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大津市内での小学生死亡事件について その3 [2021年08月11日(Wed)]
★理事長の個人のSNSで発信した記事の内容を転載します。

連休明けに、さっそく最初の報道が入ってきました。記事の見出しが兄の暴力についてなのですが、大事なのはそこではなく暴行が7月22日、つまり夏休みに入ってはじまっているという事実(ただ警察に連絡され、児相がふたたび介入したタイミングでもあるので、この介入失敗の可能性もありますが)。逆を言えば、学校がある間はこの妹はギリギリ安全を保っていたということです。このように夏休みは家庭に課題(貧困や虐待など)がある子どもたちには地獄の40日間となります。さらに今年と昨年の夏は、コロナの感染拡大でステイホームを国が呼びかけていることもあり、子どもが家庭外でエネルギーを発散する機会、家庭外の人が地域の子どもの変化に気がつく機会がほとんどありません(その意味では勇気をもって通告したコンビニの人たちをもっと評価してほしい)。

この3月に行ったこどもソーシャルワークセンターの事業報告会で、センターのボランティアさんたちと安田夏菜さんの児童書『おはなしSDGs貧困をなくそう みんなはアイスをなめている』の主人公である兄と妹が、もしこどもソーシャルワークセンターに来たならどうなったかを実際のセンターでのエピソードをまじえて物語形式で報告しました(こどもソーシャルワークセンターのホームページ「イベント情報」から当日の朗読形式の発表が見られます。また賛助会員や寄付者にはこの脚本が掲載されている報告書が送られます。正直、すごくよく出来ているので多くの人に見て欲しいです)。

今日の報道では「少年と妹は千円の食事代だけで1日を過ごす日があった」とありました。先ほど紹介した児童書も貧困家庭でネグレクトを抱えているヤングケアラーの兄が主人公で、作中でも妹の面倒を見ているのですが、このきょうだいが夕食500円(というかお昼は給食、朝食はなし)で過ごすシーンが描かれます。本のようにうまく伝えられないのですが、子どもが少ない食費で毎日やりくりしないといけないことの息苦しさがこの本を読めばよくわかります。調理が好きだったり得意な方は、一日千円や一食500円もあれば、いろんなごはんが作れると思います。でもその調理や買い物スキルのない子どもたちは近所のコンビニに行くしかないのです。コンビニからの通告があったことを考えると、このきょうだいはそうやって毎日コンビニで買い物をする姿をコンビニ店員が目撃していて気にかけていたから通告出来たのかもしれません。これは地元ならではの話になりますが、事件のあった団地はとても急な坂の上にある団地で車がある家庭にとっては近所の安いスーパーに買い物行くことは苦でないでしょうが、車がない家庭にとってこの暑い中、重い買い物荷物をもって買い物から帰るのは苦行でしかありません。

児童書の中では、妹が切り詰めた食事の買い物中にお菓子が買いたいと駄々をこねるシーンが出てきます。お話ではお兄ちゃんが最終的には妹のわがままにつきあうのですが、もし妹に言うことをきかせようとしたなら、結局は暴力や恐怖で言うことをきかせるしかないはずです。きっと妹は痛くて、怖くて泣くでしょう。するとお兄ちゃんは余計に苛立ちます。「泣くな!」と怒鳴ってさらに強い暴力をふるうしかなくなるわけです。新聞の見出しになっている「連続で何十発も殴った」には、おそらくこのような流れがあるはずです。そしてセンセーショナルな見出しを使うなら、報道側もそのぐらいの解説もきちんとして欲しいと思います。

さて前回の【その2】の投稿では、ソーシャルワーカーとしての3つのアクションを宣言しました。が、あれは中長期なアクションで、とにかく今すぐやらないといけない目の前のアクションについて、この三連休中にこの事件を受けて、こどもソーシャルワークセンターの職員とミーティングをした結果、このような危機的な夏休みの終わりと二学期のはじまりが、統計的にも子ども若者が自死につながりやすいということから、「緊急コロナ対策:一週間限定深夜のアウトリーチ活動」をこどもソーシャルワークセンターとして行うことが決まりました。日中はおそらくいろんな民間団体や公的機関もそれなりに居場所づくりや声かけをしてくれますが、深夜は相談窓口も居場所もありません。そこでこどもソーシャルワークセンターでは、昨年度から週2回取り組んでいる「生きづらさを抱える若者たちによる深夜のアウトリーチ活動」を一番危険な一週間は毎日行うことにします。センターに朝まで職員やボランティアがいるので、必要に応じて緊急宿泊支援も行えることになります。とはいえそのための資金と現状のスタッフでは難しいので、現在クラウドファンディングのサイトとスタッフ募集のサイトを作成中です。近日中に公開することになると思います。ぜひみなさんの力を貸してください。一人ずつになりますが、この苦しい夏休みを過ごしている子どもとつながりましょう!

この連休中も大津市内で起こった事件ということで、心痛めている市民のみなさんがセンターに寄付をもってくるついでに「何か出来なかったか」という思いを話してくれています。同じソーシャルワーカー仲間や子どもの居場所に関わる人たちから今回の件で傷ついているとのDMが来ています。きっとセンターやソーシャルワーカーである幸重に何か期待してくれていると思うので、今回のアクションは、それに応える意味も大きいと思っています。正直、へんなアドレナリンが出ていて、突っ走っているのはわかっていますが、身近な場所の子どもが命を亡くし、子どもが加害者になってしまった以上、やはりソーシャルワーカーとして、何かアクションを起こしていきたいと思います。

★この投稿の元になった産経新聞(8月11日)
「連続で何十発も殴った」逮捕の少年が供述
についてはこの後に追記
小学1年の妹=当時(6)=に暴行を加え死亡させたとして、傷害致死容疑で逮捕された大津市の無職少年(17)が容疑を認め、「連続で何十発も殴ったり、蹴ったりすることもあった」との趣旨の供述をしていることが10日、捜査関係者への取材で分かった。妹の全身には約100カ所の皮下出血の痕があり、滋賀県警は少年が激しい暴行を繰り返していたとみて、動機や経緯を慎重に調べている。

捜査関係者によると、少年は「7月22日から暴行するようになった」などとも供述。前日の21日未明には、少年が妹を連れてコンビニエンスストアにいるところを不審に思った従業員が110番し、県警が児童相談所に連絡していた。その際、妹には目立った外傷は確認されなかったという。

さらに母親が留守がちで、少年と妹は千円の食事代だけで1日を過ごす日があったことも判明。大津市の小学校では7月20日に終業式があり、夏休みに入って妹を世話する時間が増えたことが暴行につながった可能性もある。

少年は今月1日、大津市の児童公園で、一緒にいた妹がジャングルジムから転落したとして、近隣住民に119番を依頼。妹は搬送先の病院で死亡が確認された。県警は当初、事故死の可能性が高いとみて調べていたが、司法解剖などの結果、妹の内臓の一部が破裂し、死因は外傷性ショックだったことが判明。少年が暴行を加えたとみて、捜査を進めてきた。

少年は母親と妹の3人暮らしで、今年4月から同居を始めた。大津・高島子ども家庭相談センター(児童相談所)は4月以降、家庭訪問するなどしていたが、「家庭内のトラブルはなかった」としていた。
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