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GPIFが国連責任投資原則(PRI)に署名することの意味 [2015年10月06日(Tue)]
年金積立金管理運用独立行政法人(以下、GPIF)のウェブサイトに「国連責任投資原則への署名について」という平成27年9月16日付のプレスリリースが掲載されましたね。
これは先のニューヨークで行われた国連サミットで安倍首相が演説の中でも触れた大きな動きの一つなのですが、日本のマスコミからは全く無視されました。

■国連責任投資原則への署名について■
http://www.gpif.go.jp/topics/2015/pdf/0928_signatory_UN_PRI.pdf

GPIF と言えば世界最大の機関投資家と言われ、その運用額はなんと141兆円に上ります。
このうち約45%が国内外の株式投資に運用されています。
国民の年金という性格のお金ということを考えると、その運用リスクを含めて少し割合が大きすぎるのではないかという別の課題がありますね。これはこれで大きな問題なのですが、それはまたあらためて。

今回は、このような世界最大の機関投資家が満を持して、あるいは世界から遅れること数年にして責任投資原則に署名したということがもたらす意味とインパクトについて考えてみたいと思います。

責任投資原則は、「PRI(Principles for Responsible Investment)」と略され、2006年、当時の事務総長であったコフィー・アナン氏が提唱したイニシアティブです。
ここでは、機関投資家の意思決定プロセスにおいて、三つの課題である環境・社会・ガバナンスという、いわゆるESGを反映させるべきであるということが謳われています。

つまり「投資をする際には、環境や社会、ガバナンスにきちんと取り組んでいる企業を選ぶべきである」ということになります。

世界では、このようなESGを含めたSRI(社会的責任投資)の動きは年々活発化しており、大和総研のレポートによれば、2014年の世界全体のSRI市場の規模は約21.4兆ドルで、2012年時点の約13.3兆ドルからわずか二年で61.1%もの拡大をしているようです。

日本ではESG投資が「社会貢献的な投資」と勘違いされている場合もありますが、これは間違いです。

2008年のリーマンショック後に投資家が考えたことの一つが「社会を裏切らない企業に投資したい」というニーズでした。
特に年金などを扱っている機関投資家にとって、リーマンショックなど悪夢以外の何物でもありません。とにかく社会を裏切ることなく、まっとうにビジネスを続けてくれる会社に投資したいというのは自然な流れです。しかし、これまでのIR情報だけではそれは判断できません。

ESG投資はこの視点に合致するもので、社会貢献企業への投資という側面はたしかにありますが、投資リスクの軽減と持続可能な投資を可能にするからこそ注目されたわけです。

このような考え方の投資家が増えていくと対象となる企業も変わらなければ投資を受けられなくなります。これは非常に大きなパラダイムシフトです。

この流れは今後、ますます加速していくのは間違いないでしょう。
GPIFという巨大な機関投資家がこの流れに乗ったということは、これまでSRIの動きが鈍かった日本社会でもそれが進んでいくということを象徴する出来事です。

それは単なる利益の追及だけでなく自社の社会的価値をより一層高めていくことが良い投資家からの資金を得る可能性が高まり、組織の持続可能性と競争力を高める原動力となっていくことをも意味しています。
日本企業にとっての失われた20年 [2015年09月12日(Sat)]
みなさんがもし経団連に所属する会社に勤めていらっしゃるとしたら、経団連が1991年に制定した「企業行動憲章」をご一読されることをおすすめします。(2010年に一部改訂が行われています。)
■(社)日本経済団体連合会 企業行動憲章■
https://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/cgcb/charter.html

1991年と言えば日本は空前のバブル絶頂期にあり、企業によるメセナ活動も活発化していました。経団連による1%クラブが立ち上がったのは前年の1990年、まさに近代日本における企業の新しい社会的な役割というものが定義されていった時代でした。

しかし、翌年には完全にバブルがはじけ、日本社会は「失われた20年」へと突入します。それに伴い、盛んだった企業のメセナ活動も大きく後退、少なくとも2003年の「CSR元年」を迎えるまでの約10年間、日本企業は社会的責任という部分において全く存在感なく、バブルというお祭りの後始末に追われることになります。

「企業行動憲章」はこのような、世界中で日本企業が大きな存在感を発揮していた時代に作られました。したがって、この憲章は、当時グローバルな活躍をしていた日本企業にとっての振る舞いを含めたあるべき理想を表現したものと言えます。

バブル経済真っ盛りの浮かれた時代の中で、このような高邁な理念をどれだけの経営者がまともに理解していたのかはわかりません。むしろ念仏程度にしか思っていなかった経営者のほうが多かったのではないかとも思います。

あれから四半世紀が過ぎた今、私たちはあらためてこの憲章の意味を考える時に来ていると思います。

なぜなら、この理念の中で企業は持続可能な社会の創造に資し、さまざまな課題に対応することを求められていることが明記されており、それを社会が企業に希求する強さは今の時代が最も大きい、つまりニーズがあるからです。

国も行政もすでに限界、次の社会課題解決の担い手は間違いなく企業です。
これまでの企業の役割は、課題を解決することよりも人々の生活を豊かにすることに主眼が置かれてきました。それによって私たちは快適な生活を手に入れることができたわけです。

そして今、生活の豊かさのみでなく、次世代に負債を残さないような持続可能な社会の実現と社会課題の解決のために企業ができること、自分たちのビジネスでできることを考えることが、社会と自社の持続可能性を高めていくことにつながります。

今、日本企業は、これまでの20年間に失った世界の中での存在感を「未来社会の創造」を通じて取り戻す時代が来ているのです。

それは社員にとっても自分の仕事の価値と会社への忠誠を高めることにつながり、組織全体のバイオリズムを上げることになるでしょう。
CSRと社会課題 [2015年08月15日(Sat)]
経営トップも絡んだ東芝の不適切会計問題は、日々CSRに携わる方々にとってはため息しか出ない問題と映っているのではないかと思います。

この問題はCSR的には非常に重要な視座を得た事例だと思います。日本を牽引してきた大企業の一つがこのような問題を起こしてしまったという背景を考えると日本社会にとって極めて深刻であると言わざるを得ません。

なぜなら、東芝のような大企業とその周辺には経済を含めた大きな生態系があり、その中心となる企業がこのような行き過ぎた利益史上主義へ走ってしまうと、その生態系全体に大きな軋みを生んでしまうからです。

経営トップが掲げた「チャレンジ」、これは企業として間違っているとは言えません。それが悪者のように見えるのは、そこに顧客の視点が欠けているからです。

ドラッカーは「企業の目的は顧客の創造である」と指摘しました。ここで言う「顧客」とは誰でしょうか? もちろん自社の製品やサービスを買ってくれる人、ということになります。

しかし、その手前で製品やサービスそのものが社会のニーズと合致していなければ、そもそも売れません。つまり、ニーズを創造できていなければ顧客も創造されないわけです。

今の日本企業に圧倒的に欠けているのはこの点です。新規のマーケットを創り出せず、結果として既存のビジネスモデルという枠の中で他社との血みどろの戦いを続け、組織だけでなく、その周りの生態系までも疲弊させる。今回の事件を見るまでもなく、このような状態は長続きしません。

それを避けるには、社会の中で自分たちの会社はどのような価値を創り出すべきかという発想に基づいたビジネスづくりを強い意思と根気を持って進めることが必要です。

本当はそれこそが「チャレンジ」の目的であって、営業利益が目的の「チャレンジ」など本末転倒も甚だしいのです。

では、その社会のニーズはどこにあるのでしょうか? 

今の時代、その沃野は社会課題にあります。

そして、このマーケットの特性は消費者アンケートなどが通用しない点にあります。消費者がどのような製品やサービスを欲しがっているのかについてアンケートをやっても無意味です。なぜなら、社会課題の渦中にある人たちは自分たちが何を求めているのかわからないからです。

これをお読みの皆さんの中でカメラ付き携帯電話が販売された時、「これが前々から欲しかった」と思った人はどれくらいいるでしょうか? 
おそらくは「電話にカメラ? そんなの必要なの?」と思われませんでしたか?

しかし今、電話にカメラが付いているのは当たり前、ついていない機種を探すほうが困難です。
電話とカメラ、両方とも既存製品としてマーケットが存在していた製品ですが、それがハイブリッドされた時、そこに巨大な市場が生まれました。

誰も意識していなかったけれども実はそこに大きなニーズがあった、これは社会課題をビジネス化する時に最も必要な視点です。

それだけに難しくもありますが、これまでにも様々な社会課題を解決してきた日本企業だからこそ、この原点に戻ることで再び社会に必要とされる企業となることができます。
そして、それこそがCSR経営そのものなのです。
企業はCSRでコミュニティに貢献できるのか [2015年05月20日(Wed)]
CSRコンサルタントの安藤 光展(あんどう・みつのぶ)さんが手がける「CSR Meetup」、様々な企業の方を毎回お招きしながらダイアログを行うイベント(?)です。

■CSR Meetup Facebook ■
https://www.facebook.com/groups/288972971127467/

こちらの第7回のテーマが「コミュニティ」ということで、お声掛けをいただきましてお話しをさせていただきました。

当初は、私の話を聞きにどれだけの人が集まってくれるのか…などと不安がっておりましたが、なんと満員御礼…感謝感謝です。

これは参加されるみなさんにとって役に立つ話をしなければ、といつも以上に気合いを入れて臨みまして、皆さんと約二時間、情報交換などもさせていただきました。

このような場に来られる方々が会社に戻り、周りの無理解などにも苦しみながらも自社のCSRを本質的なものに近付けようと尽力される。

私としては、そのような方々をなんとか側面支援してCSRに取り組む価値を上げるということをサポートしたいなぁといつも思います。

安藤さん、素晴らしい場にお招きいただきありがとうございました!

またご多忙の平日の夜にも関わらずご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました!

イベントの詳細はCSR Meetupのホームページをぜひご覧ください。

■第7回 CSR Meetup■
http://andomitsunobu.net/?p=9954

csrmeetup7.jpg
新CSR検定はじまる [2015年01月15日(Thu)]
昨日の毎日新聞の東京版に、私の考えている風な写真と共に委員を務めさせていただいている「新CSR検定」の件が掲載されました。

毎日新聞という新聞社が、環境問題について日本では最も早く真っ向から取り組み、今も継続し続けているマスメディアであるということはあまり知られていません。

だから、環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したケニア人女性の故マータイさんをノーベル賞受賞前から毎日新聞が注目していたのも偶然ではないわけで。

このようなセミナーでお話しさせていただいたことに感謝です。

■CSR検定■
http://www.alterna.co.jp/13523

mainichi_shinbun.jpg
CSR最前線 〜富士通・ヤマトHDの事例から〜 [2013年07月24日(Wed)]
2011年3月に発生した東日本大震災は大変不幸な出来事でしたが、一方で今後の日本社会のあり方を考える上での明るい材料を得ることができた側面がありました。

それは、今回の大震災において企業の中で働く一人一人の社員の気づきや判断が、被災地における課題解決につながっていったケースが多かったことです。

現場レベルの気づきが、その後の企業の事業活動にも良い形で影響を与えることになった2事例(2社)についてご紹介したいと思います。これらはいわば、現場レベルでの「内発的動機」が企業内イノベーションを促していった事例であり大変参考になるものです。

【富士通グループのクラウドサービスを活用した被災者支援】

東日本大震災では、宮城県だけでも発災から約3日間で32万人が避難、約1,200ヵ所の避難所が設置されました。混乱を極める避難所を円滑にマネジメントすることは、阪神大震災の時にも課題となっていましたが、今回の大震災でも、被災者のニーズをいかに迅速、かつ正確に拾い上げて支援につなげていくかの仕組みが必要とされていました。

この問題に対応するため、「被災者をNPOとつないで支える合同プロジェクト」、通称「つなプロ」というプロジェクトが、阪神大震災の時に活動していたNPO団体を中心として立ち上がりました。

富士通グループは、本プロジェクトと早い段階から連携することで、自社の持っていたクラウドシステムを被災者支援の仕組みとして提供、結果的に大きな成果に結びつきました。

同社ではここで培われたノウハウを基に、今は現地における医療サービスの向上のための情報インフラの整備を自治体とも連携して進めています。
このプロジェクトは被災者支援から日本の課題解決プロジェクトへと変貌を遂げたソーシャルイノベーション事業としての性格を持っており、注目に値します。

そして、この事業の特徴は、現場の担当者が「つなプロ」の会議に参加し実際に被災地にも足を運ぶ中で何が問題であるのかを自身で見極め、それを社内リソースと結びつけて実行したというボトムアップ型による成果という点で、私たちに多くの気づきを与えてくれます。

※これらは後日、「在宅医療から石巻の復興に挑んだ731日間 (日経メディカルブックス)」として一冊の本となって発行されました。
ご興味のある方はぜひご一読ください。(私も一部で出させていただいています(笑))


【ヤマトホールディングスの「まごころ宅急便」プロジェクト】
 ※本活動はCSR大賞の記事でも触れています。

ヤマトホールディングス鰍フ復興支援の取り組みは、震災直後の比較的早いタイミングで発表された「宅配便1箱につき10円寄付」という取り組みが有名です。

こうした大胆な経営判断もさることながら、現場レベルでの判断とそれを支える社員一人一人の思いが、それ以上にこの会社としての価値となっています。

その一例として、震災前から温められてきたアイディアが、今回被災地の中で実践され、その後、本業の方にもつながった事例があります。

ヤマト運輸盛岡駅前センターでは、日本全国に集配ネットワークを持つ同社だからこそ地域で高齢者の方々を見守れる仕組みを作れるのではないか、という思いから始まった「高齢者見守りサービス」の企画が立ち上がっていました。

特に高齢化率の高い東北では、お年寄りが買い物をする際に重い荷物を持って帰らなければならないということや、誰にも看取られずに亡くなられるという孤独死が大きな問題となっていました。

現在、この現場レベルでのこうした気づきを基に、東北地方を中心に「宅配サービス」と「高齢者の見守り」、「買物代行サービス」を組み合わせた仕組みを構築し運用を始めています。

2011年時点で65歳以上の人口割合が全体の23%を超える超高齢化社会の日本において、同社のような仕組みを提供する会社の必要性はさらに高まると同時に、そのソリューションを提供する同社の価値はさらに上がっていくに違いありません。
日本取引所グループとの共催CSRセミナーのご報告 [2013年07月04日(Thu)]
日本取引所グループと日本財団では、2月に引き続き共同主催として、「CSR を取り巻く国際的なガイドラインのこれから」というタイトルでCSRセミナーを開催しました。

第一部(午前)ではCSR活動の方向性と今注目度の高い話題として、国連グローバル・コンパクト 代表理事であり富士ゼロックス株式会社エグゼクティブ・アドバイザーの有馬利男氏に「これからのグローバル企業に求められるCSR経営」と題してご講演をいただきました。

また、株式会社クレアン代表取締役の薗田氏、武田薬品工業株式会社コーポレート・コミュニケーション部シニアマネジャーの金田氏をお招きし、国際社会の中における各種基準やガイドライン等の動向を踏まえ、日本企業が注目していくべき点や企業の中での活用実践例についても合わせてご紹介いただきました。

第二部では、G4の改訂ポイントについてお伝えするとともに、国際的なガイドライン、基準等の策定状況を踏まえ、日本企業がどのような点について着目していくべきかについてパネリストの方々と参加者も交え、議論をさせていただきました。

会場は満席の約200名の主に上場企業CSR担当者にご来場いただき、活発な質疑応答も行われ盛況のうちに無事終了いたしました。

ご参加いただきました皆さん、ご多忙の中をご協力いただきました講師の皆さま、心より御礼申し上げます。


こちらのセミナーの詳細報告はこちらをご覧ください。

■CSR を取り巻く国際的なガイドラインのこれから開催報告書■
http://www.nippon-foundation.or.jp/news/articles/2013/img/51/03.pdf

2013年はCSRに関する国際的なガイドラインや基準についていくつか重要な動きがあります。
5月にはGRIガイドラインのバージョン4(G4)が発行され、12月にはIIRCによる統合報告フレームワーク第一版が発表される予定です。ヨーロッパを中心として規制や基準作りが活発に行われるなど、CSRを取り巻く環境に大きな変化が起きています。

日本ではG4発行に先駆けて、企業やNPO、CSR専門家といった様々なセクターの有志が連携。日本社会への情報発信と意識啓発活動を行う「G4マルチステークホルダー委員会」を3月1日付で発足いたしました。

同委員会はアドバイザーにNPO法人サステナビリティ日本フォーラムの後藤様、委員長にLRQA Japanの冨田様をお迎えし、日本財団が事務局を務めております。本委員会には、株式会社 日本取引所グループ、経済産業省、環境省、一般社団法人グローバル・コンパクト・ボード・ジャパン・ネットワーク(GC-JN)も協力団体として関わっていただいております。

去る3月15日に、日本財団ビル (東京都港区赤坂) にて同委員会の発足説明会を開催し、5月22〜24日アムステルダムで開かれたGRIカンファレンス‘Global Conference on Sustainability and Reporting 2013’に23名の日本代表団を組織、参加して参りました。

今後の動きにもぜひご注目ください。
社会の課題解決を日本企業の価値へ [2013年04月14日(Sun)]
※本記事はオルタナ2013年3月号に寄稿したものです。

アベノミクスが始動し、期待感で株価が上昇しています。
私にはこの理由はよくわかりませんが、それだけ社会全体が閉塞感で押し潰れそうになっていることの裏返しなのだと思います。

また、「世界一を目指す」、「強い日本」、「イノベーションを世界へ」など、安部政権から発せられる言葉は強烈な印象を受けるものが多い一方、今のところは空虚感の漂う言葉であることも事実です。
これは今後の政府の具体的舵取りによって払拭してもらいたいと思っていますが、その間にも社会は益々混迷をきわめ、経済は弱体化、大企業は硬直化した従来型経営を変えることができず、社会的弱者は増加、セーフティーネットも縮小の一途を辿っています。

これらは日本特有のものではなく、これまで世界を牽引してきた先進国全体が直面している課題でもあります。

そんな中、社会課題解決の担い手としての企業への期待感が強まるのは当然と言えます。ビジネスが顧客のニーズを満たすことによって対価を得るものである以上、社会課題が社会のニーズ化している今、それらをビジネスで解決するのはごく自然なことです。

では、なぜそれらの取り組みが「イノベーション」という言葉で語られているのでしょうか。

それは、現状の複雑かつ多様な社会課題の解決をビジネスという切り口で取り組もうとした場合、従来までのビジネスモデルの考え方では収益を生み出すことができない、あるいはそもそもビジネスモデルとして成り立たないために、それらを飛び越えた発想の先にビジネスモデルが存在しているからと言えます。

有名な逸話として、それまでパソコン一筋だったアップル社が「iPod」という音楽プレーヤーを突然創り出した話があります。自宅にある全ての音楽CDを持ち運べるというイノベーティブな製品は、ジョブズ氏が困っていた友人のために作ったことがきっかけとなりました。

一つのイノベーティブなアイディアは、積み上げ型の発想からは生まれません。パソコンを売る企業という枠組みで、アップル社が次の製品をどれほど考え続けたとしてもiPodは生まれないのです。

当時ソニーがiPodを造るための技術もコンセプトも持っていたのにそれを作り出せなかった指摘はこの点でも納得のいくものと言わざるをえません。

もし自社でエクスクルーシブバリュー(唯一価値)のある新規事業を創りたいというのであれば、社会課題からのバックキャスティングによって発想を飛躍させることを提案します。

それはおそらく、今までの自社の事業領域とは全く違うものである可能性が高いでしょう。しかし、その事業が成功した場合、iPod以降アップル社が単なるパソコンメーカーではなくなったように、将来、それは全く違和感なく、その会社を代表する事業として語られていくに違いありません。

世界における日本企業のプレゼンスを考える時、日本の技術力を活かした領域はもちろんのこと、社会課題解決型ビジネスという視点を常に持つことで、世界に必要とされる日本企業の復活は難しくないと考えています。

唯一の課題は、このような新規事業づくりの発想そのものが今の日本の、特に大企業の文化の中から失われてしまっているという事実であり、それが本当の社会的ボトルネックなのかもしれません。
ソフトバンクグループの被災地支援「チャリティホワイト」はなぜ続けられたのか? [2013年03月06日(Wed)]
東日本大震災発生から2年を迎える2013年3月、被災地では復興に向けたさまざまな取り組みが続けられています。

企業による震災支援活動もかなり少なくはなったものの、た支援を継続している企業も数多く存在しており、従来までの一過性の災害支援とは一線を画した取り組みを感じることができます。

今回は、この支援活動を顧客との共感を生みながら実施することで継続的な支援につなげると同時に、自社のブランディングとしても成功しているソフトバンクグループの事例をご紹介します。

まず、ソフトバンク株式会社は震災発生後、10億円を寄付したほか、社長である孫正義氏個人による100億円という巨額の寄付によって社会的注目を集めました。これは個人の慈善事業としての支援活動でありソフトバンクという会社そのものの被災地支援活動ではありません。

しかし、この寄付金の一部を原資として、東日本大震災で被災した子どもたちとその家族の支援を行うことを目的に、「公益財団法人 東日本大震災復興支援財団」という新しい組織が立ち上がり、現在も支援活動が続けられています。

■公益財団法人 東日本大震災復興支援財団■
http://minnade-ganbaro.jp/

ソフトバンクモバイルとしては、震災直後からユーザーからの義援金受付や、被災地で活動するNPO団体に対して携帯電話を無償で貸し出し貸し出しするといった本業を通じたさまざまな支援を行う一方、Yahoo! JAPANではプラットフォームを活用した義援金受付なども展開してきました。

そして現在、ソフトバンクモバイルとソフトバンクBBでは「チャリティホワイト」というマッチング寄付の仕組みオプションサービスを提供実施しており、携帯電話の利用者から多くの寄付金を集めて被災地支援団体に寄付しています。

■チャリティホワイト■
http://www.softbank.jp/mobile/special/charity_white/

「チャリティホワイト」は、ソフトバンクの携帯電話利用者から毎月の引き落とし額にプラス10円の寄付を呼びかけ、それと同額(加入者1人当たり10円)をソフトバンクモバイルまたはソフトバンクBBが拠出、1カ月あたり20円を、「中央共同募金会」と「あしなが育英会」に寄付する仕組みです。

現在、このチャリティホワイトの加入件数は100万件人を超えており、毎月約2,000万円の寄付が生み出されています。一社の取り組みとして、これだけの規模で顧客の賛同を得ながら寄付を集めていることは驚嘆に値します。

この仕組みを作ったのは、ソフトバンクグループ通信3社のCSR企画部部長である池田昌人氏であり、そのきっかけは「個人としてだけでなく何か会社としてできないだろうか」という熱い思いでした。

マーケティング部門からCSR部門に異動になった池田氏は、一社員としてこのチャリティホワイトの企画を経営会議に付議し、即断してもらうことに成功しました。

しかし、企業におけるこのような社会貢献活動は、経営が悪化すると突然止まってしまうことが往々にして問題となります。そこで彼は、ソフトバンクモバイルの全ユーザー約3000万件とチャリティホワイト加入ユーザー95万件のユーザーの行動分析を行い、携帯電話の解約防止効果の実数の解明からソフトバンクのファンがこの社会貢献プログラムにより生み出されていることを社内に証明しました。結果として、チャリティホワイトは当初の終了予定を延長し継続が決定されたのです。

企業である以上、利益を上げていかなければ組織そのものの持続性が担保できません。
したがって社会貢献だけをやっているわけにはいきませんが、一方で社会に対して大きな影響力を持つ企業には、社会的役割や責任を果たしていくことが求められています。

とすれば、それを両立するための価値の可視化は追求していかなければならず、それを株主をはじめとするステークホルダーに対し、きちんと説明していく必要があります。結果的にそれらは自社のプレゼンスを高めると同時に、経営そのものにも良い循環を生み出していきますが、多くの企業がその前段でつまずき、課題を抱えているのも事実です。

ソフトバンクグループの取り組みは、これらの課題を解決するにはどうすればいいのかについて多くの示唆に富んでおり、学ぶべき点が多々あります。
水産業の未来へと繋がるキリン株式会社の取り組み [2013年03月01日(Fri)]
【本業を通じた社会課題の解決】
 
キリン株式会社は2013年1月より新しくCSV(Creating Shared Value)部を立ち上げた。企業価値の向上と社会価値の向上をセットで行っていこうという試みの一つとして、組織的に取り組んでいく姿勢を打ち出している企業は、日本の中でもまだ例が少ない。

同社が行う復興支援のスキームも、基本的にこうした考え方の基に成り立っている。
キリンの復興支援事業は、「復興応援 キリン絆プロジェクト」と銘々され、「絆を育む」をテーマに「地域食文化・食産業の復興支援」「子供の笑顔づくり支援」「心と体の元気サポート」の3つの幹で構成されており、3年間で約60億円を拠出することとなっている。

本事業で特に注目したいのは、「地域食文化・食産業の復興支援」の事業だ。

本事業の原資となっているのは、同社が実施した「今こそ!選ぼうニッポンのうまい!2012」プレゼントキャンペーンの対象商品などの商品1本につき1円分の寄付を集めたものになっている。まず入口の部分で、消費者とのコミュニケーションを行った上で、出口の部分では、この資金を基にして、水産冷凍施設の修繕をはじめとする、いわゆるハード支援のみならず、地域ブランドの育成や担い手の支援などを行う計画となっている。

水産物の生産加工に携わる個別の事業者を支援するのではなく、各地域で持つブランドを面として捉え、支援を行うことによって、獲れたものが適正な価格で市場に流れ、食卓にものぼり、おつまみはキリンビールで、というストーリーを考えている。まさに社会価値の創造を行いながら、本業にもつなげていこうという試みの一つといえよう。

【水産業を取り巻く既存システムの限界】

東日本大震災では、原発をはじめ、様々な領域で既存システムの限界が露呈したが、水産業もその例外ではない。

たとえば、国の支援制度というシステムを見てみると、補助制度の中における自己負担という考え方が出てくる。水産庁や自治体等の復興支援によって、漁船の購入、修繕や、冷凍施設等への様々な補助制度が作られたのだが、こうした補助制度は必ず自己負担を漁業者側に求めている。震災で被害を受けた漁業者にとって、この自己負担分というのはかなり大きな金額である。

これに加えて、マーケット側の調達ラインの変更がある。震災によって一時的に生産ラインが止まってしまったことから、量販店を中心として、調達のラインが一気に東北から、海外を含めた他の地域にシフトしてしまったのである。いくら東北の海産物が新鮮で、美味しくても、ある程度の品質であれば、価格の安い調達先に流れてしまうのだ。

さらに追い打ちをかけているのが、原発による風評被害である。特に福島県は非常に難しい状況にあるが、やっとの思いで漁業を再開し、加工も再開したものの、獲れたものが、これまでのような価格で売れないのだ。

こうした問題の多くに、国の支援制度は追い付いておらず、民間レベルの支援にその期待が集まっている。

キリン株式会社の行う水産業復興支援「絆」プロジェクトもその一つだ。


【フィランソロフィーの先にある企業と社会との関わり】

これまで、日本企業の多くは、いわゆるフィランソロフィー的な観点で社会課題の解決に取り組んできていた。しかし、近年欧米では、社会の課題を事業活動を通じて解決していこうとする動きが出てきている。
キリン社の取り組みは、あくまで復興支援というフィランソロフィー事業としてスタートしているが、中長期的にはCSVという戦略の中で、事業にも連結させていく試みが検討されている。

後者の部分があまりにも露骨に出てしまうと、儲けるために社会貢献をするのか、という批判も出てくるだろう。しかし、結果的に社会の課題が「適切に」解決されていくのであれば、その中で企業が儲けてはいけないなどということはなく、むしろ持続可能な事業にするためには必要なことですらある。

キリン株式会社の取り組みが、これまでのフィランソロフィー型の事業から脱皮した事業のモデルとなると共に、日本の水産業への未来へと繋がる事業となることを期待したい。

※日本財団はこれまで海洋分野で培ってきた事業実績を基に、キリン株式会社の行う水産業復興支援事業について、寄付金をお預かりし、共同で事業を推進しています。

参照URL:http://www.kirin.co.jp/csr/kizuna/marine/
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