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CANPAN CSRプラス コラム&ニュースリリースのバックナンバー


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2010年版CSR報告書情報開示調査の傾向について(前編) [2011年04月27日(Wed)]
2011年4月 CANPAN CSRプラス運営事務局


本稿を【PDF版】でご覧になる場合はこちらから



1.調査の対象

 東京証券取引所第1部上場企業を対象に「2010年版CSR報告書」を請求し、12月末までに入手した581冊の報告書を対象に、情報開示度を調査した。調査対象となった業種別の報告書の入手状況は表1の通りである。
 「2010年版CSR報告書」とは、2009年度の自社のCSR情報を掲載したもので、紙媒体で発行されている報告書と、ウエブサイトにPDF形式で提供されているデータを対象とした。また、ウエブサイトへの掲載がHTML形式であっても報告書に準じる内容が掲載されており、なおかつそれを調査対象として希望する場合は、出力の上事務局へ送付することを企業に依頼した。この調査は「2005年度版CSR報告書調査」を対象とする調査より開始し、今回で6回目となる。


[表1 業種別調査サンプル(報告書)入手状況]



2.調査の方法

 CSRに関連した基本的な48項目(表2)について、入手したCSR報告書における情報掲載の有無を調査した。掲載されている情報の内容を評価するのではなく、情報そのものが掲載されていることが確認できれば「1」、確認できない場合を「0」として情報開示度を点数化している。
 情報開示はあらゆるステークホルダーに理解しやすいものであることが望ましいとの観点から、CSRに関心を持つ大学生・大学院生25名と日本財団インターン14名からなる計35名の調査員と、調査員を支援し調査をサポートする8名の調査コーディネーターの協力を得て、マニュアルを元に報告書調査を実施した。


[表2 CSR報告書への掲載の有無を調査した48項目(2010年度改訂版)]




3.調査項目の改訂

 本調査を開始した2006年当時に比べて、CSRの考え方はこの5年で広く浸透し、CSRコミュニケーションのあり方も進化してきた。それに伴い、企業に求められる取り組みの内容や情報開示のレベルも変化してきているが、本調査は経年変化を重視することから、大幅な項目改訂は行わず、調査項目の判断基準を変更して対応している。
今回の調査で改訂した項目は、表2で【厳格化】または【項目名変更】と記している。


4.報告書名称について

 表3は報告書の名称についての年次推移である。「環境報告書」が13.94%と大幅に減少していることが分かる。一方で増加しているのが、「CSR報告書」である。調査開始以降、年々増加を示し2010年度は48.19%となった。
また、2010年度の報告書名称で「サステナビリティ報告書」は18件、「企業名を冠した報告書、アニュアルレポート・コーポレートレポート」は39件であった(2009年度はそれぞれ17件、36件。表3では「その他」に含まれている)。世界的には年次報告とCSR報告が統合されていく傾向にあるが、今回の調査対象企業においてはまだその傾向は見られない。


[表3 報告書名称の年次推移]






2010年版CSR報告書情報開示調査の傾向について(後編) [2011年04月27日(Wed)]



5.調査結果
※以下の分析においては、調査実施企業581 社を対象としている。CANPAN CSR プラスデータベ
ース「CSR 企業情報」に掲載されている値と異なることにご留意いただきたい。


(1) 総合点数・大項目の推移

 全企業の総合点数の平均は17.82ポイントと、09年度調査より0.92ポイントの上昇がみられる。
また、大項目については、「世間良し」7.49ポイント、「売り手良し」3.89ポイント、「買い手良し」6.45ポイントとなった。それぞれにおいて点数の上昇がみられるが、依然「売り手良し」の立ち遅れが目立つことは変わらない。

[表4 総合点・大項目 全体平均年次推移]



図1 総合点・大項目 全体平均年次推移(2008〜2010年)



(2)中項目の年次推移

中項目の全社平均点と年次推移は表5の通りである。
情報開示度が最も高い項目は「1-4 環境負荷情報の開示(2.93ポイント)」、次いで「3-3 コンプライアンス(2.28)」、「3-1安全の情報公開(2.02)」と続いている。一方、情報開示度が低い項目は、「売り手良し」の項目が中心で、「2-3 強制労働の防止(0.33)」、「2-1 人権問題(0.84)」、続いて「3-4 個人情報に関する取組み(1.05)」となっている。上位3項目、下位3項目ともに09年度と同じである。点数変動を見ると、「1-2 持続可能な開発に向けた取組み」の伸びが大きい。

[表5 中項目 全体平均年次推移]



図2 中項目 全体平均年次推移(2009〜2010年)




(3)分野別業種別情報開示状況

  表6は分野別・業種別の情報開示度をまとめたものである。
 サンプル数が5件以上の業種に限ると、総合計点数平均が高い業種は「電気・ガス業(25.80)」、「ゴム製品(23.40)」、「その他製品(22.20)」である。同じくサンプル数5件以上で総合計点数平均が低い業種は、「その他金融業(14.00)」、「小売業(13.62)」、「サービス業(10.67)」である。

[表6 分野別・業種別 情報開示情報]




(4)小項目別掲載企業数、情報開示率

 小項目別の掲載企業数および開示率(掲載率)をまとめたのが、表7である。
 開示率の上昇が大きいのは、「1-2-04.生物多様性への配慮(前年比+19.44%)」、「3-3-04.全従業員へのコンプライアンス研修の実施(+13.43%)」「2-3-02.過剰労働防止のための取り組み(+11.39%)」である。
 下降率に関しては、「3-1-01.第三者機関によるラベリングの導入(−16.13%)」「1-3-03.代替エネルギーの利用促進(−9.15%)」が目立つが、これは評価基準を厳格化したためである。「3-1-01.第三者機関によるラベリングの導入」においては「くるみんマーク」、「1-3-03.代替エネルギーの利用促進」においては「モーダルシフト」をそれぞれ評価対象から外している。

[表7 小項目別掲載企業数・開示率 年次推移]




6.調査を振り返って

(1)全体的傾向

 「4.報告書名称について」で示したように、2010年度も「環境報告書」発行数の減少が見られた。「CSR報告書」の名称でESG(環境・社会・ガバナンス)情報を開示する企業のすそ野が広がっており、環境集中型の情報開示からの脱却が一層顕著になっている。
この傾向は各調査項目を見ても明らかで、特に「世間良し」に注目したい。「世間良し」の中項目では「1-4 環境負荷情報の開示」が高止まりを示す一方で、「1-1 社会貢献に関する取り組み」「1-2 持続可能な開発へ向けた取組み」が上昇していることが分かる。「1-4 環境負荷情報」は既に多くの企業が情報開示しており、その分、地域での社会貢献や国際的課題への取組みの伸びが目立っていると言えよう。なお、「1-3 環境・社会的な課題に対する体制と普及」に関しては漸減が見られるが、小項目「1-3-03 代替エネルギーの利用促進」の厳格化に伴うものであり、その他の小項目については上昇傾向である。
 「売り手良し」、「買い手良し」においても情報開示の進展がみられる。しかしながら、表4、図1からもわかる通り「売り手良し」の開示はいまだ立ち遅れており、情報開示に偏りがあると言わざるを得ない。

(2)特徴的な項目

グローバル課題への関心、今年も上昇。特に、生物多様性ガイドラインの策定が急増している。 情報開示度が最も上昇した小項目は「1-2-04.生物多様性への配慮」であった。生物多様性基本法の成立や「日本経団連生物多様性宣言」の公表などが影響していると思われる。なかでも記述が増えているのが、独自の生物多様性ガイドラインの策定、もしくは前述の日本経団連の宣言への賛同で、これらの記述は259件中74件にのぼる。一方、環境アセスメントやモニタリングの記載は13件にとどまっており、ガイドライン策定を受けた今後の企業行動に注目したい。
また、「1-2-03 児童労働・強制労働」、「1-2-02 国際的な社会課題への関心」についても昨年に引き続き数値が上昇しており、国際課題への関心の高まりがうかがえる。特に、総合点の高い企業にこの傾向が見られる。

社会貢献への関心も増加。「1-1-01 寄付に関する情報」は8割の企業が言及。 「1-1-01 寄付に関する情報」の伸びにも注目したい。8割の企業で開示されており開示率は全項目中3番目に高い数値、前年に比べると7.41%増加している。同様に「1-1-02 社員のボランティア活動(前年比+2.07%)」「1-1-3 NPO・NGOとの協働(+4.34%)」、「1-1-04 災害時における地域貢献(+2.35%)」についても程度の差はあるがいずれも増加しており、社会貢献についての関心が高まっている。

なお、「1-1-01 寄付に関する情報」は、2006年度第1回調査における開示率は57.22%に過ぎなかった。2010年度開示順位1位の「1-4-01 CO2排出量」、2位「1-2-01 ISO14001の認証取得」、4位「1-4-04 ゼロエミッションに関する取組み」が、いずれも調査開始当初から80%程度の開示率を保っていることと比較すると、寄付に関しての情報開示が進んだことが見てとれよう。
「2-2-03 ワークライフバランスへの支援」は今年も上昇。情報開示は子育て支援中心。 次に注目したいのが、ワークライフバランス関連の項目である。「2-2-03 ワークライフバランスへの支援」の開示率は66.61%(前年比+3.06%)。2009年度に前年比+9.93%という大きな伸びを示したが、2010年度も上昇した。この項目では法律で定められた以上の施策の開示について調査している。育児・介護休職期間の延長や短時間制度といった子育て・介護関連の施策、リフレッシュ休暇などが見られた。
 この項目と関係が深い「2-2-02 法定休暇取得状況」は開示率42.69%で全項目中20位であった。育児休暇取得状況は227件、介護休暇の取得状況は102件、有給休暇取得状況は74件で開示されており、子育て支援の情報としての情報開示が目立っている。

 2009年度の本レポートでは、「サービス残業等防止の取り組み」が下位にとどまっていることから、ワークライフバランスの取り組みは育児支援や福利厚生などファミリーフレンドリー施策が中心であると指摘した。本年度は「2-3-02 過剰労働防止のための取組み(「サービス残業等防止の取り組み」より項目名変更)」の開示率27.37%(+11.39%)と大きな伸びを示している。ワークライフバランス実現に向け前進しているように見えるが、本調査の対象年度が2009年度であったことを考慮すると、いわゆるリーマンショック後の業務調整によるものであると推測せざるを得ない。

また、研修に関する項目の開示率がいずれにおいても上昇しているのも、本年度の特徴である(「3-3-04 コンプライアンス研修(+13.43%)」、「2-1-04 人権研修(+7.73%)」、「3-4-04 個人情報保護研修(+3.61%)」、「1-3-02 SR研修(3.21%)」)。この背景について断言することはできないが、「2-3-02 過剰労働防止」同様にリーマンショックによる業務調整の影響は否定できず、来年度以降の動向を注視したい。

コーズリレイテッドマーケティング商品・サービスは環境中心。寄付は大規模な団体へ。 2009年度よりCRM(コーズリレイテッドマーケティング)の手法を取り入れた商品・サービスの掲載の有無について調査している(加点対象外)。昨年は48件の掲載があったが、2010年度49件とほぼ横ばいであった。内容については、環境に関する取り組みが大半で、そのほか途上国の貧困支援になる取組みやピンクリボン運動への賛同が見られた。寄付先は大規模団体が中心だが、支店が開発したCRM商品の寄付先を地域のまちづくりNPOとしている企業もあった。

ISO26000への言及は急増。ただし、活用はこれから。 昨年度よりCRMと同様に、ISO26000への言及を調査している。2009年度は557件中9件であったが、2010年度は581件中30件に増加。内容を見ると、社長メッセージでの言及や第三者意見における指摘が中心で、具体的な活用は少数である。活用事例としては、ISO26000に沿った報告書構成や、CSRガイドラインへの反映、SR研修への組み込みのほか、自社の課題抽出および検証に使用している例が見られた。






「CANPAN CSRプラス」2次利用にあたっての注意事項

「CANPAN CSRプラス」で公開されているデータを使って、加工や分析を行い、その結果をウェブ上で公開されたり、教材や資料として第3者へ配布される場合には「CANPAN CSRプラス」のクレジットを必ず明記してください。

その他「CANPAN CSRプラス」に公開されているコンテンツを何らかの形で2次的にご利用されたい場合には、個別に下記の問い合わせ窓口までご相談ください。


【問い合わせ窓口】

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 メール:contact@canpan.info
 電 話:03-6229-5551(9-17時まで 土日祝祭日を除く)
2009年版CSR報告書情報開示調査の傾向について(後編) [2010年04月28日(Wed)]



6.調査結果

1)総合点数の推移

 557社の総合計平均点は16.90ポイントと、2008年度の総合計より0.65ポイント上昇した。08年度は収集企業を広げ総合点が下がったが、今年度は対象企業数(主に銀行業)が23社減ったため、再び上昇している。

[表4 総合点数・大項目全体平均の年次推移]



2)大項目・中項目の年次推移

大項目及び中項目の平均点と年次推移は表5の通りである。
中項目別では、情報開示度が最も高い項目は「1-4 環境負荷情報の開示」(2.99ポイント)、次いで「3-1安全の情報公開」(2.14)、「3-3 コンプライアンス」(2.11)、と続いている。
一方、情報開示度が低い項目では、「売り手良し」の項目が中心で、「2-3 強制労働の防止」(0.22)、「2-1 人権問題」(0.33)となっており、調査開始以降、この傾向に変化は見られない。

[表5 中項目全体平均の年次推移]



[図1 中項目平均の年次推移(2008〜2009)]



3)分野別業種別情報開示状況

分野別・業種別の情報開示状況をまとめたのが表6である。
「電気・ガス業」は分野を問わず情報開示度が高い。その他、サンプル数が5件以上の業種に限ると、総合計点の高い業種は、順に、「保険業」(24.20)、「その他製品」(20.75)、「精密機器」(19.57)である。総合点の高い業種は、「売り手良し」の点数の高さが特徴である。
また、3分野ともに開示度が低い業種は「サービス業」(7.50)、「水産・農林業」(11.00)、「銀行業」(11.87)となっている。

[表6 分野別業種別情報開示状況]



4)小項目別掲載企業数

 小項目別の掲載企業数をまとめたものが表7である。
 上位の項目にほとんど動きはないが、今回の調査で「1-4環境負荷情報の開示」に属する項目の点数が上がっている。これは調査対象から、環境負荷情報の掲載率が低い銀行業の件数が減少したことにより、結果的に上昇したものである。
その他の項目の上昇率では、「2-2-03ワークライフバランスへの支援」(+9.93%)、「1-3-04 サプライチェーンのSR推進支援や協働による技術開発」(+9.04%)、「3-1-03 労働災害発生率数」(+6.21%)となっている。
下降率が大きかったのは、「1-3-02 全従業員を対象とした環境・SR研修」(-20.11%)である。今回から評価基準を厳格化し、環境研修及びSR研修の双方が揃って加点としたため、開示率が下がったものである。

[表7 項目別掲載企業数]




7.調査をふりかえって

調査対象から銀行業の件数が減少しその影響による点数変動はあるが、他にも、いくつかの特徴が見られた。

「2-1人権問題」、「2-3強制労働」は依然立ち遅れが目立つが、ワークライフバランス・ダイバーシティはわずかに上昇
「売り手良し」分野の中項目である4項目に分化の傾向が見られた。サプライチェーンやバリューチェーンなど、取り組みのバウンダリーが課題になる「2-1人権問題」、「2-3強制労働」は、下降あるいは現状維持で、依然立ち遅れが目立つが、「2-2 労働者としての権利」、「2-4雇用や昇進の差別」はわずかに上昇傾向にある。ワークライフバランスやダイバーシティは徐々にではあるものの拡がりをみせていることが分かる。

小項目では「2-2-03:ワークライフバランスへの支援」が最も上昇率が高く、「1-3-02:全従業員を対象とした環境・SR研修」の下降率が最も大きい
 情報開示の上昇率が最も高かった小項目は、「2-2-03:ワークライフバランスへの支援(前年比+9.93%)」であった。取り組みの内容は「くるみんマークの取得」が最も多く、354件中、102件を「くるみんマーク」が占め、社内保育所の設置や育児休職者の復職支援の取り組みも散見される。
 一方、ワークライフバランス実現のための主要な要素のひとつである「サービス残業等の防止の取り組み(長時間労働防止を含む)」については、開示件数89件(全体で33位)で下位に留まり、昨年度よりも開示率が0.74%下がっている。「ワークライフバランス」の取り組みは、育児支援や福利厚生などのファミリーフレンドリーが中心であることが伺える。 

グローバル課題への取り組みの開示が増加傾向に
開示率が上昇した小項目には、「1-2-02 国際的な社会課題への関心・関与」(前年比+5.38%)、「1-2-04 生物多様性」(前年比+5.48%)といった、グローバル課題に関する取り組みも目立つ。また、ステークホルダーダイアログもMDGs(国連ミレニアム開発目標)をテーマにした企業が増えていることから、途上国の貧困撲滅や生活環境の向上といったグローバル課題に関する企業の関心の高まりが伺える。特に、総合点が高い企業群にこの傾向が顕著に見られる。

CSRガバナンスやネガティブ情報の開示も増加
「1-3-01 CSR推進体制」(前年比+4.60%)の項目の開示率が上昇しており、CSRに関する専門部署の設置が進んでいることが分かる。また、「3-2-01 自社製品の不具合・リコール・不祥事等の情報」(前年比+3.39%)の開示率も増加しており、自社製品のリコール・不具合情報だけでなく、談合や独禁法違反、行政処分や社員の不祥事など、企業活動に関するネガティブ情報を開示し、ステークホルダーとのコミュニケーションを積極的に進めようとする姿勢が伺える。
コーズリレイテッド商品・サービスは環境中心
 今回新たに、CRM(コーズリレイティッドマーケティング)の手法を取り入れた商品やサービスの開発・取り組みの掲載の有無について調査した(加点対象外)。557件中、言及があった件数は48件であり、内訳は、環境に関する取り組みが大半で、社団法人国土緑化機構「緑の募金」への寄付、カーボンオフセット商品の開発などが多く見られた。その他、「Table For Two」(1食あたり2円を途上国の栄養向上に寄付するしくみ)の活動に賛同して社員食堂で寄付する取り組みを行う企業もあった。

ISO26000への言及はごく少数
上記に加えて、加点対象外の調査項目として、2010年に発効予定のISO26000(あらゆる組織の社会責任に関する国際規格)に関する記載を調べたところ、557件中、わずか9件であった。具体的には、ステークホルダーの選定やCSR方針の見直しにISO26000のガイドラインを活用するケースであった。

ウエブサイトとの連動
 昨今の景気悪化やCSRコミュニケーションの深化を受けて、CSR報告書の形態も多様化してきている。CSR報告書の発行を取りやめ、自社のウエブサイトでCSR情報を提供する企業が増加する一方、製造業を中心にコンパクトな概要版と数百枚に及ぶ詳細版を使い分ける企業もあり、二極化が進んでいる。CSR報告書を中心にしたCSRコミュニケーションのあり方が過渡期を迎えたと言えよう。今後は、本調査のあり方も含めて議論を深めていきたい。









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2009年版CSR報告書情報開示調査の傾向について(前編) [2010年04月26日(Mon)]
2010年4月 CANPAN運営事務局


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1.調査の対象

 東京証券取引所第1部上場企業を対象に「2009年版CSR報告書」を請求し、12月末までに入手した557冊の報告書を対象に、情報開示度を調査した。調査対象となった業種別の報告書の入手状況は表1の通りである。
 「2009年版CSR報告書」とは、2008年度の自社のCSR情報を掲載したもので、紙媒体で発行されている報告書のほか、ウエブサイトでPDF形式で提供されているデータや、HTML形式であっても報告書に準じる内容が掲載されているウエブサイトを対象とした。この調査は「2005年度版CSR報告書調査」を対象とする調査より開始し、今回で5回目となる。

[表1 業種別調査サンプル(報告書)入手状況]




2.調査の方法

 CSRに関連した基本的な48項目(表2)について、入手したCSR報告書における情報掲載の有無を調査した。掲載されている情報の内容を評価するのではなく、情報そのものが掲載されていることが確認できれば「1」、確認できない場合を「0」として情報開示度を点数化している。
 情報開示はあらゆるステークホルダーに理解しやすいものであることが望ましいとの観点から、CSRに関心を持つ大学生・大学院生19名に加えて、日本財団インターン16名を含む計35名の調査員と、調査員を支援し調査をサポートする8名の調査コーディネーターの協力を得て、マニュアルを元に報告書調査を実施した。

[表2 CSR報告書への掲載の有無を調査した48項目(2009年度改訂版)]




3.調査項目の改訂

 本調査を開始した2006年当時に比べて、CSRの考え方はこの4年で広く浸透し、CSRコミュニケーションのあり方も進化してきた。それに伴い、企業に求められる取り組みの内容や情報開示のレベルも変化してきているが、本調査は経年変化を重視することから、大幅な項目改訂は行わず、調査項目の判断基準を変更して対応している。
今回の調査で改訂した項目は、表2で【厳格化】または【項目名変更】と記している。


4.「世界に誇る日本のCSR先進企業実態調査(2009)」の実施について

 08年度より新たに上位企業100社のCSR取り組み状況についての調査を開始した。これは、CSR報告書の情報の掲載の有無だけではなく、各企業の取り組みの内容(質)を数値化することで、社会にその取り組みを知ってもらう機会を提供することを目的としている 。
本調査において「0」(情報開示なし)と判断された項目や、多数の取組みがあっても「1」(情報開示あり)評価に留まっていた内容についても、多様な取組の実態を表現することが可能となっている。以上の理由から今回より上位企業の分析は行わないものとする。


5.報告書名称について

 報告書の名称では、「CSR報告書(レポート)」が調査開始以降、毎年増加しており、2009年版では全体の45%に占めるまでになっている。

[表4 報告書名称の年次推移]


*2007年版は分析データがないため不明。

「世界に誇る日本のCSR先進企業実態調査(2009)」の結果は、次を参照。
https://blog.canpan.info/canpaninfo/archive/255




2008年版CSR報告書にみる情報開示度の傾向について(後編) [2009年05月15日(Fri)]
(前編を読む)


3)情報開示度の高い企業

情報開示度の高い上位30社の情報開示度と、3分野ごとの合計点を示したものが表5である。
 48項目中39項目の情報開示があった「凸版印刷」が、最も情報開示度が高い結果となった。30項目以上の情報開示があった企業は、以下の30社であった。「東芝」「ニコン」「日立製作所」などの精密・電気機器メーカー、「花王」「ライオン」や「グンゼ」「帝人」「旭化成」「東レ」などの一般消費財メーカーが、これまでの調査と同様に高得点であった。
一方、2007年度は総合点数順位の上位を占めていた電力・ガスは、新たに設けられた中項目「持続可能な開発へ向けた国際的な枠組みへの参画」において振るわず、取り組みが進む他のグローバル企業と比べて相対的に順位が下がる結果となった。

[表5 総合点数が30点以上の企業]


4)分野別業種別情報開示状況

分野別・業種別の情報開示状況をまとめたのが表6である。
「世間良し」分野で開示度が高い業種は「パルプ・紙」(10.20)と「石油・石炭製品」(9.60)であった。共通するのは天然資源を直接的に利用し、製品の一部を最終消費者まで供給する業種という点であろう。「売り手良し」分野では「証券・商品先物取引業」(8.50)と「保険業」(7.40)で、「銀行業」 以外の金融系業種において開示度が高いといえる。「買い手良し」分野は「保険業」(10.60)において開示度が高い 。

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2 「銀行業」はCSR報告書に相当する報告書がない場合、「ディスクロージャー誌」を調査対象としているため、環境関連の情報が少なく、全体として情報開示度は低めである。
3 「空運業」は「買い手良し」11.00ポイントだが、サンプル数は1である。
「電気・ガス業」は分野を問わず情報開示度が高い。その他、総合計点の高い業種は「繊維製品」「医薬品」である。また、3分野ともに開示度が低い業種は「水産・農林業」、「鉱業」、「サービス業」となっている。

[表6 分野別業種別情報開示状況]


5) 項目別掲載企業数

 項目別の掲載企業数をまとめたものが表7である。
 今回の調査で情報開示が進んだことがわかったのは、「寄付に関する情報」(72.24%)、「内部統制に関する取り組みについて」(65.00%)、「ワークライフバランスへの支援」(53.62%)であった。また、項目別の開示度順位では下位にとどまってはいるが、「NPO・NGOとの協働」(26.38%)と「全従業員へのコンプライアンス研修の実施状況」(25.00%)も向上している。

[表7 項目別掲載企業数]


4.調査をふりかえって

 調査対象に非製造業の報告書の数が増加し、報告の形式、記述の内容については多様化が進んでいる。また、項目別の開示度の変動や、自社製品の不具合に関する新規項目の比較的高い開示度から、「買い手良し」分野への企業の対応は一層進んでいることがうかがえた。一方、そのために「売り手良し」分野、特に「労働者としての権利に関する取り組み」や「強制労働の防止に関する取り組み」は、ますます、立ち遅れているという印象が強くなっている。

 また報告書の形式が「環境報告書」から「CSR報告書」へと移行が進むにともない、「社会貢献に関する取り組み」の情報開示が進んでいる。またEMS(環境マネジメントシステム)や環境負荷情報については、データの詳細をウエブサイトに掲載して報告書には概要のみを記述する企業も増えてきた。

 こうした環境に関する項目の情報開示の進化に比較して、従業員の人権についての取り組みやサプライチェーンの取り組みを支援・推進する項目については、情報開示が依然として進んでいない。新規項目とした「自社製品の不具合・リコール・不祥事等の情報」は29.83%、「生物多様性への配慮について」は19.66%の報告書に記述があったが、「採用に関するガイドライン」は2.93%、「外国人労働者の雇用に関するガイドライン」については0.69%の報告書での情報開示にとどまっている。

 「ワークライフバランス」や「ダイバーシティ」について記述する企業も増えているが、内容は「正規職員の再雇用」や「ファミリー・フレンドリーな休暇の充実」が中心で、非正規労働者やサプライチェーン全体での取り組みについての記述が少ないことも気になる点である。人的多様性への配慮を勧めることは、地域や地球の持続可能な発展において重要な意味を持つことは、世界的な共通認識となっている。組織の社会責任について包括的な取り組みを求める「ISO26000」の発行が2010年に迫る中、環境一辺倒の情報開示姿勢は早急に是正する必要があるだろう。

(前編を読む)

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2008年版CSR報告書情報開示調査の傾向について(前編) [2009年05月15日(Fri)]
2008年3月 CANPAN運営事務局


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1.調査の対象


 東京証券取引所第1部上場企業を対象に「2008年版CSR報告書」を請求し、12月末までに入手した580冊の報告書 を対象に、情報開示度を調査した。調査対象となった報告書の入手状況は表1の通りである。この調査は「2005年度版CSR報告書」を対象とする調査より開始し、今回で4回目となる。
 「2008年版CSR報告書」とは、2007年度の自社のCSR情報を掲載したもので、紙媒体で発行されている報告書のほか、ウエブサイトでPDF形式で提供されているデータや、HTML形式であっても報告書に準じる内容が掲載されているウエブサイトを対象とした。

[表1 業種別調査サンプル(報告書)入手状況]


2.調査の方法


 CSRに関連した基本的な48項目(表2)について、入手したCSR報告書における情報掲載の有無を調査した。掲載されている情報の内容を評価するのではなく、情報そのものが掲載されていることが確認できれば「1」、確認できない場合を「0」として情報開示度を点数化している。
 情報開示はあらゆるステークホルダーに理解しやすいものであることが望ましいとの観点から、本年度もCSRに関心を持つ大学生・大学院生を中心に募集した30名の調査員と、調査員を支援し調査をサポートする5名の調査コーディネーターの協力を得て、マニュアルを元に報告書調査を実施した。

[表2 CSR報告書への掲載の有無を調査した48項目(2008年改訂版)]


3.調査項目の改訂


 本調査の開始当時に比べて、CSRはこの3年で広く浸透してきており 、企業に求められる取り組みの内容や情報開示のレベルも変化した。とりわけ生態系に配慮した環境対策や開発途上国の社会的課題への取り組みなど、地球規模での持続可能な社会づくりに対する企業の責任についての関心が高まっていることから、今回の調査では「世間よし」の中項目に「持続可能な開発へ向けた国際的な枠組みへの参画」を追加し、関連する項目を統合・追加
した。そのほか、今回の調査で改訂した項目は表2で【新規】と記している。

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1調査対象報告書のうち、名称が「CSR報告書(CSRレポート)」となっているサンプル数は2006年度調査では125(全体の30.19%)であったのに対して、2008年度では230に増加、全体の39.66%を占める。2006年度調査では「社会・環境(環境・社会)報告書」という名称が最も多く134で、全体の35.37%を占め、続いて「CSR報告書(CSRレポート)」、「環境報告書」112(27.05%)となっていた。(2006年度版CSR報告書情報開示度調査分析レポート(vol.1)参照)


4.調査結果


1)総合点数の推移

 580社の総合計平均点は16.25ポイントと、2007年度の総合計平均点19.14より2.89ポイント下降した。分野別にみると、「世間良し」分野が2.29ポイント下がったことによる影響が大きく、調査項目の改訂による影響が背景にある。
 また「売り手よし」分野や「買い手よし」分野でも下落しているが、こちらは調査対象が広がったことで全体の平均点が下がったことが要因と考えられる。前年度調査を実施している452社に限ると前年度からの下落は2.25ポイントで、全調査対象の下落率(-2.89)よりも緩やかであり、新規に調査対象となった企業の情報開示度の低さが総合計点の平均を押し下げた要因であったといえる。

[表3 総合点数・大項目全体平均の年次推移]


2)大項目・中項目の年次推移

大項目及び中項目の平均点と年次推移は表4の通りである。
「世間良し」分野の点数が下がったのは、中項目を改訂したことが大きく影響している。前年度調査で中項目平均点が最も高かった「EMS(環境マネジメントシステム)に関する取り組み」を廃止したことが大きく影響し、新しく設けた中項目「持続可能な開発へ向けた国際的な枠組みへの参画」の全体平均点は1.25ポイントにとどまった。
本年度は最も高く情報開示度が高かった中項目は「環境負荷情報の開示に関する取り組み」で、2.71ポイントであった。次いで「コンプライアンスに関する取り組み」(2.16)、「安全の情報公開に関する取り組み」(2.07)と続き、遵法・安全衛生管理に関連する項目の開示度が高いことがわかる。
 前年度と比較して開示度の上昇がみられた中項目は「コンプライアンスに関する取り組み」(2.17)と「社会貢献に関する取り組み」(1.39)であった。


[表4 中項目全体平均の年次推移]


(後編につづく)
「CSRプラス」英語版がオープン! [2008年09月24日(Wed)]

「CSRプラス」英語版がオープン!
〜日本企業のCSR情報が英語でも閲覧・検索できます〜
 


CANPAN運営事務局


 CANPAN「CSRプラス」は2006年11月より、CSRをテーマにしたコラムやニュースリリースの掲載、CSR情報データベースを公開しています。
 このたび、2008年9月から、日本企業の取り組みをより広く世界の方々にも知って頂くことを目的として、コンテンツの一部を英文化して公開することといたしました。

 英文化の対象範囲は、企業CSR情報データベースの16の調査項目(調査では「中項目」に該当)と各調査項目の解説文章(「よくある質問F.A.Q.」に該当)です。これによって、各企業の中項目レベルでの情報開示の有無が英語で検索でき、比較が可能となります。



 「CSRプラス」では、東京証券取引所一部上場企業の「CSR報告書」を取り寄せて独自に調査し、また企業自身による自主登録も併せて閲覧・検索できるサービスを提供しています。日本では企業による「CSR報告書」の発行は盛んですが、誰もがアクセスできて、一覧性が高い検索サービスはこれまで存在していませんでした。日本企業のCSR情報を英語で発信することで、海外の投資家、NGO/NPO、研究者、消費者といった幅広い層を対象に、一層のコミュニケーションの促進の一助となればと考えています。

 CSRプラスの英語版は、次の3つの効果をねらいとしています。

 第一に、外国人投資家の日本企業への関心の向上です。日本の株式市場においても外国人投資家の存在感は年々増しています。東証1部の2007年の取引のうち、外国人投資家が占める割合は売買代金で全体の約63%を占めています(東京証券取引所「投資部門別売買状況」より。自己売買分を除く)。CSR情報は、SRI(社会的責任投資)基準として活用されることも多く、日本企業のCSR情報データベースとして一覧性の高い「CSRプラス」の企業情報を英語で公開することで、外国人投資家のみなさんが日本企業の取り組みを知るきっかけを提供したいと考えています。

 第二は、NGOによる活用です。欧米の国際的なNGOの関心は、日本企業を含むアジアの企業活動に向かっています。海外のNGOが日本企業の取り組みを知り、関心を高めていくことで、社会課題解決に向けたステークホルダー間のコミュニケーションが盛んになることを期待しています。

 第三には、日本企業と取引のある海外企業の担当者の方々、CSR報告書の英文化を検討されている企業担当者にもご利用頂くことを期待しています。各社のウエブサイトで多言語によるCSR情報を公開されている企業もありますが、自社の取り組みが他社と比べてどのような位置にあるのかを検索しながら比較できるCSRプラスを並行して活用することで、サプライチェーンとのコミュニケーションがさらに進むことが期待できます。

 ますます進む経済のグローバル化のなかで、英語による情報発信は日本企業においても欠かせない状況となっています。「CSRプラス」でも英語版を始め、様々な工夫で日本企業のCSRをサポートし続けます。今後ともご利用、ご支援のほどよろしくお願いいたします。



【参考コラム】
「市民のためのSRI」シリーズ  (執筆者:CANPAN運営事務局)

「新たな展開を見せるSRI」 (執筆者:特定非営利活動法人 パブリックリソースセンター)
新たな展開をみせるSRI [2008年05月21日(Wed)]
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新たな展開をみせるSRI



執筆者 : 特定非営利活動法人 パブリックリソースセンター

         シニアフェロー(SRI担当) 由良 聡_________________________________________________________________________________________________________________________________




この1〜2年で新たな展開をみせはじめたSRI。現状とともにその動きを紹介します。





1.データにみる内外SRIの現状と変化



 周知のとおり、日本におけるSRIは、28本で約3,100億円の規模となった公募のSRIファンド(所謂エコファンドを含む:図1)が大部分を占め、企業年金を対象とする私募のファンドや約250億円とされる企業年金連合会のコーポレート・ガバナンスファンドを含めても、その全体規模は4,000億円弱とみられています。





 これに対して海外では、米国の約250兆円、欧州9か国合計での約140兆円(それぞれ2005年末の円換算額)と、いずれも市場の運用資産全体の約1割をSRIが占め(米国はSocial Investment Forum(SIF) 2005 Report、欧州はEurosif 2006 Studyによる)、その他の地域・国でも徐々に広がっているとされています。ただ、規模以外にも押さえておくべき特徴や変化があります。米国を例に取り、隔年発行のSIF 2005 Reportで確認しておきましょう(表1:なお、ここでは「コミュニティ投資」には立ち入りません)。






※表を大きなイメージで見るには、こちらをご覧ください。





○ メインプレーヤーは機関投資家(公的年金を中心に、企業年金、宗教団体、財団、労働組合など)で、公募のSRIファンドはSRI全体の8%程度の資産規模にとどまります(図2:なお、公募ファンド全体のうちSRIファンドが占める割合は、米国で2%強、日欧はいずれも0.4〜0.5%程度)。







○ SRI全体の約74%の運用資産で「ソーシャル・スクリーン」の手法が取られていますが、その4割強が単一の項目を対象とするスクリーニングです。とくにSRIファンドでは依然としてタバコ、アルコール、ギャンブル、武器といった項目が上位を占めます。他方、機関投資家については、タバコ関係を除けば総じてそれらの特定業種・事業を排除するスクリーニングは減少傾向にあり、人権関係、雇用・労働関係および新たに増えてきた気候変動リスクなどの環境関係が主要な対象項目となっています。



○ 「株主行動」(株主提案)を実施している割合は、資産規模で全体の約31%です。2003年前後の「株主行動」全体の増減は特殊要因があってあまり参考になりませんが、従来併用されていた「ソーシャル・スクリーン」の部分が2005年に大きく減少したことは目を引きます。企業とのダイアログという重要なプロセスを含む「株主行動」の役割をあらためて重視し、注力していこうとする機関投資家の意向があるとされています。提案内容は、コーポレートガバナンス関係のほかに上記「ソーシャル・スクリーン」の対象と同様の項目で、それぞれの具体的な取り組みのほかに情報開示を促す提案も多くみられます。



 なお、欧州については、細かくは国によって状況に違いがありますが、機関投資家が主体であって公募のSRIファンド(図3)が占める割合はSRI全体の2%強と小さいこと、各種のスクリーニングとともにダイアログを通じた企業へのCSRに関する提案(Eurosif 2006 Studyの分類では「エンゲージメント」)も広く行われていることなど、概して米国と同様の状況があります。







2.さらなる拡大に向けた大きな動き



その1 

 2006年4月、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEPFI)とグローバルコンパクトが共同して「責任投資原則」(Principle for responsible Investment)を発表しました。6原則からなるそれを要約すれば、“投資の方針や分析・判断のプロセスに環境・社会・コーポレートガバナンス(ESG)の問題を組み込むとともに、投資対象に対して関係情報の開示を求め、資産運用業界のなかで広く働きかけを行い、活動状況を報告する”という内容で、年金基金などの資産保有者ならびに運用機関に宣言・実行させようというものです。2006年末までに署名機関は世界108の主要な年金基金や運用機関(日本からも1企業年金ならびに7運用機関)に及び、その運用資産合計は5兆ドルを超えるといわれています。



その2 

  なおUNEPFIは、事前に外堀を埋めるかのように、これまで年金基金などが主張してきた受託者責任の問題に関して、投資判断に際してESG問題を考慮することはそれに反しないという趣旨の法律的見解を、法律専門機関による150頁にわたる調査報告書のかたちで、2005年10月に発表しています。



その3 

 また、CSRのそれぞれの項目に取り組むことが企業価値にどのような具体的な影響を及ぼすかというマテリアリティの研究も並行して進められています。最近では日本でもCSRへの取り組みやSRIの評価をめぐる議論のなかで使われるようになりましたが、UNEPFIでは、2003年以降メインストリームの金融機関や運用機関も巻き込んで研究を行い、数々の報告書を発表しています(The Materiality of ESG Issues to Equity Pricing 2004、同2005、Show Me The Money: Linking ESG Issues to Company Value 2006、等)。要すれば、SRIに懐疑的なメインストリームの投資判断のプロセスにもESGの問題が組み込まれるように、その根拠を確立しようとする試みといえます。





3.新たな展開がもたらすものは?



 以上のような流れのなかで、とくにグローバルに事業展開している企業には、自社にとってのESG問題のマテリアリティを明確にして内外の投資家に向け発信することが一層求められ、また機関投資家によるエンゲージメントの機会も増えることになると予想されます。社会にとってはどうでしょうか。CSRへの取り組みを評価と監視の両面から後押しするSRIの多様な展開と市場の拡大はもちろん望ましいところですが、一方で、これまでのところマテリアリティの研究や議論の対象はおおむねコーポレートガバナンスと環境の問題に集中している感があります。既に2004年には、SRIの草分けである米国KLDの創設者Peter D. Kinder氏が“Materiality to Whom?”という疑問を投げかけていますが、その他のESG問題が置き去りになってしまわないか、引き続き注目している点です。

企業の社会性を調査・評価する [2008年05月21日(Wed)]
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企業の社会性を調査・評価する
執筆者:特定非営利活動法人パブリックリソースセンター
     プログラムオフィサー 杉田教夫__________________________________________________________________________________________________________________________________


1. 唯一の非営利・中立の評価機関として

 SRI(Socially Responsible Investment=社会的責任投資)とは、「社会的責任に配慮したお金の流れ=投資」を総称し、CSRを果たしている企業への投資、CSRを果たすことを求める株主行動、コミュニティへの投資など広範な活動を意味しています。

 パブリックリソースセンターが、SRIに関わるようになったのは2000年、国内初の本格的SRIファンド「あすのはね」(朝日ライフアセットマネジメント株式会社)の開発と調査・評価に参画したことが始まりです。2002年からは日本株として唯一のSRI株価指数(モーニングスター株式会社)の開発に参画、全上場企業を対象としてCSR全般に関する調査・評価を実施し現在に至っています。

 SRIと呼ばれる投資信託は2006年11月末現在、日本株を主とするもので20本あり、投資残高は約2500億円、企業の社会性に関する調査・評価を行う機関も数機関あります。その中で、パブリックリソースセンターは唯一の非営利・中立の評価機関として特色を持っています。


2. なぜNPOがSRI評価を行うのか

 では、なぜNPOが投資信託や株価指数といったことに関わるのか。それは、パブリックリソースセンターのミッションと結びついています。パブリックリソースとは、社会的課題に取り組むための人や資金、組織、情報などの資源であり、私たちはその資源の開発や新しい流れを作ろうと活動をしています。SRIは前述したように、「社会的責任に配慮したお金の流れ=投資」であり、この流れが大きくなること、すなわち市民が投資を通じて企業の社会性向上に参画すること、企業が社会的責任を果たしグッドカンパニーになっていくことは、新たな市民社会において大切なことだと考えています。


3. 企業の「責任」と「創造性」を市民の立場から評価する

 社会と共生する企業とはどのような「企業像」でしょうか。1つには、企業活動の全てのプロセスに、環境や社会的公正への配慮を組み込み、多様なステイクホルダーに対し情報を公開しコミュニケーションを行うことで「説明責任」を果たすこと。2つには、社会的な課題に対し、事業活動として取り組み、新たな価値を生み出す「創造性」を持つこと。この二つの側面を合わせ持つことが必要だと考えています。

 これを私たちは、「ガバナンス・アカウンタビリティ」、「マーケット」、「雇用」、「社会貢献」、「環境」の5つの分野から見て「評価」しています。


4. ステイクホルダーに対する情報の開示とコミュニケーション
                   −−進みつつあるが十分とはいえない

 今回は、私たちの調査で基本的事項として重視している、ステイクホルダーとの関係、すなわちステイクホルダーに対し必要な情報が開示されているか、ステイクホルダーとの双方向のコミュニケーションが図られているか、ということを見てみましょう。

 CSRとは社会の抱える課題を企業として引き受けることが本質です。社会的課題は非常に幅広く存在しますから、その中の何をとりあげて、企業として対峙していくかを決める必要があります。そのためにはステイクホルダーと対話を行い、ステイクホルダーが企業に期待していることを理解することが欠かせません。その意味で、ステイクホルダーとの対話はCSRの実践の中核といえるでしょう。

 <図1>は、どのような情報が開示されているかを現しています。コーポレートガバナンス(「企業統治」と訳され、企業における意志決定の仕組み、不正を防止する機能のこと)、環境、地域・社会貢献活動、採用関係という項目が8割前後と高い比率で情報開示されていることがわかります。一方、製品リコール・安全性、調達関連、採用以外の雇用については5割台でやや低い結果になっています。自動車や暖房機、湯沸かし器などで製品の欠陥による死傷事故が起こっていることは記憶に新しいと思います。「安全」に関わる情報が十分に開示されていないことは問題だと言わざるを得ません。また、雇用に関しても、従業員が生き生きと働ける環境にあるか、キャリア形成をする仕組みがあるか、雇用に関する法律が守られているかといったことは株主や消費者にとっても重要な情報です。情報開示とは、都合の良いことだけを開示したり、トピックス的に一部の情報を開示することではなく、その分野に関する方針や目標、実績を包括的に明らかにすることであることは言うまでもありません。


<図1>情報開示の内容


 <図2>は、ステイクホルダーとのコミュニケーションが図られているかを現しています。定期的な意見交換を行っているかとの問いについては、株主、従業員、消費者が比較的高く、調達先、地域社会、環境などは半数以下となっています。ステイクホルダーというものを狭い範囲で考えている企業が、まだ多くあるということでしょうか。また、単に意見交換を行うだけでなく、ステイクホルダーと建設的な意見交換を行い、そこでの提案を経営活動に反映させ、計画をステイクホルダーに約束し結果を報告するといった、ステイクホルダーの参画(ステイクホルダー・エンゲージメント)になると、従業員を除くどのステイクホルダーとも3割以下に留まっています。
 

<図2>ステイクホルダーとのコミュニケーション、エンゲージメント


5. 企業と市民セクター

 ステイクホルダーとのコミュニケーションは、単なる意見聴取や意見交換から、具体的な協働の目標設定などに向けて、今後徐々に深まっていくことが期待されています。コミュニケーションから改善や進歩を生むためには、ステイクホルダー、特にNGO、消費者団体、地域コミュニティなどの市民セクター側が、継続的に責任を持って企業の対応に関わっていくことも必要です。双方がコミュニケーションを通して成長し、持続的可能な社会づくりに貢献することが目指されているといえるでしょう。
2007年版CSR報告書情報開示調査の傾向について(前編) [2008年03月19日(Wed)]
2008年3月 CANPAN運営事務局


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1.調査の対象


 東京証券取引所一部上場企業を対象に、2007年10月末日までに発行された「2007年版CSR報告書」を請求し、12月末までに入手した498冊の報告書を対象に調査した*1。調査対象となった報告書の入手状況は表1のとおり。
 なお、ここでいう「2007年版CSR報告書」とは、2006年度の自社のCSR情報を掲載したもので、紙媒体で発行されている報告書のほか、ウエブサイトでPDF形式で提供されているデータや、HTML形式であっても報告書に準じる内容が掲載されているウエブサイトを対象としている。
 この調査は「2005年版CSR報告書」を対象とする調査より開始し、今回で3回目となる

[表1 業種別調査サンプル(報告書)入手状況]


2.調査の方法


 CSRに関連した基本的な48項目(表2)の情報について、入手したCSR報告書における掲載の有無を調査した。掲載されている情報の内容を評価するのではなく、情報そのものが掲載されていることが確認できれば「1」、確認できない場合を「0」として情報開示度を点数化した。

 情報開示はあらゆるステークホルダーに理解しやすいものであることが望ましい、との観点から、今年度はCSRに関心を持つ学生や、市民活動に参加する退職者ボランティアなど多様な年代の調査員が担当した。全国5箇所 の民間NPO支援センターの協力を得て、日本各地より計23名の調査員が集合研修を受け、マニュアルを元に調査を実施した。

[表2 CSR報告書への掲載の有無を調査した48項目(2007年改訂版)]



3.調査結果

1)総合点数・大項目平均の傾向

 498社の総合計平均点は19.14と、2006年度より1.02ポイント上昇した。「世間良し」分野の点数が0.11ポイント下がっているのは、報告書調査の母数が100社増え、全体に占める非製造業の割合が高まったことが影響していると考えられる。「売り手良し」分野で0.44ポイント、「買い手良し」分野で0.69ポイントの開示度の上昇がみられ、全体として環境関連以外の分野における情報開示が進んでいるといえる。

[表3 総合点数・大項目全体平均の年次推移]



2)情報開示度の高い企業
48項目中、40項目の情報開示が確認できた東京電力が、最も情報開示度が高い結果となった。2006年の調査では、30項目以上の情報開示があった企業は29社であったのに対して、2007年度は49社と1.6倍の増加率で、情報開示に積極的な上位層の企業数が増加している*2

[表4 総合点数が30点以上の企業]

 上位企業を業種別で見ると、総合第一位の東京電力や第四位の中部電力、第八位の九州電力をはじめとした電力会社や、電気機器の富士フイルムホールディングス・東芝・ソニー・セイコーエプソン、化粧品の花王、繊維製品のグンゼ・帝人・旭化成などの一般消費財メーカーが上位を占めている。
うち、電力会社は、10社中8社が、情報開示度が30点以上となっており、極めて開示度が高い結果となっている。
 2007年の上位企業の49社のうち、昨年度の調査データがある43社に限って点数変動、上昇率をみてみると、それぞれ点数変動は4.2ポイント、上昇率は8.8%であった。全体平均の推移と比較して、上位企業の点数の上昇率は大きく、従前より情報開示度の高い企業において、より一層、情報開示が進んでいるといえる。

 なお、CANPAN CSRプラスのデータベースは、企業の担当者がデータを編集・公開することができるため、サイト上の点数は随時更新されており、このレポートの数値とは異なる場合があることをご了承いただきたい。


*1)分析対象となるデータについて
本稿では、CANPAN運営事務局が調査を行った2007年版の498社分のデータを分析対象としている。
同一企業について、「企業が自主的に登録したデータ」と「CANPAN運営事務局が調査して登録したデータ」の両方を持つ場合は(2007年版6社:2008年2月現在)、調査の客観性を期するという意味から、後者の「CANPAN運営事務局が調査して登録したデータ」を分析対象としている。

※2)調査実施団体である特定非営利活動法人(以下、「特活」)旭川NPOサポートセンター、(特活)せんだい・みやぎNPOセンター、(特活)新潟NPO協会、(特活)奈良NPOセンター、(特活)岡山NPOセンターへは、本調査に対する協力について感謝の意を述べたい。

(後編につづく)
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