(一社)参加型評価センターの田中博です。
私は評価の専門家として、参加型評価(Participatory Evaluation)を専門に活動しています。「伴走評価エキスパート」育成プログラムには、評価の専門性を高めるために、発展的評価(DE)に関心を持って参加しています。
12月は10日に明治大学でDEをテーマにしたシンポジウムがあり、翌日から4日間の集中研修がありました。私は残念ながら緊急の仕事で最初の2日間は欠席したのですが、残りの3日間は出席し、充実した時間を持つことができました。なによりものこの3日間は、CSOネットワークさんがニュージーランドからDEの専門家として招へいした、ケイト・マッケグ氏の講義だったのでラッキーでした。
先住民族であるマオリの人々を対象とした教育プログラム(MPEI)のDE評価を事例に、質問に答える形で講義は始まり、DEの考え方や厳密さ(Rigour)、評価設問の設定など多彩な内容でした。
私が印象に残ったことは「DEも本質的にはしっかりした評価なのだ」という、いまさらながら失礼というか、あたりまえといえばあたりまえのことでした。これまでの研修で、DEは流動的な状況の中で、臨機応変に対応する性格であるとわかり、通常の評価と比べて、なんとなくルーズというか「特殊な評価」といったイメージを勝手に持っていました(ごめんなさい)。
しかしケイトさんが強調したのは、例えば「評価の哲学者」ともいわれるスクリーヴェン先生が仰っている「The logic of evaluation」などを徹底することでした。要は評価を行う際に、何に価値を置くか、何を持って「成功」と見なすかをしっかりと明確にすることです。具体的には評価の設計を丁寧に行うことであり、あらゆる評価の基本になることです。特にDEは評価者が評価対象の人々と共にそれを、時間をかけて行う点に共感しました。
また私はDEにおけるデータや判断の妥当性(validity)・信頼性(reliability)について質問しました。答えは「相互の権力関係を含めて、関係者分析をしっかりやることでバイアスを排除し、妥当性・信頼性を高める」というもので、参加型評価の考えに近いものでした。DEは評価の基本を踏まえた上で、それを柔軟に応用する「自由度の高い評価」であるというのが今の私のイメージです。
なお、ケイトさんはヨーロッパ系の方のようですが、マオリの方と仕事をしているためかマオリ文化にもお詳しいようで、その方面の話ももっと聞いてみたいと思いました。