読売新聞は1月1日付神奈川版の「つながる力(チカラ)」と題した企画で、県内のコミュニティカフェに集う人々と運営者の話を特集しました。
横浜市都筑区の「いのちの木」と同市港南区の「港南台タウンカフェ」、小田原市の「ぎんが邑(むら)コミュニティカフェ+」、大和市の認知症カフェ「オレンジカフェやまと」を紹介しています。
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http://www.yomiuri.co.jp/local/kanagawa/feature/CO012714/20150101-OYTAT50070.html
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絆を求めて人集う まちづくりの拠点 個性派カフェ花盛り 子育てママに料理教室 認知症地域で支える
のんびりとお茶を味わいながら会話を楽しみ、そこで生まれた「つながり」が、地域交流の核となっていく。そんなカフェの新しい形が今や花盛りだ。地域に根付こうとしている県内のカフェを紹介する。
横浜市港南区のJR港南台駅近くにある「港南台タウンカフェ」((電)045・832・3855)は地域住民が集うまちづくりの拠点だ。今年でオープン10年を迎える。
カフェは、地元の「横浜港南台商店会」と市民団体「まちづくりフォーラム港南」、まちづくりの支援業務などを手がける企業「イータウン」の3者が共同で運営する。地域情報誌の発行や地域交流イベントの企画・運営などに取り組んでいる。店内の壁一面には、棚を細かく仕切った「小箱ショップ」を設置。月額1400〜5600円でスペースを貸す仕組みで、現在は約100人が手作りの雑貨や工芸品を販売し、来店客の人気を集めている。
イベントの企画会議なども頻繁に開かれ、ボランティアたちの交流の場にもなっている。イータウンの斎藤保社長は「住民が主体となってアイデアを実現することができる場所。より多くの人に、まちづくりの担い手になってもらいたい」と話している。
小田原市曽我光海の「ぎんが邑むらコミュニティカフェ+」((電)0465・42・3063)は、子育て中の母親たちを対象とした料理教室などのイベントを行っている。
ぎんが邑は2005年8月から未就園児の保育施設「ママちゃんHOUSE」を運営しており、カフェとしての活動は3年後に始まった。イベントは、親子で周囲に気兼ねすることなく安心して食事をし、子育てについても情報交換できる場を提供することが目的だ。週1回ペースで行っており、約20人いるスタッフは保育施設を利用していた女性たちだ。
12月20日の料理教室には約20人の親子が参加。2階のキッチンで作ったパスタを1階の保育スペースでみんなで食べた。子ども3人と一緒に参加した大井町の主婦石井真理さん(36)は「ストレス解消にもなります」と満足そうだ。代表の川本桂子さん(44)は「ママと子ども同士の交流の場として気軽に利用してほしい」と話す。
大和市西鶴間の住宅街には2014年9月、市内初の認知症カフェ「オレンジカフェやまと」((電)046・283・3900)がオープンした。孤立しがちな認知症患者やその家族に地域社会とのつながりの場を提供しており、認知症ではない高齢者も歓迎している。
運営しているのは、介護福祉士らでつくる「やまとオレンジプロジェクト」。毎月第3日曜に無料で開催しており、12月21日にはソプラノ歌手を招いてクリスマスコンサートを行った。コンサート後は、高齢者と介護の専門スタッフ約20人が、近況報告や思い出話に花を咲かせた。
近くで一人暮らしをする鈴木泰代さん(95)は「ピアノを聞いて50歳は若返ったよ」と冗談を飛ばし、「意識して外に出ないと、人と話す機会がなくなる。友達や近所の人とのおしゃべりが元気のもと」と笑顔を見せた。同プロジェクト代表で介護福祉士の石井直樹さん(42)は「地域のつながりを再構築できれば」と期待している。
カフェで笑って若返り 世代超え編み物教える 「いのちの木」
少子高齢化の進展で人口減が予想される中、薄れつつある地域のつながりを再構築しようとする動きが広がっている。社会で孤立し、人と人との触れ合いで心の隙間を埋めようとする高齢者や若者たち。新たな絆を糧に、これからの人生を生き抜こうとする人たちの姿を追った。
横浜市都筑区のコミュニティーカフェ「いのちの木」。木を基調にした温かな雰囲気の店内で、高齢者や子育て世代の主婦らが一つのテーブルを囲み、毛糸でレッグウォーマーを編んでいた。若い世代に編み方を教えるのはベテラン主婦の役割だ。たわいのないおしゃべりに花を咲かせ、店内は笑い声が絶えない。
カフェを運営するのは同区のNPO法人「五つのパン」。法人名は聖書からとった。2012年1月にカフェをオープンし、編み物サークルや手製本の技術を学ぶ「本づくり学校」などを続けている。
編み物サークルに参加する宮川昌子さん(73)は、防災設備メーカーの社員だった夫と横浜で暮らしていたが、夫が03年に退職したことを機に、2人で群馬・北軽井沢に移り住み、夫婦で畑仕事に汗を流した。だが、07年に夫ががんで他界。その後は一人暮らしを続けたが、10年12月に雪道で転んで骨折したこともあり、長男と長女が住む都筑区に移り住んだ。
当初は長女の家で暮らしたが、しばらくして一人暮らしを再開。「元気でいるうちは人に迷惑をかけたくないし、自立したい気持ちがあった」と打ち明ける。
新たな暮らしは気楽だったが、「一日テレビをぼーっと見たり、映画館に行ったり。時間をどうやってつぶそうかと考えていた」。外出先から帰った時など、ふとした瞬間に孤独感が募り、「話し相手がいないのは本当にさみしい。一人でいると、給湯器とか家電製品についつい話しかけるようになっちゃって」と振り返る。
12年11月、知り合いに勧められ、初めてカフェを訪問。温かい雰囲気が心地よく、編み物サークルには結成時から参加した。月2、3回のサークルに通い、仕上げた作品を販売するようになると、「次は何を編もうかと、構想を練るのが楽しくなった」という。サークルは若い世代と話す機会にもなっており、「自分の気持ちも若返ったように感じる」と頬を緩める。
メンバーとはサークル以外でのつきあいはあまりないが、「適度な距離感がちょうどいい。寂しくなっても、話し相手がいるという安心感がある」と話す。
14年10月、乳がんの手術を受けた。今では体力も回復し、週2、3回スポーツクラブに通って筋力トレーニングに励んでいる。人生はいつ何があるか分からない。だからこそ、「今を大事に生きたい」と思っている。
カフェの近くに住む島田玲子さん(64)はオープン当初から通う常連客だ。編み物サークルのメンバーでもあり、編み棒を動かしながら世間話をしたり、時には悩みを打ち明けたり。互いの作品をプレゼントしあったりして楽しんでいるという。「雰囲気が良く、皆と一緒にいるだけで楽しい」と声を弾ませる。
当初は仲間内だけで楽しんでいたサークルだが、新たな目標が生まれた。編み物会社を設立し、若い世代にも受け入れられるブランドとして販売することだ。
2014年春、ハンドメイドバッグブランドの設立準備を進めていたファッション雑誌の編集者が、ニットクラッチバッグの製作をメンバーに依頼。手作りバッグは有名ファッション誌でも紹介され、インターネットでの販売開始からわずか30分で完売する人気だったという。
メンバーは「デザインが良ければ売れる」という自信を持ち、4月の会社設立を目指している。NPO法人「五つのパン」は「若い世代の主婦と高齢者が共同して取り組む新たなビジネスのモデルケースにしたい」と意気込んでいる。
「五つのパン」の岩永敏朗理事=写真=によると、ニュータウンとして開発された地区が多い横浜市都筑区では、子育て世代の流入が続く一方、子どもを頼って転入した高齢者が新しい街になじめず、孤立しがちになっているという。
岩永理事は「将来的に、今の子育て世代の高齢化が急速に進むことが予想される。早い段階で地域住民の居場所づくりを進める必要があった」とカフェの開設理由を説明する。今後、少子高齢化に伴う人口減が進めば、税収も減って福祉サービスが低下するおそれもあるとして、「行政の力を借りず、高齢者や障害者が自立できる仕組みづくりが今後、ますます重要になってくる」と指摘している。(加藤高明)
2015年01月05日
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