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CSOネットワークのブログ

一般財団法人CSOネットワークのブログです。
一人一人の尊厳が保障される公正な社会の実現に向けて、
持続可能な社会づくりの担い手をセクターを越えてつなぎ、
人々の参加を促すことを目的に活動しています。
評価事業、SDGs関連事業などについての記事を書いていきます。


ある地方の中間支援スタッフがDE(発展的評価)と出会った 〜不安から期待へ〜 [2017年11月30日(Thu)]
こんにちは!
NPO法人岡山NPOセンターの高平と申します。

私自身が発展的評価を習得中の身(研修中)であるため、ここでは研修に参加するに至った動機や研修の印象を綴らせていただきたいと思います。

私は2015年からNPOと岡山市(行政)による協働事業のあらゆる工程で実施主体をサポートする役割(いわゆる伴走支援)を担っているのですが、常々、社会課題の解決を目指す事業の成果をどのように評価するべきか悩んでいました。

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例えば、難病を抱え、学校に通うことのできない子どもたちの学ぶ権利を守ることを目的に掲げる事業では子どもたちが安心して学ぶことのできる学習機会やコミュニケーションの場を提供しているのですが、対象人数や実施回数では事業の意義や成果の価値を十分に示すことができないと感じていました。

特に「社会的少数者」とされる方々を対象とする事業では受益者からの対価によって継続していくことが難しいケースが多く、様々な人の理解と支援を得ながら制度化・しくみ化を目指していく必要があるため、成果が見えづらい、わかりにくいことは致命的になります。一方で学習効果や人間関係を無理やり定量化・可視化して目標に掲げてしまうと事業が本来目指すべきものを見えづらくしてしまったり、実施主体の柔軟性を阻害してしまう懸念がありました。

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市民活動の現場ではあたりまえの話かもしれませんが、単年度事業の伴走支援を担いはじめたことでこれまで以上に重要さと緊急さを増してしまった悩みにたいして手をこまねいていたところでタイミングよく出会ったのが、現在参加している研修のご案内と「発展的評価」でした。

発展的評価についてはまだ完全に理解できておらず、自分のジレンマを解消するものになるかわかっておりませんが、「複雑な状況の変化に適応できる」柔軟性は「権利」や「関係」などの変化が多く、見えにくい要素を指標とすることの多いマイノリティ支援事業の評価に適しているのではないかと期待しています。また、発展的評価の提唱者であるマイケル・クイン・パットン氏の「役にたってなんぼ」というシンプルで力強いメッセージに純粋な私の心は鷲掴みにされています。

現在は「3つの質問」*の実践や「評価設問」の検討を進めているところですが、凝り固まった自分自身の固定観念を取り払うことで支援対象の新たな一面に気づいたり、革新的な発想を促す(または自分自身が気づく)ことのおもしろさを体感しています。

また、全国各地から研修に参加されている支援者・評価者の皆さんのご経験や活用しているツールを教えていただくこともできるので、学びの多いとても贅沢な研修となっています。

まだ折り返し地点ではありますが、さらに積極的に、さらにどん欲に学びを深め、充実した時間となるようがんばりたいと思います!

*「3つの質問」は、発展的評価を学ぶ『伴走評価エキスパート育成研修』で用いている、思考整理のためのフレームです。

▼発展的評価(DE)の基礎は、こちらを参照ください▼
https://www.slideshare.net/CSONetworkJapan/ss-82079836


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第2回定期研修開催しました 〜冒険の旅のものがたり〜 [2017年11月27日(Mon)]
こんにちは。
CSOネットワーク、プログラム・オフィサーの長谷川です。

冒険の旅−発展的評価の実践を私たちはそう呼んでいるのですが、その第2回目の研修『伴走評価エキスパート育成プログラム(CSOネットワーク主催、日本財団助成)』が10月19日(木)〜20日(金)に東京都港区の日本財団会議室にて行なわれましたので、その様子を簡単にご報告いたします。

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第1回定期研修(8月24~25日)の後、研修参加者の皆さんには、伴走先についての記録「3つの質問シート」をつけていただいていました。このシートは、伴走評価の冒険の旅を支える地図のような存在でしょうか。迷った時には参照し、発展的評価(Developmental Evaluation:DE)の経緯を確認できるものといえるでしょう。今回の第2回定期研修は、この「3つの質問シート」の意味を確認するところから始まりました。

目の前で起きている現象や、その意味、それへの対応をタイムリーに記述していくこの「3つの質問シート」ですが、これを伴走先団体の目的に沿った評価につなげるには、認識の枠組みや対応の方向性を定める「評価デザイン・評価設問」が必要になることを確認。地図があっても、目的地やそこへの経路が決まっていないと旅ができないようなものと理解しました。

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その後、「評価設問」の作り方を学ぶとともに、伴走先団体と話し合いの上作成した「伴走評価シート(組織のミッションやステークホルダー、活動内容に関する情報)」をもとに、実際に評価設問を作成し、グループ内で共有、スタッフを交えて議論をおこないました。

この評価設問については、研修終了後、伴走先団体とも協議の上、いったん仕上げて事務局に提出していただき、スタッフからのコメントなども踏まえ随時ブラッシュアップいただくこととなりました。

今回の研修の目玉は、DEの提唱者である、マイケル・クイン・パットン先生とのビデオ通話での質問セッションでした。あらかじめ参加者の皆さんから募集し、パットン先生にお送りしておいた質問を中心に、DEのキモとも言える部分のお話を聞ける貴重な機会となりました。

特に印象に残ったのは、DEは実用的評価(Utilization Evaluation)の一つであり、その意味で、効果的であることが大切であるとのお話でした。「マッサージを受ける人は、そのマッサージの種類よりもマッサージが良く効いたかどうかの方がよほど大事でしょ、役に立てばいいんだよ」と。それと共に、生成的でダイナミックな変化があるような事業の場合はやはりDEがふさわしいとも繰り返しておられました。

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他にも、経験豊かな参加者の皆さんに普段の取り組みや考えていることを共有していただき、DEの文脈に沿った学びとする「マイストーリー」セッションや、ニュージーランドのマオリ族を対象とした学習プログラムの伴走評価の事例紹介など、今回も盛りだくさんの内容でした。

次回は、12月11日(月)〜14日(木)の集中研修になります。

12月10日(日)には、特別シンポジウム『ソーシャル・イノベーションを支える”評価”〜発展的評価(DE)の可能性〜 (明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科主催、CSOネットワーク 、明治大学プログラム評価研究所共催)』も開催されます。こちらは参加無料となっておりますので、どうぞお越しくださいませ。

https://www.csonj.org/event/de20171210

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