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CSOネットワークのブログ

一般財団法人CSOネットワークのブログです。
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発展的評価について考える(その2〜評価的思考について思考する) [2017年12月09日(Sat)]

こんにちは。

CSOネットワークの今田です。


本ブログで、発展的評価について考えたいと思います。

その1は、こちらから↓

https://blog.canpan.info/csonj/archive/6



 「型」=「一連のやり方・手法」が評価の主旋律でないのだとしたら、評価の中核にはなにがあるのでしょう。「発展的評価(DE)では…」、と考える前に、その周辺を少しウロウロしてみたいと思います。


 評価が研究・実践の分野として発展していて、評価学会に7000人を超えるメンバーを擁する米国で、2000年を過ぎたあたりから、特に評価の能力強化を加速させる概念として注目されているものに、評価的思考(Evaluative Thinking)があります。評価能力を高めたければ評価的思考を高めることに尽力しましょう、というわけです。


 評価的思考とは、例えば、次のように定義されます(*1)。


評価的思考とは、好奇心に駆られ、エビデンスの価値を信じて、

1.     物事の想定事項を見える化し、

2.     思慮深い質問を投げかけ、

3.     内省や視点の選択を通じて物事の深い理解を追求し、

4.     状況をよく理解した上での決断を下し、行動を用意する

認知プロセスである。


 そんなに難しい定義ではないですね。学校教育などで言われる「批判的思考」に通じるものがあります。ではなぜこれが大事なのか?それは、評価的思考のクセを組織文化に取り入れた組織はぐんと伸びるということが言われるようになったからです。


 評価的思考のクセを取り入れた組織とは、例えば、オフィスを訪ねてみると、スタッフが互いにこんな質問を投げかけているような組織だといいます。


「どうしてそれが言えるの?」

「裏付けは?」

「そもそもの前提はそれでいいの?」

「ほかにどういう説明があり得る?」

「結論づける前に足りない情報は?」

「◯◯(ステークホルダーの種類)の視点が欠けてるんじゃない?」

等々。


 そう、上の定義では「エビデンスの価値を信じて」とありますが、このクセを持つことで、エビデンスを使って自分たちの思考形態を崩してみよう、ズラしてみよう、意思決定や行動をエビデンス・ベースで考えよう、という習慣につながるというわけです。評価の型や手法は、あくまでもこの過程をサポートする手段になるのです。


 評価的思考は、内部評価であれ外部評価であれ、良質の評価を繰り返し行うことによって育てられるといいます。また、それは自然に身に着くものではなく、意識してクセとして持つようにしないと身に着かないといいます。評価を「しなければいけないからする」態度では到底育つものではないといいます。(*3


 評価手法をよりよく使うために評価的思考を身に着けるのではなく、評価的思考を最大限活用できるように評価手法を使う。主客逆転。


この項つづく。


DEの基礎については、こちら↓

https://www.slideshare.net/CSONetworkJapan/ss-82079836


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参考資料

1. Tom Archibald and Jane Buckley, Promoting Evaluative Thinking: A Key Ingredient in Evaluation Capacity (2012)

http://www.eers.org/sites/default/files/Archibald_PromotingEvaluativeThinking.pdf


2. What is Evaluative Thinking?

http://www.evaluativethinkingcapacity.com/what-we-do/

より一部改編。


3. Embracing Evaluative Thinking for Better Outcomes: Four NGO Case Studies

https://www.interaction.org/sites/default/files/EvaluativeThinkingReport_FINAL_online.pdf


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