■講義「地域志向のCSRとは」 講師 岸本幸子 氏 (
パブリックリソースセンター 理事・事務局長)
CSRを定義する定まった日本語はないが「持続可能な社会づくりに向けて
企業の長期的な存続を可能にする経営のあり方」ではないだろうか。
ISO26000という国際的な規格づくりもおこなわれている。そこではCSR(企
業の社会的責任)だけでなく、あらゆる組織のSRが問われる。ISOの規格
の中にも中小組織(SMO)について特記事項がある。
・大規模な組織よりもプロセスは柔軟で略式でもよい。
・必ずし7つの中核主題すべての課題に関連性を持つわけでもない。
・同業者及び業界団体と共同で行動する方が効果的な場合がある。
中小組織のSR事例として、ISO26000の国内委員会で
「平成20年度SR実践に関する中小企業事例調査報告書」を出している。
http://iso26000.jsa.or.jp/_files/rec/repo/part1&2.pdf
http://iso26000.jsa.or.jp/_files/rec/repo/part3.pdf
中小企業のCSRは本業そのもの。地域社会に受け入れられるにはこれしかな
かったという経営戦略であり、単なる社会貢献や法令順守ではない。規模が
小さいからできないというのは思い込みであって、ステークホルダーとの距
離が近さを活かせる。できないことは外部の力をかりる。大事なのは社員。
今後の課題としては、カリスマ経営者のあとの人材育成。それから、
「できるところから始める」とできていない部分も残るが、触れられたくない部分
についても情報開示していくことが、次のステップとしては重要ではないだろうか。
■株式会社吉川油脂 取締役 吉川千福氏
従業員90名中、知的障がい者39名勤務。1975年設立廃食用油回収及びリサイ
クル事業。廃油はインクの原料や飼料になる。国際相場によって価格が大き
く影響を受ける。価格も顧客も流動的な業種であるのが現状であったが、
顧客と継続的な関係をもったり、コンプライアンスに責任を持てる組織にし
たいと思い、環境・CSRに取り組みはじめた。
ドライバーは油を運ぶだけではなく、法律を知り廃油漏れなどにも対応でき
るようにしている。環境関連法令の勉強会や廃油漏えいに対する処理の方法
や教育を行っている。また、
全国ではじめて「再生利用事業登録」を受けた。ほか、エコアクション21
など様々な認証や許可を受けている。温室効果ガスの排出抑制を目標にバイ
オディーゼル燃料を少しずつ取り入れている。無理に導入しないで、継続性
を考えて少しずつ。情報開示をおこなうことで信用を勝ち得たい。
障害者雇用―出会いからこれまでについて。足利市に「こころみ学園」があ
る。油脂という業界は労働環境が厳しい。働いてくれる人を探していたとこ
ろ、こころみ学園の紹介で、大工の弟子をしている知的障がい者を見て、
うちでも仕事ができるのではないかと思った。
3人兄弟の子供部屋に2人の重度の知的障がい者を受け入れて、家庭が大混
乱になった。施設にもどってもらうことも考えたが、ひとりの子の親が警察
官で人格がすばらしく影響を受けた。ボランティアという言葉は社内では絶
対つかわない。家族に障害があれば、嫌でも介護するし共に生きる。そうい
うつもりでいろという社長の言葉で、家族が障がい者と一緒に生活すること
になった。
働いてくれていた障がい者が「老い」を迎え、社長が自前でバリアフリーの
施設を建てた。今4名の人が施設で暮らしている。吉川油脂がつぶれても彼
らの生活が成り立つように、法人化を考えたこともある。吉川油脂に油を回
収させてくれる顧客がいて、吉川油脂が成り立って、障がい者の生活も成り
立っていると、繰り返し思っている。
■ワイズティーネットワーク株式会社代表取締役社長 根本泰昌氏
「お茶を通じてココロとカラダを豊かに」、「お茶で世界をハッピーに」
そして「人と地域を同時に両方元気にする企業」に。人と地域を元気にした
いと思って、起業することを考えたとき、それを実現できるのが紅茶だった。
なぜ紅茶か?製薬会社で働いていた時代に気づいたのは、「みんな疲れてい
る」ということ。美味しい、老若男女、毎日のめるって、紅茶しかない。を
やればまちづくりになるわけでなく、まちづくりイベント、子ども達への食
育、紅茶づくり体験、福祉作業所で紅茶の入れ方研修、介護分野での「テ
ィーセラピー」等、様々な企画を手がける。
栃木CS(サッカーチーム)応援茶など、前職で、スポーツ選手のドリンクを
手がけた経験をいかし、オリジナルな紅茶を作ったり。
「オリオン通り」という地域の商店街に元気が無い。地域の子供との「きず
な」づくりや、就業体験、夜の清掃活動、合コン(ティーパーティ)を仕掛
け、デートする場所、地域の交流の場所として復活させたい。身近な事例に、
しかけを工夫する。街づくり活動事例として内閣府の研究会に呼ばれたり、
特に営業はしていないが「面白い」指名はたくさん受けている。
私の考える社会貢献は、「わびしさ」と「悲壮感」を感じさせないこと。
「エンターテーメント」性と「アミューズメント」性を持つこと。景気に左
右されない志と、とにかく自分が楽しむこと。
全てが人の「笑顔」につながる事業をおこなっている。