CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る

CSR column&news archives

CANPAN CSRプラス コラム&ニュースリリースのバックナンバー


<< 2011年11月 >>
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      
カテゴリアーカイブ
最新記事
新たな展開をみせるSRI [2008年05月21日(Wed)]
_________________________________________________________________________________________________________________________________



新たな展開をみせるSRI



執筆者 : 特定非営利活動法人 パブリックリソースセンター

         シニアフェロー(SRI担当) 由良 聡_________________________________________________________________________________________________________________________________




この1〜2年で新たな展開をみせはじめたSRI。現状とともにその動きを紹介します。





1.データにみる内外SRIの現状と変化



 周知のとおり、日本におけるSRIは、28本で約3,100億円の規模となった公募のSRIファンド(所謂エコファンドを含む:図1)が大部分を占め、企業年金を対象とする私募のファンドや約250億円とされる企業年金連合会のコーポレート・ガバナンスファンドを含めても、その全体規模は4,000億円弱とみられています。





 これに対して海外では、米国の約250兆円、欧州9か国合計での約140兆円(それぞれ2005年末の円換算額)と、いずれも市場の運用資産全体の約1割をSRIが占め(米国はSocial Investment Forum(SIF) 2005 Report、欧州はEurosif 2006 Studyによる)、その他の地域・国でも徐々に広がっているとされています。ただ、規模以外にも押さえておくべき特徴や変化があります。米国を例に取り、隔年発行のSIF 2005 Reportで確認しておきましょう(表1:なお、ここでは「コミュニティ投資」には立ち入りません)。






※表を大きなイメージで見るには、こちらをご覧ください。





○ メインプレーヤーは機関投資家(公的年金を中心に、企業年金、宗教団体、財団、労働組合など)で、公募のSRIファンドはSRI全体の8%程度の資産規模にとどまります(図2:なお、公募ファンド全体のうちSRIファンドが占める割合は、米国で2%強、日欧はいずれも0.4〜0.5%程度)。







○ SRI全体の約74%の運用資産で「ソーシャル・スクリーン」の手法が取られていますが、その4割強が単一の項目を対象とするスクリーニングです。とくにSRIファンドでは依然としてタバコ、アルコール、ギャンブル、武器といった項目が上位を占めます。他方、機関投資家については、タバコ関係を除けば総じてそれらの特定業種・事業を排除するスクリーニングは減少傾向にあり、人権関係、雇用・労働関係および新たに増えてきた気候変動リスクなどの環境関係が主要な対象項目となっています。



○ 「株主行動」(株主提案)を実施している割合は、資産規模で全体の約31%です。2003年前後の「株主行動」全体の増減は特殊要因があってあまり参考になりませんが、従来併用されていた「ソーシャル・スクリーン」の部分が2005年に大きく減少したことは目を引きます。企業とのダイアログという重要なプロセスを含む「株主行動」の役割をあらためて重視し、注力していこうとする機関投資家の意向があるとされています。提案内容は、コーポレートガバナンス関係のほかに上記「ソーシャル・スクリーン」の対象と同様の項目で、それぞれの具体的な取り組みのほかに情報開示を促す提案も多くみられます。



 なお、欧州については、細かくは国によって状況に違いがありますが、機関投資家が主体であって公募のSRIファンド(図3)が占める割合はSRI全体の2%強と小さいこと、各種のスクリーニングとともにダイアログを通じた企業へのCSRに関する提案(Eurosif 2006 Studyの分類では「エンゲージメント」)も広く行われていることなど、概して米国と同様の状況があります。







2.さらなる拡大に向けた大きな動き



その1 

 2006年4月、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEPFI)とグローバルコンパクトが共同して「責任投資原則」(Principle for responsible Investment)を発表しました。6原則からなるそれを要約すれば、“投資の方針や分析・判断のプロセスに環境・社会・コーポレートガバナンス(ESG)の問題を組み込むとともに、投資対象に対して関係情報の開示を求め、資産運用業界のなかで広く働きかけを行い、活動状況を報告する”という内容で、年金基金などの資産保有者ならびに運用機関に宣言・実行させようというものです。2006年末までに署名機関は世界108の主要な年金基金や運用機関(日本からも1企業年金ならびに7運用機関)に及び、その運用資産合計は5兆ドルを超えるといわれています。



その2 

  なおUNEPFIは、事前に外堀を埋めるかのように、これまで年金基金などが主張してきた受託者責任の問題に関して、投資判断に際してESG問題を考慮することはそれに反しないという趣旨の法律的見解を、法律専門機関による150頁にわたる調査報告書のかたちで、2005年10月に発表しています。



その3 

 また、CSRのそれぞれの項目に取り組むことが企業価値にどのような具体的な影響を及ぼすかというマテリアリティの研究も並行して進められています。最近では日本でもCSRへの取り組みやSRIの評価をめぐる議論のなかで使われるようになりましたが、UNEPFIでは、2003年以降メインストリームの金融機関や運用機関も巻き込んで研究を行い、数々の報告書を発表しています(The Materiality of ESG Issues to Equity Pricing 2004、同2005、Show Me The Money: Linking ESG Issues to Company Value 2006、等)。要すれば、SRIに懐疑的なメインストリームの投資判断のプロセスにもESGの問題が組み込まれるように、その根拠を確立しようとする試みといえます。





3.新たな展開がもたらすものは?



 以上のような流れのなかで、とくにグローバルに事業展開している企業には、自社にとってのESG問題のマテリアリティを明確にして内外の投資家に向け発信することが一層求められ、また機関投資家によるエンゲージメントの機会も増えることになると予想されます。社会にとってはどうでしょうか。CSRへの取り組みを評価と監視の両面から後押しするSRIの多様な展開と市場の拡大はもちろん望ましいところですが、一方で、これまでのところマテリアリティの研究や議論の対象はおおむねコーポレートガバナンスと環境の問題に集中している感があります。既に2004年には、SRIの草分けである米国KLDの創設者Peter D. Kinder氏が“Materiality to Whom?”という疑問を投げかけていますが、その他のESG問題が置き去りになってしまわないか、引き続き注目している点です。

コメント
プロフィール

CSRプラスさんの画像
リンク集
https://blog.canpan.info/csrarchives/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/csrarchives/index2_0.xml