ハザードマップ及び避難所の指定に関する分析
(大川小学校事故検証報告書から抜粋)
教職員・地域住民が具体的な津波来襲の危機を想定しなかった背景には、大川小学校がハザードマップの予想浸水域外になっており、津波災害時の指定避難所になっているという、事前対策が関与したものと推定される。特に、同校が地域の避難所として指定されていたことは、教職員・地域住民の判断・行動に強い影響を与えたものと推定される。
石巻市が作成・配布した津波に関するハザードマップは、コンピュータシミュレーションによる被害想定結果の計算精度や限界を踏まえた詳細な検討が行われておらず、その限界を知らせる注意書きも配慮に欠けたものであった。これは、ハザードマップ作成時の検討体制において専門知識が十分ではなかったことが背景にあったものと考えられる。
石巻市における避難所の指定では、津波災害時の施設の安全性に関する検討が必ずしも十分ではなく、また津波からの垂直避難先と避難生活を送る避難所の区別も明確になっていなかったものと推定される。仮にこの両者が明確に区分され、避難所指定の際に十分な検討が加えられていれば、大川小学校は津波の際の垂直避難先として不適切であることがあらかじめ認識され、緊急避難先が別途検討されていた可能性は否定できない。
大川小学校においては、指定避難所として避難者受け入れへの対応を求められていたことが、教職員の判断・行動に影響を与えていたものと考えられる。その背景には、学校に避難所を設置した際の運営体制が確立しておらず、学校現場の教職員に依存する仕組みとなっていたことが要因となっていたものと考えられる。石巻市は、あらかじめ学校とは別の主体による避難所運営体制を構築しておくべきであったと考えられる。