実は訳あって内緒で見に行ったのですが、参道を下ってきた時に偶然棟梁に見つかってしまい、また一緒に見ようと再び参道を。棟梁は腰をかなり痛めているようで、腰を押えながらゆっくりとゆっくりと遅れて石段を登ってきました。
そして、鐘楼の各所の拘りを詳しく説明してくれました。突いた鐘の音が四方八方に響く工夫、材料のひとつひとつが吟味し作られていることを改めて思う。願いを込めて鐘を七つ突けと言ってくれました。ゆっくりとゆっくりと突きました。海に響き渡るいい音色でした。
そんな棟梁との出会いは2011年4月。レンタル会社にも重機が少なく、漸く手に入れた重機で、とある牡鹿の浜で暗くなるまで活動していた時、見ず知らずの二人の男がやってきてその重機を貸してくれないか?明日の朝まで必ず返すからと。
雨が降る寒い夕暮れ、二人は隣の浜まで重機を自走し、夜通しで重機作業をしていたようです。勿論翌朝には約束通りに重機は指定した場所に置いてありました。
その男のひとりがこの鐘楼を建てた棟梁です。そんなことがあったことなど自分自身は忘れていたのですが、しばらくしてから棟梁と再会し、その話を聞かされました。彼はそのことをずっと恩に感じ、会うたびにそのことばかりを話します。「あん時は隣の浜まで本当に寒く長い道だったけど重機が借りれて本当に嬉しかった。集落の生活道路を開けることができた」って。
そして、俺が鐘楼を見に来たことを本当に喜んでくれた。俺も嬉しかった。
九分九厘までできた鐘楼。おめでとう棟梁!