【開催報告】2019年の活動主体のデータベースを考える勉強会 第2回7厚27日(木)午前 地域をデザインする中間支援組織の視点で考える [2017年09月15日(Fri)]
今度のCANPANセミナーでは、団体情報のデータベースのあり方について考える勉強会を5回連続シリーズで開催しています。7月27日(木)にその第2弾として「地域をデザインする中間支援組織の視点で考える」をテーマに開催しました。
![]() 2年後の日本、公益活動を行う主体はどうなっているのでしょうか? 広義の意味でのNPOはもちろん、企業や、学校・病院などの組織、町内会などの地域運営組織、あるいはコラボレーション組織、プロジェクトチーム、個人など、多様な主体が、意識・無意識的に公益活動のプレイヤーとして関わっていると思います。確実に、より多くの種別、より多くの主体が活動を行っていることでしょう。多種多彩な活動主体が活躍している社会が生まれていることは、心強いことです。 その一方で、危惧されることは、 どのような主体があるのか? どのような活動を行っているのか? どの主体を応援すればよいのか、参加すればいいのか? などなど、選ぶ側の困難も予想されます。 (今でも、そういう声をよく耳にしますが・・・。) そこで、2019年の活動主体を効果的、効率的に探せるデータベースがあったとしたら、どのようなデータベースが良いのかを考える勉強会を開始しました。 日本財団CANPAN・NPOフォーラム 2019年の活動主体のデータベースを考える勉強会 〜効果的に団体を見つける方法、選ぶ決め手はあるのか!?〜 第2回 7月27日(木)10:00〜12:00 地域をデザインする中間支援組織の視点で考える ─────────────────────────── CANAPNの立ち上げからアドバイザーとして関わっていただいている IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所] 代表の川北秀人さんを スペシャルゲストにお迎えして開催します。 これまでとこれからのNPOセクターのデータベースや、NPO支援として、 データベースをどのように活用するかについて、基調講演をいただきます。 後半は、川北さんのお話しを聞いた上でのディスカッションになります。 第2回の勉強会の様子を、一緒に企画しているTOKYObetaの江口さんにまとめていただきましたので、こちらにも転載します。 https://medium.com/tokyobeta-journal/canpan-social-database-ws2-report-3840bedc4a2e ─────────────────────────── 社会構造を把握し、一歩先のプログラム設計が求められてる:中間支援の立場からデータベースのこれからを考える CANPANとともに企画している、2019年の活動主体のデータベースを考える勉強会。全5回の勉強会を踏まえながら、公益活動を支えるためのデータベースのあり方を議論していきます。 第一回目は「資金援助のプロである助成機関目線から考える」をテーマに、助成機関の視点からどのような団体情報があるといいか、議論しました。 7月27日に開催された第二回目のテーマは「地域をデザインする中間支援組織の視点で考える」。NPOセクターに対してさまざまな支援を行う中間支援組織の方々を中心に、議論を行いました。ゲストにIIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表の川北秀人さんをお呼びし、変化の激しい社会情勢のなかにおいて、NPOセクターのあり方、それを支援する組織がどのような視座を持って行動するべきかについてお話いただきました。 社会の変化とともに、中間支援のあり方の変化している 最初に、勉強会の趣旨説明をCANPANセンター代表理事の山田泰久さんよりお話いただきました。その後「CANPANデータベースこれまでの10年気づきと限界と可能性」と題し、CANPAN設立からこれまでの振り返りとデータベースも含めた今後の課題について、CANPAN吉野さんよりプレゼン。社会情勢の変化、ICTの発展とともに、どのようにしてデータベースがあるべきかを考える時代になってきました。 ゲストである川北さんからは、2020年以後のNPOセクターが考えること、NPOを中間支援する組織として必要な考え方、それにともなうデータベースのあり方についてお話いただきました。 2020年を数年後の迎える社会において、2020年以後のNPOセクターのあり方を考えていくべきか。近年では市民団体や地域団体といったローカルで活動する団体も増えてきました。市民社会における参加のあり方が変化してくるなか、市民団体を支援する立場の人間も社会の変化に対応していかなければなりません、と川北さんは話します。 「NPOが取り組む課題は、受益者にとっての課題であり、それらを解決するためには受益者の一歩先の視点を持ちながら半歩先のプログラムや事業を考えなければいけません。そのNPOを支援する中間支援は、2歩先の視野を持ち、1歩先のプログラムをもとにNPOを支援していかないといけないのです」(川北さん) 中間支援の役割は、社会構造そのものを理解し、2歩先の視野を持ってNPOを支援していくこと。社会に対して必要な変化を実現させていくこと。それらを支援者は促さなければいけません。支援や助成は、やもすると規模の拡大や助成、融資額の大きさを目標としがちですが、そうではなく、あくまで社会に対するインパクトと、それらに必要な手段を考えなければいけません。そのためには、受動的ではなく能動的に課題に対して関わっていかなければいけません。 「誰もが課題解決に取り組む社会にし、規模よりも効果を求めること。そのためには連携や基盤づくりが必要です。課題解決の推進のために考えるべくは、現場の掘り下げではなく社会全体の変革です。それらを見据えて動いていきましょう」(川北さん) 一つの団体だけですべてを取り組もうとするのではなく、いかに他所の団体が活動しているのかを把握するか。利用者の目線で社会を捉え、ユーザー視点でのサービス開発や事業開発を行うことができます。 社会のための最適な投資判断ができるデータベースを求めて さらに、今後ますます求められるのがICTの活用です。2020年以降は、AIなどの技術が発達してくるなか、私たちの日常の行為がデータ化されてきます。移動履歴や購入履歴といったライフログを分析したマーケティングなども活発化してきます。そうした時代のなかにおいて、ICTをいかに活用してNPOの活動を推進していくか。クリック募金やクラウドファンディングといったものだけにとどまらず、遠隔診断などのコミュニケーションの変化もそうです。社会課題解決に挑むNPOこそ、テクノロジーを積極的に活用していかなければいけません。 「資金調達一つとっても捉え方が違います。共感が大切と一言で言われていますが、機械的な反応でいいクリックと、衝動的な少額・単発寄付と、進化が問われる継続寄付、成果も問われる助成・補助と、経済合理性も問われる融資・出資と、基盤への信頼が問われる遺贈とでは、共感に足る準備が違います。 カタログ的に資金調達の方法を伝えても、その団体の事業規模や基盤がしっかりしていないままツールを使っても意味がありません。信頼に足りうる準備をしているか、その団体が社会のためにどれだけ整備をし、課題解決を実現するだけの素質や能力があるか。これらを考慮しながら、中間支援の方々は行動しなければいけません」(川北さん) データベースとICTの関係性は、助成機関と助成先の情報提供、例えば申請書や報告書といったもののデジタル化などが挙げられます。また、デジタル化の先には、信頼の蓄積化があります。助成や支援における審査基準や与信など、事前に必要な情報や、報告書といった事後に求められる情報を集約すること、それらを支えるための会計などのバックオフィスの一元化やクラウドの活用によって、支援団体、NPOそれぞれにおける事務手続きが簡略化されます。 IIHOEでは、団体の評価・判断のために助成実績というポジティブな情報をもとにしたホワイトリストの作成に取り組んでいます。これによって、どこの団体が、どこの助成・中間支援からサポートを受けているかがわかります。どこの機関が、どんな名目で、どこの団体にいくらだしたかを整理・可視化することにより、助成団体側も社会課題を推進するためにどこに助成すべきか、どういったプログラムを考えるべきかが次第に見えてくるようになります。 「情報を探す側だけでなく、社会のための最適な投資判断のためのデータベースであるべき」と川北さんは話します。時代の変化とともに求められるデータベースのあり方とは何か、川北さんからいくつものヒントを得ることができました。 団体のことを深く知るために必要なこと ![]() 川北さんの講演が終わった後は、後半は各グループに分かれてディスカッションを行いました。最初は、川北さんの講演でメモした内容をもとに、中間支援の立場としてどのようにあるべきかを考え、ディスカッションしました。中間支援の立場から、普段どのように団体を見ているか、どのような情報が欲しいか、中間支援を効率的に進めるための情報は何か、などで議論しました。 受益者やボランティア、関わった人たちの口コミやコメントの可視化も、その団体の特徴を表す一つといえます。それぞれの団体が行政や地域、企業とどのように連携しているか、普段のICTツールの活用度合い(特に、バックオフィスや日頃の社内SNSなどのコミュニケーションツール)に注目する人もいました。川北さんの話でもあったように、会計情報の統一化、可視化が今後のNPOセクターの課題と言えるかもしれません。 連携を見つける手段として、共催しているイベントや所属しているシェアオフィス、理事やメンバーが所属している学会、寄稿・発行している論文や出版物といった情報も特色がありました。研究者やリサーチャーがいるNPOでは、どのような論文や著作があるかを調べることで、団体の考え方や取り組みたい方向性などが見えてくるものです。 データベースそのものに入力するインセンティブとして、団体情報やSNS、スタッフの情報を入力しやすくするためのタグ付け機能や入力データの記入度合い、ツール連携を促すサジェスチョンといったことも議論されました。特に、理事だけではなくスタッフの顔が見えることは、その団体の特徴を表す一つでもあります。個人の人材情報含めて、職歴としてきちんと表示することにより、団体の中の人が見えてきます。 (下記のスライドでは、後半にディスカッションした様子を閲覧することができます)。 最大効果を発揮するお金を出すために、選考の再設計が必要 ![]() 参加者からの意見をもとに、ゲストの川北さんから中間支援として求められる「評価の体系」についての指摘がありました。 「評価と一口にいっても、目標や狙いなど事前に評価すべき項目を特定する視点と、各項目の重要性とバランスをもとに評価していく配点、事業の準備から終了までのそれぞれの活動を採点し、終了後に次に向けての改善点を見出す。これらそれぞれが評価であり、支援する側はこれらを体系的に考えていかなければいけません」(川北さん) 事前の審査項目や選考基準にともなって事後評価もすべきである、と川北さんは指摘します。これらの体系を踏まえながら、定量化する努力をすることが支援する側に求められている、と話します。評価の体系化を行うことでこれまでとは違った支援のあり方がある、と川北さんは話します。その一つに「ロースター制」の導入を川北さんは提案しました。 野球などで使われるロースター制ですが、NPO版では、事前のある一定の評価を得ている団体を登録した上で、災害などの緊急時において評価の水準を踏まえて事業審査なしに一定額の金額を渡すという考えです。もちろん、事前の審査がない代わりに事後評価は厳しくなりますが、それらの実績を裏付けるものとして過去の実績がある、というものです。こうした、事前の選考にかかるコストを下げ、かつ災害時などの緊急時でも迅速に対応することが可能だと川北さんは言います。 「助成機関における選考・審査一つとっても、どうしたら最大の効果を発揮するためのお金の出し方があるのかという選考の再設計が求められています。CANPANのデータベースは、まさにこうした助成機関のためのプラットフォームとして機能してほしいと考えています」(川北さん) 川北さんも指摘するように、データベースを通じた団体情報の可視化は、透明性だけでなく社会的なインパクトを生み出すための基盤であるべきだと思います。そのためにデータベースのこれからのあるべき姿がどのようなものか、みなさんとともに議論していきながら考えていきましょう。 <開催案内> 日本財団CANPAN・NPOフォーラム 2019年の活動主体のデータベースを考える勉強会 〜効果的に団体を見つける方法、選ぶ決め手はあるのか!?〜 8月22日(火)14〜16時、29日(火)10〜12時 https://blog.canpan.info/cpforum/archive/947 <各回の開催報告> 第1回 7月19日(水)13:00〜15:00 資金援助のプロである助成機関目線から考える ─────────────────────────── 支援のプロである助成機関スタッフは団体の何を見るのか? 公の情報として知りたいこと、内部情報として知りたいこと 助成プログラムとして活用したい、活用できるデータベースとは!? https://blog.canpan.info/cpforum/archive/993 第2回 7月27日(木)10:00〜12:00 地域をデザインする中間支援組織の視点で考える ─────────────────────────── CANAPNの立ち上げからアドバイザーとして関わっていただいている IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所] 代表の川北秀人さんを スペシャルゲストにお迎えして開催します。 これまでとこれからのNPOセクターのデータベースや、NPO支援として、 データベースをどのように活用するかについて、基調講演をいただきます。 後半は、川北さんのお話しを聞いた上でのディスカッションになります。 https://blog.canpan.info/cpforum/archive/1032 第3回 8月3日(木)14:00〜16:00 「事業」「人」「評価」を切り口に考える ─────────────────────────── 団体としてNPOを見ていく時に、組織としてだけではなく、 どんな事業をしているか、どんな事業成果を出しているか? どのような人が関わっているのか? どのような評価(あるいは表彰、支援)を受けているのか? などなど、より多角的に見ていくニーズが高まっています。 新しい視点でデータベースを考える回です。 https://blog.canpan.info/cpforum/archive/1033 第4回 8月22日(火)14:00〜16:00 企業CSRや市民参加の立場から考える ─────────────────────────── NPOなどの公益活動団体の主要な応援者である市民寄付者や 企業CSRは、どのようなデータベースを必要としているのか? あるいは、企業の従業員や市民がNPO活動に参加するために 欲しい情報とは!? これまでのデータベースで出来たこと、出来なかったことを 踏まえてディスカッションします。 https://blog.canpan.info/cpforum/archive/1039 第5回 8月29日(火)10:00〜12:00 課題解決をテーマにした事業開発・提携先発掘から考える ─────────────────────────── NPOは支援するための存在から。一緒に事業開発・提携する ための組織として変化してきています。企業活動も課題解決 志向が高まっている中で、もはやNPOは支援先ではなく、事 業を一緒に進めていくパートナー組織としての役割が求めら れています。 つまり、NPOの事業性に注目したデータベースのニーズが高 まっている証拠です。この回では、そんな視点で考えていき たいと思います。 https://blog.canpan.info/cpforum/archive/1045 |