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2011年06月13日

第21回コミュニティカフェ研究会開催報告

 第21回コミュニティカフェ研究会は6月7日(火)、東京・芝公園の日本女子会館会議室で行われ、約70名の方が参加しました。
 今回のテーマは、「震災復興支援とコミュニティカフェ」。
 はじめに、直接被災地に行って、避難所や仮設住宅の軒先でパラソルと椅子を置いたカフェを開いているNPO法人介護者サポートネットワークセンター・アラジン(東京都新宿区)理事長の牧野史子さんが、阪神・淡路大震災発生時にいた西宮市での体験から話し始めました。「被災者は災害復興(恒久)住宅に移るまで、住み慣れた地域、避難所、仮設住宅と、コミュニティを3回(以上)喪失する。プライベートな空間や暮らしの場を得た先に、孤独感や不安感にさいなまれる」。このため、高齢者の「心のケア」としての訪問活動を始め、それがパラソル喫茶という交流の場に発展していったそうです。
 東日本大震災では、5月5日と6月5日に宮城県東松島市の避難所や仮設住宅でパラソル喫茶を開き、周辺ではにわかづくりのコンサートが行われ、ゴーヤを植えたプランターを被災者にプレゼントしました。
 牧野さんは「パラソル喫茶は小さな仮設でも開催でき、ボランティアの顔ぶれにより、内容を自由にコーディネートできる。それが、住民の特技を生かし、段々主体的なコミュニティの取り組みになっていく。戸別訪問の基地的役割も果たせる」と話しています。


牧野史子さん

 続いて、常設型地域の茶の間「うちの実家」(新潟市東区)代表の河田珪子さんが、自らの茶の間での支援活動を話しました。7年前の7.13水害では、要介護者5名を避難所まで迎えに行き、茶の間に9日間、無償で泊めました。通常の利用者も、着替えを提供するなど協力しました。役所や病院への送迎、自宅に戻った人に、支援物資を運び込んだり、炊き出し支援を行ったそうです。
 同年の中越地震の際は、福島市の「ふらーっと茶の間・方木田」(武田美恵子代表)から託された支援物資を、避難所のニーズを聞いて、直接届けに行きました。また、残ったものや新たに集めたものをバザーで現金化し、気分転換にうちの実家に来てもらうためのバスの貸し切り代や高速料金、ガソリン代、雪下ろしをする人へのお茶代を支援したそうです。
 中越地震で受けた支援をお返ししようと、東日本大震災では「ふらーっと茶の間・方木田を通じて知った、福島県飯舘村についての本の販売支援を行い、バザーも実施。約60万円を寄付している」と話していました。


河田珪子さん

2010年12月17日

第19回コミュニティカフェ研究会開催報告

 第19回コミュニティカフェ研究会は12月15日(水)、東京・赤坂の日本財団で行われ、年末のお忙しい中、約60名の方が参加しました。
 今回のテーマは、「市民事業の地域拠点としてのコミュニティカフェ」。まず、埼玉県川口市のコミュニティサロン・ひだまり代表でNPO法人志民アシストネットワーク理事の山田たみ子さんが、1996年に女性の生きがい探しの会「ティンカーベル」を立ち上げ、市内の公的施設で月1〜2回、講座・勉強会・施設めぐり・旅行・フリーマーケットを行ったのち、2000年に「民間の公民館」「みんなの居場所」を目指して個人でひだまりをオープンしたことを話しました。現在は、飲食の提供や会員の手作り品や東南アジアの商品の販売を行うかたわら、昨年から志民アシストネットワークで埼玉県地域支えあい推進事業「安心おとどけ隊」サービスも行い、利用人数・時間は順調に伸びています。
 続いて、埼玉県飯能市のNPO法人ぬくもり福祉会たんぽぽ会長の桑山和子さんが、やはり公民館活動から助け合い事業を始め、介護保険事業に参入し、農業分野のソーシャル・ファームを行っていることを話しました。そして、昨年から居場所づくりを始め、ソーシャル・ファームで出来た野菜を素材にした総菜、弁当を販売するカフェを、改修した空き店舗に準備中だそうです。


右が山田さん、左が桑山さん


 このあと、中国・四国地方に多い茶堂という歴史的な存在と現代のコミュニティカフェを重ね合わせて考察した書籍「生涯学習論―大人のための教育入門」を最近上梓した、地域の居場所研究の第一人者・久田邦明さんが来場していたので、お話しいただきました。久田さんは12月24日(土)の第4回「芝公園・梁山泊セミナー」で「地域の居場所という可能性―茶堂からコミュニティカフェへ」というテーマで講演します。
 セミナーの参加希望者は、
https://blog.canpan.info/com-cafe/img/188/ryozanpaku12.25.pdf
をご覧ください。参加費無料。

●参考記事
 https://blog.canpan.info/com-cafe/archive/188


久田さん

2010年09月17日

第18回コミュニティカフェ研究会報告

 9月13日、第18回コミュニティカフェ研究会が東京・赤坂の日本財団会議室で行われ、前回を上回る70人以上の方が参加しました。


 今回のテーマは、「食の地域拠点としてのコミュニティカフェ」。まず、さいたま市南区の「ヘルシーカフェのら」の新井純子氏が、のらを立ち上げた経緯や、それまでの子育て支援の活動の話をしました。「コミカフェでまちづくり」をと、レストラン奥の「広場」で、誕生日会やさまざまなワークショップ、イベントを開いています。そして、代表兼シェフの三浦香代子氏が「食べる」は「生きる」ことと、地場の有機野菜などを使った、素材本来のおいしさを引き出した料理や、思いを述べました。



 続いて、NPO研修・情報センター代表理事、コミュニティ・レストラン・ネットワーク全国代表の世古一穂氏が、NHKニュースで取り上げられた番組を紹介しながら、「食」を核にしたコミュニティ支援を目的とし、地域の多様な二ーズに合わせて「食育の場」「安心安全な食の提供」「障害者の働く場づくり」「不登校の子ども達の出口づくり」「高齢者の共食の場づくり」「循環型社会の拠点づくり」などのテーマで活動していると述べました。

2010年07月17日

第17回研究会、盛況裡に開催

 7月13日、今年度初めてのコミュニティカフェ研究会が東京・赤坂の日本財団会議室で行われ、60人以上の方が参加しました。今年度の研究会は、昨年度の各コミカフェの事例研究を踏まえて、コミカフェにかかわるテーマについてシンポジウム形式で内容を深めていきます。コミュニティカフェ全国連絡会では、県単位で各コミュニティカフェをサポートするセンター機能をもつコミカフェを「マザーカフェ」と称して、全国3カ所にモデル拠点として設置しますが、今回の研究会は「地域の拠点・マザーカフェのめざすもの」と題して、熊本市と富山市のマザーカフェ主宰者をお呼びして、開催しました。


 初めに長寿社会文化協会(WAC)の田中尚輝常務理事が「マザーカフェの展開」というテーマで講演し、「マザーカフェはコミカフェのネットワーク化の基地となるところで、都道府県、大都市ごとに1カ所はつくっていく」と力説しました。
 続いて、「カフェ型保健室しらかば」(熊本市)の工藤明美氏が、里山整備やスイカを活用したイベントなどで地域づくりを進めてきたこと、自宅敷地内に地域の居場所のカフェ型保健室を開設し、週1回のカフェ講座により、「新興住宅地で深くは知らなかった住民同士が相互扶助の関係を取り戻した」と話しました。
 次に、「富山居場所&コミュニティカフェネットワーク」のスタッフで、「Y'sさくらカフェ」(富山市)の加藤愛理子氏が、不登校・引きこもりの子どもたちのフリースクールから料理教室、カフェに発展していったこと、ランチやカフェをともにしながら悩みを話すことで、ホッとできる場になっていること、また、障がいをもつ青年たちの就労体験の場となっていることなどを紹介しました。
 同ネットワークの代表である「街なかセミナーサロン・ポエシア・ブランカ」(富山市)の平木柳太郎氏は、ビジネスマン向けの朝活セミナーや勉強会、交流会、子ども向けの寺子屋で、「成長できる居場所づくり」を進めていること、加藤さんが中心になって県内のコミカフェガイドブックの制作を進めていることなどを説明しました。
 

 この後、近くの飲食店で交流会を行い、20人が参加しましたが、後述のとおり、多彩な人々が集まり、異業種交流会といった趣になりました。
 研究会の開会時間を、昨年度の午後3時から今年度は午後6時半からに変更したことから、参加者もシニアや介護福祉系関係者に加え、薬品・損保・ビルメンテ・IT・広告・生協などのビジネスマンの方々も参加しました。コミカフェに興味をもっているものの、かつては時間的に参加できなかった方々が参加できるようになったと思っています。また、20代の銀座のクラブママも参加し、「人々の心を癒し、つながりをもつ点では、クラブもコミカフェも変わりはない」と、交流会での発言がありました。

 次の第18回は9月13日に「食の地域拠点としてのコミュニティカフェカフェ」というテーマで開催します。ご参加をお待ちしております。(コミュニティカフェ事業事務局・昆布山)

2010年03月19日

第16回研究会(3月15日開催)報告

テーマ:安心していられる居場所づくりをめざして
講師:天野 敬子 氏(不登校・ひきこもり研究所 代表)

 精神保健福祉士、スクール・ソーシャルワーカー、ダンスセラピストでもある天野さんは、不登校や社会的ひきこもりの状況から話し始めました。今や、不登校の子は中学校ではクラスに1人はいるそうです。「家から一歩出ていくためには、安心していられる居場所が必要」と、天野さんは彼らの支援活動を始めました。「豊島区で8カ所の居場所をつくりたい」そうですが、すでに曜日別に3カ所に設けています。いずれにもゲームや読書、おしゃべりが楽しめるフリースペースがあり、フリーマーケットや料理教室なども行っています。

2010年02月16日

第15回研究会(2月15日開催)報告

テーマ:カフェがつなぐ地域と世界
講師:吉岡 淳 氏(カフェスロー 代表)

 2001年にオーガニックカフェを始めた吉岡さんが、10カ条の「スロー・カフェ宣言」をもとに話を始めました。
 「衣食住を通して、生活の中から環境を考えていこう」と、最初の東京都府中市の店も、2008年6月に移転オープンした国分寺市の店も、環境に負荷をかけない、自然にかえる藁や珪藻土を内装に使っています。天井や壁の断熱材にも麻を使うなど、徹底的に自然の素材にこだわりました。移転の際、テーブルや椅子などの調度品、照明からトイレの便器まで、移せるものはすべて移し、足りないものはリサイクルショップで調達。新しいものは極力買わないようにしたそうです。おしぼりはなく、紙ナプキンや買い物袋、紙を消費する領収書も、要求されなければ出さないと言います。


 食べ物は、野菜から調味料、酒に至るまで、農薬に頼らないものを提供し、肉・魚は使っていません。「農家の人や食べる人、地球を汚染しない食べ物がいかにおいしく、安全か」。野菜は地元の農家から「地産地消」で調達し、コーヒー豆はエクアドル・ブラジル・メキシコの「森林農法」で作ったものを使っています。「木と木の間の日陰で育つコーヒーの木は、土中の水や栄養分を吸い上げる力が大きく、豆はコク・香りが強くなる」。これを、「農家の人が孫、ひ孫の代まで安心して作れる持続可能なフェアトレード価格」で仕入れています。「彼らにお金を落として、途上国と共存でき、世界の状況が見えてくる『インフォメーション・カフェ』を目指している」とのことです。


 「旧店舗で休みを週1日から2日にしたら、メンバーの顔に疲れが見えなくなり、かえって売り上げが増えた」とか、農家の男性と都会の女性の交流イベントを開くなど、経営や企画の面でも注目すべき点があります。

2010年01月20日

第14回研究会(1月18日開催)報告

テーマ:地域の支え合い―ふれあいの居場所づくりについて
講師:島津 禮子 氏(NPO法人ふらっとステーション・ドリーム 副理事長)

 4年前、2,300世帯のドリームハイツ周辺の子育て、高齢者福祉などの3団体が福祉連絡会を立ち上げ、居場所をつくりました。当初2年間は横浜市との協働事業「地域ぐるみ介護予防の仕組みづくり」に取り組みました。毎日開店することで「ふらっと」立ち寄れる雰囲気をつくっています。ドリームハイツ内では、自治会に頼らず活動する子育て支援・高齢者支援・まちづくりの団体が15あり、その中で、ふらっとステーション・ドリームは、サロン、情報収集・発信、相談の場となっています。


2009年12月25日

第13回研究会(12月22日開催)報告

テーマ:7つの「元気」から介護予防のお手伝い
講師:小泉 圭司 氏(元気スタンド・ぷリズム 店長)

 スーパーマーケットに勤めていた小泉さんは、高齢者の居場所の必要性を接客で感じ、埼玉県幸手団地の空き店舗で2007年末、介護予防を目指した「コミュニケーション喫茶」を始めました。


@食事からの元気:3食のメニュー提案、1食500円以内で食べられる価格設定など
A生活からの元気:大人向けドリル、石の足湯の設置など
B運動による元気:ウォーキングの推奨、周辺の見どころ案内、気軽にできる運動グッズの設置など
C趣味活動での元気:趣味を生かした作品を店内で展示販売するコーナーの設置、店内での囲碁、将棋、オセロ、花札などの貸し出しなど
D経済的な元気:作品の場所代無料展示販売(販売後の手数料のみ)
など
E労働による元気:雇用支援センター・ボランティアへの登録斡旋、フェアトレード商品の積極活用など
F人間関係での元気:サロン・イベントの開催、 サークル活動応援(店内での会合、仲間との団欒、サークル活動の場として活用いただく)など
7つの面の「元気」から多彩な介護予防のメニューを提供しています。

2009年11月18日

第12回研究会(11月16日開催)報告

テーマ:地域の居場所づくり〜人と人をつなぐ
講師:眞板 久美子 氏・中村 由美子 氏(NPO 法人福祉亭 理事)

 東京都多摩市高齢福祉課の呼びかけで集まった市民が高齢者の居場所づくりを構想し、多摩ニュータウンの第1次入居地区・永山団地の空き店舗に開設された「福祉亭」。そこでは、季節感が感じられる野菜中心の日替定食、喫茶の提供、友人づくりが進むよう健康麻雀、囲碁、将棋、健康体操、頭の体操、唱歌、季節ごとに誕生会、クリスマス会、新年会など、多彩な活動を行っています。それらは市民ボランティアの手で支えられています。



 今回は、研究会初のダブルキャストで、眞板さんには子育てや高齢者・障がい者を支援する「生活サポート隊」の活動、中村さんには福祉亭のあゆみや健康麻雀、お楽しみ飲み会、算数サロンといった日常の行事などについてお話しいただきました。


左が眞板さん、右が中村さん

 中村さんは「福祉亭は『まちづくりの実験の場』。寄りあえる場があれば、つながる楽しさ、支え合う喜び・心強さで、人と人はつながっていきます」と話していました。


2009年10月23日

第11回研究会(10月19日開催)報告

テーマ:「地域のたまり場『遊友ひろば』〜誰もが暮らしやすいまちを!」
講師:江田雅子 氏(NPO法人ぐらす・かわさき 理事・事務局長)


  「川崎に深く根を張り、ガラス張りのオープンな川崎を」という思いを込めて始めたNPO。登戸の商店街にある空き店舗を活用し、気軽に立ち寄れる「地域の縁側・たまり場」をコンセプトに、「親子ひろば」や料理教室、健康麻雀など、多彩な活動を展開しています。また、まちづくりに関する調査・研究、地域通貨の運営、環境・憲法・平和・市の予算の学習会なども行っています。多彩な活動に、参加者からは多数の質問が寄せられていました。