ソニー株式会社
ソニーは、ステークホルダーの関心に配慮し、適切なコミュニケーションを行うとともに、コンプライアンス、品質、雇用・労働環境、環境、社会貢献といったCSR活動を通じて企業価値の向上を図っています。これらの活動の網羅的・専門的な情報開示をCSRウェブサイトで行うと同時に、楽しくわかりやすいCSR情報サイト「For the Next Generation」を開設し、より幅広い層からアクセスしていただけるよう取り組んでいます。
すべてのステークホルダーから尊敬される企業に
CSRのルーツは「設立趣意書」
「CSR」という言葉が使われるようになったのは最近のことであるが、ソニーにとっては創業以来ずっと行ってきたことである。
事実、1946年に書かれた「設立趣意書」を見ると、経営方針として「不当なる儲け主義を廃し、あくまで内容の充実、実質的な活動に重点を置く」「量の多少に関せず最も社会的に利用度の高い高級技術製品を対象とする」「従来の下請工場を独立自主的経営の方向へ指導育成」「会社の余剰利益は適切なる方法をもって全従業員に配分、また生活安定の道も実質的面より充分考慮援助し、“会社の仕事即ち自己の仕事”の観念を徹底せしむ」などが掲げられている。
これらは、ソニーの企業活動が当初から事業を通じての社会貢献を志向するものであり、サプライチェーンや従業員に対する企業の責任も視野に入っていたことを示していると言えるだろう。
しかし、「CSR」という言葉を導入したのもソニーは早かった。CSRを担当する専門部署を置いたのも、以前から発行していた「(社会)環境報告書」のタイトルを「CSRレポート」と改めたのも2003年のことである。どちらについてもソニーは日本で最も先駆的企業の1つである。
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すべてのステークホルダーの視点を取り入れて
現在では、グローバルな視点であらゆるステークホルダーの関心や期待に配慮した企業経営を行うことは、世界的トレンドから当然要求されることであるという考えに基づき、経営上の意思決定においても、事業遂行の過程においても、株主・顧客・社員・調達先(サプライヤー)・ビジネスパートナー・地域社会・その他関連機関を含むソニーグループのすべてのステークホルダーの目から見て“価値ある企業”となることを目指している。
CSRレポートやウェブサイトでの情報開示は、専門家の批評に堪えられるような水準を満たすものである必要があり、かなり質の高いものを作っている。
一方、すべてのステークホルダーに情報を伝えるためには分かりやすさも大切である。
そこでソニーは、楽しく分かりやすい一般向けのCSR情報サイトを開設している。
http://www.sony.co.jp/next/
ここではCSRの基礎知識やソニーが行っているCSR活動が非常に分かりやすく、しかも自然に関心が広がっていくように工夫して紹介されている。
これは、より幅広い層の人々にCSRを理解してもらえるように行われている努力の一例である。
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グローバル性と多様性
グローバル性と多様性はソニーの大きな特徴である。実に、グループ社員の半数以上が海外にいるのだ。
それぞれに文化の違いなどもあり、また業種や分野も様々ではあるが、それでもソニーとしての基準は全世界共通のものにしたいという。もちろんそれを共有するための方法としては多様性が確保されなければならない。
例えば、「ソニーグループ行動規範」は事業活動を行う各国の言語に合わせて24言語に翻訳されている。また、人権研修を含めた当行動規範に関連する研修は、全従業員を対象に行っているが、そのプログラムは各地域の主体性を重んじ、それぞれの文化や社会的背景に応じて独自に開発されている。
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植根中国 長遠発展
さらに特筆すべきは、中国との関わりである。1970年代に中国でビジネスを本格的に開始して以来、ソニーは「植根中国 長遠発展(中国に根ざし、共に長期的な発展を目指す)」をスローガンに、様々な中国でのステークホルダーに配慮した企業活動を行っている。
例えば、将来の中国ビジネスを担う人材育成と相互理解促進のため、中国の高校生を日本に招き、ソニー社員宅でのホームステイの機会提供などを行うプログラムを毎年実施している。日本の企業や学校、家庭での生活体験を通じて日本社会に対する理解を深めてもらい、日本の先進技術に触れ学んだことを持ち帰って活かしてもらうおうとする取り組みである。
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社員一人ひとりのCSRマインド
障碍者雇用の分野では、ソニー・太陽(株)が障碍者に
雇用機会を提供する特例子会社の認定を1978年に受けている。また、製造分野の職場に
おいて車椅子の人でも作業ができるなどのユニバーサルデザイン化も推進されている。
このように、設備などのハード面や制度は既にかなり整備されている。しかし対人的なサポートやコミュニケーションに関しては社員一人ひとりの意識の向上が必要であり、CSRマインドをいかに根付かせるかが課題である。
例えば社員対象に行う取り組みも堅苦しいテーマや内容の研修会ではなく、楽しく自然に学べる企画に力を入れている。障碍者バスケットボールや環境問題をテーマにした映画上映を取り入れた連続講演会は、多くの社員の積極的な参加があり大変好評だったとのことだ。
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ソニーらしさを活かしたCSR活動を
ソニーは、イノベーションと健全な事業活動を通じて企業価値の向上を追及することが企業の社会に対する責任の基本であると考えている。
今後は、当然果たさなければならない社会的責任に加えて、特にグローバル性と技術力といったソニーらしさを活かしたCSR活動を積極的に展開したいという。
ソニーならではの技術力を活かしたCSR活動としては、「プレイステーション3」の優れた演算能力を医学研究に役立てたり、非接触ICカード“FeliCa”技術を活用した電子マネー“Edy”を社員募金に導入することにより、より多くの社員が募金活動に協力するなどの成果を既に上げている。
パートナーシップ・サポートセンター調査員から
「人」から成り立つ会社なのだから社員一人ひとりの気持ち、そして仕組みや制度があってもそれに対する社員の精神面を高めることが重要であると担当者は述べられた。社員一人ひとりをしっかりと守り、尊重する体制の中で社員が主体性を持ってグローバルに整備された制度などを活用することがソニー独自のCSRの基盤であると感じた。(Fk)