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大津市内での小学生死亡事件について その2 [2021年08月08日(Sun)]
★理事長の個人のSNSで発信した記事の内容を転載します。

前回、児童福祉が関わっている事件であったことに衝撃を受けたとコメントしましたが、明らかにこの事件は現在の児童福祉の課題が起こした事件であることが、次々と出てくる報道の情報から明らかになってきました。

おそらく、学校がある間はヤングケアラーであったと思われる加害者となった兄は、急に暮らすことになった妹をギリギリ見ていたのではないでしょうか。しかし夏休みになって妹が学校で過ごしていた時間すべて家庭で過ごす時間となり、しかもそれが毎日長期間となることでの兄のストレスは大変なものだったと想像がつきます。ネグレクトの疑いがあることから、食事だって給食がなくなってまともに食べてなかったかもしれません。コロナがなければ、事件のあった地域では子ども食堂もやっていたし、夏は地域の寺子屋事業もやっていました。夏祭りや学校のプール開放などもあって小学生の子がエネルギーを解放する場はたくさんあったはずです。でもどこも行くところがない中、社会経験の少ない兄が妹に言うことを聞かせるためには暴力しかなく、それがエスカレートしていったことも容易に想像がつきます。

このきょうだいに必要だったことは、児童相談所などの定期訪問での面談だけではなく、妹には放課後や夜の時間、長い夏休みに安全安心で暮らせる場所の提供。兄には妹の世話を忘れて同世代の若者とたわいもない時間を過ごすことだったと思います。そして大津市に中に離れてはいましたが、ケア型の居場所としてこどもソーシャルワークセンターではこの小学生も高校生世代もカバーした二つの機能を提供していましたが、今回のきょうだいとつながることが出来ませんでした。ただただ悔しいです。

しかし悔しがっていても何もはじまりません。ソーシャルワーカーなのだから、やるべくことはアクションを起こすのみです。コロナ感染拡大によって、家で過ごすことを社会から強要される中、家庭が安全安心になっていない子どもたちのために、取り急ぎ3つのアクションを大津市や滋賀県に提言したいと思います。

1 ヤングケアラーの実態調査を滋賀県や大津市で実施すること
 国がヤングケアラーの実態調査をして驚くべく結果が出ました。すぐに対応する自治体、独自の調査をはじめた自治体があるにも関わらず滋賀県や大津市は未だにその動きはありません。今回の兄のように下の子どもの面倒を見ている家庭にとって、夏休みほど地獄の日々はありません。調査結果に基づいて、せめて夏休みのような長期休暇中にヤングケアラーにとってのレスパイトケアにつながる子どもの居場所活動を民間団体(もちろん行政でもOKです)で行っていく必要を訴えます。

2 支援対象児童等見守り強化事業を大津市や滋賀県内に広げる
 今回の事件のように児童福祉の網にかかっていても、出来ることは相談か必要に応じて一時保護するしか現在の児童福祉には支援プランがなく、そこを民間団体の力を借りて見守りを強化出来る「支援対象児童等見守り強化事業」という国の制度(全て国が経費を負担)を使わない手がないにも関わらず、今のところこの夏から大津市でスタートしたもののたったの2カ所(ゆえに今回はその2団体の対象地域の間で事件は起こってしまっています)、また滋賀県全体で見ればこの事業を活用していない自治体がたくさんあります。子どもたちに必要なのはこのような民間団体による直接支援です。大津市内、滋賀県内にこの事業を広げていく必要性を訴えます。

3 深夜の子どもたちを支援する新たなメニューをつくる
 今回の事件で大きく評価したいところに、深夜のコンビニからの通告があります(残念なことにそのチャンスを行政側が生かすこと出来なかったわけですが)。命に関わるしんどい子どもたちのSOSは深夜に起こることは今回の事件や過去の事件からはっきりしています(例えば大津市のいじめ事件も、亡くなる直前に家出して野宿をしていたり、夏休みに家に帰らず友だちの家に泊まったりと深夜にSOSを出していました)。こどもソーシャルワークセンターでも今、重点的に取り組んでいるのがこの深夜の支援です。モデル事業としての成果は出せているので、この深夜の支援を大津市内や滋賀県内に広めていくアクションを起こしていきます。
 賛同するみなさんで一緒に声をあげていきましょう。取り急ぎ、大津市や滋賀県の子どもの居場所づくりに関わる団体から市や県に緊急声明を出したいと思っています。また一年間で一番子ども若者の自死が多くなる夏休み明けを前に、民間でやれる緊急アクションを起こしていきます。力を貸してください。

【お願いと疑問】

報道が増えていくなかで、児童相談所へのパッシングが増えていくことが予想されます(まあ、個人的にも児童相談所の判断については残念に感じることが多く、正直しっかり検証して欲しいと思っていますが)。ただ絶対にやって欲しくないことは、苦情の電話などを児童相談所に入れないでください。結局、電話をとるのは現場のワーカーであり、その対応に追われた時間、他のケースに関わる時間が確実に奪われます。市民の苦情で現場の手を止めないで欲しい。どうしても苦情を入れる必要があればそれは現場の児童相談所ではなく、県や市のトップであるべきと考えます。正直、疑問でしかないのですが、未だに滋賀県知事や大津市長からこの事件についてのコメントが出されないことにがっかりしています。県や市としては同じような事件を起こさないこと、そして今もまだ同じ家庭環境で苦しんでいる子ども若者を県や市は全力で守るために今、出来ることを全力で行うという言葉を県知事と市長から待っているのですが・・・コロナの感染拡大で、家庭が安心安全でない子どもたちは、よりひどい状況に陥ります。企業などへの支援も大事ですが、自分たちで環境を変えることが出来ない子どもたちのことを忘れないでください!

★この投稿の元になった京都新聞(8月7日)
死亡女児の兄「妹の世話がつらかった」暴行認める供述 滋賀・大津
についてはこの後に追記
大津市の無職少年(17)が自宅で小学1年の妹(6)を暴行し死亡させたとされる事件で、傷害致死の疑いで逮捕された少年が、滋賀県警の調べに対し、容疑を認め、「妹の世話をするのがつらかった」との趣旨の供述をしていることが6日、関係者への取材で分かった。母親は留守がちだったといい、県警は家庭状況や暴行の動機などを詳しく調べている。

 大津・高島子ども家庭相談センター(児童相談所)の説明では、兄妹は家庭の経済的な理由などで県外の別々の児童養護施設で育ち、妹が小学校に入学した4月から母親と3人暮らしの生活となった。

 少年は母親の代わりに妹の面倒をみて、近所の住民は妹とボールなどで仲良く遊ぶ姿をたびたび目にしていた。一方、暴行があったとされる時期に近い7月21日未明、兄妹が自宅近くのコンビニを訪れたため、同センターは「ネグレクト(育児放棄)の疑いがある」などとして、今月4日に母親と面談する予定だった。

 少年は7月下旬〜8月1日ごろ、大津市内の自宅で妹を殴ったり蹴ったりし、右副腎破裂やろっ骨骨折などを負わせ、外傷性ショックで死亡させた疑いで、4日に逮捕された。関係者によると、少年は、だだをこねるなどした妹にかっとなった、との趣旨の供述もしているという。県警は当時の詳しい状況を調べている。

 事件が発覚したのは1日。少年はこの日午前、妹が同市内の公園のジャングルジムで転落した、と近隣住民に助けを求め、意識不明だった妹は搬送先の病院で死亡が確認された。県警は司法解剖の結果などから転落した事実はないと判断している。
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