じように、書道も強弱があります。
福島先生は音楽のコンサートに行ったり、絵を見たり、バレエを観たり、建築の本を読んだりされるそうです。書道以外の他の芸術にふれることで、栄養になるのだそうです。
さまざまなものにふれ、色んなものを取り込むことが大切である、ということを教わりました。
授業終了後、抽選で4名の学生に、福島先生直筆の色紙と著作をプレゼントしてくださいました。