曜日のガバナンス No.03 [2023年07月30日(Sun)]
曜日ごとにテーマをわけて、ガバナンスに関するコラムを発信していきます。
但し、コラムという、ちゃんとした文章よりは、いろいろな考え方を整理していくための習作です。 月、火、水、木、土、日をキーワードに、NPOのガバナンスを考えていくような話題提供、問題提起、事例紹介などをしていきます。 月・・・ 制度としてのガバナンス 火・・・ 戦い・議論のガバナンス 水・・・ 手続きのガバナンス 木・・・ 樹木のように育てるガバナンス 金・・・ お金にまつわるガバナンス 土・・・ 土のガバナンス(団体特有のガバナンス文化) 日・・・ ミッション・ビジョン(太陽)に基づくガバナンス なお、本コラムの見解は、JCNEとしての正式なものではなく、業務執行理事の山田の文章の習作です。Facebookで投稿したものを再掲しています。 2023年7月24日(月)〜30日(日) 【月曜日のガバナンス】 「ガバナンスは組み合わせ。」 そんな名言があるとかないとか。 「理事会・社員総会・監事監査」×「事業計画/予算・事業報告/決算・役員選任」をどう組み合わせるかです。 一般社団/財団法人の場合、法令でこの組み合わせが決まっていますが、NPO法人の場合は法令で詳しく定められておらず、団体の自由度が高いです。一方で、これらは定款で定めるため、団体の設立前に決めなければいけないのが、ガバナンス上の課題になっています。 ガバナンスというと、理事会や社員総会から考えがちですが、逆に事業計画や事業報告の作成から決定までのプロセスをあらためて考え直し、その中で、理事会や社員総会の機能を落とし込むのも大切です。 一つの最適解はありませんが、団体ごとに工夫のしどころです。 【火曜日のガバナンス】 オンラインでの理事会が当たり前になってしまい、参加しやすくなった一方で、議論がしづらくなったという話しをよく聞きます。リアルの会議であれば、雑談的な情報交換から本格的な議論まで、様々なレベルでの対話が出来ていましたが、やはりオンライン会議ではなかなか難しいです。特に、議論を戦わせるというような、白熱したディスカッションは特にそうだと思います。 理事会や社員総会においては、議長の差配が重要になります。 会議の進行については、議長自らが考えて対応するケースもあれば、あらかじめ事務局等でシナリオを作成して議長がそれに基づいて進行するケースがあります。どちらの方法にしても、新型コロナ以前の会議の進め方ではなく、オンラインでの進行シナリオにバージョンアップしておく必要があります。出席者の発言を引き出していく機会をいかに創り出していくか。 ちなみに、理事会等で、いわゆる外部理事の発言が少ないのは、執行部や事務局に比べて、入手できる情報量が圧倒的に少ないということがあります。限られたインプット量で会議でその場にあった相応しい発言をしようとするのは結構ハードルが高いと思います。その場合は、団体や活動のこと、そのものというより、外部理事の専門性に紐づくアドバイスや意見、最近の業界事情などを発言してもらうのがよい進行です。 【水曜日のガバナンス】 ガバナンスの似て非なるものとしてマネジメントがあります。 マネジメントを行うマネージャーはいても、ガバナンスを行うガバナンサーはいません。マネジメントは一人で出来ても、ガバナンスは一人では出来ない、組織で行うものを端的に表しています。 マネジメントは目的や目標を達成するために行う方法ですが、ガバナンスはガバナンスそのものが目的となります。一方で、方法論として語られることもあります。この辺がガバナンスのわかりにくさだと思います。ガバナンスを実現するためのマネジメントがあり、ガバナンスの内容を担当レベルに落とし込んでいくとマネジメントになります。 マネジメントはガバナンスの要素であり、適切なマネジメントの積み上げが適切なガバナンスとなります。 一方で、目的や目標を達成するためのマネジメントという観点から、目的・目標至上主義によって、法令違反、コンプライアンス違反をしてしまうこともあります。企業の不正や不祥事について、マスコミ報道でよく目にするパターンです。 目的・目標を達成する際に、ガバナンス、コンプライアンスという視点もマネジメントでは必要になってきます。マネジメントとガバナンスは切っても切り離せないものです。 【木曜日のガバナンス】 ガバナンスのセミナーでよくある質問が「職員のガバナンス意識を高めるには?」ということがあります。 但し、この質問には、広い意味でのガバナンスが含まれています。おそらく、ガバナンス、コンプライアンス、マネジメントの3つの要素が含まれています。いわゆる『GCM』です。 NPOの運営の根幹であるガバナンス、ここでは法令や定款、理事会、社員総会、監事監査などの基本について、職員に知ってほしいという思いです。実際に、各職員がこれらのガバナンスに直接関わるということは少ないと思います。 一方で、職員に守ってもらいたいものはコンプライアンスです。ガバナンス意識の80%はコンプライアンス意識のことではないでしょうか。 最後にマネジメントです。厳密にガバナンスとマネジメントをわけて考えておらず、ある意味ボーダレスで捉えています。理事会で業務執行を決めた計画について、目的・目標・期限を達成するためのマネジメントであったり、コンプライアンス違反にならないためのマネジメントを実践してほしいという思いです。 ここまで分解していくことで、職員に伝えたいことが整理されていくのではないでしょうか。 【金曜日のガバナンス】 今、注目しているマンガをご紹介します。 週刊モーニングで少し前に連載が始まった「逢いたくて、島耕作」です。 この物語の設定がぶっ飛んでいます。 島耕作マニアの令和の新人サラリーマンが、マンガ「島耕作」の世界にスリップして、かつ、島耕作が係長時代、つまりバブル前にタイムスリップするという話しです。 令和の新人サラリーマンが、昭和のバブル前にタイムスリップという時点で、まったく価値観が違う世界に行ってしまうというのが面白いです。ハラスメントなど、本当に時代を感じさせます。 今号では、企業の業務上横領の手口を語っていました。 初芝電器産業の広告宣伝部で、ポスターの発注業務で、発注は2万枚で、実際の製作は1万枚。その差額は、企業の担当者と発注業者で分け合うことで横領するという方法です。なるほど、そういう手口もあるんですね〜という印象でした。 先日、ニュースで読んだ財団法人の横領事件では、直接預金を引き出す他に、架空請求や請求金額の水増しという方法を行っていたと書いてありました。 まさに、「逢いたくて、島耕作」で出てきたように、横領では架空請求や請求金額の水増しは王道の方法の一つのようです。 こういう事例があるという前提で、経理処理のチェックが必要になります。 【土曜日のガバナンス】 NPO法人を立ち上げる時に、最初からガバナンスをしっかり学ぶケースはまれです。 多くの方がどのように定款を作ろうかと考えることがガバナンスの第一歩です。 その際に、社員総会主導型か、理事会主導型かを考えることから始まります。それぞれの会議の権能をどうするかということです。 そして、社員総会、理事会、監事の機能を書籍等で学んで、実際に運用していきます。ここで大事なのは、NPO法人の立ち上げメンバーのうち、他の団体の運営に関わっている人がいれば、その人の経験則で団体のガバナンスの運営の基本となります。 0ベースから考えるというよりは、他の団体の運営を真似するという形で組織運営が始まります。 従って、他の団体の運営の経験や知見が大切になります。 ただ、その経験や知見が十分かというと必ずしもそうではありません。 やはり、ガバナンスについて学び、自分たちの運営が適切なのかを振り返り、考えていくことが必要となります。 もし、みなさんの団体も立ち上げ初期と運営が同じの場合は、一度、ガバナンス的に振り返りを行った方がよいでしょう。 【日曜日のガバナンス】 ガバナンス、コンプライアンス、マネジメント。 この3つを整理して考えていくことが、NPOの組織運営を考える時にはわかりやすいのではと考えています。まだ仮説です。 今回は、仮説的に思っていることを少し書いていきます。 まず、ガバナンスを考える時に、社員総会(社員)、理事会(理事)、監事監査(監事)のことが話題にあがります。より具体的に使える方法とした時に「事務局」も位置づけて考えた方がよいと考えています。 理事会の機能として業務執行がありますが、実際には事務局が業務を担っています。理事会と事務局の関係についてもう少し整理していきたいところです。 ガバナンスという時に、社員総会=意思決定、理事会=業務執行(→事務局)、監事監査=監視という機能の整理が必要です。一方で、監視という機能については、社員総会においても、あるいは外部理事においても、執行部への監視という役割があります。ガバナンスは単純に区切りをつけることができません。一部重なっている領域があります。監視という視点で考える時に、社員総会、外部理事、監事のそれぞれで監視の違いが生まれるのかどうかも検証していかなければなりません。 ちなみに、意思決定も、ケースによっては社員総会での意思決定と理事会での意思決定があります。さらに、事務局における意思決定もあります。 最後に、最初のガバナンス、コンプライアンス、マネジメントについても単純に区分できるものではなく、重なっている領域があります。 ボーダレスであり、重なりがあるものという前提が必要です。 今後はこの辺を深掘りしていきましょう。 |