情報発信、やらなきゃとは思いつつも、忙しくてなかなか手が回らないとお困りの団体は多いと思います。
確かに、文章を書いたり写真を撮ったり、コンテンツを作り続けるのはなかなか大変ですよね。
そんな中、CANPANを活用して上手に情報発信をされている「特定非営利活動法人 山科醍醐こどものひろば(以下こどものひろば)」事務局長の品田真孝さんにお話を伺いました。
※インタビューアー:CANPAN吉野
山科醍醐こどものひろば京都市の山科区と醍醐地区を中心に活動するNPO団体。
地域に住むすべての子どもたちが心豊かに育つことをめざし、
子育て支援事業、子どもの体験/文化事業、子どもの貧困対策事業、地域連携事業、子どもを支える人たちへの講演/研修活動など、幅広い事業を実施。
最近では、これまでの子どもの貧困課題に対する取り組みを紹介した書籍(※)を発行し注目を集めている。
品田:
元々は「山科醍醐 親と子の劇場」として舞台公演を観劇する活動や、キャンプなどのイベントを市民活動としてやっていました。
NPO法人「山科醍醐こどものひろば」に移行して今年で17年、トータルで37年にわたりこの地域で活動しています。(現理事長の村井琢哉さんは団体と同い年)
当時小学生でキャンプに参加してた子がボランティアとして帰ってきてくれるなど、嬉しい連鎖が起こるようになってきました。私も元々は大学生ボランティアで関わったのがきっかけです。
親子三世代で関わってくださる方もいますし、地域役員さんが子どもの文化事業である親子劇場のリーダーをしているなど、地域に根付いた活動を続けています。
設立当初から、演劇やものづくりを通したこどもの健全育成を目的としていました。
子どもの貧困課題については、最初にちょっとしんどいお子さんが出た時、家族の中から不登校の子が出たという感じで当たり前のように取り組んだのがきっかけです。
そこから前理事長の幸重忠孝さんが関心を持ち、「しんどさ」を感じている子どもたちの支援に本格的に取り組むようになりました。
情報発信吉野:
こどものひろばは、CANPANの団体情報も常に最高レベルの★5をキープし、ブログも頻繁に更新していますが、どうやっているのですか?
品田:
初代の理事長の頃から説明責任に対する意識は高かったのですが、NPO法人となりより強まったと思います。社会的に認知してもらうために、どこを見てもらっても良いようにしておこうと言われていました。
私も、寄附や助成金を頂いていたり、京都府や市の委託事業もあるので、説明責任はしっかり果たそうと思っていますし、こういう取組が今の活動に繋がっていると思います。
具体的には、団体情報は7月の総会が終わってから毎年1回更新しています。
他には、紙の活動報告書を年1回、会報誌を月1回事務局で作成し、四半期分をまとめた広報誌をボランティアで構成された広報部で作成しています。
ブログと、Facebook、twitterもやっていて、Facebook、twitterは事務局を中心に一部のスタッフが更新していますが、ブログは各事業のリーダーが書いています。
最近はFacebookの影響力があるので力を入れていますが、アーカイブとして残すためにブログの更新も必ずするように徹底しています。
吉野:
ブログの更新は各事業のリーダーがされているのですね。人によって内容や更新頻度などに差は出ないのでしょうか?
品田:
内容の差はありますね(笑)。パソコンが苦手な人もいますし。
更新頻度は事業によって違っていて、たとえばキャンプなどの「わんぱくクラブ」は活動があった時(月1-2回)、未就学児が対象の屋根のある公園「げんきスポット0-3」は毎日です。
業務報告として活動したら必ず更新することになっているので、業務の一部として基本的にちゃんと更新されていますが、されていない場合はボランティアリーダーのメーリングリストで注意します。
ただし、しんどさを抱えた子どもの生活・学習支援活動は、ほとんど写真を上げられないので文章を中心とした包括的な発信にするなどの工夫をしています。
吉野:
ブログはどんな人が見てますか?反響はどうですか?
品田:
直接的な反響は感じたことがありませんが、参加した保護者など主に利用者が見てるようです。
また、イベントで協力してくれた団体は広報として気にしているみたいです。
広報吉野:
こどものひろばには沢山の参加者が来られているようですが、広報はどうされているのですか?
こども食堂を開いても、なかなか子どもが来ないという話も聞きますが。
品田:
未就学児の遊び場などは保育園のお手紙でチラシを配ったり、保健所の通信に乗せたりしています。
あとは口コミで来られたり、長くやっているので地域で浸透しているのだと思います。
子どもの貧困対策事業は、ケースワーカーや学校の先生からの相談がほとんどで、
中には、中学生なのに気づいたら一人暮らししてたといった、重篤で緊急性の高い子もいます。
やはり、地域特性上しんどさを抱える人の数は多いと思います。
この地域をgoogleMapの航空写真で見てもらうとわかるのですが、本当に団地が多い。高齢者も多いですが、母子家庭や父子家庭、日本語がわからない外国人、生活保護の人もたくさん住んでいます。
相談は色々あるのに組織規模上どうしても一部しか受け入れられない。
本当は相談があった子すべてを受け入れられるとよいのですが、課題です。
※googleMap航空写真 細長い建物が主に団地
吉野:
深刻な課題にも取り組まれていますが、情報発信で困った事はありますか?炎上したとか。
品田:
ブログやSNSで炎上したことはないですが、以前チラシで「うちの地域には貧困の子どもはいない!」と怒られたことがあります。
吉野:
現実を理解してもらえないのは辛いですね。白書などで事実を発信していくことも大切ですね。
品田:
あと、NPO法改正に伴いCANPANの団体情報を5年表示にしてほしいです。
吉野:
そうなんですよね〜。検討します!
体制吉野:
情報発信からは少し逸れますが、人材育成など組織運営はどうやっているのですか?
代表の村井さんは多方で活躍されていて不在の事が多そうですよね。
品田:
運営にまつわる大抵の意思決定はできるようになっているので大丈夫なのですが、
事務局は3人しかいないので大変です。
各事業のリーダーが主体的にやってくれているからできているのだと思います。
約200人いるボランティアの育成はボランティア研修部で行っています。
最近は物騒な事件も多いので、面接時に別の目的じゃないかなど、ある程度精査するようにしています。
その上で、最初にこどものひろばの趣旨や事業について研修を受けてもらいます。
中には、こどもは好きだけど暴言を吐かれるのは無理という方もいる。
そういうポイントとなる事を事前に確認することで、ニーズとのミスマッチを避けるようにしています。
後記こどものひろばのように、センシティブな課題に取り組むNPOは多いと思います。
写真など配慮はしつつも、組織情報や収支などの事業報告、文章での活動報告を
しっかりと支援者に向けて発信していくことが大切だと改めて感じました。
この積み重ねが、ファンドレイジングだけではなく、社会に課題を知ってもらえる機会が増え、政策提言にもつなげていけるのではないかと思います。
最後に、こどものひろばは認知度も注目度も高まっていますがスケールアウトはしないのですか?という質問に対し、
子どもといっても地域によって状況が違うし、自分たちだけで解決しようとは思わない。こどものひろばとして山科醍醐地区の課題に取り組んでいく姿勢は今後も変わらない。
とおっしゃっていたのが印象的でした。
自分たちの地域でしっかり課題に向き合いつつ、情報やノウハウはできるだけオープンに発信する。
こういう展開のし方がうまくいくコツなのだろうなぁと思いました。
山科醍醐こどものひろばホームページ
http://www.kodohiro.com/こどものひろばブログ
https://blog.canpan.info/kodohiro/※書籍
子どもたちとつくる 貧困とひとりぼっちのないまち支援者のアクションサポートBOOK 〜とらのまき〜