バックキャスティングが流行っています。訳せば「未来からの逆算」でしょうか。SDGs(持続可能な開発目標)関連では、「アウトサイド・イン」という用語もだいたい同じ意味で使われているようです。要するに、まず目標を定め、そこから「どうすれば(どうなれば)そうなるか」という論理をつなぐ思考実験を繰り返すことによって、直近のアクションを定めることができるという計画・作戦の立て方です。
ロジック・モデルの説明の際にも、私は「これはバックキャスティング思考です」と説明するようにしています。まず事業の上位目標・最終目標を確認する→そこに到達するための中間アウトカムをしっかり言語化する→中間アウトカムを達成するための初期アウトカムを設定する→初期アウトカムが実現するためのアウトプット(事業の直接の結果)を確認する。これをやると、「今なんでこの作業をやっているのか」という疑問が出た際に(よく出ます)、最終的な目標までのつながりが可視化されているので、「そうか、OK」となることができます、というわけです。もちろん、実際には、ロジック・モデルに描いたように単線的に物事は進みませんが、そこはロジック・モデルを推進する人々もよくわかっています(私の見たところ、これには「仮説検証」論と「作戦」論があります。それについては別の機会に)。
「日本人は論理的思考が苦手で」などという言明がまことしやかに流通することもありますが、その真偽は別にして、ここでいう論理的思考というのはバックキャスティング思考を指していることも多いようです。SDGsは2030年までの時限つき目標ですが、「そんなことできないよ」と考えられがちな高めの目標設定をし、バックキャスティング思考を行動原理にまで昇華させて推し進めれば長期目標を達成できる、という前向きな姿勢(これを「ムーンショット」と呼ぶ人もいます)が流行りの一因でしょうか。
ところがDE(発展的評価)はちょっと違います。「バックキャスティング使えればよし、フォアキャスティング使えればよし」と、例によって「すべて文脈によりますよ」という姿勢です。バックキャスティングの反対のフォアキャスティング(訳せば「現在からの順算」でしょうか)で一番わかりやすのは天気予報(ウエザー・フォアキャスト)です。天気を2030年からバックキャストするのはちょっと難しいですね。。。
DEでは、現代の世の中は天気の変化のように複雑で予測が難しいと考えます。バックキャスティング思考の効用を認めたうえで、それには限界があること、フォアキャスト的なやり方の価値を見直し、その方法を洗練させていくことに意義があることを説きます。そのやり方はいろいろあるのですが、まず大事になるのが、前回(その2)で書いた「評価的思考」に代表されるような、自分(評価者)の「思考の型」を取り外す心がけです。
いよいよ今週(8/24-25)、発展的評価の2年目の研修が始まります。今年も16人の参加者を得て、一緒に楽しく学んでいきたいと思っています。「評価手法をしっかり学ぼう!」と考えて参加する人は、昨年と同様、最初は拍子抜けするかもしれません。DEは評価手法に行き着くまでに何度も立ち止まらなければならないので。そこで出るモヤモヤ感を大事にするのもDEの醍醐味です。
この項つづく。
DEの基礎については、こちら↓
「DEやってみよう!(昨年のDE研修一期生の最終的なDEの理解の発表をもとに、CSOネットワークとしてまとめたもの)」は、こちら↓
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