こんにちは。評価事業コーディネーターの千葉です。
今回はCSOネットワークがDE(発展的評価)の実践で用いている『3つの質問』について紹介します。
DE提唱者であるマイケル・パットンは、この『3つの質問』について著書の中でほとんど述べていませんが、複雑で変化が激しい現実世界の状況変化を捉えるために、DEの概念に触れたジェイミー・ギャンブル(*1)が提唱したものです。
静的な世界、すなわちゴールポスト(評価目的)が動かない世界では、評価目的にあわせた設問や評価基準を設定して、そのデータをとることで評価が進みます。一方、DEが想定している動的な現実世界、すなわちゴールポストが動く(つまり評価目的が一律に定まらない)世界では、常に状況変化をウォッチして評価の姿勢を柔軟に変えていく必要があります。
このような動的な現実世界に対応するには、『3つの質問』が有効です。
具体的には、
What?(どうした?)
So What?(だから何?)
Now What?(それでどうする?)
の3つです。
これらの質問は
・常に「状況」を把握し続ける
・常にそれらの「状況」を読み解こうとする
・そして、常に「状況」に適応しようとする
ことを支援するものです。
これらの一連のプロセスについては、『DE実践者ガイド(マッコーネル財団)』(*2)に詳しく掲載されています。
DEでは、評価者がこの『3つの質問』を実践することで、評価対象の事業やそれを取り囲む状況の把握、そしてその状況に対応するための意識・姿勢を持つことが可能となります。
なぜ質問はこの3つなのでしょうか。
我々人間は通常、情報(データ)を自分の解釈を入れて取り入れ、判断する傾向があるからです。つまりWhatがあるときに、Whatで止まれずSo What まで一足飛びに行ってしまう傾向がある、ということです。それが、解釈そして解決を早める効果がある一方で、バイアスを助長する/叙述以上のことをしてしまうことにつながります。そして肝心の叙述がわからなくなる、というデータ収集にとっては致命的なことにつながってしまう可能性があるのです。
What(事実)とSo What(解釈)を分けて捉えることは、評価者のデータに対する姿勢を正すと同時に、評価に必要なデータを集める上でキモになります。
So Whatの過程では、自分が気づいていないことに気がつくチャンスがあります。集めたWhatを主観や経験値のフィルターを外した状態で読み解き、そこからありとあらゆる可能性を考えます。そして判断は行わない。それによって思考の枠組みから解放され、評価に必要な真実を浮かび上がらせるかもしれません。『3つの質問』をおこなうことによって、自分の思考の癖を把握でき、DE実践に必要なデータが得られるでしょう。
▲3つの質問のイメージ(CSOネットワークの伴走評価エキスパート育成研修資料より)▲
そしてこの『3つの質問』を回し続けながら、評価者が伴走先団体(事業者)に対してリアルタイムのフィードバックをおこない、団体の学習や意思決定、そして発展の支援をおこないます。
▲3つの質問のサイクルを回すイメージ(CSOネットワークの伴走評価エキスパート育成研修資料より)▲
この『3つの質問』を使うタイミングは、
(a)評価のバウンダリー(領域)を定めるとき
(b)評価のバウンダリーが定まって、そこで実際の評価に使うデータを溜めるとき
の2パターンがあるように思います。
(a)は、ゴールポストが動く動的な世界においてゴールポストを捉えるために行うものです。DEが目指すソーシャルイノベーションの種がどこに落ちているか分からない状況の中で、その当たりをつけるための第1歩目として、まずは事実(What)を集めていくことが必要になります。
(b)は、(a)で定めた評価バウンダリーの中で具体的にデータを集める際に使います。ここでは評価者だけでなく事業者もWhat(事実)を収集する仕組みをつくることが大切になると思います。『3つの質問』を回すことは、団体と評価者で集めたWhatを読み解いたり(So What)、次の動きを決める(Now What)ためのコミュニケーションにも使えるでしょう。(ただし一度評価のバウンダリーを定めたからといっても、必ずしもそれで固定される訳ではなく、バウンダリーの変更が必要となることもあるでしょう。そのため例え(b)の段階に進んでも、(a)を意識し続ける必要があるように思います)
(a)でも(b)でも、「こんなにWhatばかりを集めてどうなるの?」という意見もあると思います。
“Connecting the dots”という言葉をご存知でしょうか。
Apple創業者のスティーブ・ジョブスのスピーチで有名になった言葉です。
一見すると何も関係ない様々な出来事(dots)が、振り返ってみるとあとから一本の線としてつながり、その時にこれまでのdotsの意味がはじめてわかるというものです。
DEにおけるWhatは、dotであり、Whatをたくさん集めていくとそれが一本の線としてつながる瞬間がくる、すなわちConnecting the dotsに通じることがあるように思います。DE実践において、静的な世界での評価で見逃していたWhatをいかに捉えるか、そしてそれをいかに読み解き伴走先団体の気づきや変容につなげるか、DE実践者の腕の見せどころなのかもしれません。
以上は、DEを試行錯誤しながら研修をつくり実践を行う研修事務局の現時点での見解です。正解はありませんし、評価を実践する読者の皆さまの中で、この『3つの質問』についてもっと良い意味づけや活用方法を見出していただければと思います。
ご参考までに、研修事務局で作成した『3つの質問シートの埋め方のヒント』を公開します。評価の実践の役に立てば幸いです。
(*1)Jamie Gamble (2008), A Developmental Evaluation Primer, The J.W. McConnell Family Foundation
(*2)DE 201: A Practitioner’s Guide to Developmental Evaluation (McConnell Family Foundation) https://mcconnellfoundation.ca/report/de-201-a-practitioners-guide-to-developmental-evaluation/



